HOME記事ガンダムガンプラ45周年の進化を開発担当者に直撃インタビュー!「HG GQuuuuuuX」の気になるポイントからガンプラの技術の変化やさらなる挑戦について聞いてみた!

ガンプラ45周年の進化を開発担当者に直撃インタビュー!「HG GQuuuuuuX」の気になるポイントからガンプラの技術の変化やさらなる挑戦について聞いてみた!

2025.06.04

HG『Gundam GQuuuuuuX』シリーズ開発担当者に聞く新たなガンプラシリーズに込められたガンプラ45周年の進化●石井誠 月刊ホビージャパン2025年7月号(5月23日発売)

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──ここからはガンプラ40周年から45周年にかけてのお話を伺えればと思います。まず、ひとつのエポックメイキングとして「エントリーグレード」の登場がありますね。

栗原 2020年末に発売されたエントリーグレードは、新規層をどのように取り込むかを考えた結果のシリーズですね。ただ組みやすい廉価版のプラモデルを出すのではなく、そのなかで「プラモデルってすごいプロダクトで、面白い」という部分をどうやって詰め込むかというところが結構難しいというか、楽しいというか、そういうコンセプトのシリーズでした。プラモデルの面白さを少ないパーツのなかでどう伝えるのかを考えるのが開発の肝の部分になったのではないかと思います。

2021

ENTRY-GRADE-RX-78-2-ガンダム
ENTRY-GRADE-RX-78-2-ガンダムパッケージ

▲簡単組み立てとハイクオリティが共存した“次世代のファーストガンプラ”。ニッパー不要、塗装不要、シール不要という徹底的なユーザーライクを追求しながら、形状再現や色分け、可動性などは従来のアイテム以上の完成度を持つ


ENTRY GRADE RX-78-2 ガンダム

●発売元/BANDAI SPIRITS ホビーディビジョン●770円、発売中●1/144、約13cm●プラキット

──2020年当時は、手頃な価格で小学校低学年くらいの子でも気軽に作ることができるガンプラがなかったですよね。そこに登場したエントリーグレードはまさに入門用のガンプラとしては最適なかたちになったように思います。

栗原 それこそエントリーグレードは組み間違いをしないような設計が徹底されているんです。関節の形状は一緒で、上下を間違えないようになっていたり。そのような部分に気を使うべきというのは、エントリーグレード以降に他のガンプラでも盛んになっていきました。ランナーの配置と組み立てる順番がリンクしていたり、左右対称のパーツでどちらにつけても大丈夫だったり。そういうのも大事にしなければならないなと。

──ユーザー層の拡大などを意識した結果、そうした取り組みがなされたのでしょうか?

栗原 そうですね。それこそ「ガンプラを世界へ」と幅を広げるにあたっては、よりレンジを広げたところではあります。実際に僕自身もエントリーグレードは初心者の方に勧めやすいと感じていますし、パーツ数も少ないので色替えなどでコラボレーションもやりやすい。そういう意味では、本当に入口としてしっかりとした役割を担ってくれるすごくいいブランドだと思っています。よく上司が申していますが「バンダイのプラモデルはエントリーグレードもパーフェクトグレードも作業の工程が多いか少ないかだけで本質は変わらない」と。でも、ユーザーからすると工程が多いPGは難しく、エントリーグレードは簡単、となる。エントリーグレードから、「プラモデルってこういうもので、組み立てるとこんなに面白い」というのを知るきっかけになってほしいという思いが一番強いですね。

──その後の2020年代のキーアイテムとしては、『機動戦士ガンダム 水星の魔女』のガンプラ展開がありますね。こちらは、新規層に向けたエントリーグレードの延長としてのシリーズとなったように思います。

栗原 『水星の魔女』は、キャッチーな作品になるだろうし、新規ユーザーが観てくれるような作品になるだろうというのは感じていました。そこで新規で入ってきたユーザーが組みやすく、かつシリーズの関節部が共用になっていて腕や脚を組み替えて遊べるというかたちになったのがもっともプリミティブな部分ですね。プラモデルの楽しみ方のひとつとしてカスタマイズというのがあると思うんです。シリーズを集めることで、組み替えて楽しめる。プラモデルだからこその楽しみ方が新規ユーザーに伝わってほしいという思いがありました。エントリーグレードの成功もあったので、その要素も踏まえた設計にもなっています。おかげさまで『水星の魔女』は確実に新しい層が入ってきました。今後は、その層をどうやって抱え込むかというのが課題でもありますね。

2022

HG-ガンダムエアリアル
HG-ガンダムエアリアルパッケージ

▲特徴的なシェルユニットには既存技術を復活させたインモールド成型や粘着面に絵柄を印刷したダブルサイドシールを採用。関節構造にはエントリーグレードなどに使用されている「Cパッチン」と呼ばれる後ハメ構造がフィードバックされている


HG ガンダムエアリアル

●発売元/BANDAI SPIRITS ホビーディビジョン●1760円、発売中●1/144、約13cm●プラキット

──『水星の魔女』のあとで、映画『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』が公開されました。こちらは開発の考え方がガラっと変わったのでしょうか?

栗原 変えましたね。『SEED FREEDOM』は20年来のファンの皆さんに向けて、「『SEED』の新しいガンプラが出たから久しぶりに買おう」と手にしてくださった方に「今のガンプラってこういう風になっているのか」と思わせたい、という面がありました。そうしたファンに向けて、組み立ての構造が多少複雑になったとしてもクオリティの高いものを提供したいと考えました。『SEED』ファンはガンプラに対する認識は高いので、そういう方に満足してもらえるようにする。そういう意味では『水星の魔女』とは真逆で、取っ付きやすさは捨てて、クオリティを重視しています。

──そのアプローチの答えが「SEEDアクションシステム」というわけですね。

栗原 そうです。僕自身が当時のキットを組んでいた世代なんですが、技術的にポージングの幅がせまかったんですよね。「SEEDらしいポーズが全然できないじゃん!」と思っていて。劇中のポージングができないところにストレスというか、もどかしさを感じていたんです。ユーザーから開発者になった身としては、「もし『SEED』のプラモデルをやらせてもらえるなら、絶対に重田智さんが描くポーズが取れるものにするんだ」という思いがありまして。その考え方がターゲットともうまく結びつきました。そうしたものづくりが実現できたという感じですね。

──「SEEDアクションシステム」は、各機体に合わせて関節構造が練られていたのが新鮮でした。

栗原 機体によって設計の考え方が違うんですよね。マイティーストライクフリーダムガンダムは脚を揃えたいけど、インフィニットジャスティスガンダム弐式は脚を蹴り上げたい。それに合わせた関節構造にしましたが、ある意味やり過ぎましたね。そしてそれらの集大成がズゴック。攻めに攻めた構造になってしまいました。

──一方で、RG RX-78-2 ガンダム Ver.2.0をはじめ、古参である宇宙世紀関連作品のファンに向けては、ガンプラ45周年に対してどのように考えられていますか?

栗原 やはりこれまでガンプラを買い支えてきてくださったファンは大切だと思っています。RG RX-78-2 ガンダム Ver.2.0は、RGがアップデートされることに関しての驚きや期待感があったと思います。そこに加えて、HGUC サイコ・ガンダムMk-IIや商品化が発表されたHGUC ガルスJなど、立体化が望まれていたキラーアイテムによって、古参ユーザーを楽しませたいというのは意識していますね。

2024

RG-RX-78-2-ガンダム-Ver.2.0
RG-RX-78-2-ガンダム-Ver.2.0パッケージ

▲ガンプラ30周年に立ち上がったRGシリーズの第1弾アイテムを完全リニューアル。現代的な視点で改めて“リアル”を徹底追求し、フレームや外装の形状から両者の位置関係、関節構造など、あらゆる面で工業製品としての説得力を高めている


RG RX-78-2 ガンダム Ver.2.0

●発売元/BANDAI SPIRITS ホビーディビジョン●3850円、発売中●1/144、約13cm●プラキット

──いろいろな取り組みを踏まえて、ガンプラ45周年に合わせて展開している『GQuuuuuuX』のガンプラシリーズですが、今後はどのような展開を目指したいと考えていますか?

栗原 商品企画の社内プレゼンをした際に「異次元の組み立て」というような感じのキャッチコピーで話をした記憶があります。今回は宇宙世紀が舞台ではあるものの、いわゆる「if」の話になっていますと。これまでの宇宙世紀のガンダムをズラッと並べると、最初のRX-78ガンダムから始まって『機動戦士Vガンダム』まで、設定面での開発経緯も踏まえると、世界観は一緒だから基本構造は変わらないまま進化していったものになっている。しかし『GQuuuuuuX』のモビルスーツの設定画を見ると構造自体がまったく異なり、我々の知っている宇宙世紀の世界観につながらない。「今回は“if”のガンダムなんだ」ということを追体験してもらうのに、異次元の組み心地のガンプラにする……。そんなことを言った記憶があります。お客さんがデザインを見た時に感じる「これまでのガンダムとは違う」という異質な感じ。ガンプラでもそれを感じられるようなものがシリーズのコンセプトになっています。

──キットの仕上がりとしては、新規ユーザーにはややハードルが高いものになっていますが、ターゲットに関してはどのように考えていらっしゃいますか?

栗原 『GQuuuuuuX』は結果的に新規ユーザーがたくさん入ってきてくださっていますが、ガンプラとしてはコアユーザーの皆さんが反応してくれるものだと考えていました。それは『SEED FREEDOM』と一緒かもしれないですが、「今回のガンプラは新規向けのものなのね」と思われないようなものづくりをしていった感じです。もちろん新規ユーザーを無視するわけにはいかないので、そこも踏まえた組みやすさとパーツ数、売価などもバランスを取ったものにしています。やはりターゲットレンジは、古参の宇宙世紀ファンから完全な新規ユーザーまで考えているので、いつも以上に幅を広めに物事を考えなければいけないという感じがありました。ですが、『水星の魔女』と『SEED FREEDOM』を経てきた結果、「コア向けのものづくりがされている」というほうが新規ユーザーも興味を持って手にしてくれて「ガンプラってすごいんだ」とシンプルに思ってくれることがわかりました。新規ユーザーとコアユーザーをどう見ていくかというバランス感覚は、『水星の魔女』と『SEED FREEDOM』の2作品を経てノウハウが蓄積されていったところではありますね。

──では最後に、シリーズ展開を楽しみにしているガンプラファンに一言お願いします。

栗原 赤いガンダムをはじめ、今後発売されるキットもGQuuuuuuXと同じ「常識をぶっ壊せ」というコンセプトで開発していますので、GQuuuuuuX同様のクオリティになっています。今後もHG『Gundam GQuuuuuuX』シリーズをお楽しみください。

──本日はありがとうございました。

(4月、バンダイホビーセンターにて収録)


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