『ブレンパワード』のオーガニック・マシン「グランチャー」を可動部の改修や丁寧な工作でシャープで繊細な雰囲気を強調した作例に仕上げる!【サンライズメカニック列伝】
2025.09.23サンライズ・メカニック列伝 第74回/グランチャー【グッドスマイルカンパニー】●田仲正樹 月刊ホビージャパン2025年10月号(8月25日発売)
[脚部]
ヒザのK5、6がデザイン都合で薄く強度に不安があるため、両側面の凹部に0.3mm径の真鍮線を縦に並べて敷き詰め、中粘度の瞬間接着剤で固定し補強。ヒザ関節ブロックは太モモ側に固定し、太モモは合わせ目を処理した。太モモ上部の装甲はフチを薄く削り、プラの厚みを消している。足首関節内はN10、11と、N15、16の肉抜きをエポパテで埋め、足首装甲内側のピンとダボを削り取り、代わりにスリット入りのプラ板を接着して隙を軽減させている。「足首装甲後面の合わせ目を消すと塗装の際のマスキングが非常に面倒になるのですが、ここは目立つのでなるべく消したいですね」とのこと。つま先は先端を尖らせ、かかとは肉抜きをエポパテで埋めている。
[武装など]
ソードエクステンションのグリップ周辺にある肉抜きはプラ材とエポパテで埋めた。刃の部分は中粘度の瞬間接着剤で合わせ目を処理し、エッジにスジ彫りをすることで困難な面出し作業を簡略化。ミサイルポッドは各肉抜きをエポパテで埋め、上下の面にプラ板を接着して合わせ目を隠した。オーガニック・プレートの運搬に使用していたワイヤーネットのグリップは、それらしい形状のHG G-セルフのビーム・サーベルを代用した。
■アレロパシー
意外にドーナツが好きなサンライズメカファンの皆さんは、1998年に1/100グランチャーのプラキット化が企画されるも、発売には至らなかったことをおぼえているはず(第11話の例の台詞は言わないこと)。1/100ヒメブレンを前に「この隣にグランチャーを並べて第1話の再現ができたらなぁ……」と悔しく思った人も多いことでしょう。複数のメカが並べば、それぞれが相手の魅力を引き立て合い、そこにドラマが生まれ、世界が広がる。まさに勇の台詞にある「共生し合う力」! ……というわけで今回はファン待望のグランチャーを作るんだも。
キットは同シリーズのブレン同様、設定画や本編の作画から受けるイメージどおりのフォルムと、関節の「板バネ」に代表される細かいディテールを備えた秀作です。ブレンで気になったヒジ関節が動かしにくい点も改良されている他、作りやすさも向上しています。ただ、無塗装もしくは部分塗装で完成させることを前提としているのか、半分以上の部品がABS樹脂製なので全塗装する場合は気を使うことになります。まずはヒジとヒザを壊れにくくしておきましょう。上腕にポリキャップを入れ、ヒジ関節を引き抜けるようにしておくと、ポージングや装備の交換の際、破損のリスクが減ります。作例はさらに前腕のN5、N7をポリキャップに交換して拳の付け外しをしやすくしています(N5は穴の広さをペーパーで微調整するだけでも十分です)。ヒザ関節のK5、6は側面に真鍮線をいっぱい敷きつめて補強。そしてプラの厚みが気になる部分やエッジの整形、はめ込み用のピンやダボが見える部分の加工、各関節内の肉抜き埋め……といった細かい工作を積み重ね、プラスチック成型品っぽさを消し、生体マシンらしさを向上させましょう。ユウ・ブレンにも持たせたいソードエクステンションは、先端部側面のエッジを立てるのが人類には難しいので、スジ彫り(ABSなのでちょっと難しいです)を入れてみました。
■ごめん、おぼえていない(今回も色のレシピを)
学習研究社刊「ブレンパワード スパイラルブック」、キットの箱絵、本編映像を参考に塗装。グランチャーの色もブレンと同様、「塗装されている」のではなく「肌の色」なので、銀チョロ塗装などはやめておきましょう。
一般機本体=クールホワイト+タン+ブラウンに純色バイオレット、純色シアン、ハーマンレッド、オレンジ、キアライエローを各少量(だったと思う)
関節など=自作の青紫系ダークグレー
赤=ハーマンレッドにダグラムレッドとピンクを各少量
カナン機は本体が自作の赤茶色、関節が自作の緑系グレー、青緑がパワーグリーン。ソードエクステンションは刃が自作の緑系ライトグレー、本体が自作の青紫系グレー。ミサイルポッドは自作の青紫系グレー。砲口を塗り分ける際には、マスキングテープを3mm径のポンチで打ち抜いて使いましょう。ABS製部品へのスミ入れにエナメル塗料を使うのは避けて、リアルタッチマーカーで。塗膜をツヤ消しと半光沢を混ぜたクリアーでコートして終了です。
次回も当時にはキット化されなかった、あのメカの作例が登場します。

グッドスマイルカンパニー ノンスケール プラスチックキット“MODEROID”
グランチャー
製作・文/田仲正樹
「サンライズ・メカニック列伝 ダブル・リバイバル編」発売中!
古今東西のサンライズメカ作例集、待望の第2弾! 多彩な作品から30体以上が参戦!
ホビージャパン本誌にて連載している「サンライズ・メカニック列伝」のムック化第2弾です。『伝説巨神イデオン』『戦闘メカ ザブングル』などコーナーのレギュラー作品に加え、『太陽の牙ダグラム』『疾風アイアンリーガー』『コードギアス 反逆のルルーシュ』など、魅力的なサンライズ作品から幅広くメカ作例が集まっています。コーナー中のディープな工作&解説テキストも含めた再録に加え、設定画も追加掲載。『機甲戦記ドラグナー』より、単行本だけの作り起こし作例も予定しています!
© サンライズ
田仲正樹(タナカマサキ)
本誌ガンダム班と「宇宙船」誌の映像倶楽部に所属。「鉤爪の機体と赤い機体ももちろん準備中」とのこと。