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陸上自衛隊 155mm りゅう弾砲 FH-70

2021.04.22

陸上自衛隊 155mmりゅう弾砲 FH-70【ホビージャパン 1/35】 月刊ホビージャパン2021年5月号(3月25日発売)

発売目前! ホビージャパン初のオリジナルインジェクションキットを即攻レビュー!!

 2019年の発表以来、本誌でもたびたびその開発状況が公開されてきた、ホビージャパン初のプラインジェクションキット「1/35 陸上自衛隊 155mmりゅう弾砲 FH-70」。徹底したリサーチを基にした精密なディテール再現はもちろん、スケールキットの域を超えた、可動ギミックの追求により、開発には少々時間はかかったが、ついにこの4月に発売が決定した。そこで今月号では、このFH-70を自衛隊装備への造詣も深い井上賢一の製作でキットレビュー。そのポテンシャルを余すことなくご紹介しよう。

▲陸上自衛隊の主力火砲として全国の野戦特科部隊に配備されている155mmりゅう弾砲を1/35スケールでキット化。なお、製品版では付属デカールにより各部マーキングが再現されているが、今回は試作品のため、マーキングの一部が製品版と異なることをご了承いただきたい

砲撃時

装填時

▲垂直鎖栓と装填トレーの一部パーツを差し替えることで、移動および砲撃時と砲弾の装填時の両方を再現することができる

徹底した可動再現であらゆるシーンに対応!

▲本キットの見どころといえるのが、こだわりの可動ギミックで再現された自走状態への変形。繊細なパーツが多いため、製作の際には塗装と接着に特に注意を払う必要はあるが、可動部の強度は想像以上にしっかりと確保されている印象だ

▲主輪の変形。ドライブシャフトの差し替えが必要だが、ピンセットを使えばスムーズに行える

▲トラベルロックも先端のロックピンに至るまで可動。実物さながらの動きを楽しむことができる

▲砲脚の展開。後方の操向輪はパーツの差し替えで分離状態が再現できる

▲APU(補助エンジン)部のカバーは取り外し可能。内部の1800cc水平対向エンジンは整備シーンのディオラマ等にも活かせそうだ
▲今回の作例では、実機資料を参考に運転席と射撃手のシートにプラ板とマスキングテープで自作したベルトを追加している

▲下部砲架後面、左砲脚後部には0.3mmハンダ線で配線、配管を追加

▲FH-70に劣らない再現度の高さで、作例を担当した井上氏も驚いたというキット付属のアクセサリー。写真手前からラマー(装填棒)、装薬缶、砲弾、コリーメーター
▲駐鋤(ちゅうじょ)は取り外し可能。車両によるけん引時はこのように砲脚の上部に載せられる
▲砲脚内側の装備品も追い彫りを行い立体感を強調した

▲APUユニット部にも0.3mmハンダ線で配線を追加。完成後も意外と見える部分なので効果的なディテールアップといえるだろう

■待ってました!
 今回のお題目は国内外のAFVファンから今大注目の、ホビージャパンオリジナルキット第1弾“155㎜りゅう弾砲FH-70”であります。本砲は《Field Howitzer 1970s=FH70》という形式が示すように1970年代に西ドイツのラインメタル社および英国ヴィッカース社をメインコンストラクターとし、そこにイタリアが参加する3国共同開発という形で誕生しました。
 我が国の陸上自衛隊でも《155㎜りゅう弾砲》として制式採用(自国開発ではないため“○○式”は付かない)、1983年より日本製鋼所によるライセンス生産により400門以上が生産され全国の野戦特科部隊へ配備、現在でも主力火砲として活躍しています。
 本砲の最大の特徴はなんといっても操砲用油圧発生装置として装備されたAPUユニットのエンジンにより走行可能であること~まさに“自走砲”ですね♪
 オリジナルモデルではフォルクスワーゲン社製VW127型 1.8ℓ空冷水平対向4気筒エンジンが装備されているそうですが、自衛隊仕様は富士重工業(現スバル)製の水冷水平対向4気筒エンジンに変更。他国のモデルと異なるフロント・バンパー後方のカバーが、いかにも“ラジエーター入ってます”って形状に変更されています。
■キットについて
 さて気になるキット内容は物すごいリサーチと再現力で製作された、大判ランナー5枚の他、タイヤ類はエラストマーで、さらに灯火類はクリアー部品で準備、そこに大判デカールがセットされるという火砲のキットとしては充分過ぎる内容。
 本形式初のインジェクションキットながらズバリ決定版と断言できる仕上がり♪
 また砲弾・装薬缶・ラマー(装填棒)・照準コリメータ等のアクセサリーが付属、ディオラマ化する場合に嬉しい配慮ですね♪
■各部の製作ポイント
1.砲身ユニット
 砲身本体は特徴的なマズルブレーキ/砲尾一体の左右分割式です。部品自体がとても長いので接着時は直進性が損なわれないように、また真円が出るように注意しましょう。砲尾部の尾栓は“開/閉状態”を、また砲弾装填用トレイは“降下/上昇状態”を各状態の部品を準備/差し替えることで再現できるようになっています。このうち尾栓は塗装厚を考えて砲尾部とのスリ合わせをシッカリと行っておきましょう。
2.上部砲架部
 まず砲身が乗る揺架部分を組み立てるのですが、“滑動レール”部に嵌る砲身ユニットが塗装後もスムーズに動かせるように念入りにスリ合わせをしておきましょう。砲手側の砲架柱には“JPERI-R13型パノラマ眼鏡”および普段お目に掛かれない“直接照準眼鏡”が精密に再現されています。今回はこれらのレンズ部をピンバイスで彫り込み“開眼”して使用しました。
3.下部砲架・砲脚部
 ここでもまず長大な砲脚2本を歪み無く丁寧に仕上げます。APUエンジンおよび操縦席を搭載するための複雑なパイプフレームは、一見すると大変難しそうに感じますが、インスト通り丁寧に組み立てることでキッチリ再現することができます。今回は塗装手順を考えエンジンを後載せとしました。
 非常に難しい曲線で構成される駐鋤は完成後も実車同様ロックハンドルを操作することで着脱が可能になっています。今回は一体モールドで再現された取手を真鍮線に置き換えました。簡単なディテールアップとして左砲脚後部に装備したブレーキ用圧空供給ユニットの配管やメインフレーム後部の油圧配管、バッテリー配線等の最小限目立つ部分のみハンダ線で再現してみました。
■塗装
 塗料は自衛隊装備を製作する際には欠かせないGSIクレオスの“陸上自衛隊戦車色カラーセット”をベースに塗装しました。迷彩パターンは関東在中者には馴染み深い、インスト指定の宇都宮駐屯地/第12特科隊所属の砲を再現しました。
■最後に
 完成~!! 全国の駐屯地祭でよく見かける装備ではありますが、まさかこんなにデカイとは!! う~ん物すごい迫力ですね♪
 ホビージャパン初のオリジナルインジェクションキットということで大変興味を持っていましたが、正直言って想定を遥かに超える出来映えにビックリさせていただきました♪ 第1弾でこの出来ですから第2弾が今から楽しみですね~♪
それじゃまた!

ホビージャパン 1/35スケール プラスチックキット
“ホビージャパンモデルキット”

陸上自衛隊 155mm りゅう弾砲 FH-70

製作・文/井上賢一

HJM(ホビージャパンモデルキット)ミリタリーラインシリーズNo1
1/35 陸上自衛隊 155㎜りゅう弾砲 FH-70
●発売元/ホビージャパンホビー開発課●7590円、4月中旬予定●1/35スケール●プラキット

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井上賢一(イノウエケンイチ)

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