ブラキオサウルス属の顔「ギラファティタン」を復元!! その美しき骨格を「プラノサウルス ブラキオサウルス」を基に再現する!【プラノサウルス復元プロジェクト】
2025.11.16
プラノサウルス復元プロジェクト/ギラファティタン【BANDAI SPIRITS】●ウラベヒロト(アーミック)、G.Masukawa(GET AWAY TRIKE!) 月刊ホビージャパン2025年12月号(10月24日発売)
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■改造
20世紀前半、特に世界恐慌までの期間はさまざまな研究機関や列強各国によって化石の発掘が競うように進められた時代である。ブラキオサウルス・アルティトラックスのホロタイプはシカゴ・フィールド博物館の化石ハンターであったエルマー・リッグスによって1900年に発見され、1903年に命名された。
ブラキオサウルス・アルティトラックスの化石はめずらしく、今日に至るまでその姿はあまりよくわかっていない。一方で、ドイツ帝国が当時植民地であったタンザニアで発掘したのがブラキオサウルス・ブランカイである。この恐竜は完全な頭骨を含む大小さまざまな化石が知られており、第二次世界大戦前夜には復元骨格がベルリンで展示・公開されるに至った。
こうした事情から、映画「ジュラシック・パーク」をはじめ、さまざまなメディアや模型における「ブラキオサウルス」のイメージにはいまなおギラファティタンの影響が色濃く残っている。今回はブラキオサウルスそのものではなく、古典的なブラキオサウルスのイメージ元となったギラファティタンを徹底的に作り込んでいく。
▲まずは首から。キットパーツをギラファティタンの骨格図と比較して、改造箇所を検討していこう。ブラキオサウルスの頸椎の復元はほぼギラファティタンに基づいているので、ブラキオサウルスの製作時の参考にもなるだろう
▲キットの形状に沿って、頸椎をひとつずつエッチングソーで切り分けていく。キットの頸肋骨は成型上の都合もあって重なりあった状態になっているため、これも慎重にエッチングソーで分割する
▲竜脚類の頸椎は、骨格図で見るよりもはるかに複雑怪奇な立体である。キットでは少ないパーツ数で頸椎の雰囲気がよく表現されているが、立体的な構造はかなり省略されてしまっている。化石や復元骨格の写真を参考に、少しでも頸椎本来の立体感に近づけてやろう
▲キットパーツを切った貼ったするだけでは横突起や棘突起が足りなくなってくるので、適当なところでエポパテを盛って造形しよう。前後の頸椎をつなぐ関節突起も、骨格図や化石の写真を参考に慎重に造形しておく
▲ひととおり工作の終わった頸椎を、金属線で接続する。今回は1mmの金属線を使用した。頸肋骨や頸椎の前後にある関節突起を丁寧に作っておくことで、実際の骨格さながらに頸椎が可動するようになった
▲ギラファティタンの胴体はブラキオサウルスと比べるとずっと短く。ギラファティタンを製作する以上大改造は避けて通れない。まずは胴椎をひとつずつエッチングソーで切り分けていく
▲切り分けた胴椎をそれぞれ削り込んで前後長を縮め、胴椎のカーブを意識しながら再接着していく。ブラキオサウルス、ギラファティタンともに正確な胴体の長さは不明だが、骨格図でアタリを取りながら作業を進めていこう
▲胴椎をつなぐ際、接着剤だけでは強度が足りなくなる。キットパーツの構造上金属線を通すのも難しいため、ディテールアップも兼ねた補強として、肋骨の取り付けのためにえぐれている部分にパテを盛る。棘突起や横突起も実際の化石やレプリカを参考に造形していこう
▲胴椎の工作が終わったら、あらかじめエッチングソーなどで1本ずつ切り分けておいた肋骨を接着していこう。ベルリン自然史博物館で展示されているギラファティタンの復元骨格(近年リニューアルされたもの)は、非常によい参考になる
▲肋骨を胴椎に接着したら、肩甲烏口骨と骨盤も骨格に合わせて接着する。肩甲骨はブラキオサウルスと形状がやや異なるので、パテで形状を変更する。腸骨とつながる仙肋骨もパテで追加造形しておこう
▲ブラキオサウルスの尻尾の長さははっきりしないが、ギラファティタンの尻尾がかなり短いことは確かだ。キットよりも短くするため、先端と可動関節の部分をカットし、金属線を通して再接続する。血道弓は恐竜ビルドの関係で一体化しているので、ディテールに沿って削り込もう
▲前肢を作り込んでいく。恐竜ビルドの都合上、前腕部の向きが実際の骨格とは異なってしまっているので、関節で切断後に少しひねるようにして再接着。恐竜ビルドや成型の都合上で足りないボリュームはパテで補おう。中手骨も切り分けて円筒状に再接着し、末節骨(爪の骨)も追加する
▲後肢は大腿骨を切り詰める。恐竜ビルドの都合で脛骨や足のボリュームが不足しているので、パテで補おう
▲キットの頭骨はブラキオサウルスらしい雰囲気をよく表現しているが、ギラファティタンは顔立ちが別人だ。キットパーツを要所要所で切り分け、プラ板とパテを駆使して改造する
▲かなりの部分を分割・再接着しているため、組み上げながらバランスを何度も確認し、必要に応じて修正しよう。全体を組み上げて問題がなければ工作は終了となる。キットをそのままブラキオサウルスとして作り込む際にも、椎骨や四肢のディテールアップはそのまま応用可能だ
■塗装
▲ギラファティタンをはじめ、タンザニアのテンダグル層*から産出した恐竜化石は明るいブラウン系の色で、展示照明下ではやや赤みがかって見える。赤みのあるブラウンと明るいブラウンを、エアブラシでわざとムラになるよう塗装しよう
*テンダグル層:タンザニア南東部、リンディ州に露出するジュラ紀後期から白亜紀前期にかけて堆積した地層。半乾燥・亜熱帯気候の海岸平野~干潟、浅い海で堆積したと考えられている。
▲ウェザリングカラーでオリーブ色がかったグレーを調色し、ウォッシングする。仕上げに明るい色のパステルでハイライトを乗せ、全体の色調を整えよう
▲これで完成! プラノサウルス最大級のボリュームを誇るブラキオサウルスをベースに製作したことで、手ごろなサイズながら大迫力のモデルに仕上がった。長らくブラキオサウルスの「顔」として知られてきた、ギラファティタンの優雅かつ堂々たる骨格だ。恐竜ビルドや成型上の都合でどうしても省略部分が多くなってしまう本キットだが、そのぶんディテールアップにとてもよく応えてくれる。できそうなところから、ぜひチャレンジしてみてほしい
▲20世紀初頭、ドイツ帝国の植民地(ドイツ領東アフリカ)となっていた今日のタンザニア・リンディ州での資源探査のさなか、テンダグル丘陵で恐竜化石が発見された。地元民でさえライオンを恐れて近づかないこの地にドイツ帝国は調査隊を送り込み、地元民を多数動員して数年にわたって大規模な発掘が続けられた。そこには、ブラキオサウルス・ブランカイやディクラエオサウルス、ケントロサウルスといった恐竜の保存のよい骨格が多数眠っていたのである。採集された膨大な量の化石はベルリンへと送られ、ドイツ帝国からワイマール共和国、ナチスドイツ、そしてドイツ民主共和国へと国家体制が移り変わる中でゆっくりと研究が進められた。第二次世界大戦前夜に組み立てられた復元骨格はその後数年で解体され、戦火を生き延びて再び組み立て直されている。ブラキオサウルス・ブランカイを新属ギラファティタンに分類する意見は当初受け入れられなかったが、2009年の研究をきっかけに広く用いられるようになった。
Giraffatitan brancai
ギラファティタン・ブランカイ
●竜脚類 ブラキオサウルス科●全長約24m●ジュラ紀後期(キンメリッジアン後期~チトニアン) 約1億5200万~1億4300万年前ごろ?●タンザニア
Brachiosaurus altithorax
ブラキオサウルス・アルティトラックス
●竜脚類 ブラキオサウルス科●全長約24m●ジュラ紀後期(キンメリッジアン) 約1億5400万~1億5000万年前ごろ?●アメリカ西部
BANDAI SPIRITS プラスチックキット “プラノサウルス” ブラキオサウルス使用
ギラファティタン
製作/ウラベヒロト(アーミック)
骨格図・解説/G. Masukawa(GET AWAY TRIKE!)
プラノサウルス ブラキオサウルス
●発売元/BANDAI SPIRITS ホビーディビジョン●1870円、発売中●約27cm●プラキット
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