巨大なプレートが特徴的な「ステゴサウルス」を復元!! 近年の研究で明らかになった特徴を盛り込んだ最新版骨格をプラキットで再現!【プラノサウルス復元プロジェクト】
2026.04.11
プラノサウルス復元プロジェクト/ステゴサウルス【BANDAI SPIRITS】●ウラベヒロト(アーミック)、G.Masukawa(GET AWAY TRIKE!) 月刊ホビージャパン2026年5月号(3月25日発売)
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■改造
ステゴサウルスの化石はアメリカ中西部のモリソン層に加えてポルトガルのジュラ紀後期の地層からも産出しており、複数のほぼ完全な骨格をはじめ、さまざまな成長段階の標本が知られている。しかし、文字通り最大の特徴である背中のプレートの配置については未だによくわかっていない点もあり、尾の先に並ぶスパイクの配置についても多少の議論がある。これらの皮骨(皮膚の中に形成される骨)は体の骨格に直接関節するわけではないため、化石化の過程でばらけてしまうと本来の位置に復元することは困難だ。背中のプレートや尾のスパイクが脊椎と近接した状態(≒化石化の過程でほとんど移動していない状態)で発見された例はいくつかあるものの、すべての脊椎とプレート・スパイクが一揃いに近接した状態で発見された例はない。こうした事情から、ステゴサウルスの背中のプレートの枚数については今なお議論が続いている。
近年になって大英自然史博物館が購入した「ソフィー」の愛称で知られるほぼ完全な骨格の研究から、ステゴサウルスのそれまで知られていなかった特徴がいくつも明らかになった。今回はそうした成果を盛り込んだ「最新版」として、キットの骨格ビルドをディテールアップする。
▲まずはキットを骨格図と照らし合わせ、改造プランを検討する。キットの骨格ビルドは1990年代から2010年代中頃までの復元をとてもよく表現している。「ソフィー」の研究で従来の復元よりも首が長く、そのぶん胴体が短い姿が判明したため、そのあたりを中心に手を加えることにした
▲キットはプレートと棘突起が一体成型となっているので、背骨の改造の前にまずはプレートを切り離しておこう。切り離したプレートの順番がわからなくなると本家古生物学者の苦しみを味わう羽目になる。番号を書き込むなどして管理しておこう
▲キットの胴椎は少ないパーツ数でステゴサウルスらしい独特の形状をうまく表現しているが、せっかくなのでひとつずつ切り分け、神経弓(脊椎骨の上半分をなす)の抜け感を表現する。肋骨は1本ずつ切り出して再接着するが、肩甲骨が邪魔になるので金ヤスリなどで削り落としておこう
▲再接着した肋骨はそのままだと強度が足りないため、補強ついでに胴椎の横突起をエポパテで造形する。どうしても恐竜ビルドの関係でコンパクトになりがちな骨盤は、キットパーツをベースに、エポパテで実際の化石の形状に寄せよう
▲尾のスパイクはそのままでもよい雰囲気だが、実際の骨格と比べるとオーバースケール気味。根元でカットして整形後、金属線を通して尾椎からわずかに浮いた状態で固定する。恐竜ビルドの関係で尾の先端が省略されているので、トリケラトプスのキットから流用して表現する
▲キットの尾椎は全体的にはとてもよい雰囲気だ。成型の都合で一体となっている棘突起や血道弓はエッチングソーやデザインナイフで整形すると非常に見映えがする。また、プレートに合わせて要所要所で尾椎を切り分け、金属線を通して可動化する
▲プレートと棘突起に金属線を通し、強力な瞬間接着剤で固定する。プレートの配置や枚数には議論があり、同種内でも個体によって異なっていた可能性もある。今回はステゴサウルス・ステノプスのホロタイプに基づき、キットと同じ枚数でまとめた
▲プレートの形状はキットのままでもよいが、せっかくなのでステゴサウルス・ステノプスのホロタイプに寄せる。肩甲骨はもう1体のキットから切り出し、エポパテで各部を整形する。胸骨の形態ははっきりせず、そもそも骨化しないとみる意見さえあるため、今回はキットと同様にオミットした
▲「ソフィー」の研究から、それまでステゴサウルスの胴椎とされてきた椎骨のいくつかは実際には頸椎であり、これまでの復元よりも首が長く、胴の短い姿であったことが示されている。そのままでは頸椎が足りなくなるので、キットをもうひとつ使って延長する
▲キットの頭骨はステゴサウルス・ステノプスのホロタイプの雰囲気を非常によく表現しているが、小サイズゆえにアゴが開閉しない。せっかくなのでキットを二つ使い、切り出した上アゴと下アゴに金属線を通して可動化した。頸椎も要所で切り分け、金属線を通して可動化する
▲ステゴサウルスの頭蓋はほとんどの標本で変形がひどく、側面形ははっきりしない。口先などのディテールアップついでに、キットよりもやや高さのある頭蓋としてみた。最後方の頚肋骨はプラ板で新造し、首のプレートは頸椎からかなり浮いた状態で固定する
▲実際の化石の写真などを参考に前肢にエポパテを盛り、金属線を通して肘の可動を確保する。手は竜脚類と似た「円柱状」のため、第IV・第V指(薬指・小指)の位置をずらし、第I指・第II指(親指・人差し指)の大きな末節骨が目立つよう削り込む
▲後肢はキットでもステゴサウルスらしい長さをよく表現しているが、なお長くてもよいようだ。骨格図とすり合わせてプラ板で延長し、要所にパテを盛ってステゴサウルスらしいどっしりした「柱状」の後肢を再現する
▲一通り各部の工作が終わったら、バランスに注意しつつ胴体のプレートを固定していく。キットのプレートには血管溝(血管の通っていた溝)のディテールが雰囲気よく彫り込まれており、プレートの形状を変更する際にはこれを潰してしまわないよう注意しよう
■塗装
▲モリソン層産の恐竜化石は暗いブラウン系の色のものが多い。今回はステゴサウルス・ステノプスのホロタイプをモチーフに、赤味のあるブラウン系のカラーで塗装する。基本色を塗り終えたらつや消しクリアーを粗く吹き、ウェザリングの下地を作る
▲乾燥後、スミ入れを兼ねてホワイトでウォッシングする。凹部に残るように拭き取ることで、実際の化石標本によくみられる、細部にへばり付いてどうしても除去しきれなかった母岩や、化石のクラックを埋めるのに用いられたパテのような雰囲気になる。再びつや消しクリアーでコートしたらオレンジ系のパステルを乗せて変化をつけ、仕上げにもう一度つや消しクリアーでパステルをコートする
▲これで完成! 古くから恐竜の代表格として知られてきたステゴサウルスの、最新の姿を机の上に復元することができた。次回で紹介するアロサウルスと合わせて、ジュラ紀の宿命の対決を机の上でぜひ再現してほしい
▲ステゴサウルスは1877年に命名されたが、当初は断片的な骨格とプレートの一部しか知られておらず、プレートは背中を覆う甲羅の一部と考えられた。これが「屋根トカゲ」を意味する属名の由来である。その後尾の先に複数のスパイクを備えていることが判明し、1885年にステゴサウルス・ステノプスのホロタイプUSNM 4934が発見されたことで「剣竜」たるその姿が明らかとなった。USNM 4934は尾の後半部を除けばほぼ完全な骨格だが、依然としてプレートの枚数ははっきりしない。今日ステゴサウルス属はステゴサウルス・ステノプスとより大型のステゴサウルス・ウングラトゥスの2種が知られており、後者のプレートはより「短剣型」である。プレートの形態から、新たな種を命名しようとする動きもある。
ステゴサウルスはプレートやスパイクに関する骨組織学*的な研究も盛んで、日本人研究者の活躍が目覚ましい。古くから知られているステゴサウルスだが、新たな研究アプローチでさらなる事実が明らかになることだろう。
*骨組織学:骨の内部にある組織の構造を観察し、その骨の生理的な特徴やその機能を研究する。条件さえ合えば化石であっても生の骨並みに骨組織が保存されているため、たとえ骨1本でも研究試料として活用できることも相まって、古生物学のなかでも近年非常にホットな分野である
Stegosaurus stenops
ステゴサウルス・ステノプス
●剣竜類 ステゴサウルス科 ステゴサウルス亜科●全長約6m●ジュラ紀後期(キンメリッジアン)約1億5400万年前頃?~約1億5000万年前頃?●アメリカ中西部
BANDAI SPIRITS プラスチックキット “プラノサウルス”
ステゴサウルス
製作/ウラベヒロト(アーミック)
骨格図・解説/G. Masukawa(GET AWAY TRIKE!)
プラノサウルス ステゴサウルス
●発売元/BANDAI SPIRITS ホビーディビジョン●1650円、発売中●約17cm●プラキット
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