自衛隊の水陸両用車「94式水際地雷敷設車」をベテランAFVモデラーが15年の歳月をかけフルスクラッチ!
2024.02.19陸上自衛隊 94式水際地雷敷設車
自衛隊の水陸両用車を15年越しのフルスクラッチ!
民生の水陸両用車では構造上の制約で航行できない、外洋の航行も可能な陸上自衛隊の水陸両用車、94式水際地雷敷設車。島嶼防衛を目的とした水際地雷(機雷)の敷設だけでなく、東日本大震災をはじめとした災害では救助活動にも参加している本車両をベテランAFVモデラー嘉瀬翔がフルスクラッチ。同車両を開発したJMU ディフェンスシステムズの依頼によって15年前に製作を開始したものの、さまざまな事情によって数度の製作中断をはさみながらも昨年ついに完成したというこの労作をじっくりとご覧いただきたい。
陸上自衛隊の94式水際地雷敷設装置(敷設車)をフルスクラッチしました。この水陸両用車は車体後部に水際地雷敷設装置を搭載。海岸から海に入り、沖合で水際地雷を海中に敷設し、上陸を阻止して海岸線を防衛する目的で開発され、陸自施設科部隊に配備されています。その後、水陸両用の特性を活かして救難用に人員輸送用ユニットが追加され、東日本大震災にも出動するなど、今後さらに多目的な運用が期待されます。
この車両を製作してほしいとユニバーサル造船(もとは日立造船で、その後にJFEやIHIとの造船会社同士の合併を経て、現在のJMUディフェンスシステムズ株式会社に。JMUは空母「いずも」を製造した造船会社です)から依頼を受け、企業担当者に連れられて行ったのが、朝霞駐屯地の陸上自衛隊広報センター。今から15年も前のことです。そこで屋外展示されていた巨大な容姿に驚く。両脇のフロートを上に畳んで一般道を走行、フロートを展開し水上航行ができる仕様と聞く。後部の機雷敷設ラックがすごく複雑でそこにすっかり魅了され、早速図面を起こして製作を開始。機雷を投下する海上ディオラマを思いうかべて…。
車体をプラ板で。キャビンや細々した装備品等をエッチングパーツで製作。最初は作業も順調でしたが複雑な機雷敷設装置のラックを4対もどうやって作ろうか悩む。しかも私の慢性的製作時間欠如で何度も作業が中断。何度目かの挫折中、機雷敷設装置の代わりに人員輸送用ユニットならとメーカー側からアドバイスをいただき、それならばできそうとリスタート。キャビン後部の巨大な箱はラジエター、ルーバーはエッチングパーツ、メッシュはファインモールド製です。真鍮製窓枠と透明プラ板との接着は友人から薦められた白化の少ない瞬着を使用してトラブル回避。後部甲板の人員輸送用ユニットの手すりはプラ棒、タイヤは3Dプリンター製です。プラ板で製作した甲板の滑り止め処理は日本画材の硅砂をプラセメントで接着。キャビン上の滑り止めは金属板と硅砂の接着が難しいので、耐水性サンドペーパーを使うことを思いつき、サンドペーパーの紙の部分を薄剥ぎし接着しました。
挫折を繰り返し完成するまで15年もの時間を費やしてしまいました。辛抱強く完成を待ってくださったJMUディフェンスシステムズ株式会社に感謝します。
1/35スケール スクラッチビルド
陸上自衛隊 94式水際地雷敷設車
製作・文/嘉瀬翔
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