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国産初のジェット練習機「T-1 中等練習機」とは? 航空自衛隊の操縦士育成に活躍した本機をプラッツのキットとともに紹介【いまさら聞けないすごいヤツ】 

2025.12.24

いまさら聞けないすごいヤツ!!/T-1 中等戦闘機●宮永忠将、大森記詩 月刊ホビージャパン2026年1月号(11月25日発売)

 T-1 中等練習機 

イラスト/大森記詩

「名前は知っているけどどんなものなんだろう?」「いまさら聞くのもはずかしいなぁ……」なんて思ってしまう有名な飛行機や戦車、車などのモチーフをサクッと読める解説とイラスト、オススメのプラモとともにご紹介する本連載。今月は航空自衛隊において国産初のジェット練習機となった「T-1」をピックアップ! エンジンの違いによりA型とB型があり、T-1Bは、国産エンジン(J3型)を搭載した純国産機で、22機生産(うち2機は、A型をB型に換装)され、昭和35年から航空自衛隊の操縦士育成に活躍し、平成18年3月に退役しています。そんなT-1のストーリーをお楽しみください。


T-1B 中等練習機

全幅/10.49m 
全長/12.12m 
重量/4400kg 

エンジン/IHI J3-IHI-7B ターボジェット×1基
馬力/約4400馬力 
最高速度/860km/h 
航続距離/1500km


第5術科学校 愛知県 小牧基地 1982-2006年

T-1 中等練習機 側面
T-1 中等練習機 上部
T-1 中等練習機 下部

T-1 中等練習機

解説/宮永忠将

第2航空団 第103飛行隊 千歳基地

T-1 中等練習機 側面

 中等練習機という高い壁 

 戦闘機パイロットの訓練にはいくつかの段階があって、使用する練習機の性能もだいぶ違う。このうち中等練習機というのは、初等練習機であるプロペラ機で操縦を覚えたパイロット候補生が、戦闘機に乗り込む前に、その機動性や速度の違いや難しさを予習するために乗る重要な機体だ。
 発足直後の航空自衛隊では、アメリカ製のT-6テキサンを中等練習機としていた。けれどジェット戦闘機が飛躍的に性能向上する中で、いつまでも第二次世界大戦型のレシプロ機を使い続けるわけにはいかない。空自もそのことは分かっていたので、発足直後から独自のジェット練習機の開発を決意していた。
 その要求は、一機種で初等から中等にかけての訓練課程をまかなえる各種性能というもの。言葉にするのは簡単だけど、これを実現するには、高速性能だけでなく、低速域で素直な操縦性を維持しなければならず、設計陣へのプレッシャーは大変なものとなる。
 また、あらゆる飛行パターンやトラブルに備えるのも中等練習機の役割なので、計器に頼る全天候飛行能力と夜間飛行能力、急上昇と急降下の反復に耐える強度に、射爆訓練に備えた簡易兵装の搭載能力まで要求されたのだ。また飛行頻度も高いので、整備が容易で、飛行コストはなるべく低く抑えたい。今時真顔でこんな要求をしたらモンスター・カスタマー扱いだけど、軍用機の世界とはそういうものだったりする。

 国産ジェット練習機開発への挑戦 

 この無茶な要求に応えたのが富士重工業、かつての中島飛行機である。数々の名機、傑作機を生み出した日本を代表する軍用機メーカーを前身とする頼もしい会社ではあるけれど、ジェット機の開発経験はなかった。それでも、F-86FセイバーやT-33シューティングスターなどアメリカ製のジェット軍用機のライセンス生産から得たノウハウがあるし、ジェット練習機開発の壁を越えなければ、航空機メーカーとしての復活はない。
 エンジンも国産が望ましいが、最初はイギリスのブリストル社製ターボジェットで製造された。そして、中核パーツの国産比率を高めながら、1958年1月に国産中等ジェット練習機試作機が初飛行に成功し、T-1A練習機として制式化されたのである。その後、国策企業となる日本ジェットエンジン株式会社(NJE)が「J3」の開発に成功したので、この国産エンジンを搭載したバージョンがT-1Bとして区別されている。
 T-1A/Bの製造数は合計66機とかなり少ない。これはパイロット育成キャリアの一時期にしか関わらない機体であるためだ。配備先も芦屋の第13飛行教育団が中心であったし、ブルーインパルス機に採用されるような派手さもなく、実は目にすること自体、結構レアな自衛隊機であった。
 そんなT-1練習機も、後継機となる亜音速ジェット、川崎T-4の導入にともない、2000年前後から退役が始まり、2006年3月には全機退役している。



富士重工業株式会社
(現:株式会社SUBARU)


 戦後、中島飛行機はいくつかに分割されたが、その中で輸送機器や航空機整備企業として1953年に発足したのが富士重工業株式会社である。間もなく防衛需要で航空業界に復帰し、米軍機のライセンス生産などで基盤を固めることで、国産ジェット練習機T-1の主契約者の座を手にした。現在は株式会社SUBARUとなり、自動車メーカーとしての知名度が圧倒的に高い。しかしそのDNAは、戦前から一貫して航空機メーカーとして培われたものであり、他社とは一線を画する独特の社風の下地となっている。そして現在も航空宇宙カンパニーとして防衛装備・民間機部材の供給を継続している。


 プラッツは航空自衛隊の飛行機を多数キット化しています。本キットは当時プラッツが完全新規キットとして送り出した意欲作です。非常に堅実な作りとシャープなパーツが光る名作です。

PLATZ JASDF 1/72 SCALE T-1B JET TRAINER 胴体パーツ 拡大
▲本キットはメリハリあるスジ彫りが特徴。胴体にもくっきりとしたパネルラインが彫刻されている
PLATZ JASDF 1/72 SCALE T-1B JET TRAINER おもりパーツ 拡大
▲機首にはプラ製のオモリパーツがセットされる。これにより、組み上がった後に尻餅をつかない
PLATZ JASDF 1/72 SCALE T-1B JET TRAINER 尾翼ランナー 拡大
▲主翼や胴体のお腹部分のディテールは本キットの見せ場。緻密なディテールが刻まれている 
PLATZ JASDF 1/72 SCALE T-1B JET TRAINER キャノピーフレーム 拡大
▲ キャノピーフレームを別パーツ化。塗装後に接着すればマスキングで塗り分ける必要もない 
PLATZ JASDF 1/72 SCALE T-1B JET TRAINER デカール表示
▲キャノピーフレームを別パーツ化。塗装後に接着すればマスキングで塗り分ける必要もない
PLATZ JASDF 1/72 SCALE T-1B JET TRAINER 水転写式デカール 拡大
▲デカールはイタリアの高品質デカールメーカー「カルトグラフ」社製。赤の発色は特に美しい

1/72 航空自衛隊 T-1B ジェット戦闘機

●発売元/プラッツ●3080円、発売中●1/72、約15cm●プラキット


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