HOME記事キャラクターモデル林哲平の『ベルセルク』作例はディテールを活かした“ドライブラシ”で立体感を演出。プラキット「ガッツ 狂戦士の甲冑 “怒り”」の造形を研ぎ澄ます【BUILD ART MASTERLINE】

林哲平の『ベルセルク』作例はディテールを活かした“ドライブラシ”で立体感を演出。プラキット「ガッツ 狂戦士の甲冑 “怒り”」の造形を研ぎ澄ます【BUILD ART MASTERLINE】

2025.12.17

ベルセルク ガッツ狂戦士の甲冑“怒り”【プライム1スタジオ】 ●須藤洋介、林哲平、清水圭、らいだ~Joe 月刊ホビージャパン2026年1月号(11月25日発売)

ドライブラシで魅せる、造形を研ぎ澄ます筆致

 世界を魅了し続けるスタチューメーカー・プライム1スタジオが送り出す新プラキットブランド「BUILD ART MASTERLINE(ビルドアート マスターライン)」。圧倒的なスタチューの造形美がそのまま再現された本シリーズ第1弾「ガッツ 狂戦士の甲冑 “怒り”」は、塗装しなくてもその造形美を堪能できる完成度を誇る。ただ、模型好きなら言うまでもないが、非可動プラキットのひとつの醍醐味といえば“塗装”だ。
 今回は、清水圭、らいだ〜Joe、林哲平、そしてプライム1スタジオ公式ペインターの4人が自由な発想で表現した作例をHow to形式で解説。それぞれの塗装プロセスもお届け。本キットの発売は少し先になるが、新たな塗装表現のヒントをぜひ自身の製作に活かしてほしい。
 ホビージャパンウェブでは「月刊ホビージャパン2026年1月号」にて紹介しきれなかった製作者コメントや画像を増補して、作例ごとに記事を公開。本記事では林哲平氏の作例をお届けする。

BUILD ART MASTERLINE ベルセルク ガッツ 狂戦士の甲冑 “怒り”

●発売元/プライム1スタジオ● 10780 円、2026年夏予定●約29.5cm ●プラキット

キットの詳細はこちらから


林哲平製作のガッツのプラモデルのメイン画像

深いディテールを最大限に活かした“ドライブラシ”で塗装した作例。なびいた状態で布製のマントを固定し、動きのある構成で仕上げている。

プライム1スタジオ ノンスケール プラスチックキット “BUILD ART MASTERLINE”

ガッツ狂戦士の甲冑 “怒り”

製作・文/林哲平


林哲平製作のガッツのプラモデルの全体画像
林哲平製作のガッツのプラモデルの後ろ姿の全体画像
▲ 布製のマントはキット付属の金属線を抜き、1.5mm真鍮線に交換。風になびいた状態で固定し、動きを出した。また、布の端には赤い塗料を染み込ませて激しい戦いの後を演出している
林哲平製作のガッツのプラモデルのアップ画像その1
▲ 筆に付けた塗料をウエスなどで拭い、パサパサにした筆先で凸凹のパーツを撫でるように塗装する“ドライブラシ”でキットの立体感をさらに強調している
林哲平製作のガッツのプラモデルのアップ画像その2
▲ ベースを覆っている肉塊は、ホワイト下地→シタデルカラーのドゥライチ・バイオレット→レイクランド・フレッシュシェイドの順番でウォッシングしている。肌色の下から紫がわずかに覗く不健康なモンスターの塗装に広く応用できるため、覚えておくと便利だ

「黒」を引き立てるドライブラシ

ガッツの特徴的な“黒い甲冑”。ただ、黒はどうしても単調になりやすく、かといって汚すと白っぽく見えがちな難しい色でもある。

林哲平製作のガッツのプラモデルの塗装の画像その1
▲ ①まずは基本塗装として、缶スプレーのMr.フィニッシングサーフェイサー1500ブラックを吹く。これでしっとりとした、きめ細かいツヤ消しの美しい黒となる
林哲平製作のガッツのプラモデルの塗装の画像その2
▲ ②続いて、Mr.ウェザリングカラーのマルチブラックを全体に塗ってウォッシング。拭き取りはせず、塗りっぱなしに。黒に黒でウォッシングというと、何も変化がないように感じるかもしれないが、凹みやディテールの奥に黒い塗料が入り込み、全体の陰影と立体感を強調してくれる
林哲平製作のガッツのプラモデルの塗装の画像その3
▲ ③ウェザリングカラーを2日ぐらいかけてしっかり乾燥させたら、シタデルカラーのホワイトスカーでドライブラシを施す。一気に塗ろうとすると筆目が付いて汚くなりやすいので、少しずつ凸凹の凸部分に白を乗せていこう
林哲平製作のガッツのプラモデルの塗装の画像その4
▲ ④塗装が終わった状態。エッジに白が乗り、黒い部分とのコントラストが強調された仕上がりとなった。白い塗料がべっとりと付いてしまった場合は、家庭用中性洗剤などを染み込ませた綿棒で拭き取ると簡単にリカバリー可能だ

ブラック&ホワイト技法で簡単に顔を塗る

人間の顔は塗装するのが極めて難しい部分。今回はエアブラシを使ってブラック&ホワイト塗装で塗ってみよう。

林哲平製作のガッツのプラモデルの塗装の画像その5
▲ まずは甲冑同様に下地を黒サフで塗ってから、ホワイトを上からふわっと吹きかける。全体を真っ白にするのではなく、上から光が当たり、影が残るように陰影を意識しながら吹き付けるのがポイントだ
林哲平製作のガッツのプラモデルの塗装の画像その6
▲ ガイアカラーの肌色塗料、ノーツフレッシュオレンジにクリアーを混ぜ、下地のブラック&ホワイトの陰影を消さないように全体的に塗料を吹き付ける。クリアーを混ぜ、あえて塗料の隠蔽力を下げておくのがこの塗装のコツ
林哲平製作のガッツのプラモデルの塗装の画像その7
▲ 続いて、オレンジにクリアーを多めに混ぜて、先ほどと同様にごく薄く吹き付ける。健康的で血色の良い色となり、歴戦の傭兵であるガッツらしい赤味のある肌色となった
林哲平製作のガッツのプラモデルの塗装の画像その8
▲ シタデルカラーのレイクランド・フレッシュシェイドで軽くウォッシングし、ヒゲと瞳を塗り分け、最後にプレミアムトップコートつや消しでツヤを整えたら完成。瞳は完成するとまったく見えなくなるが、今回は狂戦士らしさを強調するために赤で塗っている

リアルな血を塗装で表現

『ベルセルク』のガッツにおいて「血」の表現は欠かせない。今回はエナメル系塗料のレッドとクリアーレッドを使い、匂い立つような血をお手軽に再現してみよう。

▲ ベースには、クリアーレッドで血を書き込んでいく。肉塊の隙間など血が溜まりやすいと想定される場所には、たっぷりとクリアーレッドを垂らしておこう。つい、楽しくなってやりすぎてしまいがちなので、少しずつ塗ること。エナメル塗料だから、溶剤で拭き取ればある程度リカバリーも可能だ
▲ ベースの完成状態。塗料の透明感と光沢感により、まだ乾いていない流れ出したばかりの生々しい血を表現できる。クリアーレッドは最も血に見える塗料なので、血糊を表現したいときはぜひ使ってみてほしい
▲ ドラゴン殺しに血糊をつけていく。下地に黒サフを吹き、刃の部分にフリーハンドでスターブライトジェラルミンを吹き付けて基本塗装。全体を溶剤で薄めに溶いたMr.ウェザリングカラーのマルチブラックでウォッシングし、表面のギラつきを抑えておく
▲ 血痕をクリアーレッドでかきこむ。細筆にたっぷりと塗料を含ませ、それを垂らしながら伸ばすように筆を動かすと、リアルな血糊の表現となる
▲ ドラゴン殺しの完成状態。剣を突き刺しているポーズであれば、本来血は上から下へと流れる。だが、ガッツの激しい戦いを表現するため、あえて左右に血が流れるように書き込み、使徒を屠る斬撃の動きをイメージできるように仕上げた
▲ 鎧は黒。黒にクリアーレッドをそのまま塗ると、暗く沈みすぎて血が目立たなくなってしまう。そんなときはレッドを混ぜて塗るとよい。レッドは顔料系の塗料であるため、黒の上でも発色しやすい。ただし、今回のようにリアル系に振る場合、血を明るくしすぎると逆に不自然に見えるので注意しておこう
▲ マントは布地。布は血を含んでもすぐに染み込み、血のテカリがなくなってしまう。これを表現するため、光沢感の強いクリアーレッドではなくレッドを使って血糊をつける。塗料を筆先につけ、それを布に染み込ませながら、表面で引き伸ばすように塗っていく

プライム1スタジオ、プラキットに参入!
 超絶ハイクオリティなスタチューで有名なプライム1スタジオさんが、なんとプラキット市場に参入するとのこと。徹底的にこだわった造形や、単体でもディオラマのように臨場感のある台座。そして巨大ながらも大味にならない緻密な作りと彩色。そんなプライム1スタジオさんのスタチューは、出来が素晴らしいぶん価格的にちょっと手が届かなかったのですが、これがプラキットとして手に取りやすい価格で商品化されるなんて……!

最高にドライブラシが楽しいプラキット
 今回のアイテムはとにかくドライブラシが楽しい! 表面の凹凸がくっきりしているので、エッジ部分に面白いように塗料が乗ります。ドライブラシは筆使いのテクニックが必要なく簡単ですし、最近増えてきている固定フィギュア系のプラモデルの塗装において大変役立つテクニックです。かつ、このモデルは大きく、目などの細部の塗り分けも、小さいフィギュアに比べてずっと楽です。こういうキットこそ、入門向けだと思うんですよね。

これは塗装が最高に楽しいプラモデルだ!
 今回は私の他に、らいだ〜Joe氏と清水圭氏、プライム1スタジオのペインターの方が製作されるというので、どんな仕上がりになるのか楽しみです。また、ガッツの次はどんなキットが発売されるのでしょうか? メカ好きの私は、個人的にはプライム1スタジオさんの主力商品である『トランスフォーマー』のプラキットをぜひとも発売してほしいです! これからのラインナップが楽しみで仕方がありません!


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©三浦建太郎(スタジオ我画)/白泉社

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林哲平(ハヤシテッペイ)

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