外伝小説『勇気爆発バーンブレイバーン 未来戦士ルル』1話 【期間限定公開】
2024.05.23勇気爆発バーンブレイバーン 未来戦士ルル 月刊ホビージャパン2024年6月号(4月25日発売)
TVアニメ『勇気爆発バーンブレイバーン』の劇中10話で語られた、過去へと向かう方法を不器用ながらも探すことになったルルとスペルビア。このふたりが絆を深め成長していくことになった、知られざる「数年間」は本編では惜しくも語られることはなかった。本外伝ではこのふたりの『もう1つの物語』を描いていく。
原作/Cygames
ストーリー/横山いつき
ストーリー監修/小柳啓伍
協力/CygamesPictures、グッドスマイルカンパニー
ゾルダートテラー製作/六笠勝弘
episode 1
── introduction──
外宇宙より突如地球に襲来した機械生命体〈デスドライヴズ〉。
人類の技術力を大きく超えた力を前に、人々を助けるべく現れたのは〈デスドライヴズ〉に近い姿を持つ謎のロボット『ブレイバーン』だった。
ブレイバーンは地球人『イサミ・アオ』を搭乗させると凄まじい力を発揮。人類と手を取り合い、激しい戦いを乗り越えていく。
そしてブレイバーンは最後に現れた〈デスドライヴズ〉憤怒のイーラを自分の命と引き換えに倒すのだった。
こうして地球の平和は守られた──ブレイバーンとイサミ・アオの犠牲によって。
好敵手を失い、残された〈デスドライヴズ〉『高慢のスペルビア』と大切な人たちから未来を託された少女『ルル』。
二つの勇気が辿り着く先は、果たして──
── ハワイ:オアフ島近辺──
そこに広がる光景は、まるで地獄のようだった。
「なんとか間に合いはした ……だが、これでは……!」
機械生命体〈デスドライヴズ〉と世界を解放するために戦う多国籍任務部隊〈Allied Task Force〉──通称ATFのリュウジ・サタケは人型装甲兵器〈ティタノストライド〉の中で毒づく。
人類に味方する謎のロボット『ブレイバーン』と、彼に強く望まれ搭乗することになったサタケの部下『イサミ・アオ』3等陸尉の二人は、残った三体の〈デスドライヴズ〉を倒すため、単独でハワイへと向かった。ともに戦うため、すぐに追いかけたATFであったが、ブレイバーンの元へ辿り着くより早く、〈デスドライヴズ〉と遭遇 してしまったのだ。
『この星の有機生命体では、余の理想には届かぬ』
機体の頭上から響く声の主は残る二体 の内の一体、〈デスドライヴズ〉怠惰のセグニティス。
身体のパーツを分離した多角的な物理攻撃以外は特徴のない相手ではある。しかし、セグニティスの後方に位置する塔から、円盤のような飛行形態と人型の戦闘形態を持つ〈デスドライヴズ〉の雑兵〈ゾルダートテラー〉が際限なく生み出されていた。
今まで戦ってきた〈デスドライヴズ〉に比べれば、セグニティスの脅威度は低い。しかし、〈ゾルダートテラー〉の圧倒的な物量にサタケが指揮するATFのTS部隊は苦戦を強いられていた。
「TS各機、こちらダイダラ1! 絶対に防衛ラインを割らせるな。補給が絶たれれば、我々に勝機はない!」
既にATF側の戦力は2割以上削られている。陣形を崩されれば、一気に崩壊してもおかしくはない状況だった。
「スレッジハンマー、こちらダイダラ1。もう一体の状況はどうなっている?」
『ダイダラ1、スレッジハンマー。現在、黒い〈デスドライヴズ〉とはブレイブ1が交戦中です!』
サタケの問いかけに答えたのはE-8 J-STARSに搭乗する管制官、ホノカ・スズナギだった。
機体からサタケの肉眼で視認することはできないが、立ち昇る黒煙からただならぬ状況だということは確認できる。
「了解……!」
ブレイブ1──ブレイバーンとイサミ・アオ3等陸尉のバディは、今まで幾度も〈デスドライヴズ〉を打ち破ってきた。しかし──
「スミス中尉……君がいてくれたならアオ3尉は……いや」
それでも、彼はきっと飛び出してしまうだろう。
〈デスドライヴズ〉の一体『クーヌス』との戦いで、イサミとブレイバーンの良き理解者であったアメリカ軍の青年『ルイス・スミス』はこの世を去った。
その悲しみは彼に深い傷を残し、さらには世界の行く末をも背負わせることになったのだ。
「生きて帰ってこい……アオ3尉」
サタケがイサミの上官となって数年が立つ。まるで年の離れた弟のように思ってきた彼は、この戦いの中で大きく変わりはじめていた。
「……ッ!」
敵機の接近にレーダーが反応すると、サタケは経験からくる冷静な動きで操縦桿を動かす。直後、彼の搭乗する烈華は時間差で二発の弾を打ち出した。一発目が右腕部にバリアを展開させ、二発目がバリアのない足部に命中し、〈ゾルダートテラー〉に致命的な損傷を与える。
『ダイダラ1! こちらスレッジハンマー!』
すれ違いざまに爆散するそれを横目に、サタケは無線に応答した。
「スレッジハンマー、こちらダイダラ1。どうした?」
『別の塔より多数のゾルダートテラー現出を確認! これ以上の近接航空支援は困難──』
ホノカの音声が唐突に途切れた直後、片翼を破損したE−8は不安定な軌道を描きながら落下しているのが視認できた。不時着できるかどうか、微妙なところだ。だが──
「TS各機、こちらダイダラ1! 防衛ラインを維持しろ! ダイダラ中隊はJ-STARS搭乗員の救出を援護だ! これ以上誰もやらせるな!」
応答するパイロットたちの声には焦りがにじみ出ている。だが、それは仕方のないことだ。E-8 J-STARSは地上のTS部隊とそれを支援する航空部隊の戦闘管制を担当している。その支援がなくなった今、戦況は更に不利になっていくだろう。サタケとて同じだった。いつ命が失われるかもしれない戦場で、ぎりぎりの戦いに身を投じているのだから。
「ここが正念場か……待っていろ、アオ3尉!」
どんなに苦しくても、サタケは、ATFの面々は決して退かない。ヒーローに護られるだけの存在ではなく、ヒーローと共に戦う仲間であるために。
©「勇気爆発バーンブレイバーン」製作委員会