伝説的キット “海洋堂の邪神兵” がプラキット版として凱旋。生物的、機械的と異なる魅力を大森記詩が筆塗りで表現
2025.05.16時を超えて目覚めた伝説の邪神
その質感を高めるための「筆塗り」という最適解
海洋堂が昨年末に発売した「邪神兵」。基となった原型は1986年に発表された全高50cmにもおよぶ巨大レジンキャストキットで、荒々しく造形された尾のうねり、緻密に折り重なった蛇腹部分など、ダイナミズムと繊細さとが同居する奇跡の立体物として知られたモチーフだ。その伝説のアイテムが、プラキット版として数十年ぶりに凱旋した。
話は少し脱線するが、この邪神兵を含む、当時の海洋堂『鉄の紋章』関連のレジンキットでのみ名前を聞くことができる謎多き原型師・小比類巻英二氏。その正体に迫る記事をホビージャパンウェブで独占連載しているのでぜひ一読をおすすめするとして(「小比類巻英二」の記事はこちら!)、そうした少々の謎も孕んでいる“海洋堂の邪神兵”を「一度は作ってみたい!」と渇望していた読者も多いことだろう。
本プラキットは組み立てやすさを考慮して原型からダウンサイジングされているとはいえ、その迫力は微塵も色褪せていない。そんな海洋堂のマイルストーンとも呼ぶべき大作に挑むは、若き彫刻家兼モデラー・大森記詩。機甲兵(機械)でありつつ、随所に有機的な形状がちりばめられている邪神兵。その存在感を高めるために彼が選んだ塗装法こそが「筆塗り」だ。筆だからこそできる細やかなテクスチャーと複雑に折り重なったグラデーション。繊細な塗装によってさらに実在感を高められた邪神兵。じっくりと観察して、製作の参考にしていただきたい。
海洋堂 ノンスケール プラスチックキット “ARTPLA SCULPTURE WORKS”
邪神兵
製作・文/大森記詩
ARTPLA SCULPTURE WORKS 邪神兵
●発売元/海洋堂●14300円、発売中●約22cm●プラキット
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ⓒ サンライズ
大森記詩(オオモリキシ)
1990年生。彫刻家。作品製作と並行しながら、模型誌や映像作品・イベント用造形物の製作に携わる。月刊ホビージャパンでは「MIXINGSCAPE」も連載中。HP:「kishiomori.com」