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怪獣ガレージキットの
素晴らしき世界

　皆さん、いかがお過ごしでしょうか。いつしか桜から青葉に変わり、大阪では万博が始まり、今年も大型連休がスタートしました。なんだかんだいっても月日も物事も巡っていくものですね。僕等も休まず、ひたすら模型と向き合って手を動かしましょう。
　さて、今回からは新企画をスタートさせたいと思います。『怪獣ガレージキットの素晴らしき世界』と銘打って、新旧を問わず、僕の思い入れたっぷりに原型師さんの魅力を語りまくるという趣向です。
　第一回はこのたび、新作の『GODZILLA(2023)』をリリースされた山脇隆氏にスポットを当てたいと思います。山脇さんとはご存知の通り、コモリプロジェクトの第1弾、『透明怪獣ネロンガ』を依頼した間柄でもあります。その穏やかな風貌と優しい口調はどんな時も誰に対しても変わらず、一度結んだ約束はきっちりと守ってくれます。まさに「怪獣ガレージキット界の良心、仁の人」とも例えられるべき方です。ですが、その作品に目を向けてみると印象はくるりと反転します。荒々しく、野性味があり、鋭い棘はナイフリッジのように切り立ち、モールドは底の見えないクレバスのような深さで広がっています。レジンの塊がまるで凶器のようであり、素手だと痛くて持てないものも多く、作業中に手袋は必須です。なので、（この造形をした人）が（こんな穏やかな人）だとはなかなか結び付かないでしょう。

　でも、すごさはそれだけではありませんよ。なんといっても絶妙なアレンジ力が造形の魅力でもあります。特に韮澤靖氏のデザインをモチーフに立体化されたゴジラやガイガンは出色でしょう。ゴジラの凶暴性やガイガンの妖しい色気が、前記した鋭い棘や深いモールドと混ざり合って襲いかかってきます。また、アクロから発売された三日月角のゴモラ、禍々しいドラコなど、「あの怪獣がこんなふうに変化するのか……」と思わせ、納得させ、引き寄せる力はすさまじいものがあります。韮澤氏との親和性の高さはもちろん、山脇さんの二次元を三次元に置き換える卓越した能力がこれを可能にしたのだと思います。新作の『GODZILLA(2023)』は見た瞬間に「買う！」となりました。ご覧の通り、存在感が図抜けています。このゴジラはかつてのように着ぐるみは作られていません。ですが、デザイン画を立体に置き換える山脇さんの手にかかればこの通り、どこまでもゴジラとなって存在するのです。
「いろいろ書くのもいいけど、いい加減、積んどくのを止めて仕上げてくださいね」
　穏やかな山脇さんの目の奥に荒々しい光が宿る前に、しっかり手を保護しながらどんどん仕上げていこうと思います……!!

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怪獣ガレージキットを大迫力の特撮写真で小森陽一が解説

小説・文筆家であり怪獣ガレージキットメーカーも立ち上げた小森陽一氏セレクトの怪獣ガレージキット。熱い怪獣愛で怪獣ファンも認める小森氏が、各メーカーの怪獣ガレージキットを塗装完成品と大迫力の特撮写真で解説していく作品集です。

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