HOME記事ガンダム「RG RX-78-2 ガンダム Ver.2.0」発売を記念して新旧キット開発者にインタビュー! Ver.2.0へ進化する道のりとは

「RG RX-78-2 ガンダム Ver.2.0」発売を記念して新旧キット開発者にインタビュー! Ver.2.0へ進化する道のりとは

2024.09.05

「RG RX-78-2 ガンダム」新旧キット開発者対談 月刊ホビージャパン2024年10月号(8月23日発売)

 ガンプラ30 周年の2010 年に、「1/144スケールのガンプラ最高峰」ブランドとして誕生した「RG(リアルグレード)」。その第1弾アイテムとなったのが、当時東静岡に移設された実物大ガンダム立像を、最新技術を組み込んで1/144スケールで再現したRG RX-78-2 ガンダムだった。あれから14年が経過し、「ガンダム45周年」に合わせる形で、RG RX-78-2 ガンダムも最新の技術と新たな試みが詰め込まれたVer.2.0が発売。そこで今回は、BANDAISPIRITS ホビーディビジョンの西澤純一氏、大久保宏昭氏という、新旧RG RX-78-2 ガンダムの開発担当者による対談を実施。RGというブランド立ち上げ時の思いから、ガンプラとしてのリアルの解釈、継承して進化したVer.2.0への道のりを語ってもらった。

聞き手・文/石井誠

2010年発売 RG RX-78-2 ガンダム
開発担当 西澤純一

2024年発売 RG RX-78-2 ガンダム Ver.2.0
開発担当 大久保宏昭


——ガンダム45 周年に合わせる形で、RG RX-78-2ガンダム(以下、78ガンダム)がVer.2.0として新規に発売されました。まずは、改めて、RGシリーズの原点となった最初のRG ガンダム(以下、Ver.1.0)の当時のコンセプトを振り返りたいと思います。Ver.1.0の企画はどのようにスタートしたのでしょうか?

西澤 2009年の「ガンダム30周年」に合わせてお台場に実物大のガンダム立像が建てられた際、翌年には「ガンプラ30周年」が来ることが分かっていたので、そこに向けて最高峰のガンプラを出しましょうというところから企画がスタートしました。今までは想像だけだった実物大のガンダムをお客さんがすでに目にしているという状況だったので、まずはそれをどのように商品に落とすかということを考えた感じではありましたね。

——そこにそれまでガンプラ開発で培われた技術的な面も追加されたわけですね。

西澤 当時、ガンプラの技術もいろいろと進化していた時期で、ガンプラの周年をやるなら、一度すべての技術をひとつのアイテムに使ってみようという考えがありました。そこで、多色成型やインサート成型などを取り入れようという流れになっていったんです。特に組み立てやすさみたいなものを目指すとなった時に、内部フレームを一体化したものを作ってみようということを考え始めまして。そこからインサート成型を使ったアドヴァンスドMSジョイントを組み込むという流れになりました。

——アドヴァンスドMSジョイントの採用は、RGからガンプラに触れる新規ユーザーを意識したアイデアだったのでしょうか?

西澤 そうですね。1/144スケールというのは決まっていたので、小さくなるぶん組み立てが難しくなっていくというか、時間がよりかかってしまう。そこで、どこかで簡単により精密なものを作り出せないかなと考えていたんです。また、かつてのガンプラに採用されていた組み立て済みのフレーム「MSジョイント」があったので、その流れから「アドヴァンスドMSジョイント」と名前を変えて、新しく作り直したという形です。

——当時のイメージとしては、マスターグレード(MG)シリーズの縮小版を目指しつつ、それに合わせてプラの成型の薄さや精密さを出すというふたつの要素が盛り込まれているように感じていました

西澤 当時のMGはフレームを作って、そこに外装を付けていくという感じで、組み立て時間が2 倍かかるという印象があったんです。その結果、ハイディテールのいいものが完成するのですが、それをランナーから切り離すだけで内部フレームができ上がる機構を取り入れることで簡略化して、合わせて作りやすさも目指せないかと考えていった感じです。

——当時、大久保さんはVer.1.0をどのように見られていましたか?

大久保 元はホビー事業部(現ホビーディビジョン)にいたのですが、当時はベンダー事業部に異動していて、ガンダム商品の開発を担当していました。そこで、商品開発の参考にするのはホビーディビジョンの商品だということで、目玉となるアイテムはだいたい組んでいて。Ver.1.0ももちろん組み立てましたし、「1/144でここまでできるんだ」と驚いた記憶があります。

——当時としては、精密さを含めてかなりこだわられた設計になっていた印象があります。

西澤 かなり攻めた商品ではありましたね。「精密ってどういうことなんだろう?」という感覚があって、それを伝えるのに、ディテールの細かさにこだわりました。コンマ1とか0.05くらいのものすごく幅の狭いディテールをどんどん作っていくという感じで。実物大のガンダムを見ると、パネルラインなども動かし方に合わせて幅がいろいろ違っていたりするのですが、1/144のサイズに落とした場合、ここまで見えていていいのか、閉じているべきかみたいなせめぎ合いはありましたね。写真と見比べながら、「ここはもうちょっとこのくらい細かい段差にしたほうがいい」などとやっていました。それは、実物があるからこその悩みで。マーキングの数も多くて、実物大だと普通に見えるけど、1/144にするとこの物量のシールを全部貼るのは大変だなと。だから、商品では実物よりもマーキングの数はかなり減らしたりしています。

——その他にも金属表現が可能で、シールでありながらも薄い素材で作られたリアリスティックデカールなども取り入れましたね。

西澤 箔押しや水転写デカールのような表現ができるシールも使いだしましたね。それまでだと箔押しのシールは厚みがあったのですが、薄くてペタっと貼っても段差が出ないくらいのものにしたいという話をしていて。さらに当時はテトロンシールという半透明のシールがあったのですが、糊のせいでどうしても曇りが出てしまう。そこで、箔押しや水転写デカールのような表現が可能なシールとして使えるという条件に合う素材を探してもらって新しく採用しました。

——そのようなさまざまな挑戦がなされたVer.1.0の発売から14年が経過し、Ver.2.0の発売となったわけですが、リリースがこのタイミングになった理由を教えてください。

大久保 RGシリーズも立ち上げから15年目を迎え、商品の仕様も当時からいろいろと変わっているところがありまして。Ver.1.0も今のRGシリーズと並べるには、ちょっと表現が変わってきたというところもあり、今の考え方で作ったRG の78ガンダムが欲しいという思いがずっとあったんです。でも、それを実現できる機会がなかなかなくて。そんな中で、「ガンダム45 周年」というのはいいタイミングだと思ったので、実現した形ですね。長い目で見ると、横浜の動くガンダムの展示が始まったタイミングに合わせてRG ジオングを作って、そこからちょっと経てば「ガンダム45周年」が来るので、新しい解釈で作られたジオングと並べることができるVer.2.0をやろうという考えのもと、かなり前から開発は進めていました。

——RGの78ガンダムをどのように変えるかというのが、やはり最大の難関だったのでしょうか?

大久保 そこは、78ガンダムを担当する者はみんな頭を悩ませるところですね。ホビーディビジョンだけですでに40数体の78ガンダムが出ていますし、コレクターズ事業部やベンダー事業部、キャンディ事業部を合わせたら何百体あるんだという感じですから。ホビーディビジョンでRGのVer.2.0を作る以上は、パッと見て「これは新しい78ガンダムだよね」というのが説明を受けなくても、画像を見ただけで新しさやすごさが分かる、お客さんに伝わることを一番の大命題としてやっていました。

——先ほど、Ver.1.0はMGを1/144スケールで再現した感じがすると言いましたが、Ver.2.0はパーフェクトグレードアンリーシュド(以下、PGU)を1/144スケールサイズに詰め込んだように見えました。

大久保 デザインの段階から1/144スケールながら、ちゃんと大きさを感じることができるデザインにしましょうというのは、デザイナーさんと話をしていました。多分、PGUのような雰囲気を感じられるというのは、このデザインと密度感が影響しているんだと思います。なるべく面構成や段の見え方、凹凸の入れ方などを工夫して、ちゃんとモデルに対して影が落ちる形の作り方をしているんです。あとはディテール周りですね。今回は、いつもよりも装甲面に見える黒いパーツをたくさん配置しているんです。これは、広い面の中に小さい段差と別パーツ化された形状を入れることで、小さいパーツの周りのパーツの大きさを感じることができるというデザイン的な見せ方になっています。別パーツによって情報量が増えることで、大きさを感じ取ってもらおうという意図も含まれています。

——白い装甲部分の表現は、Ver.1.0での見せ方を踏襲したものになっていますね。

大久保 そうですね。白の部分をグレー調のツートーンカラーに見せるやり方は実物大立像で表現されたものですが、実物だと光の当たり方や影の落ち方によって全然違った色に見える。その効果は1/144スケールの全高125mmだと全然出すことができないので、成型色で光の当たり方を調整してきたんです。今回は、それをさらにデザインとして落とし込むことで、密度感がさらに増して、PGUに近い雰囲気に見えるような表現ができたのではないかと思います。

——Ver.1.0の時に比べると、ユーザーの目も肥えているので、その期待をどう超えるのかは重要な部分だったわけですね。また、シリーズが進むうちに、リアルに対する考え方や突き詰め方も変わってきたのでしょうね。

大久保 RGシリーズを続けるうちに、ガンプラのリアルへの考え方は変わっていると思います。西澤さんがやっていた頃は、フレーム構造があるのがリアルだという考え方でしたよね?

西澤 当時はそう言っていましたね。こんなフレームが内部にあって、そこに外装が付くのがリアルだという考え方をしていこうと言った覚えがあります。

大久保 78ガンダムの根本的な構造のリアルというところは、最初のVer.1.0でやっていたのですが、そこから続くうちに、いつからか「フレームがあるからリアル」というところでは面白味が足りないという話になり、もっとリアルに対する深掘りをしていこうということになったんです。僕が覚えているのは、νガンダムにメンテナンス構造を取り入れたり、フォースインパルスガンダムであれば翼に航空機の形状を取り入れるというような、部位ごとにリアルというつくりに集約していったところがあります。ひとことで「RG=リアルグレード」と言っても、年数を経るごとにリアルが変わってきたという歴史があります。

——装甲の開き方なども、最初の頃は「この立像が動くなら、ここがスライドするのだろう」というのを想像しながら設計をされていますよね。それがだんだん、飛行機のフラップが伸びて開くように、多重構造で装甲が開くような方向性に変わってきていますね。

大久保 そうですね。最初の頃は、可動範囲を広げるためと、動きとしての面白さから太モモの装甲をスライドさせていたのですが、年を追うごとに「ただ動くだけでは面白くない。動く意味を持たせましょう」ということで、最近ですとヒザのフレームが剥き出しにならないように、装甲がフレームを隠すように連動させるようなことをやっているんです。これが、いつも言っている「ガンプラの進化」みたいなところで。ただ動くだけだったものが、意味のある動きに変わってきているところが、15年シリーズを重ねてきた成果かなと思いますね。ちゃんと動かしたあとに、お客さんも納得できて、共感してもらえるところを付加することが、先ほど言った「リアル」のひとつとしてはあります。

——Ver.2.0では、ヒジとヒザの関節も単なる軸ではない構造が採用されていますね。

大久保 これも初めてチャレンジした要素ですね。組み立てやすさに加えて、工業製品として太モモとスネは別々に作れて、あとから接続される構造になると機械としての説得力を増すという考えです。そういう部分でも78ガンダムの組み立て工程が体感できるようにはしてあります。

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