HOME記事ガンダムガンプラ45周年の進化を開発担当者に直撃インタビュー!「HG GQuuuuuuX」の気になるポイントからガンプラの技術の変化やさらなる挑戦について聞いてみた!

ガンプラ45周年の進化を開発担当者に直撃インタビュー!「HG GQuuuuuuX」の気になるポイントからガンプラの技術の変化やさらなる挑戦について聞いてみた!

2025.06.04

HG『Gundam GQuuuuuuX』シリーズ開発担当者に聞く新たなガンプラシリーズに込められたガンプラ45周年の進化●石井誠 月刊ホビージャパン2025年7月号(5月23日発売)

HG『Gundam GQuuuuuuXジークアクス』シリーズ
開発担当者に聞く

新たなガンプラシリーズに込められた
ガンプラ45周年の進化

ガンプラ45周年インタビュー栗原直也smn

 ガンダムシリーズ最新作として2025年4月よりTV放送が始まった『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』。『機動戦士ガンダム 水星の魔女』以来のTVシリーズということで、ガンプラもこれまでにない意欲的な仕様になっている。本頁ではBANDAI SPIRITS ホビーディビジョンにてHG『Gundam GQuuuuuuX』シリーズの開発を手掛けている栗原直也氏に、HG GQuuuuuuXの気になるポイントをヒアリング。ガンプラ40周年から現在にいたるまでに、ガンプラの技術がどのようにフィードバックされ進化してきたのかを探っていく。

聞き手/石井誠

BANDAI SPIRITS ホビーディビジョン 開発担当
栗原直也


──『機動戦士ガンダム GQuuuuuuXジークアクス』(以下、『GQuuuuuuX』)はカラーとサンライズが手を組むというかたちで企画が進められた作品ですが、これまでのガンダムシリーズとはホビーディビジョンとしての関わり方は違っていたりしたのでしょうか?

栗原 少し違いましたね。いつものガンダムシリーズの場合だと、メカデザインを決めていく際にメカデザイナーさんや監督、演出さんなどのスタッフが集まって、どのようなメカにしていくかを話し合う「メカ打ち合わせ」というものがあるんです。いつもならばその段階で当社も参加させてもらっているんです。「メカ打ち」に参加する理由は、こちらからガンプラの商品化に向けて相談したり、商品としての新要素を提案させていただいたりするというのが目的です。でも、今回はそうした「メカ打ち」に参加することはなく、最初から山下いくとさんによるほぼ決定稿に近いGQuuuuuuXのデザインを見せてもらうかたちでした。

──そのデザインを最初に見られた時、どのような感想を持たれましたか?

栗原 驚きましたね。「これは、いつものようなかたちでのガンプラの商品化は無理でしょう」ということを、率直な感想として持ちました。

──「メカ打ち」では、例えばデザインラインから「ここの表現は新しい技術を使えばできます」という部分や、パーツ分割や色分けも含めたところで、どこまでが商品として表現可能かをデザイナーさんとやり取りをすると思いますが、そうした前段階がまったくなかったわけですね。

栗原 そうですね。そういう意味では、いつもならご提供いただける事前情報がないまま開発に入らなければならず、「どうやって進めようかな?」と思いましたね。

──そうなると開発の進め方なども普段とは違った感じになったのでしょうか?

栗原 開発の手順として、こちらがやることはそこまで大きく変わっていないです。大変だったのは、デザインや設定が今までのガンダムシリーズとは全く違うので、それをどうかたちにしていくかというところですね。いつものやり方が通用しないので、まさに手探りという感じのスタートでした。

──デザイン的にも形状や構造が複雑なので、まずは細部の読み解きなどから始まった感じでしょうか?

栗原 そうですね。形状の把握から入ったので「このパーツは足につながっているの?」というようなところはありました。でも、そこはマイナスをプラスにするという考えで。本当に今までと全然違うのであれば、せっかくだからガンプラの常識とかセオリーを壊していくことにチャレンジしてみようという気持ちで開発に取り組みました。

──GQuuuuuuXのデザイン面でいうと、山下さんが鶴巻監督に「ごめんなさい。これ、プラモ化無理かも」と謝ったというエピソードをSNSで明かされていますが、まさにそれくらいの細かい色分けを踏まえたパーツ分割が苦労されたポイントになるんでしょうか?

栗原 色分けもありますが、機体構造の表現がすべて難しかったです。当然ながら、設定のカラーリングを完全再現はできないので、どこを残してどこを省略するかという取捨選択が今までと違って楽しいところであり、難しい部分でもありました。いろいろと検証した結果、一見すると素組みでも設定のカラーリングと比べて遜色がないように見えるようにできたのかなと。実は結構バッサリとカラーリングを省略しているのですが、「ここはお客さんの目がいくところだからちゃんとやろう」とバランスを取っていった感じではあります。

──『GQuuuuuuX』という作品にとっても、主人公搭乗機はフラッグシップモデルとなるわけですから、価格を上げ過ぎず、かつ組み立てのハードルも上げ過ぎないというバランスも大切だったということですね。

栗原 そうですね。ユーザー層でいえば、今作も新しい層の方がたくさん入ってきてくださっているとは思うのですが、メインとなるのはこれまでガンプラを買い支えてきてくれたコアユーザーの方なんだと思っています。だから、そんなコアユーザーに「今回は新規ユーザーに向けた最新作だから簡単に作れるアイテムなのね」と思わせたくないというところもありました。そこもちゃんと満足していただけるようにしたい。さらに新規の方にとっては価格的に手に取りやすいよう考えてバランスを取っていったかたちですね。

──実際に組み立ててみると、シールを使うところも最小限ながら、かなり細部まで色分けが再現されていると感じました。

栗原 実はちょっとやり過ぎたかなと思えるところもあります(笑)。一方で今回はホイルシールもあまり使わない方向にしました。

──背部のスラスター周りなどは色の表現がかなり省略されていますね。以前ならば、ホイルシールを使ってカラーリングを完全再現するようなアイテムもありましたが、今回はあえてそこはやらなかったわけですね。

栗原 かなり機体の形状も複雑なので、完全再現するとなるとシールを貼る手間が大きくなってしまうんです。すごく苦労して再現するのであれば、いっそシールを付けないという選択をしました。手間がかかって難しいとユーザーが感じる体験としてマイナスな気持ちになってしまうし、本質的なところを考えたらシールがいらない部分もあると思うので。ユーザーが「完成できた!」と気持ちがいいまま終わっていただくほうが、今後もガンプラを買って揃えてみようという気持ちになってもらえるかなと。

──大きいパーツにシールをきれいに貼るのは難しかったりしますからね。そこで苦労するよりも、完成させる喜びを優先していったわけですね。

栗原 ライトユーザーはそこまで色再現の完璧さを求めていませんし、コアユーザーは「塗装しちゃえばいい」という感じになる。そうした状況を考えた結果、ユーザーの気持ちを考えてシールをオミットしつつ取捨選択しています。

──カラーリングという点でいうと、GQuuuuuuXは成型色の美しさが印象的でした。これまでのキットと比べると光沢が少なくマットな質感になっていますが、素材を変えるなどされているのでしょうか?

栗原 これは結果論的なところが大きいですね。GQuuuuuuXのデザインは機体全体がセミモノコック構造を採用した形状になっています。なのでガンプラでもセミモノコック構造で動いているところはこだわろうと思いまして。そこで、セミモノコック構造特有のフレームが外装を兼ねているような表現をするにあたり、KPSという素材を使うことにしました。KPSはABSの代わりに関節パーツなどに用いられ、塗装ができて摩耗性に強い素材なのですが、それを今回はほぼ全身に使っています。そのKPSという素材がマットな質感なんですね。

──機体表現に合わせて素材を変えたことにともなって、成型色の雰囲気も変わったわけですね。

栗原 いつも外装に使っているPS(ポリスチレンスチロール)という素材は、色数はすごく多いのですが素材として固くてすぐに摩耗してしまうので、関節などの可動には弱いんです。なので普段であればPSとKPSを外装と関節というかたちで使い分けているんです。でも今回のセミモノコック構造は外装でありフレームでもあるので、全身にKPSを採用したというわけです。これまでも美少女プラモデルの肌にはKPSを使っていたんです。ツヤがあるプラスチック的な質感よりも、KPSのツヤがない感じが人間の肌には合っているということで、質感の使い分けにも使用していたのですが、結果的にはロボットに使ってもいいんじゃないかとなりまして。ちなみにラインナップとして発表されている赤いガンダムもほぼKPSで成型されています。

──色味に関しても白や青も新鮮な感じの成型色になっていますね。

栗原 KPSは色の数がまだあまり多くないんです。関節に使うことが多いのでグレーなどはたくさんパターンがあるのですが、明るい色はあまり得意じゃないんです。今回はたまたまいい色がありまして。今回の結果を踏まえつつ、これからは新しい色や配合なども出てきそうです。

──白の色味もいわゆる真っ白な感じではなくて、ちょっと青味がかったいい色ですね。

栗原 これはRG ガオガイガーに使った色なんです。見た瞬間に「これだ!」と思って選びました。成型色に関しては鶴巻監督と山下さんに直接見ていただいています。結構真っ白なパターンと設定画に描かれた青味がかったパターンを用意して、青味がかったほうに決まりました。

次ページ──セミモノコック構造と開発秘話

ⓒ創通・サンライズ

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