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【大人の工場見学】先端技術と匠の技をあわせもつ「無限邂逅メガロマリア」。生産工場・菊池製作所を訪ねてプラモデルが生まれるまでを見てみよう

2025.04.26

国内製造の強みをフルに発揮して生み出されるプラモデル「無限邂逅メガロマリア」

 月刊ホビージャパンにおいて、メーカーの裏側や博物館などの取材記事をお届けする「大人の社会科見学」がガールズプラモスタイルに初出張! コトブキヤのオリジナルプラモデルシリーズ「無限邂逅メガロマリア(以下、「メガロマリア」)」の生産工場である菊池製作所にお邪魔してきました! 「メガロマリア」はコトブキヤが国内製造プラモレーベルとして掲げた「TOKYO Mark」のひとつでもあります。今回は「メガロマリア」が生まれる過程や菊池製作所&コトブキヤによるインタビューも交えて、“日本国内製造”を掲げたコトブキヤの取り組みを見ていこうと思います! それではいってみましょう〜。

取材・文/フミテシ

TOKYO Markとは?

 日本国内の生産技術を取り入れた商品を展開するレーベル。各地に点在する多様な技術をもつ工場と協業体制を組み、コトブキヤの本社がある東京へ集約、発信を行い、本レーベルとしてのこだわりを取り入れた商品の展開を目指しています。


菊池製作所とは?

1970年の創業から、開発・設計から金型製作、試作、評価、量産に至るまでの「一括・一貫体制」を確立し、ありとあらゆる分野の新製品開発をサポートしてきた総合ものづくり支援企業。本社のある東京都・八王子をはじめ、福島の各所に工場を設けています。これまでにさまざまな商品の開発や設計、金型加工、成型を行ってきた経験が「メガロマリア」シリーズでも随所に活かされています。

▲こちらが東京本社。本社とともに工場ブロックも併設

コトブキヤと菊池製作所はご近所さん!

▲コトブキヤ本社がある立川と、菊池製作所がある八王子はご近所! この距離感も商品開発のスピードに大きく関係しています。商品の修正、企画の打ち合わせなどを顔を合わせて迅速に行えるのも国内製造ならではの利点です

▲最寄駅はJR中央線・高尾駅。東京でも有数の自然豊かな場所で、プラモデルが生産されています。山あいにある工場付近には鹿や猿などの野生動物が出没することも

菊池製作所へGO!! プラモデルが生まれるまでを見てみよう

■工場へのデータ納品

 まずはプラモデルを作るためのデータが必要です。それはコトブキヤの原型師によって「原型データ」として作り出されます。この原型データは分割なども考慮されたものとなっていますが、受け取った工場側で再度金型に適したデータかをチェック。分割やパーツ配置(金型レイアウトとも呼ばれます)を検討したものを、コトブキヤとともにチェックしてから金型製作に入ります。

■金型を作るぞ!

 まずは金型をご覧ください

▲こちらが「メガロマリア」で使用されるAランナーの金型です。大きな金属枠に、4つのコマがセットされています(下部にはスライドパーツも確認できます)。このように金型は大きな枠に複数のコマが入った状態で「1枚の金型」になっています。コマにすることで、バリエーション展開時での差し替えがしやすかったり、コマごとに整備できたりと大くの利点があります。この全体の様子を頭に入れて、金型ができるまでを見ていきましょう

■コマの土台を作る!

▲先ほど見た大きな金属枠に嵌められたコマたち。まずはこのコマを作るための金属を切り出します。これはワイヤーで金属をカット。シンクのような場所に水が張られていて、その水の中で金属をカットします。カットするのには細くて丈夫な金属ワイヤーを使用。必殺仕事人味あふれるワイヤーです

■マシニングセンタの登場だ!

▲金型を作るのにとても大事なマシンが「マシニングセンタ」。金型設計用のデータを入力して、先ほどカットしたコマを削っていきます。一度スタートすると長時間稼働状態が続き、作る金型の大きさ・複雑さによって稼働時間が大きく変わります。そのため、先ほどのように「コマ」に分けることがとても重要になってきます。コマにすることでひとつのマシニングセンタの稼働時間をコンパクトに納められるので、切削が終わったものから順次入れ替えて、テンポ良く多数のコマを作っていくことが可能となるのです

■放電加工でさらにシャープに!

▲マシニングセンタで削り出した金型のコマをさらにシャープにしたい! そんな時に行われるのが「放電加工」です。放電の熱によって金属を少しずつ溶かす加工で、切削加工で作り出した金型の中でもよりシャープにしたい部分の精度を上げることが可能です。「メガロマリア」のシャープなエッジにもこの加工が施されており、油のプールに金型のコマを入れて加工されます

■人の手でフィニッシュ!!

▲最後は人の手でフィニッシュ。顕微鏡で細部をチェックし、金属ヤスリなどを駆使して仕上げていきます。金型を傷つけないように柔らかめの銅棒をハンマーのように使用して、金型のピンなどを打ち出します。丸い棒だったものが、打ち付けるたびに圧力でキノコの傘のような形状になっているのがすごいです

クリアーパーツの金型がすごい!

▲こちらがこれまでの工程を経て生み出された「メガロマリア」のクリアーパーツの金型。パーツ部分に寄ってみます

ピカピカなのだ!

▲これだけ緻密なクリアーパーツを作るには磨き込みが必須。磨き込みについては企業秘密との事。鏡と言えるような輝きをもつ金型を作り上げました

こっちもすごい! 本体のマットな質感

▲「メガロマリア」の本体パーツは滑らかなツヤ消し仕上げになっています。これは金型表面に目に見えないほど微細な凹凸をつけることで、成型したプラのツヤが無くなるように仕上げられています。金型のパーツ部分もツヤがなくぬめっとした表情になっています。こちらの仕上げは菊池製作所独自の加工方法で行われているようです

成型機にセット! テスト成型して生産へ

 金型の完成がゴールじゃない! こんなにも大変な工程を経て生み出された金型を使って、商品を生産します。しかし、ここから何度も調整を繰り返すのがプラモデルのすごいところ。パーツ精度、組み上げた時の勘合チェックが繰り返されることで、やっと商品のクオリティに仕上がります。

■成型機にセットされた状態

▲プラモデルの生産工程でもお馴染みの光景。作られた金型が成型機にセットされ、生産が開始されます

■工場内のクレーンとレールで金型は運ばれます

▲成型機へのセットや、金型の移動は工場内の天井に巡らされたレールとクレーンで行われます。金型は鉄の塊ですから移動だけでも大変。テストショットを打つときは、さまざまな金型を頻繁に成型機に乗せ替えます

■約30秒おきに1ランナーが取り出されます

▲成型条件を設定すると、決まったリズムでランナーが成型されます。成型時間が一定なことは、成型時のブレの少なさにも繋がります。商品クオリティコントロールにおいても大事になります

■スタッフがしっかりとチェック

▲成型されたランナーをすぐにスタッフがチェック。成型条件OKのランナーの側において、瞬時に見比べます

■梱包!

▲プラモの箱を開けると絶対に手にする透明の袋にランナーが入れられます

菊池製作所の袋のこだわり!

▲袋を開ける時に、ハサミやデザインナイフを使わなくても開封できるように、袋の横に切り込みが入っています。こちらはコトブキヤからの提案。実際「袋を開けるのがめんどくさいから今日は作るのやめておくか…」となるシーンは多いです。この切り込みがあるだけで、バリバリと袋を破っていけるので、テンションが下がることはないのです

■袋詰めされたランナーはコンテナに収納

▲ひとつの箱に77枚のランナーが入ります。成型されたパーツはこのようにコンテナに収納されて、最後のパッケージング作業をする場所に運ばれるのです

 この工程を辿ってみなさんの元に「メガロマリア」が届きます。次のページからはこの工場で働く菊池製作所のスタッフインタビューをお楽しみください

© KOTOBUKIYA

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