HOME記事スケールモデルウシモデルから幻の夜間戦闘機「電光」が1/72 レジンキットで登場! キットレビューでは丁寧な工作と補強&横須賀空の実戦配備仕様に塗装し夜間戦闘機らしさをアップ!!

ウシモデルから幻の夜間戦闘機「電光」が1/72 レジンキットで登場! キットレビューでは丁寧な工作と補強&横須賀空の実戦配備仕様に塗装し夜間戦闘機らしさをアップ!!

2025.12.21

十八試丙戦 電光【ウシモデル 1/72】●加藤浩 月刊ホビージャパン2026年1月号(11月25日発売)

十八試丙戦 電光
特撮

空飛ぶ要塞B-29を迎撃する幻の夜間戦闘機

 昭和18(1943)年、日本海軍は夜間に襲来するアメリカ軍の「超空の要塞」B-29重爆撃機を迎え撃つ高速重武装の夜間戦闘機として、愛知航空機に十八試丙戦「電光」(S1A1)の開発を命じた。遠隔式20mm連装銃塔を搭載するなど意欲的な設計だったが、試作機の製作途中で終戦となった。「月光」に次ぐ夜間戦闘機として期待された「電光」の1/72キットがウシモデルから登場、横須賀空の実戦配備仕様で幻の最強夜戦を製作!

十八試丙戦 電光
上1
十八試丙戦 電光
上2
▲陸上爆撃機「銀河」に匹敵する大型戦闘機。負荷がかかる胴体と主尾翼はレジンキャスト製、機首やエンジンナセル、プロペラや主尾脚柱などはシャープな3Dプリンター製のマルチマテリアルキットである
十八試丙戦 電光
前 煽り
▲塗装は全面暗緑色で仕上げた。デカールは試作2号機などが用意されているが、今回は横須賀空夜戦隊に配備の実戦機を想定したマーキングとしてみた
十八試丙戦 電光
前 俯瞰
▲アルミ資材節約のため機体は木材が多用されており、胴体後半の四角い胴体断面が印象的。幻の未完試作戦闘機が立体化された喜びを噛みしめたい
十八試丙戦 電光
エンジン
▲エンジンは紫電改などと同じ誉を搭載。エンジンナセルやプロペラは精密な3Dプリント製だが、レジンキャスト製の主翼などとのはめ合わせは非常に良好だ
十八試丙戦 電光
胴体後上部のリモコン式20mm連装機銃銃塔
▲本機の特徴となる胴体後上部のリモコン式20mm連装機銃銃塔。前方には銃手が操作するための機銃照準塔を設置、側面には偵察窓が設けられている
十八試丙戦 電光
コクピット
▲コクピット内部は十分な出来で、シートベルトのみを追加。キャノピーはレジンキャスト製ですり合わせは容易、塗装用のマスキングシートも用意されている
十八試丙戦 電光
機首のピトー管とレーダーアンテナは強度の高い金属線に交換
▲機首のピトー管とレーダーアンテナは強度の高い金属線に交換。20mm機銃2門と30mm機銃1門を搭載し、20mm機銃は30度上方に発射することも可能だった
十八試丙戦 電光
主脚柱は負荷を考慮して金属線を埋め込んで補強
▲3Dプリント製パーツはサポート材の跡が目立つので、800番の耐水ペーパーでていねいに磨いて表面仕上げ。主脚柱は負荷を考慮して金属線を埋め込んで補強
十八試丙戦 電光
主脚などの降着装置は「銀河」の部品がそのまま流用されていた
▲搭載エンジンは通常の誉二二型に加えて酸素噴射型、排気タービン型の3種類を予定。主脚などの降着装置は「銀河」の部品がそのまま流用されていた

 十八試丙戦電光は1943年(昭和18年)に愛知航空機へ試作指示された夜間戦闘機(丙戦)です。日本で夜間戦闘機として最初から設計開発された機体は電光が最初で最後となりました。全木製構造に銀河の艤装部品も多用して量産性に考慮しましたが、B-29への対抗策として海軍用兵側からの過大な要求に応えた結果、機首に20mm機銃2門、30mm機銃1門、胴体には遠隔操作式の20mm機銃2門の銃塔を装備し、さらに新型電探も搭載するなどの重武装となり、全備重量は当初予定を大幅に超えて10トン強となり、銀河を上回る巨大戦闘機となりました。
 1944年(昭和19年)秋に試作機の整理対象となり増加試作は中止されましたが、すでにモックアップ審査も完了して製造中だった2機のみ試作されることになりました。しかし、1945年(昭和20年)6月の空襲により完成寸前の1号機が被爆、焼失、疎開工場で組み立て中の2号機も7月に被爆焼失し、終戦までに1機も完成しませんでした。資料も多くが失われ現存する実機写真はなく、モックアップの機首周りを撮影した部分写真が3枚のみが現存しています。
 このような経緯で現存する資料も乏しい電光ですが、キット化の機会も乏しく、90年代半ばに1/48でラクーンモデルよりキット化されたものの、直後に同社は閉業し幻のアイテムとなっています。1/72ではチェコ製のレジンキットが同時期にごく少数が出回りましたが、 入手したもののおよそ電光に見えない出来に早々に手放した思い出があります。いずれのキットも完成品を見たことがなく、電光自体立体で確認できておりませんでした。
 そのようななかで今回敢然と1/72でキット化したのがウシモデル。同社のパッケージデザインから計算されているスタイリッシュなキットは、手にしたところからワクワクさせられます。製作にあたっての資料は長年温めていた「月刊エアワールド」1981年8月号増刊です。基本的な部品構成はすべて3Dプリンター製ですが、負荷がかかる胴体と主尾翼をレジンに置き換えて強度を高めているのに対し、機首やエンジンナセル、プロペラや主尾脚柱などはシャープな3Dプリンター製のまま、しかも収縮率まで考慮されており素材の異なるレジン部品との嵌合が見事に取れており感嘆しました。
 レジン部品のみ離型剤を落としてパーティングラインを修正、主尾翼の接着はほぼピタリと決まりますが、用心のため真鍮線で補強しました。 機首およびエンジンナセルは3Dプリント製ですがレジン部品との嵌合は良好でパテは要りません。
 コクピットもそれらしく塗ってシートベルトを追加しただけ。プロペラやエンジンまわり、主脚、尾輪も3Dプリント製ですからサポート材からの取り外し跡は目立つのでていねいに耐水ペーパーで800番くらいから磨いて仕上げています。プロペラと軸受は若干きついのですり合わせが必要です。用心のため主脚柱は負荷を考慮して金属線を埋め込んで補強しました。機首のピトー管とアンテナは用心のため金属線に交換、機首の電探アンテナは、形状は図面通りですが、H-6のような形状だったかもしれません。
 キャノピーはレジン製ですがバリ取りは簡単ですり合わせも容易です。塗装用のマスキングシートも用意されています。接着はスーパーX等の一液系でもエポキシ系でも大丈夫。隙間が出たらサーフェイサーもしくは濃いめの塗料を流し込めば埋まります。
 塗装は夜戦らしく全面暗緑色仕上げ。デカールは試作2号機の“コ- S1-2”などが入ってますが、今回は使用せず横空夜戦隊らしく赤文字で“ヨ-121”としました。デカールの乾燥後に半ツヤクリアーを吹いてデカールを覆ってから全体に軽くスミ入れして再度半ツヤクリアーを吹いて完成です。木製機らしい四角い胴体断面が印象的です。

ウシモデル 1/72 スケール 3D プリント+レジンキット

十八試丙戦 電光

製作・文/加藤浩

愛知 十八試丙戦闘機電光
●発売元/ウシモデル●10450円、発売中●1/72、約20cm●レジンキット


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