ARTPLA の「太陽の塔」を情景王・山田卓司が独自の世界観で遺産風のディオラマに仕立てる!
2023.12.11『太陽の塔』【海洋堂 1/200】 月刊ホビージャパン2024年1月号(11月25日発売)
岡本太郎の傑作を遺跡風にディオラマ化
太陽の塔─岡本太郎氏が製作した、日本有数のランドマークであり著名な芸術作品。大阪府民がこよなく愛するこの巨大シンボルを、大阪のメーカー、海洋堂が建造から半世紀の時を経てプラスチックモデルキット化したのだ。外観はもちろん、内部の展示物までをも忠実に再現した究極のキットに挑むは、大阪万博リアルタイム世代のレジェンドモデラー・山田卓司。「人類が滅んだ後の遥か未来、遺跡のように屹立し続ける不滅の塔」のイメージで、木々に囲まれ苔むした塔という独自の世界観でディオラマに仕立てている。
■はじめに
数年前、関西旅行の移動中に、車窓から見えた太陽の塔には懐かしさを感じるとともに、その巨大さに改めて驚かされました。ああ、万博のあれだ。「太陽の塔」。1970年、「人類の進歩と調和」をテーマに日本万国博覧会という我が国で開催された国家的イベントは当時の人々、特に当時子供だった我々の世代にとっては特別な思い出があるはずです。
当時、私は母親、父親、叔父と別々に連れて行ってもらい、都合3回見に行きました。アメリカ館で見た月の石やアポロ計画の着陸船、ソ連館のソユーズ宇宙船に始まり三菱未来館、住友童話館、IBM館など、人気のあったパビリオンはひととおり見ることができました。当時はミーハーな子供でしたから人気のあるパビリオン以外、あまり関心はなかったのですがマイナーな外国館もいくつか見て回りました。現在なら、それらのパビリオンも(もちろん各パビリオンのコンパニオンも)しっかり見てくるところですが。
当時を思い出すにあたって、特に印象深かったのは万博のテーマ館である太陽の塔。その思い出は強烈で、印象的な正面の「太陽の顔」。パラボラアンテナのような頂上に取り付けられた「黄金の顔」。お祭り広場を見下ろす「黒い太陽」。と3つの顔を持つモニュメント。当時のゴジラより大きな高さ62.72mという超巨大な彫刻作品でありながら、万博のテーマ館なのです。内部には原生生物から始まりホモ・サピエンスに至る、地球上の生物の進化を辿る生命の樹が立っておりました。ひととおり見終わると塔の右腕の内側から大屋根と呼ばれる空中テーマ館に出てくるという構成。
海洋堂(というか、たぶん宮脇センム)は、この太陽の塔には格別な思い入れがあるようで、以前から立体物をはじめ、数種類の完成品フィギュアをリリースしてきましたが、ついにプラスチックモデルでの製品化。パッケージされたボリュームも価格も超豪華なので、模型店の店頭で安易に手に取ることすら憚られてしまいます。
さぞかし細かいパーツがギッシリで組み立ての手間がかかるだろうなと思いきや、内部の生命の樹関連は細かく分割されているものの総じてパーツ数は少なめ。といってもコンクリートの質感とか黒い太陽の表面のタイル模様は細かく彫刻されていて、眺めているだけで楽しくて、思わず時間を忘れてしまいます。内部には「脳の壁」「太陽の空間」と呼ばれる規則的な模様の入った壁面パーツが並び、腕の内側はトラス状の鉄骨フレームパーツが入ります。黄金の顔は支柱で固定されますが、取り付けが容易なようにうまく分割されています。サイズこそ大きいもののパーツの嵌め合わせも良好で、サクサク簡単に組み上げられて拍子抜けするぐらい。
白眉と言えるのは内部に立つ生命の樹。原生生物から無脊椎動物、魚類、両生類…と続く生物の進化に応じたさまざまな生物が細かく再現されています。組み立て自体は簡単なので、パーツ番号を間違えないように絶えず確認しながら組み立てることと、多彩な色を用いる塗装についてはじっくり取り組みたいところ。この生命の樹を観察しながら上に登る各階回廊フロアへのエスカレーターも再現され、繋がる回廊とは取り外しも簡単、確実で完成後も生命の樹を眺められます。
■ベースについて
さて、普通に組み立てるだけではあっという間に完成してしまいますから、少し手を加えてみます。腕のパーツは実物に即した分割になっていますが、成型上、あるいは組み立てやすさを考慮したためか、実物とはラインが少し違っていますので、1度しっかり接着して組み立てて段差はパテで処理した後、腕と本体との継ぎ目はスジ彫りを彫り直しました。黒い太陽上方にあるアクセスドア(?)も0.3mm厚プラ板を差し込んで接着。表面処理をしてスジ彫りを少し細くしました。
また、内部は完成後も眺められるように、腕の先端にネオジム磁石を仕込んで取り外し可能としました。表面に走る赤いラインや黒い太陽はデカールが用意されていますが、すべてマスキングして塗装で表現しました。
さてディオラマのテーマはいろいろと考えられますが、私は岡本太郎という稀代のアーティストの残した、この太陽の塔が未来永劫立ち続けてほしいという願望を込めて、「人類が滅んだ後の遥か未来も遺跡の様に屹立し続ける太陽の塔」というイメージで作ることにします。
スタイロフォームを下地にタミヤのテクスチャーペイントを塗り地面を仕上げた後、プラパイプにエポパテを盛り付けて作った幹に、ドライフラワーを接着。ディオラマ用のスポンジ製の葉を付けて何本も作った樹々を植えていきました。なお、本体はネオジム磁石接続で地面から取り外し可能としました。
太陽の塔自体は年月を経たイメージで、下部は苔やツタに覆われだイメージでグリーンのパウダーを接着。上方は水垂れのような汚しを念入りに施しました。
海洋堂 1/200スケール プラスチックキット“ARTPLA” 太陽の塔 TOWER OF THE SUN 使用
『太陽の塔』
ディオラマ製作・文/山田卓司
ARTPLA 太陽の塔 TOWER OF THE SUN
●発売元/海洋堂●19800円、発売中●1/200、約36cm●プラキット
ⒸTaro Okamoto
山田卓司(ヤマダタクジ)
AFVからキャラクターものまで、ジャンルを問わず活躍するご存じ「情景王」。