HOME記事フィギュア“俳優生き写し”な超リアルなフィギュアはいかにして作られるのか?経営陣に直接聞いてみた【Queen Studios 独占インタビュー】

“俳優生き写し”な超リアルなフィギュアはいかにして作られるのか?経営陣に直接聞いてみた【Queen Studios 独占インタビュー】

2025.08.09

等身大フィギュアの雄、クイーンスタジオ本社に行ってみた●しげる 月刊ホビージャパン2025年9月号(7月25日発売)

超リアル&超巨大スタチュー・フロム・チャイナ!!
等身大フィギュアの雄、クイーンスタジオ本社に行ってみた

“俳優生き写し”な特大スタチューは、いかにして作られ、売られているのか?

 スーパーヒーロー映画のキャラクターを中心に、超リアルな等身大フィギュアをリリースし、全世界から支持されるブランドが、中国は杭州に存在する。その名も、クイーンスタジオ。まるでキャラクターが目の前にいるかのような出来映えのフィギュアは、「生き写し」という言葉がピッタリだ。そんな超リアルなフィギュアは、いかに作られているのか。今回はクイーンスタジオ本社に突入し、経営陣に直接聞いてみたぞ!

取材・文/しげる

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サムネイル
▲歴代のアイアンマンがずらりと並ぶ、クイーンスタジオのエントランス。さらにその奥には、歴代の自社製品が所狭しとディスプレイされているのだ。眼福!!
李哲氏の写真
劉卓氏の写真

▲ 今回クイーンスタジオに関するインタビューに答えてくれた、クイーンスタジオCOO(最高執行責任者)の李哲氏(左)と、クイーンスタジオ創業メンバーのひとりである劉卓氏(右)

クイーンスタジオの本社の画像
▲ クイーンスタジオの本社があるのは、杭州市の中心から少し離れたところに建つ高層ビルの33階。オフィスからは杭州の風景が見渡せる
クイーンスタジオの本社オフィスの画像
▲ エントランスを入ると、スタッフが仕事をするデスクが並ぶ。杭州ではフィギュアの生産は行っていないため、流通やアフターサービスを担当するバックオフィスの従業員が中心だが、一部ではデジタル原型を作るスタッフもいる
シーガー・ザ・ストームロードのフィギュアの画像
▲ CG製作をメインにしていたクイーンスタジオがデモンストレーションとして作ったのが、この「シーガー・ザ・ストームロード」
クイーンスタジオ本社内エントランス付近の展示台の画像
▲ エントランス付近の展示台には、これまで作られた等身大スタチューやライフサイズバストが所狭しと並ぶ
ジョーカーの胸像の画像
▲ ホアキン・フェニックス版ジョーカーのライフサイズバストは、監督であるトッド・フィリップス氏お気に入りの逸品。ジャケットの襟には監督のサインが入っている
マイティ・ソーの胸像の画像
▲ マイティ・ソーのライフサイズバスト。近寄っても全くアラが見えず、演じるクリス・ヘムズワースがその場に立っているような存在感がある

“デモンストレーション”から始まったフィギュア事業

──そもそもの部分から質問なのですが、クイーンスタジオとはどのような会社なのかお聞きしたいです

李哲 現在は杭州の本社のほか、東莞など生産地の近くにもオフィスを置いてます。社員数は全体で200人ほど、製品の企画や製造に関わっているのはそのうちの100人ほどで、残りはバックオフィスなどの業務を行っています。工場は東莞がメインですが、自社工場ではなく、他社に発注する形です。現在の主力商品はライフサイズなど大型のスタチューに加え、アクションフィギュアブランドのINARTを展開しています。

──設立の経緯はどのようなものだったのでしょうか?

劉卓 会社の設立自体は2014年です。共同創業者は自分の他にふたりいるんですが、大体全員ゲームや映画のCG製作といった業界の出身者です。2018年まではフィギュア製作ではなく、映像系の仕事を行っていました。元々フィギュアといった立体物が好きでしたし、実際にゲーム内のオブジェクトを作る際にフィギュアを参考にすることもあり、画面の中ではなくて実際にフィギュアを作れないかということでフィギュア事業をスタートさせています。儲かるからというよりは、好きだから始めたという感じですね。

──最初に作ったのは「シーガー・ザ・ストームロード」というワンオフのフィギュアだったとホームページに書いてありました。

劉卓 あれは版権の関わらないオリジナルの題材で、実際の立体物を作るデモンストレーションをするのが目的でした。

──この作品がきっかけになってマーベル・シネマティック・ユニバースなどの作品をスタチューにすることになったとのことですが。

劉卓 元々2011年から、マーベルコミックスでカードやポスターなどのイラストの仕事をしていたんです。フィギュア事業を始める時に、試作だったシーガー・ザ・ストームロードを見たマーベルの関係者から「もっといろいろなキャラを作ってみませんか」と連絡があり、マーベル・シネマティック・ユニバースのキャラクターをスタチューにしていく仕事を始めることになったんです。

たった20人のスタッフが、年間800体の等身大フィギュアを製造!

──最初に手掛けたキャラクターは、トム・ヒドルストンが演じるロキだったということなんですが、苦労した点はどのようなところでしたか?

劉卓 とにかく顔ですね。CG用のデータなどもなくて、映画のシーンをひたすら見て、似せていくしかなかったんです。当時は原型もパテなどを使って手で作っていたので、これは大変でした。提供されたデータがあまり役に立たなかったんですよ(笑)。なので仕方なく手で作りました……。


──マーベル側からの反応は?

劉卓 当時、こういったライフサイズのスタチューは世界初だったと思います。誰も見たことのないものだったので、感想というよりは完成したこと自体への驚きが大きかったようです。


──ロキの頃から比べて、フィギュアの製作環境は変化しましたか?

劉卓 最初のころは原型も手原型とデジタル原型で半々くらいでしたが、製品がどんどん増えていって手原型では回らなくなり、今はどれもデジタルで作っています。

──原型製作時には、映画制作会社などからの協力はあるのでしょうか?

劉卓 俳優のスキャンデータや、衣装の写真などは送ってもらえます。傾向としては、顔と装甲服や鎧など硬質な部分のデータはもらえることが多いですね。ポストプロダクションで全身のCGを作った作品は、それを提供してもらえることもあります。ただ、製作が古い映画だと顔のスキャンデータが存在しないこともあるので、そういう時は頑張って似せていくしかないですね。

──これだけ大きくて緻密な製品を、どうやって製造しているのでしょうか?

劉卓 広東省に中山という街があるんですが、そこに自分たちの工房があるんです。大型アイテムの製造は、その工房で行っています。20人ほどのスタッフがいて、ライフサイズの商品を年に600〜800個作っています。

──工場に外注してないんですね?

劉卓 2020年ごろまでは、工場で外注して作っていたんですよ。それをやめた大きな理由は、全部同じ仕上がりにするのが難しいからです。自分たちには品質を揃えるための技術があるので、それならば大型商品に関しては外注に出さず、自社のスタッフで製造したほうがいいという結論に達しました。

──たった20人で、どうやって量産しているんでしょうか?

劉卓 チームに分けて、一部ずつを仕上げていく形です。最後にアーティスト兼総括ディレクター的なスタッフを4人置いていて、その人たちが明確な基準に合わせてチェックと手直しをしています。感覚的かつセンスによる部分も大きいので、この4人はまさに芸術家と評して差し支えないでしょう。

効率的な流通と、内部事情を押さえた題材選定がクイーンスタジオの強み

──現在の販売ルートはどのようなものなのでしょうか?

李哲 商品の販売はオンラインがメインですが、北京やタイ、ソウルにも大型商品を扱う小売店はあります。あと、中国でよくあるのがWeChatを活用した注文方法です。

──それはどういったものなのでしょうか?

李哲 WeChatを使って、うちと付き合いのあるオンラインショップや小売店などの販売関係者だけのグループチャットを作っておき、そこに新製品の情報を投げるんです。そうするとそこから直接注文を受けられるので、効率的に商品を販売することができます。

──は〜、間に問屋や代理店をはさまず、グループチャットで直接やりとりしちゃうんですね! 現在、等身大の大型商品のユーザーは、どのような人たちなのでしょうか?

李哲 やはり一定以上の財産を持つ富裕層が多いと思います。価格だけではなく、大きいフィギュアは置いておく場所も必要ですから、住宅事情も絡んできて必然的に客層も限られてきます。国や地域を問わず、買える人が買ってくれているんですかね。アメリカやヨーロッパはもちろん、最近は東南アジアを含めたアジア圏も増えています。

──フィギュアにする題材の選定はどのように行っていますか?

劉卓 2パターンほどあるんですが、類似アイテムの実績や作品の人気を考えて、自分たちから企画提案するパターン。もうひとつ、うちは映画会社やコミックの出版社とも強いつながりがあるんです。なので内部から公開前の情報をもらったりしています。キャラクターについてだけではなく、映画シリーズ全体の流れだったり、何に対して今後どのように投資していくのかといった、深いところまで聞くことができるので、そういった情報を基にして選定することもあります。

──内部情報を押さえた上でネタを選ぶことができるのは凄まじい強みですね。

今後は日本産キャラクターにもフォーカス予定?

──日本のキャラクターを題材にした製品も作っていますが、売れ行きはいかがでしょうか?

劉卓 実は中国では『ONE PIECE』といった日本のキャラクターのフィギュアのほうがよく売れているんです。それを受けて、日本のゲームメーカーとも製品化の相談をしていますし、あと『ベルセルク』の人気がすごいのでぜひやりたいと思っています。

──確かにいままでのフィギュアシーンにおける市場状況を鑑みても、日本発コンテンツは中国で凄まじい人気を誇っていますね。では、日本のユーザーに対してメッセージなどはありますか?

李哲 我々としても日本の市場はとても重要視しています。ライフサイズのフィギュアは住宅事情もあって難しいと思いますが、すでに展開されているINARTの1/6や1/12のフィギュアはぜひ手に取っていただきたいですし、今後発売予定の日本のキャラクターにも、ぜひご注目ください!
劉卓 日本のファンのみなさんにも、机の上にうちの製品を置いてほしいと思っています。住宅事情を考えなくてはならないのは日本だけではないので、今後はクオリティにこだわった小型フィギュアを展開していきます。ぜひご期待ください!

──本日はありがとうございました!

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