HOME記事スケールモデル航空自衛隊初の本格的ジェット戦闘機「F-86Fセイバー」を初代特別塗装に! 黎明期カラーリングのブルーインパルスが甦る

航空自衛隊初の本格的ジェット戦闘機「F-86Fセイバー」を初代特別塗装に! 黎明期カラーリングのブルーインパルスが甦る

2024.03.19

F-86F-40 セイバー “ブルーインパルス 初代塗装ウイング機”【ハセガワ 1/48スケール】 月刊ホビージャパン2024年4月号(2月24日発売)

F-86F-40 セイバー “ブルーインパルス 初代塗装ウイング機” イメージカット

黎明期の航空自衛隊が放った最初の衝撃波(インパルス)

 1956年、航空自衛隊が初めて導入した本格的ジェット戦闘機ノースアメリカンF-86Fセイバーは、国内でのライセンス生産も含めて300機以上が導入され、26年の長きにわたり運用が続けられた戦闘機である。空自のアクロバットチーム「ブルーインパルス」もまたF-86Fを最初の使用機とした部隊。「特別飛行研究班」として発足した1961年から約2年間使用された初代特別塗装を再現したハセガワの1/48キットを製作、黎明期カラーリングのブルーインパルス・セイバーのウイング機が約60年の歳月を超えて甦る!

F-86F-40 セイバー “ブルーインパルス 初代塗装ウイング機” 背面
F-86F-40 セイバー “ブルーインパルス 初代塗装ウイング機” 右側面
▲空自への配備時はすでに旧式化していたF-86セイバーだが、空自の礎を築いた「ハチロク」の勇姿は今も多くの人々の脳裏に焼き付いている
F-86F-40 セイバー “ブルーインパルス 初代塗装ウイング機” 左側面
▲1960年に正式発足した特別飛行研究班は「ブルーインパルス」と名付けられ、当時の最新鋭機で活動を開始。1981年にT-2練習機と交替するまで東京オリンピック、大阪万博などで素晴らしいパフォーマンスを見せた
F-86F-40 セイバー “ブルーインパルス 初代塗装ウイング機” 右正面
▲ハセガワの1/48セイバーは現在でも通用する素晴らしい内容のキット。なおハセガワからは1981年の最終フライトを再現した「F-86F-40 セイバーブルーインパルス」も発売中だ
機首アップ
▲初期ジェット戦闘機の常でエアインテークを設けた機首。視界のよいキャノピー形状が、同じノースアメリカン社のP-51Dマスタングを彷彿させる
尾部アップ
▲尾部。組立説明書の塗装図を参考に、アクロ時のスモーク発生用に設置されたエンジン排気口上部のオイル噴射パイプを0.5mmプラ棒で取り付けている
コックピット アップ
▲コクピット内部はシートを別売りパーツに置き換え。キャノピー後部のフレームや配線をプラ材で追加した
胴体右側 TACANシステム用冷却用空気取り入れ口
▲組立説明書で触れられていない修正点。胴体右側のTACANシステム用冷却用空気取り入れ口は不要のため切り取り、表面を平滑にしておく
主翼アップ
▲F-86Fの主翼仕様は生産開始時から二転三転しているが、空自で主流だったのは翼根を延長、前縁スラットを復活させたF-86F-40となる
左正面
▲塗装スキームは大判デカールで用意されている。広い面積や曲面に貼る場合は切り分けるなどして作業しよう。マーキングは作例の948号機のほか、847号機も選択可能

■はじめに
 航空自衛隊の創設から6年後の1960年4月12日、当時第一線の主力戦闘機F-86Fによる初のアクロバットチームが正式発足しました。即ちのちの「ブルーインパルス」、正式名称「空中機動研究班」ですが、翌61年10月22日にはアクロ機塗装を施され式典で展示飛行デビューしました。以前ハセガワからは1/48で当時のリーダー機キットが発売されましたが、今回は塗色の異なるウイングマン機が登場です。

■組み立て
 当時の空自F-86FはTACAN(戦術航法装置)未搭載のため、胴体右側冷却用空気取り入れ口は切り取り、機体表面を平滑にします。合わせて説明図通り機首のアンテナは取り付けません。
 コクピット部工作では、左側のサイドワインダー用コントロールパネルは削り取り、シートをクイックブースト製別売りパーツに置き換えました。メイン計器パネルは基盤を機内色にし、計器盤デカールからメーター単位に切り取って貼っています。尻もち防止に機首スペース内に5g程度のオモリは必須です。また、キャノピー後部のフレーム、配線などをプラ材で追加してそれらしくしてみました。
 そのほか、開いたエアブレーキのアクチュエーターにリード線でホースを取り付け、周囲の機器・パイプ類をシルバーで塗り分け、主脚にはブレーキパイプ、ホースを追加しました。
 最後に組立説明書の塗装図を参考に、エンジン排気口上部にアクロ時のスモーク発生用オイル噴射パイプとして0.5mmプラ棒を取り付けました。

■塗装
 キット指定塗装は当時公開された映画およびカラー写真より、リーダー機はゴールドとピンクのコンビネーション、ウイングマン機はブルーと水色で、機首帯のみブルーとピンクのスキームとの考証に基づいています。機番選択は資料1に機首レーダーコーン部の塗装の違いが説明されているので、リップが無塗装の“948”号機をチョイスしました。
 ベースの機体表面は無塗装なので、銀塗装はパネルの色調を変えましたが、塗料はガイアカラー009番“ブライトシルバー”をストレートに、あるいは混色基本として使用しました。
 さて塗装スキームの大判デカールは、広い面積や曲面部には2つ、3つに切り分けて貼るなど、自分のスキルに合わせて作業をすることも検討してください。キットのデカールは破れにくく貼りやすい物ですが、曲面は必要に応じて切れ目を入れて、綿棒など使いマークフィッター(軟化剤)でなじませていきます。最後は指で圧着させるのも有効だと思います。広い面積でもデカール貼りの基本作業として、水を充分敷いてデカールを載せて位置決めをし、マークセッター(のり)を加えて貼り付け、平筆で上から空気、水分をていねいに押し出し、充分密着させることできれいに貼ることができます。
 デカールを貼り終わったら今度は同じ色を作り、試し吹きで色調をよく確認して、インテーク内や燃料タンクを塗装します。

■おわりに
 ていねいな工作、塗装によってF-86Fの精密スケールモデルとしての存在感をベースにすると、このファーストスキームのマーキング、カラーリングは一層見映えがアップすること請け合いです。初代のアクロスキームは当初案のチーム名称「天竜」にマッチした和の趣も感じさせて、リーダー機以下が編隊飛行する姿は、大空を元気に泳ぎ回る“鯉のぼり”に重なるものがあったのではないでしょうか。
 2024年、70周年を迎える空自創立間もない頃のブルーインパルス・ハチロク・セイバー、お薦めです。では、また。

■参照資料
・資料1:「モデルアート増刊No.302 F-86Fセイバー」(モデルアート刊)
・資料2:「自衛隊メモリアルシリーズNo.4 ノースアメリカンF-86F」(酣燈社刊)

ハセガワ 1/48スケール プラスチックキット

F-86F-40 セイバー “ブルーインパルス 初代塗装ウイング機”

製作・文/喜多 章

F-86F-40 セイバー “ブルーインパルス 初代塗装ウイング機”
●発売元/ハセガワ●4290円、発売中●1/48、約23.8cm●プラキット

この記事が気に入ったらシェアしてください!

喜多 章(キタアキラ)

オススメの書籍

月刊ホビージャパン2024年4月号

ご購入はこちら

T-1/T-3/T-4/T-7写真集

ご購入はこちら

スケールモデルレビューVol.1 冷戦期の英国ジェット艦上攻撃機

ご購入はこちら
PAGE TOP
メニュー