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零戦五二型を知ろう! 中島製・三菱製という生産メーカーを異にした零戦の物語とは【いまさら聞けないすごいやつ】

2025.01.20

いまさら聞けないすごいヤツ!!/零式艦上戦闘機五二型/中島製・三菱製●宮永忠将、大森記詩 月刊ホビージャパン2025年2月号(12月24日発売)

いまさら聞けないすごいヤツ!!

 零式艦上戦闘機五二型 
 中島製・三菱製 

イラスト/大森記詩

 「名前は知っているけど、どんなものなんだろう?」「いまさら聞くのもはずかしいなぁ……」なんて思ってしまう有名な飛行機や戦車、車などのモチーフをサクッと読める解説とイラスト、オススメのプラモとともにご紹介する本連載。
 今回はファインモールドの零戦プラモデル特集に合わせて、本キットの特徴ともなっている中島製・三菱製という生産メーカーを異にした零戦の物語をお届けします。


零式艦上戦闘機五二型

全幅/11m 
全長/9.121m 
全備重量/2733kg 
エンジン/「栄」二一型 
馬力/1130馬力 

最高速度/ 564km/h
航続距離/2560km(増槽装着時) 
武装/ 7.7mm機銃×2、20mm機銃×2、爆弾60kg×2


中島 第381航空隊所属機 愛知県・豊橋基地 昭和19年2月

零式艦上戦闘機五二型中島製側面イラスト

中島製

零式艦上戦闘機五二型中島製上面イラスト

三菱製

零式艦上戦闘機五二型三菱製上面イラスト

▲中島、三菱の零戦の日の丸に注目。縁の幅が異なっているのが分かります。このようなマーキングの細かな差も見られます


零戦五二型 三菱/中島

解説/宮永忠将

三菱 第652航空隊所属機 空母隼鷹搭載機 昭和19年6月

零式艦上戦闘機五二型三菱製側面イラスト
▲三菱零戦の下面塗装パターンは、尾翼に向かってフラットに伸びていく。上記の中島零戦は、尾翼に向かって下面色が上がっていくのが特徴です

 零戦は二大メーカーのハイブリッド 

 一九三〇年代の日本海軍は、艦隊戦力ではどうしてもアメリカに追いつけないので、航空戦力で劣勢をカバーしようとした。その場合、高性能戦闘機はマスト。これを目指して開発されたのが零式艦上戦闘機、皆がよく知る「零戦」というわけ。
 この計画は最初、海軍にて十二試艦上戦闘機の名前で仕様がまとまり、三菱重工業と中島飛行機の2社に開発が打診されたもの。しかし世界水準で見てもとんでもない高性能な要求仕様に、中島と三菱、両社は唖然とする。簡単に言えば、まだザクIIを主力に使っている時期に、モビルスーツの格闘性能とモビルアーマーの航続距離、つまり可変MSを開発しろというようなものだったからだ。結局、中島は参入を断念したが、三菱のほうは、格闘戦能力だけは世界トップクラスの九六式艦上戦闘機で実績があったので、天才設計技師、堀越二郎を据えた設計チームが血を吐くような努力を重ねて、ついに評価試験に合格。これが零戦一一型として完成したのである。
 ただ、この零戦には試作の段階でエンジンという大問題があった。当初、堀越二郎は自社製航空機エンジンの「瑞星」を使うつもりで設計していた。しかし機体が完成に近づく頃になっても、エンジン開発が進まない。一方、十二試艦戦の競争試作を断念した中島飛行機は、高性能な「栄」エンジンを完成させていた。背に腹はかえられない三菱は、零戦のエンジンに、この中島製「栄」を採用するほかなかったのだ。航空機の性能はエンジンが決めると言い切って良いくらい重要なパーツ、それを他社製にすると決めた三菱の心中やいかに。

 零戦の沼にようこそ 

 最初の本格的量産機である零戦二一型については、大量の受注が見込まれたので、三菱一社では手が足りない。そこで中島飛行機もライセンス生産に入ることになった。当然、図面は三菱からもらうわけだけど、実は両社、下請け工場を含めて使っている工作機械が違ったりするので、機体の性能に直結せず、整備で頻繁に交換作業が発生しないような部品の図面は、中島飛行機でやりやすいように描き直している。海外でも珍しくない方法だし、海軍も性能が同じ限りは口出しはしない。
 さらに三菱では、零戦三二型を開発したところ、航続距離に難ありとなり、これを再設計した二二型を開発するなど、いろいろ混乱があった。この間に中島では一貫して二一型を作っていたので、三菱製の戦闘機なのに、製造数は中島のほうが上回るなんて変なことも起こっていた。
 そんな最中に、さらに機体を再設計して投入されたのが、戦争後半の主力機となる零戦五二型だ。中島も二一型から五二型の生産に移るのだけど、この頃になるとあちこちのパーツで、メーカーそれぞれのクセがはっきり出るようになる。この辺の、三菱機と中島機の塗装や配色の違いによる見分け方や、パーツの技術的特徴の洗い出しについては、いわゆる専門家の研究が今でも続いている。戦後80年も経っているのに、そんな深掘りができる零戦の奥深さ。ぜひ模型で触れてほしい。


堀越二郎


1903年6月、群馬県藤岡市に生まれる。東京帝国大学工学部(現在の東京大学工学部)航空学科を首席で卒業すると、当時の三菱内燃機製造に入社して、航空機設計に従事した。ちなみに大学の同期には、川崎造船所飛行機部に進み、陸軍戦闘機「飛燕」を設計した土井武夫もいた。堀越は戦闘機設計を得意とし、九六式艦戦に続いて、零戦を完成させている。零戦に続く艦上戦闘機「烈風」はエンジン開発が不調でついに実現しなかったが、海軍機設計に偉大な足跡を残した人物であり、宮崎駿監督のアニメ映画『風立ちぬ』のモデルとしても知られている。


中島・三菱の細かな差も楽しめる。
ファインモールド製零戦

 宮永氏の解説でもあった通り、零戦五ニ型は、中島・三菱それぞれのクセがパーツにはっきりと出るようになります。その特徴をファインモールドのプラモは楽しめるようになっているのです。ここでは中島製の零戦に見られるパーツをピックアップします。

ファインモールド「帝国海軍-零式艦上戦闘機五二型(中島製)」ランナー
▲こちらは中島製零戦の外見の大きな特徴のパーツ。単排気管の設置箇所にあたる機体側に貼られた耐熱板の長さが三菱製よりも長いです。三菱零戦のキットは耐熱板が装着される以前の姿を再現しています

中島製

ファインモールド「帝国海軍-零式艦上戦闘機五二型(中島製)」

三菱製

ファインモールド「帝国海軍-零式艦上戦闘機五二型(中島製)」三菱製デカール使用

▲キットのデカール・塗装指示書も中島製と三菱製の差異を表現したものが付属。「月刊ホビージャパン2月号」の零戦の特集作例でじっくり堪能してみてください

帝国海軍 零式艦上戦闘機五二型(中島製)

●発売元/ファインモールド●4950円、発売中●1/48、約18.8cm●プラキット


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