90年代に吹き荒れたオモチャのIT革命!? 子供向け電子手帳「レーザーカードバトル電子手帳 MZ」を振り返る
2024.07.1890年代に吹き荒れたオモチャのIT革命!?
近年のオモチャを構成する要素として重要な存在となるのが電子部品であったりする。それまでも発光、音声装置として簡単な回路を用いたものはあったが、電卓によってプリント基盤と液晶部が普及したことによって、オモチャの世界にも大きな革新を促すこととなった。1980年に発売された任天堂の「ゲーム&ウオッチ」を皮切りに携帯型ゲーム機が大流行。電卓の本家であるカシオ計算機も「ゲーム&ウオッチ」発売から間を置かずにゲーム電卓「ディジタルインベーダー(MG-880)」でこのジャンルに参入。任天堂は玩具流通、カシオ計算機は電気店という異なる流通で展開したために互いに棲み分けはできていたが、ファミコンブームを経て、カシオ計算機も玩具流通に参入し、意欲的な商品を展開していく(デジタルガジェットの面白さが味わえるカシオ計算機のプロダクツについてはいつかちゃんと語りたいところ)。
80年代にファミコンブームと同時期に日本を席巻していたのが電子手帳である。有名なところではシャープの「電子システム手帳 PA-8500」「ハイパー電子システム手帳DB-Z PA-9500」「ザウルス PI-4000」といった機種が、ビジネスマンを中心に普及していく(現在に至ると、その機能のすべてはスマホに修練してしまうのだが)。オモチャの歴史はオトナの使うモノをコドモの世界に落とし込んでいくものであり、その例にもれず電子手帳の世界も戦場を子供向けに移していく。
1990年代中盤になると各社が子供向け電子手帳に参入しているが、その中でもひときわ異彩を放っていたのが1994年にタカラ(現タカラトミー)から発売された「レーザーカードバトル電子手帳MZ(エムゼット)」だ。
タカラといえば「リカちゃん」「トランスフォーマー」といったブランドで知られているが、電子玩具の世界でも大きな足跡を残してる。1982年にPCのベンチャー企業であるソードのOEM品である「ゲームパソコンM5」を発売したり、1990年にはシャープの「書院 WD-A30」をオモチャ用にアレンジした「ちびまる子ちゃん ワープロ Dear」をヒットさせるなど電子玩具にも意欲的に取り組んでいる。そのタカラが満を持して発表したのがこの「〜MZ」であったのだ。液晶ゲーム(7つのゲームを内蔵)に電子手帳機能、赤外線通信機能にカードリーダーなど、いわゆる電子玩具の美味しいところをすべて盛り込んだ全部盛りの仕様もあって12800円というオモチャとしてはかなり高価なアイテムとなっていた。しかし、時代の気分は万能タイプの高性能機ではなく「テトリン」をはじめとする機能を絞り込んだアイテムに人気が集中していく。こうした流れは1998年の「たまごっち」を機に電子玩具を別のジャンルへと変化させていくのだが、それはまた別の話となる。
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高井近志
先日ふと思い立って調べてみたら、この連載が26年目に突入していることに気がつく。20周年(実際は21周年だったけど)の記事を書いたのがついこの間のような気がしていたのだが、改めて月日が経つのが早いと実感。30周年は迎えることができるのかなぁ。