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米海軍 戦艦 サウスダコタ BB-57 1944年 「プラチナ版」【劉陽】

2021.09.09

米海軍 戦艦 サウスダコタ BB-57 1944年 「プラチナ版」【ヴィー・ホビー 1/700】 月刊ホビージャパン2021年10月号(8月25日発売)

米海軍 戦艦 サウスダコタ BB-57 1944年 「プラチナ版」
扉絵

プラチナの輝きを放つアメリカ高速戦艦

 速力30ノットを発揮する日本海軍の金剛型戦艦に対抗するため、1930年代後半に計画された新世代のアメリカ戦艦「サウスダコタ」級は、40cm砲9門の攻撃力に加え、傾斜装甲など数々の新機軸が盛り込まれた進歩的な設計で、1番艦「サウスダコタ」は第三次ソロモン海戦など太平洋戦争の数々の激戦に参加、終戦まで生き抜いた。新興メーカー、ヴィー・ホビーの第一弾キットとしてリリースされたキットは、通常版に加えてディテールアップパーツを同梱したデラックス版とプラチナ版の3グレードで発売。予算に合わせたハイディテール作品を実現できる!

米海軍 戦艦 サウスダコタ BB-57 1944年 「プラチナ版」
右艦首から
米海軍 戦艦 サウスダコタ BB-57 1944年 「プラチナ版」
左艦尾から
構造物の密集した艦中央
▲「サウスダコタ」級戦艦は排水量を抑えるため艦中央に艦橋や煙突などの構造物を集中させたデザインが特徴。プラチナ版に同梱されたエッチングパーツや汎用パーツを駆使したディテールアップで高い密度感を実現している
塗装前
右艦首から
▲塗装前の状態。基本設計が正確で、考証に関する修正はほぼ不要。プラチナ版付属のエッチングパーツと金属パーツを中心に、汎用素材を組み合わせてディテールアップした
艦首甲板
▲艦首甲板はエッチングパーツに置き換え、錨鎖も付属のチェーンを取り付け。対空火器のブルワークなどもすべてエッチングパーツを組み立てる
上部構造物
▲上部構造物は大量のエッチングパーツで作り込み。各部の形状や高さが正確に再現されているので、そのまま製作するだけで完璧な作品となるだろう
主砲
▲主砲は金属砲身にレジンパーツの防水布の組み合わせで非常にリアル。甲板上の取り付け穴は数が多いので、船体に接着する前に忘れずに開口しておこう
甲板塗装表現
▲筆塗りで甲板の一枚一枚を丹念に塗り、繊細な色表現を行う。プラチナ版に付属する彩色済み木甲板シートを貼り付ける方法もある
メジャー21迷彩
▲全面5-Nネービーブルー、甲板20-Bデッキブルーのメジャー21迷彩は模型での表現が難しく、数多くの塗装工程を重ねて再現している
艦後方甲板
▲艦後方の甲板には荷物やロープなどを配置。主砲基部の金属表現と合わせ、ダークな色調の船体の中でよいアクセントとなっている
全体像
▲キットは1944年6月のマリアナ沖海戦時を再現。キットにはカラー塗装図が付属、色の指示はGSIクレオスのMr.カラーで、配色比率も例示されている

■実艦について
 アメリカ海軍戦艦USS「サウスダコタ」は、第二次ヴィンソン案の建艦計画によって1939年に建造を開始、1941年進水、1942年に竣工就役しました。すぐに太平洋戦争に参加、ガダルカナルの戦いに赴き、1942年10月の南太平洋海戦では空母「エンタープライズ」の撤退を支援しこれを成功させました。しかし11月の第三次ソロモン海戦ではガダルカナル島近海で戦艦「霧島」、重巡「愛宕」、「高雄」などの砲撃により大きな損害を受け、損傷修理のためアメリカまで戻っています。
 修理後は大西洋で短期間行動しましたが、その後は再び太平洋に戻り、ギルバート・マーシャル諸島の戦い、マリアナ沖海戦、パラオの戦い、レイテ沖海戦、硫黄島・沖縄攻略戦などに次々と参戦しました。

■キットの分析
 今回製作するキットに選んだのは、ヴィー・ホビーの「米海軍 戦艦 サウスダコタ BB-57 1944年“プラチナ版”」(品番P57005)です。
 ヴィー・ホビーの「サウスダコタ」は“通常版”、“デラックス版”も発売されていますが、この“プラチナ版”にはエッチングや金属パーツなどディテールアップ製作に必要な大部分の素材が含まれており、追加購入するのは艦船用のリベットベルト、汎用の手すり、エリコン対空機関砲の砲座といった汎用的なディテールアップ素材だけで済みます。
 ヴィー・ホビーのキットはパーツの全体的な組み合わせと考証部分は優れていますが、細部は少々物足りない印象です。とは言え、改造に熱心なモデラーにとっては、元のディテールを取り除く細々とした手間が省けるのでそれも良しです。当キットは“「サウスダコタ」の決定版”を製作するに当たり、非常に適した素材といえるでしょう。

■艦首甲板と主砲塔の製作
 エッチングパーツを用いて、甲板を全体的に作り込んでいきます。主に極薄のエッチングパーツを使い、艦首甲板に波除けなどのディテールを追加していきますが、プラスチックキットの限界をはるかに超える表現効果が見込めるので、非常に価値のある工程で、1/700艦船模型製作の醍醐味ともいえる作業です。
 キットのMk.6 40cm砲の三連装砲塔は実に勇ましい造形で、天面のリベットの視覚効果は素晴らしいです。またキットにはレジン製の砲基部キャンバスカバーも含まれ、出来は非常に良好です。レジン製の砲身カバーと金属製の砲身の対比は、視覚効果がすごくよいですよね。
 ちなみにキットには視覚効果に優れたデッキブルーの木製甲板も含まれており、このパーツも1/700スケールではかなり出来がよい部類に入ります。ただし今回は甲板部を塗装仕上げとしたかったので、木製甲板の使用は見送りました。

■上部構造物の製作
 上部構造物の大量の部品をエッチングパーツの作り込みで処理していきます。1/700艦船模型製作ではこのあたりがもっとも難易度が高い工作で、とくに極薄のブルワーク部分は失敗したり成功したりです。
 12.7cm副砲、Mk.34射撃指揮装置などもキットの造形は非常に正確で、パーツ交換の手間が省けます。また、煙突の幅、艦橋の形状、各階層のサイズや高さの考証も誤りがありません。個人で追加の考証をほぼ必要とせずに完璧な作品を作ることが可能な珍しいキットですね。ただ12.7cm副砲の砲身カバー部分のみは、他の工作で使用したエッチングパーツの余りを使って加工しました。ここはヴィー・ホビーからフォローアップ製品が出てくるとよいなと思います。

■甲板の工作
 キットの欠点というわけではありませんが、ひとつの金型を同クラスのキットに流用する関係で、甲板上にパーツを固定する穴の多くは自分で開口する必要があります。甲板パーツを船体に接着する前に必ずこの工程を行い、穴開けを忘れないようにしてください。忘れると後が大変ですよ。

■舷側部分の工作
 このキットのもっとも素晴らしい部分ですが、船体側面の鋼板のナックルラインと溶接ラインが忠実に再現されています。艦首のボラードにも注目に値する処理が施され、出来の良さは1/350かと見まがうほどです。多くのモデラーにとって、自己処理でこのような効果を生み出すのは難しいと思います。
 さらに究極の出来映えを追求するため、実際の艦船のリベットで留められた部分に対し、リベットベルトのエッチングパーツを使ってディテールを追加しました。同時に「サウスダコタ」級戦艦に見られる船体中央部の独特な溝構造もディテールアップしています。

■甲板の塗装
 甲板塗装には新しい技法を使いました。
①極薄に希釈したGSIクレオスのMr.カラーを筆に浸し、甲板全体をくまなく塗っていきます。塗料は薄く希釈されていることが重要で、乾燥後は半透明で塗膜がとても薄くなります。
②メインカラーで塗装します。それぞれに白、黒、青、黄を加え、少しずつ多様に変化した色を、筆を用いて甲板の一枚一枚を丹念に塗っていきます。この工程ではとにかく辛抱して塗ってください。最後の視覚効果に明らかな差が出ます。ここのポイントとしては、調合色の筆塗りで多少のムラが起こっても補修する必要はありません。第一層の極薄の塗膜効果で、色の差がうまく融合してくれます。

■船体の塗装
 戦艦「サウスダコタ」は1944年時はメジャー21迷彩(全面を5-Nネービーブルーで塗装)でした。この迷彩とメジャー11(全面を5-Sシーブルーで塗装)は、艦船モデルでの再現がもっとも難しい塗装といえます。陰影、フィルター、経年変化などの多層効果が重なることで、ようやくこれら青い塗装の作品群をリアルに表現することができます。
 なお詳しい塗装工程は、2020年7月号の「アメリカ海軍航空母艦 CV-2 レキシントン」の記事でも紹介しています。

■完成して
 戦艦の重質量感が眼前に迫ります。今回は優れたキットを製作できたので、やる気不足でしんどい思いをすることもなく、戦艦「サウスダコタ」の決定版を非常に快適に完成させることができました。特に船体側面のディテールアップ面では、作者は多くの時間を節約したにもかかわらず、全体的な視覚効果はこれまで筆者が手がけた作品の中でもトップレベルにあるといえます。

米海軍 戦艦 サウスダコタ BB-57 1944年 「プラチナ版」

ヴィー・ホビー 1/700スケール プラスチックキット

米海軍 戦艦 サウスダコタ BB-57 1944年 「プラチナ版」

製作・文/劉陽

米海軍 戦艦 サウスダコタ BB-57 1944年 「プラチナ版」
●発売元/ヴィー・ホビー、販売元/ビーバーコーポレーション●21780円、発売中●1/700、約29.6cm●プラキット

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劉陽(リュウヤン)

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