小森陽一が語る「ARTPLA 初代ゴジラ」の造形革命とも呼べるその衝撃とは? コモリプロジェクト製作の作例とともにその魅力をお届け
2025.07.17 コモリプロジェクトHP
Youichi Komori Official Web(y-komori.net)


皆さん、いかがお過ごしでしょうか。そろそろ長雨の季節を迎えます。じめじめ、蒸し蒸し、ほんとに勘弁してほしいものです。そんな時こそ一心不乱にモノを作りましょう。心頭滅却すれば火もまた涼し。いざ、無我の境地へ。
今回の議題はこれ、『ARTPLA』です。海洋堂さんのプラスチックモデルキットを指す言葉なんですが、いやはや大変なことになってます。先日行われた静岡ホビーショーでベールを脱いだ初代ゴジラに注目された方は多いでしょう。YouTubeでもたくさんのレポートがなされていましたし、関心の高さが窺えました。でも、僕はというと正直なところ(いやいやいや)という気分でした。昨今、「~過ぎる」とか「究極」とか「完璧」とかそういう美辞麗句が巷に溢れ返っています。それでいて実際に手に取ってみると、(この程度か)というのも少なくありません。しかもですよ、「このゴジラはガレージキットレベルだ!」なんて声を耳にすれば、心穏やかでいられようはずもありません。300近くの怪獣ガレージキットを作ってきた自分に言わせれば、(いくら技術が進んだからといってもプラモデルがガレージキットと同レベルだなんて……)、へそで茶を沸かすみたいなもんです。
そこで実物を土井氏に持参していただきました。全高18.5cm、横幅は約15cmの初代ゴジラが、日劇ビルや国鉄の高架線が崩れた特製ディオラマベースに乗っています。左手で電車を掴むだけでなく、今にも車両を噛み砕かんばかり咥えたゴジラの禍々しい姿は、まさに劇中のイメージそのままです。
「これがプラモデルですか……?」
あまりの衝撃に声が小さくなりました。だってですよ、昔の怪獣プラモデルといえばオーロラさんやバンダイさんから発売された左右貼り合わせ方式、通称『モナカ』といわれていたタイプです。でも、このARTPLAはまったく違います。内部の芯パーツに上から皮膚を貼り付けるように造られています。しかも、筋肉や身体の動きに合わせ、データ上でパーツ割りがされているから、合わせ目がまったく目立ちません。隙間も見当たりません。何度も手に取って眺めましたが、自分の見ているものが信じられませんでした。
ここであらためて言います。怪獣プラモデルとガレージキットの差異は限りなく縮まっています。それはもはや疑いようがありません。模型店で気軽に買えるARTPLAの出現により、今後は益々怪獣の立体物と触れ合うユーザーが増えていくでしょう。そうなれば必然的にさまざまな表現も生まれてきます。塗装の追求はもちろんのこと、当時の街並みや電車をリサーチしてそれをデータに落とし込み、さらにディオラマに磨きをかけたり、電飾して目を光らせたり、発光させて燃える街並みを表したり。スモークを焚いたり、啼き声を出してみたり。遊びが無限大になっていくのが目に浮かびます。いや~、ほんとに面白い時代がやって来ましたね。
「Monster Theater 素晴らしき怪獣ガレージキットの世界」発売中!
怪獣ガレージキットを大迫力の特撮写真で小森陽一が解説
小説・文筆家であり怪獣ガレージキットメーカーも立ち上げた小森陽一氏セレクトの怪獣ガレージキット。熱い怪獣愛で怪獣ファンも認める小森氏が、各メーカーの怪獣ガレージキットを塗装完成品と大迫力の特撮写真で解説していく作品集です。
さまざまなガレージキットメーカーの怪獣ガレージキットを円谷特撮作品から厳選して50体、新規撮り下ろしにて掲載。その魅力を小森陽一氏による解説で紹介していきます。
\この記事が気に入った方はこちらもチェック!!/
山脇隆氏の魅力

小森陽一が原型師の魅力を語る『怪獣ガレージキットの素晴らしき世界』山脇隆のすごさとは【コモリプロジェクト】
コモリプロジェクトHP Youichi Komori Official Web(y-komori.net) 怪獣ガレージキットの 素晴らしき世界 皆さん、いかがお過ごしでしょうか。いつしか桜から青葉に[…]
TM & © TOHO CO., LTD.
小森陽一(コモリヨウイチ)
●1967年生まれ。大阪芸術大学芸術学部映像学科卒業後、東映に入社。その後、コラムや小説、漫画原作や映画の原作脚本を手がける。大阪芸術大学映像学科客員教授。『海猿』『トッキュー!!』『S-最後の警官-』『BORDER66』『ジャイガンティス』など著作多数。