「Jr.ウルトラワールド」の魅力とは。21年前に開催された『VOLKS Jr.ウルトラワールドの世界展』を小森陽一が振り返る――。 【コモリプロジェクト】
2025.11.19 コモリプロジェクトHP
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皆さん、いかがお過ごしでしょうか。10月に差しかかる頃、ようやく朝晩に秋の気配が感じられるようになってきました。今年の夏は本当に暑かったですからね……。なかなか捗らなかったキット作り、存分に取り戻しましょう。
今回のお題は僕の十八番であるJr.ウルトラワールドにスポットを当てようと思います。今を去ること21年前、福岡市天神のど真ん中にあったイムズビル、その中の三菱アルティアムという会場にて、『VOLKS Jr.ウルトラワールドの世界展』という催しを行いました。1980年代からスタートしたボークスの怪獣ガレージキットシリーズ、貧乏大学生だった僕は食うもの着るものも我慢して、なけなしのお金を貯めながらコツコツと買い集めていきました。最初の頃はキットを洗って離型剤を落とすなんて知りません。パーティングラインの修正もおざなり、パテ埋めもなんとなく、サーフェイサーって何ぞやという具合ですから、仕上げたキットはガッタガタ、塗装なんてしばらくするとバリバリと剥がれ落ちるという体たらくでした。それでも数を重ねるうちになんとなくやり方が分かってきて、次第に『作る』から『魅せる』ことを意識するようになりました。 完成品が100体を越えた頃、西日本新聞さんから「展覧会をやりませんか」という声がかかり、1ヵ月の開催期間中、延べ1万人を越える方に足を運んでいただきました。関係者からは会場の新記録だとも聞かされました。ウルトラや怪獣、キットの持つポテンシャルを感じたものです。もしかすると読者の中には行かれた方もいらっしゃるかもしれませんね。
さて、話はそこからです。結論から言うと、僕は今もJr.ウルトラワールドと戯れ続けています。ザラブ星人が持っている小型翻訳機のアンテナを取り替えたり、手に入れた時から黄変していたドラコの羽をプロジェクトメンバーのkaz氏にクリアーレジンで抜き直してもらったり、ギャンゴのアンテナを修正したりとさまざまに手を加えています。パテで埋めた跡がはっきりと見えていたシーゴラスのヒレをリューターで削ってならしたり、落としてヒビが入っていたアロンの翼の付け根部分をパテで埋めたり、ヘッドルーペを装着し、照明を当てて、裸眼では見えなかった小さな目玉の中に極細の線を描き込んだり、ガタガタだったエッジをきれいな丸に直したり。好きなだけ時間をかけて、納得のいくまで向き合っています。長い時間をかけ、いつしかキットとの向き合い方が『親しむ』ほうへとスライドしてきたんですね。このぶんだとおそらくはすべてのJr.ウルトラワールドに手を加えていくのでしょう。終わらないこと。終わりのないもの。僕はこれを幸せと定義しています。
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怪獣ガレージキットを大迫力の特撮写真で小森陽一が解説
小説・文筆家であり怪獣ガレージキットメーカーも立ち上げた小森陽一氏セレクトの怪獣ガレージキット。熱い怪獣愛で怪獣ファンも認める小森氏が、各メーカーの怪獣ガレージキットを塗装完成品と大迫力の特撮写真で解説していく作品集です。
さまざまなガレージキットメーカーの怪獣ガレージキットを円谷特撮作品から厳選して50体、新規撮り下ろしにて掲載。その魅力を小森陽一氏による解説で紹介していきます。
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小森陽一(コモリヨウイチ)
●1967年生まれ。大阪芸術大学芸術学部映像学科卒業後、東映に入社。その後、コラムや小説、漫画原作や映画の原作脚本を手がける。大阪芸術大学映像学科客員教授。『海猿』『トッキュー!!』『S-最後の警官-』『BORDER66』『ジャイガンティス』『ツイン・アース』など著作多数。


















