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【エアブラシの新常識 2025】ガイアノーツとレイウッド、そしてプロモデラーが語る“エアブラシ(とそれ以外)”に関するよもやま話

2025.04.18

メーカー×モデラーエアブラシ放談 月刊ホビージャパン2025年5月号(3月25日発売)

メーカー×モデラー放談

業界関係者が語るエアブラシ(とそれ以外)に関するよもやま話

 2020年の特集「エアブラシの新常識 2020」以来、5年ぶりとなる「エアブラシの新常識 2025」となった「月刊ホビージャパン 5月号」。5年の間に変化した(または変化しなかった)エアブラシ塗装とプラモデルをめぐる諸々について語ってもらうべく、塗料とツールのメーカー、そして本誌にて活躍するプロモデラーを召集! エアブラシと現在の模型シーンに関するあれこれを語ってもらった。プラモデルと塗装を知り尽くしたプロ4人が2時間半以上にわたって喋り倒した放談を、じっくりお楽しみいただきたい。

取材/ホビージャパン編集部、文/しげる

ガイアノーツ矢澤乃慶

矢澤乃慶 Noriyoshi YAZAWA

ガイアノーツ 取締役

 模型用塗料メーカー・ガイアノーツの取締役。ガイアノーツは高性能な塗料ブランド「ガイアカラー」を展開しており、発色の良さや隠蔽力の高さに定評がある。特に偏光塗料やメタリックカラーの表現力は多くのモデラーから支持されている。さらに、アニメ作品とのコラボカラーや、ホビージャパン誌面でも活躍するプロモデラーがプロデュースした特別なカラーも企画・発売するなど、塗料を通じて模型表現の幅を広げ続けている。

レイウッドCTO開発のK

開発のK Kaihatu no K

レイウッド CTO

 レイウッド(RAYWOOD)のCTO。新進気鋭のエアブラシメーカーで、商品の企画を担当する。レイウッドはメーカー直販によってコストを抑えた高コスパなアイテムを展開しており、話題の充電式エアブラシをはじめ、卓上カッターマットやタガネなど幅広い商品ラインナップを誇る。さらに、YouTubeを中心に模型関連の動画を精力的に配信し、役立つ情報を発信中。気になった方はぜひチェックしてみよう!
https://www.youtube.com/channel/UCsQWRbVCyFRpXzg9X3A7NLg

コジマ大隊長

コジマ大隊長 KOJIMA DAITAICHO

プロモデラー

 モデラーとして幅広く活躍し、ディオラマ製作や心地良い汚し塗装に定評がある。今回の特集では、本放談に続き「月刊ホビージャパン 5月号」P.34からHGサザビーをエアブラシ塗装の花形であるグラデーション迷彩仕上げで陸戦型に塗装。また、RAYWOODの公式YouTube動画にもたびたび出演し、プロモデラーとして模型のテクニックや知識をわかりやすく解説している。

けんたろう

けんたろう KENTARO

プロモデラー

 月刊ホビージャパンの人気連載「月刊工具」などで活躍し、ホビージャパンのHow to系特集には欠かせない存在の“How to番長”。工具や塗料の知識は豊富で、ご意見番としても信頼されている。その豊富な知識で、最新のアイテムも自在に使いこなす実力派。本特集では、「月刊ホビージャパン 5月号」P.61から水性塗料アクリジョンを使ったエアブラシ塗装でHG ケンプファーを製作している。


ガイアノーツは、前回特集から変化ナシ?

—前回「エアブラシの新常識」というテーマで特集を組んだのが2020年だったんですが、そこから5年が経過したということで、今回は現状に合わせてアップデートしたものをお届けできればと考えているんですが……。

けんたろう 5年前って、溶剤にすごくテコ入れがあった時期で、ガイアさんだったらプロユースシンナーとかが出た時期だったんですよね。そういう強力な溶剤があるのを前提にして、どう希釈してどう使ったらより良く吹けるのかをテーマにした感じでした。

矢澤 自分としては、この時期って超高性能な塗装ブースの登場も一大トピックだったんですよ。高圧のコンプレッサーで濃い希釈の塗料をふわっと吹くのは、「ネロブース」の存在があって初めて可能になったので。

コジマ大隊長 塗装環境の背景として、そういう商品が出揃った時期でしたよね。選択肢が増えたというか。

 そこから5年経ってどうなったんだっていう話だと思うんですけど、ぶっちゃけウチとしてはなんにも進歩してないんですよね。こう言うと、この対談がこれで終わっちゃうけど(笑)。ただ本当に、いまさら溶剤を何か別のものに変えたとか、塗料の作り方を変えたとかは一切ないです。

 進歩がないって言っちゃうとアレですけど、変わらない部分もあるじゃないですか。

塗料メーカーとツールメーカーの関係は
ソフトとハードの関係に近い

 そうなんですよね……。塗装に関する環境全般ということでいえば、それこそRAYWOODさんが出てきたりとか、いろいろあったけど、でも基本的には0.3mmのハンドピースを使って色を塗っているのは変わらない。……しかし、なんでハンドピースって0.3なんでしょうね。ウチが事業を始めた時から標準的な口径って0.3で、メタリックやパールも全部0.3で吹けるように調整しようと、0.3に寄っていったんですが。

ガイアノーツ矢澤乃慶2

RAYWOOD ウチにしても、全社的に「標準となる口径を決めよう」って話し合って0.3を基準にしてるとかじゃないです。ただ、個人的な意見としては、市販のプラモデルくらいの大きさのものを想定した時に、0.3で違和感がないんですよね。大きいものを塗ることはいくらでもあると思いますが、少なくとも自動車を塗るようなスプレーガンはいらないじゃないですか。上限があるにしても、1mmで相当ギリギリだと思うんです。

 突き詰めると「そもそも日本に最初に塗装システムとして入ってきたエアブラシが0.3mmだった」みたいな話らしいんです。で、そうやって基準が決まっていると塗料メーカーとしてはそこに合わせるしかないんですよね。塗料を希釈するにしても、0.3で吹けるものを紹介することになっちゃう。エアブラシを作ってるメーカーに付いていくしかないんですよね。

R そう考えるとソフトウェアとハードウェアの関係に近いものがありますよね。

正直みんなよくわからないまま
塗ってるんですよ

 塗料って、いわゆるカタログスペック的なものがあるにはあるんですよ。自分がおもてに出ていろいろと話すようになったのって、そこをわかってほしいという理由からなんです。どういう状況、どういう希釈で割ればきれいに塗れるか、基本的に全部数値が出てるんです。そういうなかでよく言ってるのが、「まずは塗料と溶剤を1:1で割ってください」という話ですね。何か上手くいかなかったら、コンプレッサーの気圧をいじるとかじゃなくて、まず希釈の割合だけ調整してほしい。

 もうね、正直みんなよくわからないまま塗ってるんですよ……。それこそ、25年くらい前はエアブラシってマジでみんなよくわからないままなぜか使えてたっていうのが本当のところで。自分なんかも、動かすとドルドルいうような強烈なコンプレッサーにエアブラシをそのままつないでましたから。高圧なコンプレッサーを使えば塗料も出るし、塗れるは塗れるんですよね。でも、他の人がやってるようなグラデーション塗装ができない。そこに気付いてレギュレーターをつないで、ようやくきれいに吹けるようになって……という、一個一個経験を積むことでしか扱えるようにならなかった。

 言い方はアレかもしれないですけど、こういう使い方って民間療法みたいなもんなんですよ。実際、車を塗装するみたいな、工業的なジャンルの塗装工程にはちゃんとしたテクニカルガイドがあって、それを基にして塗装するようになっている。

 そういうマニュアル面の話だと、リターダーって最初はよくわからなかったんです。「乾燥を遅くします」って書いてあるから、それってデメリットじゃんと思ってたんです。でも、矢澤さんが「リターダーって魔法の液体で、流展性を高めるものなんだよ」って教えてくれて、ようやく飲み込めた。

 塗料って、実はいろいろなものが入り混じって乾燥の早さがデコボコしているんです。そのデコボコしている部分の乾燥速度を均一にして、同じタイミングで全体が乾燥するようにすると塗面が平滑になる。リターダーってそのために入れるものなんです。

 いろんな塗料が混ざっていてもそれらの乾燥を標準化することで塗面を平らにするっていうことなんですよね。でも、そういう技術的な話ってメーカーさんも伝えづらいんだろうとは思うんです。

 まさに、そういう話はいっぱいありますね……!

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