エアブラシと筆塗り、どう楽しむ?
伝説のモデラーたちの本音トーク
※本WEB記事は2025年5月号特集「エアブラシの新常識2025」の最後に掲載された記事をさらに読みやすく編集した抜粋記事になります。
去る2024年10月に秋葉原にて開催された月刊ホビージャパン55周年記念イベント。そこで行われたトークショーは、まさに模型界の“伝説”たちが集う豪華な顔ぶれだった。
一見、今回のエアブラシ特集の最後にこのトークショーを取り上げるのは唐突に思えるかもしれない。しかし、実はこのトークこそが、本特集を企画するきっかけのひとつだった。エアブラシの技術や使い方だけではなく、筆塗りとの関係性、さらには道具や塗料の進化といった話題が次々と飛び出し、まるでこの特集の方向性が予見されていたかのような内容だったのだ。
本特集の締めくくりに、そんなトークショーの一部を抜粋してお届けする。この議論の中に、模型製作をもっと楽しむためのヒントが必ず隠れているはずだ。
文/オオマツ(ホビージャパン編集部)






どっちも使えるようになるのがええよ
横山:エアブラシと筆を、どっちも上手に使えるようになるようにしようか、みんな。まずエアブラシの使い方に関して言うと、みんな紙とかに試射してから塗装してると思うんだけど、紙とプラモデルの表面は全然別物だから上手くなりたいんだったらあれはやめましょう。もちろん始めたての頃はいいよ。
テツオ:え、じゃあプラ板とか使うんですか?
横:プラ板もいいけどちょっともったいないからワシはいつも白い陶器の器に試射してますね。
テ:陶器ってめっちゃ塗料はじかないですか?
横:上手く調整したらはじかないのよ、実は。
MAX渡辺:ひとつ補足するなら、陶器っておっしゃる通りめっちゃはじくんですよ。でも陶器ではじかないくらいの濃度で吹けば、プラではじくわけがない。っていう理論なんですよね。
テ:でもそうなったらかなり塗料を濃くしないといけないですよね。
M:さらに言うと、できるだけ接近して、できるだけ濃くする。そうしたらどんなプラの面にも塗れますよ。濃すぎたらアウトだけどね。
セイラマスオ:ぶつぶつってなりますよね。
M:そうそう。そうなったら濃過ぎる。逆に薄くし過ぎると、風圧で塗料が流れていくんだよね。
横:吹き付ける量の問題でもあるんだよね。ちょっとゆるめて、だんだん開く感じで様子を見るといいんだけど、これはどうしても経験になっちゃうかもしれない。エアブラシを実際に吹いてみたり、とにかく遊んでみると自分にとって一番いい濃度が見付かるようになるよ。
M:それで言うとボクが提唱したMAX塗りって、実はエアブラシ上達のための一番いい方法だと思ってるんですよ。ずーっとハンドピースを握ってて人差し指とかが痛くなってきたりするんだけど、距離、濃度、風圧、吹き時間とか、エアブラシに関係する全部を考えて塗装する必要があるんだよね。それで、その要素のことを理解するためには、「白立ち上げ」をして練習するのが一番いいんだよ。
横:それは辛そうだから遠慮しておきます……(笑)。
M:おいおい(笑)! と言いたいところだけど、実際大変だったから今は筆塗りが多いんですよね(笑)。でもやっぱりMAX塗りは魅力的な塗り方だと思うからいつか誌面でも見せたいよね……。
木村:いいですね、いつかやりましょう。
自分がやった作業を疑うことが大事
横:気圧とか温度とか、日によってエアブラシの塗料の出方とか乗り方って全然違うんですよ。だから、温度計と湿度計は部屋にあったほうがいいよ。
清水:数字で確認してるんですか?
横:そう。自分の感覚を信じてないんですよ。
セ:正直、横山先生は感覚で全部やってしまう人かと思ってました。
横:ううん。今日熱いなと思ってたら街歩いてる人冬服着てたりするからね、もう駄目なの(笑)。
テ:それは本当に駄目だと思います(笑)。
一同:(笑)。
横:だから自分を信じないほうがいいんですよ。
M:「自分を疑ってかかれ」と考えると理解しやすくなるかもしれないですね。
横:そうだね。
M:「自分がやったことって本当はどうだったんだろう」って自分を疑ってもう一度作品を見ることって、すごく大事なことだと思うんだよね。例えば、パテを盛ってすごく大きくしたつもりだったのが、実はそんなに盛れてなかったみたいな感じ。
木:確かにありますね。
M:他にもエアブラシの塗装にしたって、2回塗った面に対して「2回も重ねて塗ったんだからもうここは発色してるでしょ」みたいな自分の決めつけがどこかにあるじゃない。
テ:本当はチェックしないといけないところをそれで抜かしてしまうんですね。
M:そう。だから自分のやっていることを客観的に見ることが出来れば、最終的なプラモの仕上がりはみんながいいね! と言ってくれるようなものになるはずなんだよね。
横:だから自分が書いたことを改めて振り返ってみたら言えるんですけど、模型雑誌に書いてあることって嘘ばっかりなんですよ(笑)。
会場がどよめく
M:とんでもないことを言ってる(笑)!
テ:え〜、このトークショー終わりです(笑)!! ホビージャパン55周年記念イベントでなんてことを(笑)!
木:とりあえず続けてください(笑)。
横:うんうん(笑)。なぜかというと、ワシが昔書いたことが今となっては嘘になってる。技術も、道具もどんどん進化していってるなかで、1年前、2年前に「これは正しいです」って言ってたことがひっくり返されてることが普通にあるんですよ。特にワシが書いた本の「Ma.K.モデリングブック」とかは嘘ばっかり(笑)。もう一回書き直したいくらい。
M:それで言うと、昔の塗料で実践してるHow to記事を今の塗料でやってみるのは絶対不可能だよね。今清水さんが実演してる「清水式筆塗り」の塗装法って昔の水性ホビーカラーだったら絶対できなかったもんね。
清:絶対無理ですよ。本当に。
木:だからこそ模型誌でも、1年に1回はツールマテリアル系の特集はやってるんですよね。
テ:じゃあやっぱり最新号もずっと買い続けないといけないわけですね!
木:いい締め方をしてくれましたね(笑)。本日は皆さんありがとうございました!
(2024年10月、AKIBAカルチャーズZONEにて収録)
この伝説のトークショーでMAX渡辺が発言した、「MAX塗りは魅力的な塗り方だと思うからいつか誌面でも見せたいよね……。」が誌面でまさに実現したのが本特集「エアブラシの新常識2025」。
誌面と同時に動画でもMAX塗りを解説しているため、ぜひこれらの最強のコンテンツであなたの春からの模型製作の糧にしてほしい。
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