S.H.Figuarts(真骨彫製法)仮面ライダーシリーズ100体・10周年! 『仮面ライダー THE NEXT』の「仮面ライダー1号」の原型製作を務めた長汐 響氏とBANDAI SPIRITSのつじもん氏がシリーズを振り返る!
2024.07.07「S.H.Figuarts(真骨彫製法)仮面ライダー1号/本郷猛(仮面ライダーTHE NEXT)」原型師 長汐響氏インタビュー【バンダイ】 月刊ホビージャパン2024年8月号(6月25日発売)
──アクションフィギュアとして、可動に関してのポイントはございますでしょうか。
長汐 通常の肩関節とは別に首に近い部分に可動軸を設けているのですが、これは真骨彫仮面ライダーシリーズでは今回初めて採用したものです。それによってコンバーターラング(胸)の干渉を避けて肩を内側に捻り込むことができ、仮面ライダーの代名詞とも言える決めのポーズを取れるようになっています。また、襟の部分は干渉してしまうので軟質パーツを採用しています。同じく腹部にも軟質パーツを使用していまして、ライダーキックのポーズやサイクロン1号への搭乗ポーズが自然に取れるようになりました。
つじもん こういった軟質パーツの使い方は、過去の真骨彫製法シリーズの集積から得られたものです。
長汐 そうですね。期せずして、軟質パーツだったり、デジタル彩色だったり、ご本人の顔をスキャンしての素顔パーツだったり、マフラーの布にワイヤーを入れたり…「真骨彫製法」シリーズの技術が詰まったアイテムになっています。
──「真骨彫製法」仮面ライダーシリーズ100体記念ということで、シリーズの過去アイテムについてもお聞きできればと思います。これまで手掛けられた中で印象的なアイテムはございますか?
長汐 初期のアイテムはやっぱり印象に残っていて、特に響鬼には思い出がありますね。僕自身好きな仮面ライダーで初のS.H.Figuarts化だったので、かなり気合いが入っていて。その当時はまだひとり、工房でひたすらに原型を作っていたんです。股関節の構造に苦心していて、完成したのは深夜でした。今の形に落ち着いたときに、自然と「出来た…」と声を漏らしたのを覚えています。
──たしかに、「真骨彫製法」の股関節の構造は当時新しさを感じました。
長汐 肩と股関節は毎回作り起こしになる、難しいポイントですね。できるだけ隙間が生まれないようにキャラクターごとに工夫を凝らしています。それと、ギミックを入れ始めた電王やオーズ、キバなど、節目にあるアイテムは印象に残っています。
──仮面ライダーキバは多くのユーザーから発売が待たれているアイテムでしたね。
長汐 そうですね。キバあたりからなんというか、プレッシャーが大きくなってきているのを感じ始めたんです。ずっと待望されていたアイテムをリリースしたことで、それまで以上に次のラインナップに対するお客様の期待を感じるようになりました。
つじもん 電王、オーズで培ってきたギミックを突き詰めたのがこれから発売予定の仮面ライダー鎧武です。目玉となるアームズチェンジギミックは自信をもって送り出せるギミックになっています。
長汐 アームズチェンジは本当に大変でしたよ(笑)。アーマーのみならず顔も変わるというのをどう再現しようかと…。さらに、商品として量産できる厚みなどの制約もあるなかで差し替えギミックを成り立たせるというのは非常に難しかったです。
つじもん 鎧武とバロンでいきなりその壁にぶち当たりました(笑)。
──仮面ライダー鎧武は2014年に発売されたS.H.Figuartsもかなりの高クオリティでしたが、その存在を意識されることはございましたか?
長汐 そうですね。S.H.Figuarts 仮面ライダー鎧武の発表と真骨彫製法の第1弾である仮面ライダーカブトの発表がほぼ同じ時期で、そこでS.H.Figuartsというブランド全体のクオリティが引き上げられていたタイミングだったと思います。なので、ユーザーの皆様も暗黙の了解として「鎧武以降の真骨彫はないんじゃないかな」という気持ちがあったのではないかと思うんです。
つじもん だからこそ、10年経って、新しい挑戦として何ができるか…と考えたときに、敢えて仮面ライダー鎧武を選んだというところもあるんです。アームズチェンジギミックという大きな挑戦も背負ってしまいましたが(笑)、ぜひ一度手に取って、アームズチェンジをして遊んでみていただきたいです。本当に感動すると思いますので。
長汐 もちろん仮面ライダー鎧武の再現性という意味合いでも、「真骨彫製法」の技術を最大限に発揮したものになっています。
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