HOME記事スケールモデル令和の傑作「零戦」キットを筆塗りモデリング!世界初となる三菱製・中期型モデルを丁寧な工作と面相筆での塗装でキレイに仕上げる!

令和の傑作「零戦」キットを筆塗りモデリング!世界初となる三菱製・中期型モデルを丁寧な工作と面相筆での塗装でキレイに仕上げる!

2025.04.17

零式艦上戦闘機五二型(三菱製・中期型)【ファインモールド】●有賀和雄 月刊ホビージャパン2025年5月号(3月25日発売)

有賀和雄製作「零式艦上戦闘機五二型(三菱製・中期型)」

令和に生まれたファインモールド製傑作キットを筆塗りで仕上げる!

 初飛行から約85年、昨年末にファインモールドが満を持してリリースした1/48零戦五二型は、昨今のスケールモデル界最大の話題作といっても過言ではない。世界初となる三菱製・中期型をモデル化、実機と同様の分割方式で一体成型された胴体、フレームとガラスを別体としたキャノピーなど金型成型技術の粋を尽くした、初心者からベテランまで気楽に作れる令和の傑作零戦キットを筆塗りモデリング!

有賀和雄製作「零式艦上戦闘機五二型(三菱製・中期型)」右側面
有賀和雄製作「零式艦上戦闘機五二型(三菱製・中期型)」前方アップ
▲零戦五二型は、二二型をベースに主翼幅を短縮し翼端を丸く整形、カウリングとスピナを再設計、排気管を推力式単排気管としたタイプ。最大速度は約20km/h、急降下速度も大幅に向上している
有賀和雄製作「零式艦上戦闘機五二型(三菱製・中期型)」右側面前方寄
▲昭和18(1943)年8月に「五二型」(A6M5)として制式採用、三菱で生産を開始。生産初期は二二型と同様の集合排気管を装着していたが、中期から単排気管に変更、ファインモールドではこの時期の生産機を再現している
有賀和雄製作「零式艦上戦闘機五二型(三菱製・中期型)」キャノピー
▲今回の零戦キットの特徴のひとつであるキャノピー。ガラス部と窓枠が別パーツ化され、塗装時の作業効率やリアリティが向上。なお従来型の一体キャノピーパーツも付属するので、オールドタイプのモデラーも安心だ
有賀和雄製作「零式艦上戦闘機五二型(三菱製・中期型)」主脚周りやその収納庫内部
▲機体各部でリベット表現を変えるなど、ヒコーキ模型へのプライドと職人気質を感じる表面モールド。主脚周りやその収納庫内部ももちろん精密な仕上がりだ
有賀和雄製作「零式艦上戦闘機五二型(三菱製・中期型)」右側面後方寄
▲零戦の美しいフォルムをみごとに再現。パーツ精度の高さを利用し、垂直尾翼、アンテナ支柱、フラップなどを着脱式とし、コンパクトに収納できるようにした
有賀和雄製作「零式艦上戦闘機五二型(三菱製・中期型)」製作途中エンジン
▲栄二一型エンジンは点火コードを0.14mm銅線、調速機操作ロッドをランナーで追加。排気管は開口し溶接跡も追加
有賀和雄製作「零式艦上戦闘機五二型(三菱製・中期型)」製作途中主脚収納部
▲主脚収納部。上から前部側壁、主翼上面パーツ、後部側壁、各側壁が分割しているのであらゆる追加工作が可能
有賀和雄製作「零式艦上戦闘機五二型(三菱製・中期型)」製作途中垂直尾翼とアンテナ支柱
▲収納を考慮し垂直尾翼とアンテナ支柱は着脱式に。空中線は伸縮するファインリギング0.082mmを使用している
有賀和雄製作「零式艦上戦闘機五二型(三菱製・中期型)」製作途中20mm機銃銃身とピトー管
▲20mm機銃銃身とピトー管は、リアルかつシャープな再現が可能なファインモールドの純正金属製パーツに交換
有賀和雄製作「零式艦上戦闘機五二型(三菱製・中期型)」製作途中キャノピー
▲キャノピーはガラスとフレームが別体のタイプを選択。機体が全面リベット表現なのでフレームにも打ち込んだ
有賀和雄製作「零式艦上戦闘機五二型(三菱製・中期型)」製作途中コクピット
▲ワンピースの胴体Cパーツに収まるコクピット。少ないパーツでリアルな仕上がり、追加工作も最小限で済む
有賀和雄製作「零式艦上戦闘機五二型(三菱製・中期型)」製作途中九八式射爆照準器
▲クリアー成型の九八式射爆照準器は、フィルターをクリアーオレンジに塗り、照準リングをエッチングパーツに変更
有賀和雄製作「零式艦上戦闘機五二型(三菱製・中期型)」製作途中主脚
▲主脚のディテールアップ。オレオ部のトルクアームを開口し、フォークの溶接跡やブレーキラインなどを追加再現

キットについて
 ファインモールドの日本大戦機への情熱はヒコーキモデラーならご存じの通り。黎明期の彗星艦爆、九六艦戦を始め数多くの銘キットをリリースしている。 今回の零戦五二型は昨年10月の全日本模型ホビーショーで発表され注目を集めた。単排気管直後のパネルに耐熱鋼鈑の補強がアル(中島製)ナシ(三菱製)、というマニアックな切り口で「三菱製と中島製」の2種を同時リリース。最大の特徴は「胴体一体成型」を採用。実機と同じ前後分割構造とし、後部胴体においてはスライド金型を用いた一体成型とした。面倒なキャノピーフレーム塗分けは窓枠とガラス部を別パーツ化することで作業効率だけでなくリアリティも向上。コクピットやエンジン周りの精密さは三次元レーザー彫刻機で再現。機体全面に彫刻された凹リベットは抑揚があり部分的に雰囲気を変えている。つまりキットを開けると最新技術で成型された半完成品の前後胴体パーツが「ここまで準備したので、さぁ作ってくださいよ」と言っているようだ。つまり初心者からベテランまで気楽に作れるこんな製品なのだ。

実体験したプレーンズ・オブ・フェイム所有の五二型をイメージに作ってみた
 最初の「里帰りフライト」78年8月の桶川では臨時整備場(観客席対岸の茂み)にて、機乗・デモフライトでは滑走路脇にてスティーブ・ヒントンの超低空奇襲に身を伏せた。95年8月の竜ケ崎ではP-51Dと並行で取材、日米の違いを実感。こんな希少な体験イメージを抱き製作に取り掛かる。

キットは令和の零戦にふさわしい完成度
 手に取って作って感動を実感してほしい、初心者や子供たちにも作ってほしい、こんなキット。
・パーツが少なく組み立て簡単。「胴体一体成型」で工程数が半減、すぐ完成するだろう。
・実機を3Dスキャンしたであろうナノ・アヴィエーション仕様キャノピーフレームは正確でリアル。
・作り手に配慮したパーツ構成。胴体や主翼など通常接着後にサンドペーパー等の処理が必要だが、本キットは表に見える部分は主翼前縁と垂直尾翼のみ整形すればOKで余計な手間がかからない。主翼端は上下塗分けラインで分割しているので整形不要。主翼上面パーツは通常左右分割だが上反角をつけた状態で左右一体成型し、翼端近くまで長く高剛性の主桁パーツにより固定できる。このような配慮が随所に見られる。
・機体全面に彫刻された凹リベットは妥当なスケール感。一見オーバースケールかと思ったが、塗ってみるといい感じ。胴体・主翼の抑揚あるアナログ的リベット表現、カウリングの緻密なリベット、尾翼のシャープなリベット、部分的に表現を変えているようでヒコーキ模型へのプライドと職人気質を感じる。

製作の注意点
 組立説明書に従えば令和の零戦が完成する。接着剤の使い分けも記述してあるが、作例では「流し込み速乾タイプ」を主に使用。これはプラが軟質で薄く、事後変形回避のため。「胴体一体成型」のCパーツにコクピットユニットを収める際、説明書STEP10にも記載があるが、絶対に接着しないこと。Cパーツが極薄なので事後変形が想定できてしまう。この際、コクピットユニット周囲は必ず整形して抵抗なくCパーツに収まるように。Cパーツが広がると主翼上面パーツと干渉し上反角が下がってしまう。作例ではキットの精度を生かし、垂直尾翼~アンテナ支柱、フラップ、増槽タンクを着脱式にしてコンパクト収納化。また、細かな気付きの部分は都度修正している。

零戦の塗装色は自分の解釈で
 塗装については、組立説明書に従えば問題ないだろう。作例はGSIクレオスのMr.カラーを使用、ウェザリングはガイアエナメルカラー。色の考証は種々の解釈が多岐にわたるけれども、あくまでも自分のイメージで色を作っている。塗装はすべて筆塗り。今回は完成された表面モールドを消さないのがポイントになるので面相筆のみで塗っている。最初に日の丸を鉛筆で下書きしフリーハンドで手描き、重ならないように機体塗装、デカール貼り。塗料は2倍程度に都度スポイトで希釈して薄く塗る。3回程度で色が乗るので2000番の耐水ペーパーで部分的にムラやゴミ取りを行う。ウェザリングは下面を主にエンジンのオイル汚れ等にとどめ上面は明確なパネルの溝などをスミ入れ、搭乗時のブーツ擦れをシルバーグレイで点描、給油口や注意の赤書きを入れる。最後に木綿布で上面を乾拭き仕上げした。豊橋基地第381航空隊の写真は有名で多く掲載されている。新造機で汚れがなくピカピカの印象。この機体の上面を汚すのは整備兵にも失礼と思い、キレイに仕上げたつもりですが如何だろうか。

ファインモールド 1/48 スケール プラスチックキット

零式艦上戦闘機五二型(三菱製・中期型)

製作・文/有賀和雄

帝国海軍 零式艦上戦闘機五二型(三菱製・中期型)
●発売元/ファインモールド●4950円、発売中●1/48、約19cm●プラキット


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