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【リアルタイプカラー復活記念】大河原邦男氏のインタビューを掲載!リアルタイプカラー Ver.の「MG フリーダムガンダム Ver.2.0」、「MG ジャスティスガンダム」もイベント販売!

2023.10.06

フリーダムガンダム&ジャスティスガンダム リアルタイプカラー 大河原邦男インタビュー 月刊ホビージャパン2023年11月号(9月25日発売)

大河原邦男と、リアルタイプカラーのフリーダムガンダムとジャスティスガンダム

フリーダムガンダム&ジャスティスガンダムリアルタイプカラー大河原邦男インタビュー

 『機動戦士ガンダムSEED』20周年を記念して “リアルタイプカラー”が復活。オリジナルデザインを手掛けた大河原邦男氏によって、リアルタイプカラーのフリーダムガンダムとジャスティスガンダムが描き起こされた。当時リアルタイプカラーが生まれた経緯はどのようなものであったのか、そして『ガンダムSEED』という作品において、そのマインドはどのように表現されているのか。大河原氏にお聞かせいただいた。

(聞き手/河合宏之)

大河原邦男

大河原邦男(オオカワラクニオ)

 1947年12月26日生まれ。東京都出身。東京造形大学を卒業後、アパレルメーカーを経て、1972年にタツノコプロに入社。『科学忍者隊ガッチャマン』のメカデザインでデビュー。タツノコプロを退社後、デザインオフィス・メカマンの設立に参加。1978年以降はフリーのメカニックデザイナーとして活動している。主な参加作品に『機動戦士ガンダム』『太陽の牙ダグラム』『装甲騎兵ボトムズ』『蒼き流星SPTレイズナー』『タイムボカンシリーズ』『勇者シリーズ』など多数。


『機動戦士ガンダム』におけるリアルタイプとは?

 『機動戦士ガンダム』の人気が高まってきた1980年代前半、大河原邦男氏がアニメのカラー設定に捉われず、オリジナルのミリタリー調カラーやマーキングを施したイラストを描いたことが発端である。当時のムックや、劇場版のポスターなどで描かれ、ファンに衝撃を与えた。当時、アニメ以外のカラーで描かれたメカを描くということは考えられず、作品世界の広がりを後押しする結果となった。「モビルスーツをリアルに表現する」という流れは、やがてリアルタイプカラーのモビルスーツの商品化や、MSVの展開へと発展。「ロボットアニメのリアリティ・ミリタリー表現」の原点となった。


現実の体験に基づくリアルのバックグラウンド

──1980年代の『機動戦士ガンダム』ブームの際に、大河原さんはオリジナルマーキングやオリジナルカラーリングを施した、リアルタイプカラーのイラストを描かれました。これはファンにとって大きな衝撃でした。

大河原 当時、「安彦(良和)さんがキャラクターメインのビジュアルを描くから、あんたはメカ好きのために描きなよ」と、サンライズ(現:バンダイナムコフィルムワークス)さんに言われたことがきっかけですね。そもそも私はイラストレーターじゃないんですよ。自分がデザインしたものだから描かせてもらっていますけど、まぁ「おおめに見てくださいね」という気持ちでした。

──とはいえ、大河原さんの描かれたイラストはとても説得力がありました。

大河原 それにはやっぱりテクニックが必要なんですよ。僕が新人でタツノコプロに入社した当時、美術科に入ると、必ず中村光毅さんが指導してくれるんです。生まれながらのセンスって、あるじゃないですか。中村さんはセンスが良すぎました。『科学忍者隊ガッチャマン』の鉄板の表現なんて、あれは全部中村さんが考え出したものなんです。 私も4月に入社して、 2ヵ月ほど中村さんに指導してもらい、7月には「『ガッチャマン』のメカをやれ」って言われました。メカだけじゃなく、美術設定も含めてね。「よく新人の私にやらせたなぁ」と思いましたよ。

──その経験が糧になっているのでしょうか?

大河原 そうですね。当時、アニメの美術設定は美大出身の方が担当するほうが多くて、メカが好きという方はあまりいなかったんですよ。特にデザインが必要になるので、嫌がる方も多かった。ですから、なにからなにまで、みんなこっちに回ってくる(苦笑)。でも、全部勉強になりましたね。

──80年代のロボットアニメシーンは、大河原さんが描いたメカイラストのリアル感、ミリタリー感というのが大きな影響を与えていたと感じます。そのルーツはどこにあるのでしょうか?

大河原 やっぱりこれは時代でしょうね。私は1947年生まれですが、戦後からまだ2年しか経っていない時代に育って、周りには進駐軍がたくさんいましたから。私が住んでいる稲城から、多摩川を挟んだ調布、府中、立川はすべて米軍基地でした。稲城にも弾薬庫があって、そこは今でも米軍のレクリエーションセンターになっていますからね。そういう空気を経験してきていると、軍隊のイメージや兵器らしさというものは自然と刷り込まれていきました。具体的な根拠があって描いているというよりは、その当時に刷り込まれたイメージをストレートに出しているだけなんです。

──ミリタリー的な要素を加えたのは、どのような理由からだったのでしょうか?

大河原 ウェザリングや撃墜マークのアイデアは、サンライズ企画室の山浦英二さんの提案です。彼はいつも企画室で戦記物を読んでいたほどの戦記マニアでしたから。また、当時は『スター・ウォーズ』がすごくヒットとしていたんです。劇中に搭乗するメカってみんな中古品じゃないんですか? 「エイジングやウェザリングもやってよ」という感じで取り入れていきました。

──アニメーションのメカを、「アニメ以外のカラーで塗っていいんだ」という衝撃も大きかったです。

大河原 私もそう思ったから(笑)。本来、アニメのメカは、基本的に自由に塗ることはできません。監督が「白がいい」と言っても、スポンサーが「それじゃ売れないよ」といえば変えますし、作り手側の自由にできることはほとんどありません。ただ、『ガンダム』はもう終わった作品という認識でしたから、よかったんでしょうね。「MSV」に発展したころは、もうサンライズさんは何も言わなかった。それなら「遊んじゃおう」ということで、講談社と安井尚志さんが音頭を取って、ストリームベースにも協力してもらいました。若い人たちはミリタリーのこともよく知っているので、結構ヒントをいただきました。

──ここから「リアルタイプ」というワードが広く認知されて、それが『太陽の牙ダグラム』や『装甲騎兵ボトムズ』に発展していった印象があります。

大河原 そうですね。ガンプラの人気が爆発したおかげで、タカラ(現:タカラトミー)もプラモデルを出そうという機運に繋がりました。タカラの商品企画マンは、サンライズの創設メンバーである沼本清海さんですから、彼がクライアント側にいたので、話は早かったです。

新時代のリアルタイプはすでに始まっている

──そうした背景を持つリアルタイプが、『SEED』のモビルスーツに反映されると、また印象が変わりますね。

大河原 『機動戦士ガンダム』が放送した79年代後半から80年代にかけては、昔っぽいミリタリーなカラーリングがよかったかもしれませんが、40年以上経っていますからね。今の時代の人に向けて作るのであれば、若いスタッフの方が色を付けたほうがよかったのかもしれません。

──今回のリアルタイプカラーを設定していただく上で、注目してほしいポイントはどこになりますか?

大河原 やっぱり背負いもの(バックパック)で表現したという感じです。それが特徴的で一番わかりやすいし、表現しやすいんですよ。もっともミリタリーを感じてもらえる部分だと思いますし、機体のパーツのなかでかなりの面積を占めている。個々に特徴を持たせるだけで、印象が変わってくると思います。

──『SEED』のモビルスーツの特徴として、バックパックはわかりやすい部分ですね。

大河原 福田(己津央)さんは背負いものが好きですからね。でも、今はこうして土台(アクションベース)を使って支えていることも許されていますけど、昔は自立できないデザインはNGでした。ハイヒールのような脚ではなく、もっと太くて倒れない脚じゃないとOKは出なかったですね。

──それぞれのカラーリングについてお聞きしますが、フリーダムはリアルタイプRX-78ガンダムのセルフオマージュでしょうか?

大河原 まぁそれほど深く考えてはいないんですよ。もともとひとつの仕事にあまり時間をかけられないので、思い付いたらパッと進めるタイプなんです。それこそ忙しいときには『機動戦士ガンダム』と『ガッチャマン』シリーズ、『ゼンダマン』、『ザ☆ウルトラマン』の4本が同時進行でしたからね。今回も頭に浮かんだ色で進めました。

──フリーダムは水色のチョイスが珍しいですね。

大河原 これも思いついたからですね。初めから想定していた色ではなく、「あ、ここにちょっと色気が欲しいな」と思って選びました。

──ジャスティスは航空迷彩のような印象で、オリジナルのカラーリングからはイメージが一新されました。

大河原 一見して「ありそうな色」を選んだ形ですね。やっぱり飛ぶ機体なので、戦車っぽいカラーリングよりはイメージが合うのではないかと思いました。

──マーキングのポイントはどんなところになりますか?

大河原 欲しいポイントに入れていくという感じです。たとえばダクト部分には航空機的なマーキングを入れるようなイメージです。外せないのは背負いもの部分へのマーキング(形式番号)です。この部分は一番目立つので、意識的にマーキングを入れました。

──左肩にザフトのマーキングが施されているので、イメージが膨らみますね。

大河原 今回は『SEED』のモビルスーツが題材なので、少し派手にしたいなと。「なにか欲しいな」と思ったときに、ザフトのマークを思い出しました。

──大河原さんはリアル感を見せるときに、どのようなことを意識されますか?

大河原 いかにも「ありそうだな」と感じてもらうことが大事だと思っています。たとえば『ボトムズ』の場合は、コクピットに登るためのバーを体の各部分に配置すると、「ここに足をかけて登るんだな」と思えるじゃないですか? システム的なものを外観から感じ取ると、人間は錯覚してくれるんです。悪い意味ではなく、「視聴者をごまかす」ことがアニメーションでは一番大事だと思っています。

──今回は『SEED』のモビルスーツが題材となりましたが、大河原さんにとって『SEED』はどんな作品でしたか?

大河原 純粋に楽しかったですね。『機動戦士ガンダム』をベースに、その時代にあったものにアップデートできたので。四脚型のバクゥをデザインできたのもよかったです。昔やり残したものを、また新たな作品でチャレンジできたのはラッキーでしたね。

──『勇者』シリーズをはじめ、福田監督とはさまざまな作品で関わられていますね。

大河原 振り返ってみると、福田さんとは『超力ロボ ガラット』のときに、彼がサンライズの企画室に出入りしていたときに出会ったんです。ガラットはデフォルメとリアルでふたつの顔があるロボットで、それが3機登場するから6個も顔を考えなければなりません。リアル形態の顔は変形の構造には関係ないパーツなので、「僕以外が担当しても大丈夫」と思って、福田さんにお任せしたんです。

──福田監督が描かれいてた『SEED』のメカデザイン発注表も、かなり具体的に絵で描かれていましたね。

大河原 そうなんです。『勇者』シリーズを見てもわかるように、福田さんはロボット愛の強い方なので、しつこいんですよ(笑)。『SEED』のデザインをするときにも、いろいろな楽しみを与えてくれました。リクエストに答えるだけでも楽しかった。福田さんはロボットの魅力を引き出す能力がある方なので、新しい劇場版(『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』)もぜひ楽しんでいただきたいですね。

──かつてのガンプラブームのときに、大河原さんは「リアルタイプにチャレンジしてみませんか?」という言葉を残されていますが、それも『ガンダム』の世界観を広げる大きなきっかけになりました。

大河原 ただ、私の場合、自分から流れを作っていくタイプの人間ではありません。「こういうものを作ってほしい」と言われたときに、なるべく要求されたものに近いものを提案できるよう、常に準備しておく。まぁそれはいろいろな体験をすることで、求められたことに対応ができたと思っています。たとえばリアルのようなかっこいいものばかりではなく、『タイムボカン』シリーズのようなコミカルなシリーズを手掛けることでも、デザインの幅が広がるんです。最近はかっこいい方向性ばかりで、なかなかコミカルな作品に出会えないのが残念ですが。

──今回のリアルタイプ フリーダムガンダム&ジャスティスガンダムをきっかけに、新たなリアルタイプのアプローチが生まれることを期待しています。

大河原 そうですね。すでにアジア圏では、個性を主張するアートとして、自分流のガンプラを発表している方がたくさんいます。ガンプラは、もう次のフェーズに入っていると感じます。新しい世代、新しいファンの方が、このリアルタイプを見て、「自分ならこうする!」という新しい流れが生まれるとうれしいですね。

──本日はありがとうございました。

(2023年7月、バンダイナムコフィルムワークスにて収録)


MGキット化決定!!

 9月30日・10月1日に開催された「第61回全日本模型ホビーショー」にて初展示!!

リアルタイプカラーのフリーダムガンダム
リアルタイプカラーのジャスティスガンダム

▲「GUNDAM NEXT FUTURE限定 MG 1/100 フリーダムガンダム Ver.2.0(リアルタイプカラー Ver.)」(5500円)、「GUNDAM NEXT FUTURE限定 MG 1/100 ジャスティスガンダム(リアルタイプカラー Ver.)」(5830円)、キット化決定。成型色と水転写式デカールで大河原氏による設定画をイメージ通りに再現している

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ⓒ創通・サンライズ

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