HOME記事キャラクターモデル伝説的キット “海洋堂の邪神兵” がプラキット版として凱旋。生物的、機械的と異なる魅力を大森記詩が筆塗りで表現

伝説的キット “海洋堂の邪神兵” がプラキット版として凱旋。生物的、機械的と異なる魅力を大森記詩が筆塗りで表現

2025.05.16

邪神兵【海洋堂】 月刊ホビージャパン2025年6月号(4月24日発売)

時を超えて目覚めた伝説の邪神
その質感を高めるための「筆塗り」という最適解

邪神兵のプラモデルのメイン画像

 海洋堂が昨年末に発売した「邪神兵」。基となった原型は1986年に発表された全高50cmにもおよぶ巨大レジンキャストキットで、荒々しく造形された尾のうねり、緻密に折り重なった蛇腹部分など、ダイナミズムと繊細さとが同居する奇跡の立体物として知られたモチーフだ。その伝説のアイテムが、プラキット版として数十年ぶりに凱旋した。
 話は少し脱線するが、この邪神兵を含む、当時の海洋堂『鉄の紋章』関連のレジンキットでのみ名前を聞くことができる謎多き原型師・小比類巻英二氏。その正体に迫る記事をホビージャパンウェブで独占連載しているのでぜひ一読をおすすめするとして(「小比類巻英二」の記事はこちら!)、そうした少々の謎も孕んでいる“海洋堂の邪神兵”を「一度は作ってみたい!」と渇望していた読者も多いことだろう。
 本プラキットは組み立てやすさを考慮して原型からダウンサイジングされているとはいえ、その迫力は微塵も色褪せていない。そんな海洋堂のマイルストーンとも呼ぶべき大作に挑むは、若き彫刻家兼モデラー・大森記詩。機甲兵(機械)でありつつ、随所に有機的な形状がちりばめられている邪神兵。その存在感を高めるために彼が選んだ塗装法こそが「筆塗り」だ。筆だからこそできる細やかなテクスチャーと複雑に折り重なったグラデーション。繊細な塗装によってさらに実在感を高められた邪神兵。じっくりと観察して、製作の参考にしていただきたい。

海洋堂 ノンスケール プラスチックキット “ARTPLA SCULPTURE WORKS”

邪神兵

製作・文/大森記詩

ARTPLA SCULPTURE WORKS 邪神兵
●発売元/海洋堂●14300円、発売中●約22cm●プラキット


邪神兵のプラモデルの全体画像その1
邪神兵のプラモデルの全体画像その2
▲ キットの全高は約22cm、とぐろを巻いた下半身部分の直径は約18cm。長大な鎌は約32cmと迫力のボリューム。作例は鎌の柄のみ、プラ製から3mm真鍮棒に置き換え。鎌の先端と後端を切り離し、ドリルで開口して真鍮棒を突き刺している
邪神兵のプラモデルのアップ画像
邪神兵のプラモデルのアップ画像その2
▲ 全身の銀色の部分は28番 黒鉄色をベースに吹き、タミヤエナメル塗料ダークアイアン(履帯色)でトーンを落とす。さらに、凸部を中心にガイアカラー ブライトシルバー→SM208番 スーパージュラルミンの塗り重ねで情報量を上げていく。ハイライトとして76番 メタリックブルーを加えたガイアカラー ブライトシルバーを部分的に重ねた
邪神兵のプラモデルのアップ画像その3
▲ 地肌は金色で、経年で表面が剥離していくことでそれが現れるようになった、という解釈で金色の剥がれをF.S.S.カラー K.O.G.ゴールドで描き込んでいる。通常は地肌の露出というと“銀ハゲ”が多用されるが、アクセント兼・表面の茶色との相乗効果としての金というチョイスだ
邪神兵のプラモデルのアップ画像その6
▲ あらゆる装甲の隙間から、パイプ状のディテールが見え隠れする。本キットが伝説と呼ばれる所以だ
邪神兵のプラモデルのアップ画像その4
▲ スプリング調やシリンダー調などの夥しい情報量のディテール。先述の「地肌は金色」の解釈から、装甲の裏面は金色で塗り潰している
邪神兵のプラモデルのアップ画像その7
▲ 生物的な歪さ、生々しさすら感じる下半身の造形。筆塗りのツヤをそのままに活かした光沢表現によって、独特の質感が生まれている
邪神兵のプラモデルのアップ画像その5
▲ 本体の金属色とは趣が異なる、鈍く輝く鎌。タミヤエナメル塗料 クロームシルバーで刃の方向を意識しながらヘアラインを描き込むことで、“刃物の使用感”を高めている

[次のページ]ラッカー塗料の筆塗りで邪神兵に命を吹き込む >

ⓒ サンライズ

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大森記詩(オオモリキシ)

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