【試し読み】『勇気爆発バーンブレイバーン』公式外伝「未来戦士ルル」書き下ろし新規エピソードの冒頭をWEB初公開!! 【小説】
2025.10.09「勇気爆発バーンブレイバーン』公式外伝 未来戦士ルル 単行本書き下ろしエピソード冒頭 月刊ホビージャパン2025年11月号(9月25日発売)
単行本「未来戦士ルル」
新規書き下ろしエピソードの冒頭部分を公開!
月刊ホビージャパンにて完結した公式外伝「未来戦士ルル」が、新規書き下ろしエピソードを加えて単行本化。明日の発売に備えて、本記事ではその新規小説パートの冒頭部分を特別に先行公開します。戦いの余韻と未来への決意が交差する、物語の一端をいち早くご覧ください。
原作/Cygames
ストーリー/横山いつき
ストーリー監修/小柳啓伍
イラスト/かも仮面
協力/CygamesPictures、グッドスマイルカンパニー
新規書き下ろしエピソード
こんなこともあろうかと密かに準備しておいた……
その名もブレイバーン、フライ──
──日本:横浜港:大桟橋:空母〈コンステレーション〉:ルイス・スミスの部屋──
モニターに流れるスパルガイザーの音声が、静かな空間に響いていた。
ここに本来の主はいない。少女がひとり、膝を抱え虚ろにモニターを眺めているだけだ。
「スミス……まだかえってこない……」
〈デスドライヴズ〉の部品として生まれた少女──ルルは消え入りそうな声でそう呟いた。
ルイス・スミスは横浜での〈デスドライヴズ〉との交戦中、淫蕩のクーヌスとともに姿を消した。自らが駆るTSは跡形も残らず、生存は絶望視されている。
あの状況で生き残れる可能性が零に等しいことは、スミスの機体に同乗していたルル自身が一番わかっていることだ。しかし、ルルにそれを受け入れるだけの強さはない。誰かと親しくなったのも、親しい者を失うのも、これが初めてのことなのだ。
スミスを失った戦いから、一日が過ぎた。ATFは横浜での戦闘のあと、被害の対応に追われながらもハワイへ向かう準備を進めている。
そんな中、ルルはほとんどの時間をスミスの部屋で過ごしていた。ルルを心配した仲間が時折様子を見に来ても反応は薄く、差し入れられた食事にもほとんど手をつけていない。戦場で保護された直後に軍医のニーナによるカウンセリングも行われているが、結果は芳しくない。
──しかし、その日は違っていた。
「ルル!」
彼女の名前を呼ぶ声とともに、部屋の扉が開かれる。
そこにいた声の主は、イサミ・アオ。スミスの戦友であり、ルルにとっても大切な仲間の一人だ。
彼もまたスミスを失った悲しみを抱えているはず。しかし、そんな様子は微塵も見せようとしなかった。
しばしの沈黙の後、イサミは意を決して言葉を紡ぐ。
「ルル……料理をしよう」
「……ガピ?」
文字通り何もわからないというようなルルの困惑した表情に、イサミは目線を逸らして頭を掻く。自分らしくないことをしたという気恥ずかしさと、次に話す言葉が見つからないのを誤魔化すためだ。
「その……あれだ。よく頭を空っぽにするには料理がいいって話があってな」
「りょうり……たべもの、つくる?」
「そうだ。スミスが好きだったやつをな」
イサミの言葉に、ルルの表情は少しだけ明るさを取り戻す。
「……ルルたべる! スミスの、すきだったやつ!」
「食べるんじゃない、作るんだ」
そんなルルの様子に、イサミの表情も少しだけ和らいだ。
──日本:横浜港:大桟橋:空母〈コンステレーション〉:厨房──
厨房にやってきたイサミとルルを出迎えたのは、ブレイブナイツの隊員であり元々イサミと同じ陸上自衛隊にいたTSパイロット、ヒビキ・リオウと台車に乗せられた巨大なモニターだった。
『よく来たな、イサミ! ルル!』
モニターにはブレイバーンが大写しになっており、イサミの計画に介入するつもりなのはそのニヤリとした表情から明らかだ。
「なんでいるんだよ……」
『クッキングならば私の出番だろう! こんなこともあろうかと密かに準備しておいた……その名もブレイバーン、フライ──』
ブレイバーンが調子よく喋っている最中、イサミはモニターの電源を切った。
『待てイサミ、酷いじゃないか』
「なんでつくんだよ……」
ブレイバーンがなんらかの干渉をしてモニターの電源を入れ直したようだ。
「ブレイバーン、イサミ。さっきのなに?」
「なんでもない。気にするなルル。あいつの出番はないんだ」
『待つんだイサミ! それは少々勇み足だろう!?』
「さぁルル、あっちで準備開始だ」
「わかった! ブレイバーン、またね!」
『待って! 待ってくれイサミー! 私にもきっとできることが──』
部屋に大音量で響き渡る抗議の声はイサミの耳を右から左へ抜けていく。それを見たヒビキは思わず苦笑した。
「言われるがままにモニター持ってきたんだけど、これは失敗だったかな……」
『そんなことはない! 確かに私が物理的に手伝うことは難しいだろう。しかし、声援を届けることはできる! なんならハワイアンなダンスを踊ってもいい!!』
「ああ、好きなだけ踊ってくれていい。周りに迷惑をかけないようにするんだぞ」
『いや私が欲しいのはそうじゃない……そうじゃないんだイサミ! そうだ! それならレシピを読み上げるのはどうだ!?』
「それはちょっと助かるな」
イサミとブレイバーンの変わらないやり取り。久し振りの光景にヒビキは思わず口元を緩める。少し前までは毎日のように行われていたそれは、スミスがいなくなってから今まで一度もなかった。まだどこか暗い雰囲気が残る中で、少しだけ日常が帰ってきたような、そんな気が──
「ガガピー!」
なんとなく浸っていたヒビキは、唐突に飛び込んできたルルの声に引き戻される。
「ど、どうしたの、ルルちゃん?」
「ん?」
困惑して問いかけたヒビキにルルは不思議そうな視線を向ける。
「いや、急だったから驚いちゃって」
「ガピ……なんかイサミとブレイバーンみてたら、ここがぽわっとした」
そういってルルはそっと胸に手をあてる。そんなルルの姿を皆黙って見つめていた。ブレイバーンさえも空気を読んでその口を閉じ、見守るように微かな笑みを浮かべている。
イサミたちがルルの笑顔を見るのもまた、久々のことだ。
そうして少しだけ穏やかな時間が流れた後、イサミは気を取り直すように手を叩いた。
「よし。やるぞ、ルル!」
「ガガピー! ルル、やる!」
『よぉし、我々で最高のジャパンのカレーを作り上げようじゃないか!』
「ガピー!」
こうして、ルルのはじめての料理がはじまった。
単行本「未来戦士ルル」に続く
『イサミ、大丈夫か!
大丈夫なのか、
イサミィーーーー!!』
明日(10月10日)発売!!
『勇気爆発バーンブレイバーン』公式外伝 未来戦士ルル
\目印はこの表紙!/

テレビアニメ『勇気爆発バーンブレイバーン』の本編では描かれなかった、メインキャラクター“ルル”がタイムリープをする前の重要なエピソードを全6話で連載した人気外伝小説「未来戦士ルル」を読みやすいサイズで単行本化。単行本化に際して、本編に加え新規エピソードも収録し、本誌での連載を読んだ読者も改めて楽しめる内容に。キャラクターデザイン原案・かも仮面による描き下ろしの表紙にも注目!
『勇気爆発バーンブレイバーン』公式外伝 未来戦士ルル
●発行元/ホビージャパン●四六判・カラー8ページ、モノクロ208ページ●ISBN978-4-7986-3945-1●1980円、10月10日発売予定
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