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サントラCD「ゴジラ大全集」復刻記念! 復刻版の新要素と今後の展望を語る【音楽プロデューサー・鈴木則孝×ライター・高鳥真対談 後編】

2024.08.10

「ゴジラ大全集」復刻記念対談 後編
鈴木則孝(音楽プロデューサー)
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高鳥真(フリーライター)

 昭和~平成にかけてのゴジラシリーズ全22枚の音楽がリーズナブルに楽しめるサウンドトラックCDシリーズ「ゴジラ大全集」が、30年ぶりに復刻、ユニバーサル ミュージックからリリースされた。前回に続いて、復刻の企画を手掛けた音楽プロデューサー・鈴木則孝と、当時盤で構成・解説執筆を手掛けたフリーライターの高鳥真の対談を通じて、復刻版で新たにラインナップに加わった『ゴジラVSスペースゴジラ』(1994年)と『ゴジラVSデストロイア』(1995年)について、また遊び心満載のパッケージへの拘り、さらに今後への向け展開など、あますことなく語り合ってもらった。

取材・構成/トヨタトモヒサ

前編はこちら!


●復刻版「ゴジラ大全集」は全22作品

――オリジナルの「ゴジラ大全集」は、当時の最新作『ゴジラVSメカゴジラ』(1993年)までの全20枚でしたが、復刻版では『ゴジラVSスペースゴジラ』(1994年)と『ゴジラVSデストロイア』(1995年)がラインナップに加わり、平成ゴジラシリーズをコンプリートしているのも、注目すべきポイントです。

鈴木 今回、昭和シリーズ の15タイトルを5月29日、平成シリーズの 7タイトルを6月26日と二期に分けて発売していて、当初からシリーズを完結させたいと考えていました。『ゴジラVSデストロイア』の単品盤は、ユーメックス(※現在はユニバーサルに移管)から出ていたし、『ゴジラVSスペースゴジラ』はキティレコードでしたが、流通経路がユニバーサルだったんです。それで、当時の単独盤を復刻する形でラインナップに加えることができました。

高鳥 この2枚は、当時買っていた人は今回驚いたでしょうね。

鈴木 これも偶然というか、必然だったと思うんですけど、『ゴジラVSスペースゴジラ』と『ゴジラVSデストロイア』の当時の単品盤は、解説がなかったのですが、高鳥さんと繋がった時点で、こちらからお願いする前に「やります」と申し出て下さって。それは高鳥さんがいみじくも仰ってましたけど、ご自身にとっても成就できる機会だったんですよね。2作品を取りこぼしていたわけですから。

――この2作品については当時の思い出はありますか?

高鳥 『ゴジラVSスペースゴジラ』は、当時サントラには関わってなかったけど、これまでの流れがあったから、井上誠さんと一緒に試写を観させてもらったんです。それで見終わった第一声が「どうするんだろう、これ?」だったのを今も覚えています(笑)。要するに、当時の感覚としては、全ゴジラファンの期待を一身に受けた最新作だから、ハードルがかなり高かったんですよ。ただ、最新作として観た作品と、たくさんある中の1本として観る作品でこれほど印象が違うのかと、後になって思い知らされました。後者として観た場合、こんなにも面白い作品はないと思います。音楽的にも、ゴジラの九州上陸の際に流れる「ゴジラ・テーマ1994」が服部版のゴジラのテーマで、あの曲は最高にカッコいいですね。「スペースゴジラ・テーマ ̶破壊神降臨」もポイントで聴きどころがあるし、後はなんと言ってもモゲラのテーマ「MOGERA Ready to Go」でしょう。

――『ゴジラVSデストロイア』については?

高鳥 平成ゴジラシリーズは、10月に開催される東京国際映画祭に出品するのが恒例でしたが、この年はそれがなかったから、音楽録音は一ヶ月半くらい遅かったんです。ただ、そうは言ってもサントラは例年通り12月頭のリリースが決まっていたので、完成品を観ないまま構成を手掛けました。楽曲解説も間に合わないので、1枚もののほうは確かストーリーしか載ってなくて、これも自分が書きましたね。

鈴木 ストーリーは結末までしっかりと書かれています(笑)。

高鳥 当時は今みたいにネタバレの概念がなかったですからね。今回、解説を書くにあたっては、必要なところを確認しただけで、ほぼ記憶で書きました。

鈴木 当時の生き字引ですし、高鳥さんで終えることに意味があると思いました。

●復刻に際してはオリジナルを超えたい

――復刻するに当たって、デザイン回りは一新していますが、どういったコンセプトなのでしょうか?

鈴木 当時盤は、幾何学的なデザインで、当たり前だけど、90年代っぽいですよね。そこはやっぱり今出し直す上では変えたいと。特に昭和のゴジラシリーズについては思い切ってノスタルジーに振ってみました。

――ジャケットが縦横逆になっているのも斬新です。

鈴木 今の時代、CDを買ってくれた人に向けて、最大限に喜んでくれるものにしたいと頭を捻りました。ケースはクリアで帯を取ると「上映中」と書いてあるんですけど、このパッケージ自体を映画の看板に見立ててみたんです。看板として立てて「昔、通っていた映画館はこうだったなぁ」と懐かしく思いながら聴いてもらえれば嬉しいですね。後はCDを外すと、ロビーカードが貼ってある映画館の壁みたいになっているし、CD自体もレコードを思わせるデザインになっています。CD帯の裏側も昔お風呂屋さんとかに貼ってあったようなレトロ調にしました。

高鳥 「捨て貼り」ってやつですよね。

鈴木 一定以上の年齢層にしか分からないと思うけど、とにかく限られたCDのパッケージの中で面白さを追求したつもりです。昭和も初期と後期でちょっと変えて、平成になってからはスチール看板をイメージしてデザイン自体を変えてあります。

高鳥 ブックレットが、当時と違って20面の折り畳みになっていて、特に6面を使ったポスターの大きさが実にいいですよね。

鈴木 再発する上では、フォロワーとしての欲求として、超えられるなら当時盤を超えたいと思うわけですよ。僕なんかの好きな気持ちは、ファンの方にはとうてい及ばないけど、できるだけ近付きたいし、共有している気持ちだけは一緒だと思うので、そこはアプローチしたい。その想いはとても強くありました。

高鳥 折れ目こそ入るけど、大判の書籍より大きなサイズです。昔の作品のポスターを手元でこれだけ大きなサイズで見る機会はなかなかないと思います。

鈴木 折れ目はねー…。当時盤は折り目の入っているポスターをジャケに使っていた作品もありましたからね。

高鳥 『キングコング対ゴジラ』(笑)。当時、折り目のないポスターは東宝でも調達できなかったし、まわりにも持っている人間がいなかったんですよ。

鈴木 今回は東宝から新たな素材を提供していただきました。

高鳥 その後、状態の良いポスターが世の中に出て来たんでしょうね。

鈴木 当時盤をお持ちの方は、比べてみると面白いと思います。

高鳥 平成はダブルジャケットにも注目ですね。生頼範義さんのイラストと写真素材のポスターの両方を見ることができる仕様になっています。

鈴木 趣旨に沿って単発だけで固めるなら、写真ポスターだけにするべきなんですけど、平成ゴジラシリーズといえば、やっぱり生頼さんのポスターは外せないでしょう。

高鳥 これは逆に平成でしかできないことで、本当にすごいアイデアですよ。

鈴木 山崎貴監督もお会いしてお話した際に「タイムカプセル」だと仰っていましたが、その時観た時代に戻れるよう、凝れるだけ凝りました。

――当時もいわゆる廉価盤としてリリースされていて、1500円(税込)と非常に買いやすい価格設定でしたが、昨今の状況を考えると、今回は2149円(税込)と低価格に抑えている辺りも非常に良心的ですね。

鈴木 再発売によって軽減できるところもあって、原稿自体は当時の再利用になりますし、マスタリングについても、さっきの話(※前回を参照)と順番が逆なんですけど、今回、目指していた音質でミニマムに。それと、税込では2000円を少しオーバーしますが、税抜き表記だと1954円で、これは初代『ゴジラ』の公開年にかけたダジャレなんです(笑)。実は平成ゴジラシリーズは、当初は『ゴジラ’84』にかけて1984円にするつもりで考えていました。

高鳥 いや、それは実現して欲しかったですね(笑)。

鈴木 ただ、シリーズもので価格帯を変えると、お客様にとって誤認のもとになってしまうので、1954円に統一することにしました。

高鳥 当時はゼロからほとんど作ったわけだけど、やっぱり、ひとりでも多くの人に手に取ってもらいたいと思って、低価格で出すことに注力したんです。そういう意味でも、お歴々の方を起用するとコストもかかるかもしれないところ、ちょうど安くこき使える、当時の自分がいたということかもしれません。

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