HOME記事スケールモデル太平洋戦争で終戦まで活躍した”ワイルドキャットの最終型”が1/48スケールのリミテッドエディションとしてエデュアルドから登場!「FM-2ワイルドキャット」

太平洋戦争で終戦まで活躍した”ワイルドキャットの最終型”が1/48スケールのリミテッドエディションとしてエデュアルドから登場!「FM-2ワイルドキャット」

2024.06.10

「ワイルダー・キャット」FM-2 リミテッドエディション【エデュアルド 1/48】●杉本泉 月刊ホビージャパン2024年7月号(5月24日発売)

杉本 泉作例「「ワイルダー・キャット」FM-2 リミテッドエディション」

エンジン換装でさらに成熟した山猫ワイルドキャット

 太平洋戦争で日本海軍の零戦に唯一対抗できる米海軍戦闘機として戦線を支えたF4Fワイルドキャット。生産をジェネラルモータース社の航空機部門イースタン・エアクラフトに移行、護衛空母での運用に特化したFM-2は、従来の簡素で頑丈な構造に加えてより軽量・強力なエンジンへの換装で得たパフォーマンスを活かして、太平洋や大西洋で終戦のその日まで第一線で活動した。2022年にF4F-3で始まったエデュアルドのワイルドキャットシリーズにFM-2がついに登場。少しの手間で高い完成度の作品を作り上げることが可能だ!

杉本 泉作例「「ワイルダー・キャット」FM-2 リミテッドエディション」コクピット、脚周辺、エンジンなどのディテール
▲コクピット、脚周辺、エンジンなどのディテールは非常に優れている。エンジンカウリングの開口部が大きいいので、外見から目に付く部分だけでもプラグコードをエナメル線などで追加すると、より実感が高まる
杉本 泉作例「「ワイルダー・キャット」FM-2 リミテッドエディション」リア
▲今回発売されたエデュアルドのキットは、プラパーツに加えて塗装済みエッチングパーツ、キャノピーなどのカット済みマスクシート、塗装例10種類を選択可能な大判デカールをセットした限定版となっている
杉本 泉作例「「ワイルダー・キャット」FM-2 リミテッドエディション」全体
▲グラマンからジェネラルモータースに生産が引き継がれたワイルドキャットは、スピットファイア、Bf109、零戦とともに、第二次大戦の開戦から終戦まで第一線で戦い抜いた数少ない戦闘機のひとつとなった
杉本 泉作例「「ワイルダー・キャット」FM-2 リミテッドエディション」エンジンをライトR-1820に換装
▲FM-2ではエンジンをライトR-1820に換装し、機首周辺のレイアウトを変更。排気管も側面に新設された凹みから排気するように改められている
杉本 泉作例「「ワイルダー・キャット」FM-2 リミテッドエディション」高くなった垂直尾翼
▲高くなった垂直尾翼もFM-2の特徴。VC-93所属機の四つ葉のクローバーは、ワイルドキャットの部隊マークでももっとも良く知られたもののひとつだろう
杉本 泉作例「「ワイルダー・キャット」FM-2 リミテッドエディション」
▲FM-2では翼下のオイルクーラーや胴体下面の視察窓などを廃止。落下タンクを右翼だけに装着しているのは強力なプロペラトルクに対抗するための措置

キット
 2022年に発売されたF4F-3を皮切りに始まったエデュアルドのワイルドキャットシリーズは、F4F-4、FM-1、FM-2と進む中で新規パーツ、デカール替え等を織り交ぜながら現在までに7種類が発売されている。シリーズ共通の繊細で美しい表面モールドに加え各型に必要なパーツも細かく追い、マーキングも多くのバリエーションを揃えるなど、全タイプをコレクションしたくなる魅力にあふれている。
 今回のFM-2は大戦後半に登場したワイルドキャットの最終型で、背の高い尾翼と太くなったカウリングなど、よりアグレッシブなスタイルに食指を動かされるモデラーも多いことと思う。
 主要パーツの嵌合性は優れていて大変組み立てやすく、特に桁パーツを用いた主翼の取り付けは隙間なく上反角もぴたりと決まるのはありがたい。
 一方マニア的視点で見るとシリーズ展開によるパーツの取り違え、考証不足な点が散見されるのはちょっと残念だが基礎形はしっかりしているので、資料や写真を参考に手を加えて行けばさらに高い完成度を得ることができる。

コクピット
 座席上部のシートベルトは座席の背面に直接折り返すように指示されているが、実際には背後の防弾板にある横バーの裏側を回って下方に伸びているので、せめてシートベルトはバーの上辺に接着するようにする。
 防弾板にモールドされているヘッドレストは角型になっているが、初期の生産型では従来の大きな丸型なので、マーキング例の選択によっては変更する必要がある。
 風防パーツには頂部にエアベント/スクープ(バックミラーに非ず)の突起のあるパーツA9を使うように指示されているが、FM-2ではまず見られないものなのでパーツA11を使用する。
 キャノピーは開閉両状態のパーツが選べるが、開状態とするためには胴体とキャノピー内側を削らないとしっくりと収まらない。作例ではそれでも浮き気味だったので上方から力を加えて強引に接着している。

機首
 エンジンのモールドはディテール感に溢れ感心させられるが、胴体に取り付ける際には嵌め合わせがかなりゆるいので、事前に正しい角度で接着できるよう別材を貼り足すなどして対策をしておく。また、カウリングと胴体でも同様に角度が決まりにくいが、接着面が小さいのでできれば金属線を仕込むようにしたほうがよい。
 FM-2のプロペラはF4F以来のカーチス電気式だが、後期になるとブレード幅の広くなった同プロペラを装備した機体も多い。キットにはノーマルと幅広の2種類のプロペラが含まれているが、幅広のほうはあろうことかハミルトンプロペラが入っている。作例ではマーキング優先で進めていたので、ベクター社のレジン製プロペラに置き換えている。

脚関係
 尾輪はノーマルタイヤかソリッドタイプを選択するが、ソリッドのほうは明らかに直径が足りず非常に貧弱に見えるのでパーツの周囲に別材を貼り足して径を増している。また、後期になると支柱カバーを外している機体も多く、作例機も同様なのでカバーのパーツを削り込んで形を整え、フォークの回転軸と後端のシリンダー部を自作して取り付けている。

主翼
 銃身の取り付けは単に前縁から差し込むようになっているが、主翼内にその奥行きを規定するモールドがなく位置決めができないので、上下主翼パーツを接着する前に対策しておく。なお、FM-2では内側機銃は主翼前縁からわずかに頭が出る程度、外側機銃は少し引っ込んだ位置に銃身先端が来るようにする。
 下面のロケットランチャー取り付け部の表面には補強板のモールドがされているが、ランチャー装備が可能なのはBu.No.74359以降となる。作例では大戦末期の機体なので装備可能機とした。

塗装とマーキング
 作例はマーキング例“G”のVC-93所属機で1945年5月沖縄方面での活動中の姿を再現している。キットには10種類のマーキングが用意されていて、カラースキムも初期のトライカラー、グレイと白の対潜スキーム、後期の全面シーブルー、英海軍の迷彩とバラエティに富んでいるのも楽しい。
 国籍マークのデカールには問題があり、本来胴体と同じサイズのはずの主翼のそれがやや大きくなっている。幸いキットには2機分の国籍マークが入っているので主翼にもデカール①を使用する。また、シーブルー地にデカールを貼った場合インシグニアブルーが明る過ぎるので、作例ではシーブルーよりも沈んだ色味に調色して手描きしている。

エデュアルド 1/48 スケール プラスチックキット

「ワイルダー・キャット」FM-2 リミテッドエディション

製作・文/杉本 泉

「ワイルダー・キャット」FM-2 リミテッドエディション
●発売元/エデュアルド、販売元/ビーバーコーポレーション●9680円、発売中●1/48、約18.3cm●プラキット


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