日本陸軍の戦闘機「隼」その特徴や歴史を隼二型のプラモとともに紐解く【いまさら聞けないすごいヤツ】
2024.03.20いまさら聞けないすごいヤツ!!
中島 キ-43II
一式戦闘機 隼
イラスト/大森記詩
「名前は知っているけどどんなものなんだろう?」「いまさら聞くのもはずかしいなぁ…」なんて思ってしまう有名な飛行機や戦車、車などのモチーフをサクっと読める解説とイラスト、オススメのプラモとともにご紹介する本連載。
今回は零戦とともに日本を代表する戦闘機「隼」。日本陸軍によって運用された「隼」という俊敏な猛禽類の一族の名を持つ戦闘機は、一体どのような飛行機だったのでしょうか? 隼の特徴や、その後の改良された隼二型のプラモとともにお楽しみください。
中島 キ-43II
一式戦闘機 隼
全幅/10.84m
全長/8.92m
全備重量/2,642kg
エンジン/ハ115
馬力/1100馬力
最高速度/515km/h
武装/12.7mm機銃×2
日本陸軍が航空史に残した傑作戦闘機「隼」
解説/宮永忠将
「隼」を駆った陸軍航空隊とは
太平洋戦争時に、東アジア全域を戦場としていた日本陸軍。その主力戦闘機が一式戦闘機「隼」だ。海軍の零式艦上戦闘機に次ぐ、日本史上第二位の約5700機という生産数を誇る名機である。ちなみに「隼」はニックネームで、試作名称はキ43、正式名称は一式戦闘機である。運動性に優れている格闘戦巧者で、長大な飛行距離を活かして、爆撃機の護衛やパトロール、地上部隊の上空掩護など、さまざまな場面で活躍できるのが「隼」の特徴だ。
でもこの特徴って、零戦とかなり共通している。それなら陸軍と海軍で共通の戦闘機を使えば良さそうなものだけど、なぜ似たような戦闘機を別々に開発していたのだろう?
実はこれ、組織の成り立ちが影響している。航空機を初めて日本に導入するときには、陸海軍協同で研究機関を立ち上げていたのだけど、意見の対立が解消されず、間もなく陸軍航空隊と海軍航空隊は別の組織となって、それぞれ大きくなってしまったのだ。ライバル関係と言えば聞こえは良いけれど、そもそも陸軍と海軍は予算や資源、人員の配置を巡って対立ばかりしている。だから航空隊も協力関係なんて望めず、似たような性能の軍用機を競って開発していたのだ。
例えば「隼」のエンジンは中島飛行機製の「ハ25」と呼ばれるタイプ。ところがほぼ同じエンジンが「栄一二型」の名前で零戦にも搭載されている。つまり先に海軍で採用されたエンジンを、わざわざ陸軍の要求に合わせてチューンして、陸軍式の名前を付けて採用したといういきさつだ。
結果としては無駄な手続きに見えるけど、この辺の理由は日本軍の歴史の核心部分だったりする。なのでここでは組織の問題には深入りせず、「隼」の実力に迫ろう。
格闘戦最強なれど攻撃力が弱点に
零戦とほぼ同じエンジンで、性能も似ているけど、「隼」の機体は別物。なにせ零戦が三菱重工の開発だったのに対して、「隼」は中島飛行機の開発。ともに戦前日本を代表する航空機メーカーとしての意地がある。そんな「隼」の最大の特長は主翼内側後縁に設けられた「蝶型下げ翼」と呼ばれるフラップだ。本来は離着陸時の揚力をかせぐためのパーツなのだけど、操縦桿の頂部にあるボタンを操作するだけで簡単に操作できるので、空中戦で使用すると信じられない機動性を生み出した。腕利きのパイロットにかかれば、まさに猛禽類「隼」の名にふさわしい、魔法のような動きで敵戦闘機を翻弄できた。
ただ、武装の弱さが泣き所。最初の量産タイプの一型甲の武装は7.7mm機関銃2挺と貧弱で、後の一型丙で12.7mm機関砲2門に強化したものの、20mm機銃を最初から積んでいた零戦に見劣りする。それでもエンジンを強化して三型まで進化を重ね、機動性を活かした格闘戦に持ち込めば戦争末期の最新型敵戦闘機と互角に渡り合えたのも事実。大戦後半に四式戦闘機「疾風」が登場しても、「隼」は日本陸軍のいるところ、その空を飛び続けていたのであった。
隼のエース
加藤建夫
(1903~1942)
戦争中に作られた東宝映画『加藤隼戦闘隊』の名で、「隼」と不可分に結びついている名パイロットにして傑出した部隊長、それが加藤建夫だ。陸軍士官学校を卒業後に航空畑に進み、昭和16年春に第六十四戦隊の戦隊長に着任。配備されたばかりの「隼」に率先して乗り込み、危険な飛行をものともせず欠点を洗い出して戦力化に貢献した。開戦後はマレー、蘭印、ビルマと転戦して勇名を轟かせたが、昭和17年5月22日、イギリス空軍の爆撃機と交戦して被弾、戦死した。「欠点がないのが欠点」と部下に慕われた、伝説的人物である。
もっとも手に入りやすいハセガワのレジェンドプラモ!
隼のキットとして長い間愛されているのが「ハセガワ 1/72スケール 中島 キ-43II 一式戦闘機 隼」。隼一型のエンジンを高馬力のハ115に換装。プロペラも3翅となり、翼幅も短くして速度の向上が図られています。キットはメリハリある凸モールドが特徴。パーツ数も少なくて、あっという間に組み上がる非常にクセのないプラモデルです。
1/72 中島 キ-43II 一式戦闘機 隼
●発売元/ハセガワ● 880 円、発売中● 1/72、約12.3cm●プラキット
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