『ウルトラマンアーク』戸塚有輝×金田昇×辻本貴則座談会!完結を迎えた物語の振り返り&劇場版の見どころをチェック
2025.01.18――みなさんのお気に入りの『アーク』のエピソードはありますか?
辻本●自分が監督した回は当然どれも気に入っているのでそれ以外で言うと、第22話「白い仮面の男」ですね。僕が視聴者だったら、ああいうウルトラマンを観たかったんですよ。ウルトラマンはほんの少しワンポイントでしか出ないけれど、でも確かにウルトラマンの世界観で、何者かの侵略に抗おうとする物語。怪獣も出ないし、エンタメ要素が少ないけれど物語に引き込まれる、そういう話が観たかったんです。それが『ウルトラマンアーク』で出てきたのが嬉しいですね。『ウルトラマンアーク』はそういう話が許される作品だったんだと思うし、今後もこういうものが観られると嬉しいなと思ってオンエアを観ていました。

戸塚●全話に思い入れがあるんですけど、あえて挙げるとしたら第14話(「過去の瞬き」)です。映画館のシーンがすごく印象的な辻本監督の回ですね。あの映画館のシーンをやって、ユウマとアークの距離を掴めた感じがしました。アークを演じる岩田(栄慶)さんもこの回でしっかりアークを掴めたとおっしゃっていて。僕も同じ気持ちだったので、なんだかアークと通じ合えた気がして嬉しかったです。
――ユウマはアークと対話するシーンもところどころにありましたね。SKIPのメンバーと向かい合っているときなどとはまた違うお芝居になるかと思うのですが、戸塚さんとしてはどういった感覚でアークとの対話に臨まれていたのでしょうか?
戸塚●最初は異生物というか異星人というか、自分とはまったく違う存在に力を貸してもらっている認識で、鏡にアークが映ったときの反応も含め下から見ている感覚でした。ですが14話でちゃんとアークと話をすることができて、親しみが生まれていきました。変身前に一度キューブを見るんですが、その行為の意味も話数を追うごとに変化していったと感じています。最後にはアークとユウマが一体になる、その変化が25話かけて描かれていたと思います。
――アークとユウマの対話は主に辻本監督の担当回で描写されていましたね。
辻本●ウルトラマンとちゃんと対話するところを見たいと思ったんです。昔のウルトラマンでもそういうシーンが要所要所でありましたよね。とはいえウルトラマンがずっと喋りっぱなしなのは『アーク』では違うと思ったので、ポイントでユウマとの対話シーンを入れました。アークが自分の素性を明かす場面でユウマと一緒になって映画館のスクリーンを見ている画は面白かったですね。昔ながらの映画館らしく椅子が小さくて、ユウマとアークの距離がすごく近いんです(笑)。それも相まってすごくいい画が撮れました。
――金田さんのお気に入りのエピソードは?
金田●僕は第23話(「厄災三たび」)です。シュウがユウマの正体を察するシーンはすごく重要な場面でしたし、ユウマと関わる中でシュウに起きた変化がそのまま出ている台詞もあって。彼がそれまでの22話を通してほんとうに変わってきたんだなということを実感しました。
――一方でシュウはコミカルなシーンも多かったと思います。
金田●1話のコーヒーのシーンで振り切ったおかげで、(第8話)「インターネット・カネゴン」みたいな回でも「シュウだったらありえるかな」という状況に持って行けたかなと思います。
辻本●コーヒーモードのシュウならここまでいけるかな、っていうね(笑)。
金田●僕自身も一回振り幅を最大にしたら以降の調整も利くようになった感覚があるので、序盤で思いっ切りやれたのは演じるうえでもよかったです。
辻本●ああいうテンションの振り切ったギャグシーンを何回も撮り直すとやっている方も辛いだろうし、鮮度や初々しさがなくなって計算みたいになってしまうから、「できれば一発OKにしたいから思い切り振り切ってみて」って本番前に言ったんです。そしたらしっかり振り切ってくれて一発OKにできたのは大きかったですね。
金田●あれ、たしか撮影初日でしたよね?
辻本●そうそう! 初日でいきなりあれやって、しかもその前にはシャゴンやウーズの長い説明台詞もあって、金田くんひとりですごく宿題を背負ってるなと(笑)。撮影はあれで波に乗れた感覚がありましたね。
――『アーク』は特撮もすごく良いシーンが多かったと思います。辻本監督は『アーク』の特撮シーンについてはいかがですか?
辻本●自分が担当した回で言うと、第1話(「未来へ駆ける円弧」)のワンカット風映像をどーんとやって、その後はそんなに派手なことはやっていないんです。各話監督で参加していた作品ではけっこう好き勝手やってたんですが、そのノリでメイン監督をやると全体がガチャガチャしちゃうんですよね。なので僕は初回と最終回以外はそんなに弾けないようにして、各話監督で入られているみなさんが楽しく撮ってるなという印象でした。
――湯浅弘章監督や秋武裕介監督が担当された回では、特技監督として内田直之監督が参加されていました。
辻本●特撮を普段あまり撮られない監督にドラマを撮っていただいて、特撮パートは特技監督にという試みですね。初の特技監督で、すごく気合いが入っていましたね。印象に残るカットをたくさん出してくれたので、シリーズのメイン監督としては嬉しい限りです。

――逆に、湯浅監督や秋武監督のような特撮にあまり慣れていらっしゃらない方を各話監督に起用されたのはドラマ部分へのこだわりから?
辻本●そうですね。岡本(有将)プロデューサーがそういう方は大歓迎だとおっしゃいましたし、監督陣を各話に配置していくなかで僕の知り合いの監督を呼んでいいという話もあって。やっぱり普段特撮を撮っている方と普段一般ドラマを撮っている方では撮られる映像が違うと思うので、一度そういうものを見たいということもあり湯浅監督たちに来ていただきました。
――戸塚さん・金田さんはメインの辻本監督以外で印象に残っている監督はいらっしゃいますか?
金田●湯浅監督は僕が名前を間違えて……。
辻本●え、なにそれ聞きたい!(笑)
戸塚●メイクさんに一文字違いのお名前の方がいて、ごっちゃになっちゃったんだよね。
金田●あれは有輝がふっかけてきたのに引っかかったんだよ。
戸塚●いやいや! 僕がその方の話をしていて、その流れで「ちょっと話してきなよ」って言ったら湯浅監督のところに行ってメイクさんのお名前を呼ぶんですよ(笑)。僕もびっくりしたから! 「違う違う」って!
金田●しかもリンさんがメインの第9話(「さよなら、リン」)の撮影中で、僕たちまだ監督との関わりが浅くて……。
辻本●ただふざけてたみたいになっちゃったんだ(笑)。
戸塚●ただただ失礼なだけという……。
金田●反省してます。

――それが印象に残っているエピソードですか(笑)。
戸塚●でも確かに湯浅監督も秋武監督も、他の監督の撮影と違う感じがありました。
金田●ウルトラマンなんだけど、どこかヒューマンドラマを撮っている感覚というか……雰囲気が少し違いましたね。
戸塚●秋武監督はすごくウルトラマンが好きなんですよね。
辻本●そうそう、実はそうなんだよね。
戸塚●ウルトラマン愛を撮影していてすごく感じましたし、新鮮で面白い撮影でした。
©円谷プロ ©ウルトラマンアーク特別編製作委員会