ミニアート社初の本格的飛行機モデル「リパブリック P-47D-25RE サンダーボルト」進歩的キットでDデイ直前を可能な限り正確に再現
2024.08.18進歩的キットで知る戦闘爆撃機の源流
湾岸戦争などで活躍し現役を続けるアメリカ空軍A-10サンダーボルトII攻撃機の先代、リパブリックP-47サンダーボルト戦闘機の1/48スケールキットが、ミニアート初の航空機モデルとして発売された。AFVのジャンルでは実車さながらの部品分割とインテリア再現の1/35スーパーディテールキットを次々とリリースしてきたミニアートだが、このP-47Dでもコクピットや主脚収納庫内部はいうにおよばず、R-2800エンジンや主翼内の機銃弾倉などの構造再現、さらにはロケット弾や増槽などの兵装類も充実。アドバンストキットでサンダーボルトの源流を探る!
■アドバンス・サンダーボルトの登場
今回のキットは、ウクライナのミニアート社初となる本格的飛行機モデルである。機体全面に繊細な彫刻でリベットが細かく打たれ、コクピットからエンジンまで精密に再現。主翼弾倉部も開閉選択式。増槽、爆弾、三連装ロケットランチャーなどアクセサリーも豊富。エッチングはパーツシートベルト以外に爆弾のフィンなどにも用意されている。デカールはカルトグラフ製で非常に良質で、ヨーロッパ戦線のエース機の3種類がセットされている。「アドバンスドキット」ではあるが、組み立てはアドバンスかベーシックかが選択でき、非常に意欲的に作られたキットである。
この秀作キットに敬意をはらい、第8航空軍第56戦闘航空軍第61戦闘飛行隊のフランシス・ガブレスキー中佐のDデイ直前(1944年6月)の機体をできるだけ正確に再現した。ビネット名は「Dデイ前夜」である。
■組み立てはていねい・正確に
製作前に説明書にひと通り目を通し、マーキング、カウリングの開閉、フラップの上下、弾倉パネルの開閉、兵装などを選択した。製作上留意すべきはただひとつ、細かいパーツが多いので、パーティングラインのバリ取りと削り合わせ、仮組みをていねいにして正確に組み立てることである。
コクピットは、パネルの接合部がきついので削ってスムーズにした。計器盤は計器のデカールを一枚一枚貼り込む方法を選択。座席と床などはMr.カラーNo.8(以下、塗料はすべてMr.カラー)を下に塗り、機体内部色を爪楊枝でていねいにはがした。なお、ガブレスキー中佐機は付属のガンサイト(N-3A光像式射撃照準器)ではなく、ガラス部分の四角いMk.VIIIなので改造し、機体外に予備照星も追加した。
胴体は、型抜きの関係からリベットが浅い部分があるので打ち直した。機首上面の一部だけ凸モールドになっているので、削ってスジ彫りを入れた。第1風防が胴体表面とツライチになるよう、クリアーパーツと胴体側の接合面を慎重に削り込んだ。胴体下の排気ガス出口カバーの直前には僅かなふくらみがあるのでプラ板で追加。ピトー管、アンテナ支柱などは細くプラも柔らかいので、破損防止のために金属で置き換えた。主翼前縁の整形に邪魔になるブラスト・チューブも、後付けできるように1.0mmアルミ管に交換。カウリングが外された状況にするため、ファスナー部のカバーをビールの空き缶を細切りにして追加した。
主翼の機銃には後方留め具をプラ棒で、発射用ケーブルを0.8号黒テグスで追加した。弾倉パネルの内側にある射線の調整法、弾帯の収納方法が書かれている四角い注意書きをそれらしく描いた。パネルなどの機体内部色はかなり黄色味が強い。
プロペラは、ねじりがやや不足し半分から先端にかけて分厚いので削り込んだ。プロペラには軸がほぼないので、外径1.4mmのアルミ管で作成。軸受けは外径2.1mm(内径1.5mm)のアルミ管で製作し、減速ギヤカバーに2.2mmの穴を開け埋め込んだ。なお、ガブレスキー中佐機の減速ギヤカバーおよびプロペラハブ部分の色は、黒に近いグレーであることに注意したい。エンジンへの配線は、説明書P22のコードの取り回しを参考に必要部分に穴をあけた。
タイヤはトレッド・パターンがひし形の自重変形タイヤと、ブロック型の通常のものが用意されており、ガブレスキー中佐機のブロックパターンを選択。脚柱には、金属線でブレーキパイプと0.4mmステンレス線で主脚圧縮ロッドを追加。尾輪支柱はプラが柔らかく細いので、大型のホッチキスの芯で作り換えた。脚柱の色はグリーン系の機体内部色と推定される。脚庫の細かいパーツに説明書P22を参考にして配線を通す穴をあけた。穴をあける印はパーツに凸の〇で示してある。
■塗装について
ガブレスキー中佐機では第2風防が被さる部分が塗り残され、外板の銀色が確認できる。このことから、米国からオリーブドラブの防舷塗装だけをほどこされた機体がイギリスに送られ、現地で慌ただしく迷彩されたと推定した。
風防の平面形をマスキングテープに写し取り、銀とオリーブドラブをマスクした。迷彩は実機写真と箱絵を参考にできるだけ実機のパターンに近づけた。機体上面は緑がかったダークグリーン(ダークグリーンNo.330+濃緑色No.16を1:1)を塗った後、オーシャングレーNo.362をフリーハンドで吹いた。下面はミディアムシーグレーNo.363である。
垂直尾翼の機体番号はステンシルの黄色い吹きこぼしを再現した。なおガブレスキー中佐機は主翼のインベイジョンストライプが左右非対称で、左右で機銃1丁分ずれていることに注意したい。
■ビネットについて
使用したフィギュアはICM「米 パイロット&グランドクルー(5体セット)WW-II」を一部改造している。今回は、有名なカラー写真が残されているガブレスキー中佐をできるだけ忠実に作り、ビネットでDデイ前夜の緊張感を再現しようと試みた。皆様の模型製作にいくらかの参考になれば望外の幸せである。
ミニアート 1/48 スケール プラスチックキット
P-47D-25RE サンダーボルト アドバンスドキット
製作・文/高橋祐二
P-47D-25REサンダーボルト アドバンスドキット
●発売元/ミニアート、販売元/GSIクレオス●10450円、発売中●1/48、約23.0cm●プラキット
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