【コードギアス 新潔のアルマリア】ep11「いま助けにいきます」
2025.11.08『コードギアス 奪還のロゼ』へと続く物語
『コードギアス 復活のルルーシュ』と『奪還のロゼ』をつなぐ『コードギアス』の新たなるストーリー『新潔のアルマリア』。新月で飛び出したサトリを救うため、囚われの身となってしまったハクバ。自らの責任と自分を責めるサトリだが、命の危険が迫るハクバを救出するため、かつてピースマーク最強のエージェントと呼ばれたオルフェウスを頼ることに……。そしてもうひとり、意外な助っ人がサトリたちの前に現れる。
STAFF
シナリオ 長月文弥
キャラクターデザイン 岩村あおい(サンライズ作画塾)
ナイトメアフレームデザイン アストレイズ
モデル製作 おれんぢえびす、コジマ大隊長
撮影協力 BANDAI SPIRITS コレクター事業部
ep.011|『いま助けにいきます』
カーテンの隙間から差し込む日の光が届かないほどの広い寝室。薄暗いなか、キングサイズのベッドのサイドボードでメッセージを受信した携帯電話が短く音を鳴らす。その携帯電話に手を伸ばす一糸纏わないミリガン。シーツでその裸体を隠しながらメッセージに目を通す。
「これは……」
そう漏らすミリガンの声で目を覚ますのは、隣で寝ていたマシュー。
「仕事のメールか? 無粋な奴だな」
携帯電話を持つ手を取り、ミリガンを引き寄せようとするが、軽くいなされる。
「違いますよ、社長。グラナードからです。Mへの手掛かりを掴んだようです」
「なんだって?」
その言葉を聞いて跳ね起きるマシュー。ミリガンの肩越しにメッセージを確認する。
「男を捕えた? 何者だ、そいつは?」
ハクバがグラナードに捕えられてから数時間後。オルフェウスの拠点があった場所から南にいった無人島のひとつにグラナードの潜水艦が停泊している。高速艇から潜水艦に移される後ろ手に拘束されたハクバ。移送に立ち会っていた兵士のひとり、マテオがハクバをひどく睨みつけている。
「このイレヴンが、フェリタ卿たちを……。この体制の犬め!」
「この光和の時代にイレヴンねぇ。なんとも前時代なことで」
「なっ! ナンバーズのくせにつけ上がりやがって!」
マテオが持っていたライフルのストックをハクバの顔面に打ちつける。
「おい! こいつには情報を吐かせなきゃいけないんだぞ!」
慌てて止めに入った別の兵士が、タラップで体勢を崩しそうになるハクバを支える。
「お前も大人しくしていろ。痛い目なら、このあとじっくり見る羽目になるんだ。そう急ぐな。ほら、さっさと連れていけ」
止めに入った兵士の指示で、ハクバが引きずられていく。ハクバは痛みに耐えながら、意図的に引き出した兵士たちの言葉を反芻する。
フェリタ卿。
イレヴン。
体制の犬。
ナンバーズ。
すべて、かつてのブリタニアの貴族や軍人が口にしていた言葉。思考も前時代そのもの。
さっき出てきたモルドレッドの改修機と総合的に考えると、この兵士たちがリビングナイツであり、ホノルルで黒の騎士団本部を襲撃したのもこの集団で間違いないだろうと思えた。しかし、わからないのは目的。先のオルフェウスの話の通りならイワン・スヴォロフを取り戻しに来たかに思える。だが、それでは、本部襲撃の説明がつかない。あの時点でハクバたちはイワンの存在にすら辿り着いていなかったからだ。それにリビングナイツがこの場所を突き止めた理由もわからない。広州で黄山幇の陳と交渉しようとしていたイワンをハクバたちが攫ったのは、リビングナイツにとって完全なイレギュラーだからだ。そのうえ、オルフェウスの拠点が知られるとも考えられない。
そうなると見えてくる答えは自ずと……と、思考を巡らせていたハクバの身体が、小さな船室に放り込まれる。
「さっきは楽しかったなぁ」
ハクバが痛む頭を持ちあげると、眼帯の男が見下ろしていた。
「お前は……」
「ふん。イレヴンにはもったいないが、さっきの戦いぶりは称賛に値する。特別に教えてやろう。私はジョゼフ・グラナード。このリビングナイツを率いる将軍だ」
「そうか。お前がジョゼフ・グラナードか……」
サトリの父親を殺した男の顔を、ハクバは静かに睨みつける。
広東省の街はずれ。大きめのレンガ造りの倉庫に2台のトレーラーが停まっている。沈痛な面持ちで電子ランタンを囲んでいるサトリ、ドク、マリーベルの3人。特にサトリは憔悴しきった顔をしている。
「駄目だ」
トレーラーの荷台からオルフェウスが降りてやってくる。
「イワンからは発信機になるようなものは見つからなかった」
「じゃあ、スヴォロフ博士を追ってきたわけじゃないんですね」
「現在置かれた状況を考えるとそうなるな。そもそもあの拠点は、俺とマリー以外に知る人間はひとりしかいない。だが、そいつはあの場所を決して他言することはない。そうなると考えられるのは、あの場にいた人間の誰かが何らかの方法でリビングナイツに居場所を知らせた、ということだ」
「その可能性があったのは、スヴォロフ博士と僕らしかいない。でも、スヴォロフ博士じゃなかった」
「そもそもイワン・スヴォロフをあの拠点に連れていったのは、リビングナイツにとって完全なイレギュラーだからな。奴を追ってきたという線は薄い」
「そうなると、原因は僕たちエージェント新月としか考えられない。でも、あいつらとの接点なんか……」
「何かないか? ここ最近で持ち歩くようになったものとか。なんでもいい」
「持ち歩く? もしかして……」
オルフェウスの言葉で思い出したサトリ。自分の上着のポケットに手を入れると、それは確かにある。
「何かあるの、サトリ?」
「あの……、これ」
おずおずと、ポケットに入っていた認識票のようなものを取り出す。それは、香港で人身売買のオークションが行われていた会場で拾ったものだ。
「これはドッグタグ?」
「いや。似ているが違うな。所属組織や名前の刻印もない。M-01とだけあるが、これは?」
「子どもの人身売買が行われてたオークション会場で拾ったの。香港でのミッションの時……」
「ああ。ホノルルで会った女の子を助けた時か。でも、あのミッションってピュアエレメンツGが出てくる前だろう? さすがに関係ないんじゃあ……」
「いや。他に思い当たるものがないなら、これを調べてみよう。ドク、出来るか?」
「ええ。僕たちのトレーラーに行きましょう」
ハクバが放り込まれた潜水艦の一室。上半身の衣服を剥ぎ取られたハクバが、両手を拘束されたうえに鎖で吊るされている。
「ぐっ!」
さきほどハクバに絡んできたマテオが、無防備なハクバの腹にきついボディブローを叩き込む。
「ほら。さっさと吐かないと苦しいだけだぞ。お前はどこの誰だ? 答えろよ、イレヴン!」
「イレヴン? 何だ、その数字は?」
挑発するマテオを見下すように見下ろすハクバ。
「このっ!」
頭に血が上ったマテオはもう一発、脇腹に拳を叩き込む。グラナードはその様子を黙って見ていた。
ⒸSUNRISE/PROJECT L-GEASS Character Design Ⓒ2006-2017 CLAMP・ST













