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PZL P.11c ポーランド空軍戦闘機

2021.04.23

ポ・PZL11c ガル翼戦闘機【IBG 1/32】 月刊ホビージャパン2021年5月号(3月25日発売)

「ポーランド人の零戦」がビッグスケールで登場!

■ポーランドを代表する戦闘機
 ポーランドのメーカーであるIBGから同社初めての1/32キットとしてPZL P.11cが発売されましたので、さっそくレポートしたいと思います。
 まずIBGというメーカーですが、1/72のAFVを多くラインナップしているという認識でしたが、数年前から母国ポーランドの機体を中心に1/72でリリースを開始、今回いきなり1/32という大スケールで登場して少々驚きました。第一弾アイテムとして選定されたPZL P.11cという機体は、大戦間のポーランド空軍主力戦闘機機と言ってよく,第二次大戦勃発時にも使用されていましたが、しょせんドイツ空軍の機体に敵うべくもなく性能の差は歴然でした。ただポーランドを支えた機体であることは確かで、キットのリリースは実に喜ばしいことです。

▲ P.11cは最初の量産型P.11aの性能向上型で、エンジンの換装や武装の強化など多くの部分を改良。1936年から1937年にかけて175機が製造された
▲ マーキングは胴体側面にフクロウの部隊マークを描いた第113飛行隊機を選択。第二次大戦勃発時、ポーランド空軍には158機のP.11cが前線配備されていた
▲ ガル翼は視界の良さと運動性の高さに貢献。主翼上面と垂直尾翼右側のライトブルーのストライプが良いアクセントとなっている
▲ 機体を全金属製とし、細い円錐形の胴体に薄いガル翼を配置したデザインは、羽布張りの複葉戦闘機全盛期にあって非常に前衛的だった

 まだ羽布張り複葉機が全盛の1930年代初め、PZL(ポーランド国立航空工廠)で開発された全金属製の近代的戦闘機“Pシリーズ”は、1936年にポーランド空軍に実戦配備されたP.11cで完成の域に達した。後継機の輸入に失敗したこともあり第二次大戦勃発時にはすでに旧式化していたが、質量ともに圧倒的に優勢なドイツ空軍に対して勇猛果敢に戦い、ほとんどの機体が戦闘で失われている。IBGが自国の誇りとともに1/32スケールで堂々モデル化したP.11c、ポーランド人にとっては日本の零戦や隼のような存在を最大級のリスペクトを込めてモデリング!

▲ エンジンはイギリスからライセンスを受けたマーキュリーVI S2星形9気筒エンジンだったが、木製固定ピッチプロペラはポーランドのオリジナル
▲ コルゲート板が張られた主翼表面やリベットなどのモールドは秀逸。IBG初めての1/32モデルとは思えない豊かなディテール表現に注目だ
▲ 武装は7.7mm Wz.36機銃を胴体と主翼に2挺ずつ装備。パネルをカットすれば翼内機銃を見せることも可能
▲ 胴体側面のパネルは別パーツとなっており、完成後もコクピット内部や胴体装備の機銃を見ることができる
▲ 主翼下面にある片側2ヵ所の爆弾懸吊架は取り付けを選択可能。搭載する12.5kg爆弾もセットされている
▲ マーキュリーエンジンのパーツ構成。プラパーツとエッチングパーツにより精密に再現されている
▲ コクピットフロアもエッチングでシャープに再現。シートの取り付けは組立説明書をよく見て慎重に位置決め
▲ 胴体にコクピットを組み込み。ハイディテールな再現に応えるため、工作や塗り分けはていねいに行った

■キットについて
 自国機ですから当然ですが、キットは内外部ともに非常に良くリサーチされたもので、エンジンからコクピット内部に至るまで多くのパーツで詳細に再現されています。また外装も実機通りの凸リベットがモールドされています。凹モールドがあたりまえのこの時代、往々にして凸リベットの機体も凹モールドにされてしまっているものも多くありますが、ひさしぶりの凸リベット、何か新鮮なものを感じます。当然ですがパネルラインは凹モールドなのでご安心を。
 パーツ数は多めですが、説明書をよく見て組み立てていけば問題ないでしょう。ただ詳細な表現を優先するあまりエッチングパーツが多く、少々面倒に感じるところもありますが、すべて使い切る必要もないので、見えないところは省いてもかまわないでしょう。パーツの合いはまったく問題なく見事です。

■エンジンの組み立て
 エンジン部分から組み立てますが、接着部分内部に押し出しピン跡が出っ張っている部分があるので取り除いておきます。またキット全般にいえることですが、パーツのゲート部が割と大きいので、ゲートのカットには充分気を付けましょう。
 エンジン部の塗装は黒鉄色、シルバー、黒などでそれらしく塗れば良いでしょう。ただステップ5のパーツJ6は機体本体色なので注意します。燃料タンクはシルバー、下面は機体色です。

■コクピットの組み立て
 エッチングパーツが多いですが、焦らず慎重に組めば大丈夫です。機体内面、床、サイドフレームなど、基本はシルバー塗装。各レバー類の頭はレッドです。ボンベ類はライトブルー、計器盤はツヤ消し黒。メーター類にはデカールが付属しますので、それを使うのがよいと思います。計器盤に付けるつまみPE-22は黄色です。
 コクピットフロアもエッチングパーツが多いので慎重に。この部分で一番面倒なのが、シートの取り付けです。位置決めが非常に難しく接着位置もわかりづらいので、取り付け後の図をよく見て位置を決めていきます。

■胴体の組み立て
 コクピット部ができたら胴体パーツに取り付けますが、この時に右側胴体パーツに穴を開ける部分があるので注意します。胴体パーツを合わせ、水平尾翼、垂直尾翼を取り付け胴体を完成させます。脚柱も取り付けてしまいます。

■主翼の組み立て
 翼内機銃を見せるのであれば、パネルをカットしておきます。作例では見せないので機銃のみセットしますが、機銃取り付け用のエッチングパーツを付けておかないと正確な位置に取り付けられないので注意しましょう。当然ですが主翼前縁パーツは機銃口の切り欠きがあるものを使用します。また爆弾を装備する場合は爆弾架パーツを主翼下面パーツに取り付けるのを忘れずに。
 主翼を胴体にセットするのは、塗装が完全に終了した後が良いです。塗装前にすべて取り付けてしまうとマスキングが非常に面倒になります。主翼、胴体をそれぞれ塗装、デカール、オーバーコートまで済ませ、最後に主翼と胴体を組むのがベストでしょう。支柱も含めパーツの合いはまったく問題ないので大丈夫です。照準器やタイヤ、プロペラなど取り付ければ完成です。

■塗装およびマーキング
 マーキングは塗装例3の機番10のものを選択。主翼上面と垂直尾翼右側のライトブルーのストライプが良いアクセントになります。
 本塗装前にガイアノーツのサーフェイサーエヴォ ブラックで下塗りし本塗装に備えます。後はすべてGSIクレオスのMr.カラーです。下面はC115でよいでしょう。ライトブルーの帯はC392です。
 問題は本体です。このポリッシュ・カーキが難しく、適切な色がありません。おそらく指定のC55カーキは明る過ぎ、近いと思われるC517茶色3606では少し暗いように思います。けっきょくC517とC55を5:5に混色したものにしました。箱絵の雰囲気には近づいたと思います。

■最後に
 このようなマイナー機(?)を1/32というビッグスケールでリリースしてくれたメーカーには感謝ですね。あまりエッチングパーツに頼らずプラパーツを多くしてより組み立てやすくなるともっと受け入れやすくなると思います。素晴らしいキットであることに変わりありません。出来は良好で1/32としてもそれほど大きくないので、皆さんに作ってほしいと思います。なお製作時の資料としてはカゲロウ出版「Topshots PZL P.11c」が非常に役に立ちました。

IBG 1/32スケール プラスチックキット

ポ・PZL11c ガル翼戦闘機

製作・文/山田昌行

ポ・PZL11c ガル翼戦闘機
●発売元/IBG、販売元/バウマン●8580円、発売中
●1/32、約23.6cm●プラキット

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山田昌行(ヤマダマサユキ)

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