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【宮葉勝行氏×穴井健太郎氏】『ナンバーワン戦隊ゴジュウジャー』&スーパー戦隊シリーズ歴代音楽の舞台裏を語る!

2025.10.19

宇宙船vol.190(10月1日発売)

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歴代のスーパー戦隊音楽秘話

―これまでを振り返って印象的なレコーディングはありましたか?

宮葉 『オーレンジャー』の劇伴をフランスで録音したのが、思い出としてありますね。5日間くらいかけてレコーディングしたんですけど、1日のセッションが終わると、劇伴にメロディを使っていた「虹色クリスタルスカイ」をフランス人ミュージシャンが口ずさみながら帰って行く、その光景にちょっとした感動がありました。

穴井 『騎士竜戦隊リュウソウジャー』の夏映画(※『騎士竜戦隊リュウソウジャー THE MOVIE タイムスリップ!恐竜パニック!!』)では、吉川清之さんの拘りで、都内のスタジオよりも音が響く地方のチャペルでストリングスの録音をしました。僕が初めて担当した作品でしたし、これは非常に面白い試みでしたね。

―印象的な作曲家を挙げるとするといかがでしょうか?

宮葉 佐橋俊彦さんです。初めてフランクに付き合えるようになった作曲家で、『カーレンジャー』では、阿吽の呼吸で細かい注文を出すことができました。以前は自分もペーペーだったし、『オーレンジャー』の横山菁児さんクラスだと、なかなか言えないですからね。ただ、菁児さんも「君のメニューは面白くてヤル気が出たから、曲を増やしておいたよ」と言ってくださったことがありました。『ゴジュウジャー』の沢田さんも、録音前に自発的に2曲デモをあげて「タイトルを見たら2曲思い浮かんだけど、どっちがいいですか?」と聞かれたので、2曲とも使わせてもらうことにしました。

穴井 ありましたね。僕はやっぱり『王様戦隊キングオージャー』の坂部剛さんです。佐橋先生のお弟子さんで、血筋を受け継いでスーパー戦隊シリーズに参加され、戦隊では唯一フィルムコンサートが実現したことも感慨深いです。


我らナンバーワン戦隊!

―そして放送中の『ゴジュウジャー』の音楽についてもうかがえればと思います。

穴井 田﨑(竜太)監督が吠のキャラにマカロニウエスタンをイメージされていて、ちょうど『ドクターX〜外科医・大門未知子〜』で、沢田先生がそういったテイストの音楽を書かれていたんです。それから弊社としては、『ドラえもん』の音楽を長く担当されていて、弊社の堀江美都子が沢田先生作曲の「キミのひかり」(※映画『ドラえもん のび太と奇跡の島』挿入歌)をとても気に入っているという話も聞いていて、機会があれば是非ご一緒してみたいと思っていた作家さんでした。

宮葉 沢田さんは世代も近く、僕の好みの音楽を書いてくれるので、割とスンナリ入ってきましたね。さっきも話したように発注以外の曲も書いてくれましたし、こちらの注文に対して、すぐ対処してくれるので非常に仕事がしやすい作家さんです。

―印象に残る曲はありますか?

宮葉 やっぱりメインテーマの「我らナンバーワン戦隊!」(M12)ですね。ただ、応援空間のテーマ(「ナンバーワン戦隊ゴジュウジャー!」/M22)が同じメロディだから、なかなか上手く使うタイミングがないのが悩みどころです。

穴井 そこがまた難しいところですね。作品のイメージが固まる前に、松浦大悟プロデューサーや田﨑監督と共にどうするか一番苦心したのが、応援空間の曲なんです。

宮葉 劇中では、応援空間が絡まない場合は、できるだけメインテーマを使うようにしています。

穴井 今回はブライダンも正面切っての敵組織ではなさそうで、実際、夏映画(※映画『ナンバーワン戦隊ゴジュウジャー 復活のテガソード』)でもゴジュウジャーと共闘していたし、音楽的な落としどころが難しいんですよね。そうしたさじ加減については、宮葉さんのメニューもそうですし、それに応える沢田先生の感性もすごいなと思います。先生はとてもお茶目で面白い方で、その天真爛漫なところが、『ゴジュウジャー』の音楽にも表れているように感じます。

宮葉 夏映画といえば、クライマックスの歴代のレッドが戦う場面で、それぞれの主題歌メロディを用いた劇伴を書いてもらいました(※「全戦隊レッド世界中でヒーローになる(MM22)」)。ただ、当初はあそこまでピッタリ合わせるつもりではなく、「3~4つくらい合わせられたら嬉しいんですけど」くらいのお願いだったんです。それが沢田さんから「自分世代の『デンジマン』や『サンバルカン』の主題歌メロディも使いたい」との希望があり、さらに3日もらえればかなり正確に合わせて書きます、という話だったので、そこに集中できるようにお膳立てをしました。普段もガイドムービーといって、編集済みの映像にだいたいの音楽をあわせたものを用意するんですけど、今回はテレビの劇伴を中心に音楽も細かく編集してバッチリ当てはめて、他の場面の音楽はその通りに書いてもらえれば上手くいくようにして、その分「全戦隊レッド世界中でヒーローになる」の作曲に時間を割いてもらいました。

―では、どの主題歌を使うかは宮葉さんが指定したわけではないんですか?

宮葉  ええ。沢田さんにお任せで、いきなり『(天装戦隊)ゴセイジャー』の主題歌が出てきて僕もビックリしました(笑)。

穴井 譜面のリハーサルマークで、Gくらいから「ゴレンジャー」とか「デンジマン」と書いてあって「おおっ!」と、ちょっとした興奮がありました(笑)。それからゴジュウポーラーの場面では、挿入歌「YOU BE ONE WINNER」のメロが一瞬流れるのですが、歴代の主題歌の中に入るということで沢田先生はとても謙遜されていました。

―挿入歌も例年以上に印象的です。

穴井 やっぱり最初の「愛が正義」ですね。松浦プロデューサーから「勝ち確ソングを作りたい」と話があり、作詞を前々からお願いしたかった売野雅勇先生に書いていただくことが決まり、売野先生が作詞された『光戦隊マスクマン』の縁から影山ヒロノブさんの起用に繋がりました。

宮葉 「愛が正義」は編集段階で、各話の監督が「ここからここまで流します」と決めていて、後は多少長くしたり短くしたり、音楽的におかしくないように編集して、効果的に聴こえるようにしています。

―今後の音楽的な展開も楽しみです。

穴井 劇中で使ってもらえるかは内容次第ですが、キャラソンはもっと作りたいですね。まだ歌ってないキャラもいますし、そこは是非実現していきたいと思います。

宮葉 劇伴の第2回録音を8月半ばに行ったのですが、今年は例年より撮影や仕上げが早く進んでいるので、逆算すると第2回録音の楽曲が使える話数が少ないんです。後半戦に向けて、いかに新しい劇伴の数々を印象的に使えるかは工夫していきたいと思っています。

 それから毎年のことなんですけど、第2回録音では最終回を想定した壮大で感動的な曲をオーダーしているのですが、発注の時点ではどんな最終回を迎えるか僕らもわかってないので、それが使えるか否かはドキドキしています(笑)。ただ、劇伴の録音に立ち会った田﨑監督も「使わなくちゃな」と言っていたので、そこは楽しみでもありますね。

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撮影◎沼田学 取材・構成◎トヨタトモヒサ

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