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大張正己監督に聞く!!『境界戦機 極鋼ノ装鬼』配信記念インタビュー!

2023.09.21

配信開始記念!境界戦機 極鋼ノ装鬼 監督 大張正己インタビュー 月刊ホビージャパン2023年10月号(8月24日発売)

大張正己監督に聞く!!『境界戦機 極鋼ノ装鬼』配信記念インタビュー!

配信開始記念!


監督
大張正己
インタビュー


 リアリティあふれるミリタリー描写を盛り込み、『境界戦機』の新たな方向性を切り開いた『極鋼ノ装鬼』。本作を手掛ける大張正己監督といえば、ケレン味あふれるスーパーロボットものを得意とする印象が強いが、実はミリタリー描写にも強いこだわりがあるという。はたして大張監督は、どのように『極鋼ノ装鬼』を作り上げていったのだろうか? メカデザインやアクション描写をはじめ、作品へのこだわりについてお聞きする。

境界戦機 極鋼ノ装鬼 大張正己

大張正己(オオバリマサミ)

 スタジオG-1NEO代表。アニメーター、メカニックデザイナー、監督。勇者シリーズ、ガンダムシリーズ、スパロボと多くのロボットコンテンツに携わっている。

聞き手/河合宏之


 手掛けてみたかったリアリティ描写への挑戦 

──まず『極鋼ノ装鬼』という企画は、どのようにスタートしたのでしょうか?

大張 僕が参加した段階では、仮タイトルと孤島が舞台ということ以外、何も決まっていなかったんです。ただ、孤島という舞台に関しては、物語を作りやすい題材でしたね。限定した戦場のほうが要素を厳選できますので、本編を見ていない方でも楽しめる内容にできますから。舞台となる場所に関しては、『境界戦機 フロストフラワー』が北海道ということもあって、違いを出すために南の雰囲気をイメージしています。知念やヤマピカリャーという名前も、南方をイメージしたものですね。

──『境界戦機』の世界を題材としながらも、非常にリアルな方向性にシフトしていると感じます。

大張 僕はもともとミリタリーものが好きで、今回は「年齢層を上げてもいい」ということだったので、硝煙の匂いがするような雰囲気を目指しました。『境界戦機』自体はTVシリーズということもあって、羽原(信義)監督はエンターテイメントを意識されて、非常にうまく描かれていたと思うんです。そのうえで今回は特化した内容でOKということでしたので、TVシリーズでは実現が難しいハードな内容を目指しました。

──たしかに世界観の背景を踏まえると、過酷な状況ではありますね。

大張 根本的には戦争を描いている作品ですからね。あの世界観でミリタリーな方向性に振るのであれば、避けては通れない描写に関しても、逃げずに取り組んでいます。もうひとりの主人公である知念が、「俺は逃げない」と劇中でつぶやくのですが、まさにその言葉がポイントになっています。第二話で三澤が知念に厳しく当たっていますが、そういうところに現れていますよね。

──大張さんといえば、スーパーロボット的な方向性がメインという印象があり、こうしたミリタリーテイストの作品を手掛けるのは珍しいですね。

大張 大張正己といえば、ケレン味のあるスーパーロボットをイメージする方も多いと思うのですが、実は『太陽の牙ダグラム』や『装甲騎兵ボトムズ』も大好きなんです。『極鋼ノ装鬼』もハードな世界観の作品としてやりたかったんですよ。スタッフも説得しまして、「自分がやりたいからやらせてほしい」とお願いして、完全に自分が見たいものを作りました(笑)。

──時間軸が北陸戦線後となった理由はなぜでしょうか?

大張 最新の作品である以上、未来への可能性を広げるという意図があります。メカニックに関しても、「最新であるべき」という理由から、プロトゴウヨウはビャクチの設計を受け継いだMAILeSの最新鋭機になりました。さらにプロトタイプであるからこそ、発展する可能性を予感させてくれる存在になっています。

──主人公機であるプロトゴウヨウのメカデザインの方向性については、どのように進められたのでしょうか?

大張 ビャクチがベースになったのは、BANDAI SPIRITSさんからのリクエストです。そこからデザイナーの海老川(兼武)さんと、かなり詰めていきました。たとえば頭部については、ヒロイックなフェイスとするために、角を付けるなどアレンジを加えました。また、カメラに関しては、俯瞰になったときに目のように見える形状にしたのがポイントです。カラーリングについては、基本的には軍用というラインで、TVシリーズのMAILeSよりはマットで落ち着いた雰囲気になっています。

境界戦機 極鋼ノ装鬼1

──全体的なシルエットも印象が変わりました。

大張 大きな変化は脚の関節でしょう。ここは逆関節を強調しないパーツの構成にしました。これは三澤とゴウヨウの人機一体感を出したいというコンセプトをもとに、人間らしいヒロイックなアクションを実現するために導き出されたものです。
 また、既存の機体と明確にシルエットを変えたいという意図もありますね。『境界戦機』の商品が展開しているなかで、新しいアイテムとして加わったとき、明確に違うラインを打ち出したかったんです。

──プロトゴウヨウとゴウヨウカスタムには、どのような違いがありますか?

大張 知念たちが使うゴウヨウカスタムは量産機であり、性能は安定しています。一方で三澤が使用するプロトゴウヨウは、傭兵用にカスタムされたプロフェッショナル専用の機体です。武装に関してはこだわりがありまして、自分のほうから武器デザインの柳瀬(敬之)さんにすべてリクエストさせてもらいました。

──非常に豊富な武器を装備していますね。

大張 劇中ですべての武器を使う前提で設定しました。三澤は単独で戦場を支配できるような傭兵です。コンセプトは一騎当千ですから、武装も多数の敵と戦うことを前提としています。そういう意味では、三澤をバックアップするドレッドノータスは、彼の一番信頼できる相棒と言えるでしょう。

──武装のなかで象徴的なのは、腰に装備したマチェットです。

大張 これは三澤がともに戦場を駆け抜けてきた武器です。全部武器がなくなったとしても、「このマチェットが1本あれば戦える」というほど信頼を寄せている装備ですね。オープニングで回想シーンが出てきますが、その時点からすでに使用しています。

──戦闘描写も『極鋼ノ装鬼』のテイストに合わせて、調整されている印象があります。

大張 たしかにビームが飛んできてすぐ爆発……という描写は避けていますね。イメージとしては戦車戦です。被弾してもすぐには爆発しない、爆発しても下半身が残るような感じですね。戦車と戦闘機の中間っぽい雰囲気です。これはTVシリーズの『境界戦機』を否定しているわけではなく、本作はミリタリーな方向性にシフトしたからですね。

──さじ加減でいろいろな描き方ができるというのは、やはりロボットアニメの面白いところですからね。

大張 そうですね。ほかにも「ジャンプをさせない」という点も意識しました。だから登場機体にスラスターがついていないんですよ。走って、潜伏して、その地形を生かして戦うわけです。状況に合わせて武器を使い分けるので、多くの武器を設定する必要がありました。

──TVシリーズの系譜を受け継ぐ機体も登場します。

大張 一番大きく変わっているのは、バンイップ・ジンガーでしょう。高速戦闘を見せたかったので、高速走行が可能な変形メカになっています。平地では変形して高速戦闘、山岳地帯では人型に変形して戦う、という感じでバンイップ・ブーメランから運用法も大きく変わっています。単なるやられメカではなく、その存在自体が驚異となるようなイメージです。

 ふたりのスペシャリストの激突こそが本作最大の見どころ 

──本作には、大張さんゆかりの豪華なクリエイターが参加していることでも注目しています。

大張 羽原(信義)さんや、大師匠である大貫(健一)さんなど、僕が10代のころから一緒に仕事をさせていただいているスタッフの方と仕事ができたのはうれしかったですね。また、山根(理宏)さんや、僕が絶大な信頼を寄せている有澤(寛)くんにも無理を言って参加してもらいました。

──大貫さんと大張さんといえば、『機甲戦記ドラグナー』が思い起こされますね。

大張 『ドラグナー』は20歳のときですからね。大貫さんがキャラクターデザインで、僕が監督というのは夢のような組み合わせなんです。

──キャスティングについても、大張監督がチョイスされたということですが。

大張 そうですね。ただキャスティングについては真逆で、むしろ一緒に仕事してきた仲間は、三澤ジン役の三木(眞一郎)君だけなんですよ。他のキャスティングは、みんな新しく仕事をする方ですが、すべて自分で選ばせてもらいました。

──三木さんは、大張監督の作品のなかでも、重要なキャラクターを担当されることが多いですね。

大張 三木眞一郎だけはマストでしたね。 三澤ジン=三木眞一郎というイメージから来ていますから。儚げな中に強さを感じる三澤のイメージは、まさに三木君なんです。お芝居に関しては音響監督と相談して、かなりアニメらしくないギリギリの芝居を狙っています。ファンの皆さんがご覧になったときに、ちょっと不思議な感じを抱かれるかもしれません。

──三澤ジンとは、どんなキャラクターでしょうか?

大張 完成しているけど、欠落しているという矛盾をはらんでいる人です。戦闘の技術としては完成していますが、過去にとらわれてしまっている部分は、最大の欠落部分でしょう。イメージ的には土方歳三に近いです。

境界戦機 極鋼ノ装鬼3

──もうひとりの主人公である知念イブキも、戦場を描くうえで重要なポジションを占めていますね。

大張 知念は、三澤と違って未熟な立場から戦場の厳しさに直面する人物になります。これは他作品で注目していた千葉(翔也)さんにお願いしました。千葉さんは生っぽい芝居が素晴らしく、本作の方向性にとても合うと感じました。三木君との相乗効果で、不思議なバディ感が出ていましたね。

境界戦機 極鋼ノ装鬼2

──他のキャストについては?

大張 グレイディ役の小西(克幸)さんとお仕事をさせていただいたのは初めてだったんですが、「こんなにすごいのか!」と、あらためて思いましたね。ヤマピ役の紡木(吏佐)さんには、沖縄出身の方に本物の沖縄弁をお願いできましたし。成海マイ役の吉田(早希)さんは、アニメの仕事は初だったと思いますが、普段とは違う男の子っぽい芝居をお願いできたのもよかったですね。

──マイは本編を拝見すると、とても芯が強いタイプという印象を受けます。

大張 大貫さんのデザインを含め、とても男前です(笑)。吉田さんの本職はグラビアアイドルなのですが、声優っぽくない喋り方もあって、不思議とリアルな雰囲気を醸し出していますよね。ただ、本当に本編は男前なので、オープニングでは水着のカットを入れて若干艶っぽい部分を見せていますね。

──本作の見どころを挙げるとすれば、どのようなポイントになりますか?

大張 やっぱり三澤とグレイディという、ライバルの対決になります。相対する陣営が違うから、敵になってしまったふたりですが、同じ陣営だったら親友だったかもしれない。お互いがスペシャリストであるがゆえに、戦わざるを得ない運命のふたりなんです。第1話で三澤のエンブレムを見たグレイディが、「鬼が来た」と呟くのですが、これは思わずコンテで入れてしまったセリフなんです。「きっとグレイディならこう言うよな」と。

境界戦機 極鋼ノ装鬼場面カット4

──さて、『極鋼ノ装鬼』からは、HG 1/72 メイレス プロトゴウヨウの発売が決定しています。こちらの印象についてお聞かせください。

大張 デザインの段階で、「どのパーツが変更できるか?」という点を考慮しつつ、海老川さんと話し合いながら進めてきました。先ほど申し上げた武器についても、どこまで実現可能かどうかを考慮しながら、柳瀬さんにデザインを進めてもらったものです。ぜひ劇中の描写をイメージしながら遊んでほしいですね。また「血の涙を流している狼のエンブレム」も中二感たっぷりで、ケレン味あふれるイメージにしたかったんですよね。

──『境界戦機』の立体物については、どんな印象がありますか?

大張 とても思い入れがありますね。『境界戦機』の放送前に、スタジオでビャクチの試作を触らせてもらったんです。実際に触らせてもらって、「すごい出来だ!」と驚いたんですよ。スイング機構もすごいし、関節もよく動く。「これが境界戦機の主人公機なのか!」と思ったら、実は外伝の主人公機だったという(笑)。でも、とても印象的だったので、ビャクチは今回のPVにも登場させたんです。

──本作で大張監督の新たな側面に出会えるファンも多いのではないでしょうか?

大張 普段はスーパーロボット的な作品や、『ガンダム』でも「ビルド」シリーズに携わらせてもらっていますが、反動で「思いっきり鉄と血と硝煙の匂いがする作品をやってしまった……」という感じです。見ていただいて「この作品を作ったの、大張正己?」と、ちょっと驚いてほしいですね。なかなかハードなテイストの作品を作る機会もないので、本当に感謝しています。
 TVシリーズよりも見やすい尺の作品ですし、ネット配信ということで、いつでも好きなときに見てもらえればと思います。もし『極鋼ノ装鬼』で世界観に興味をもってもらったなら、ぜひTVシリーズの『境界戦機』も観ていただきたいですね。

大張正己

──『極鋼ノ装鬼』で、『境界戦機』の世界観がさらに広がっていく予感がしますね。本日はありがとうございました。

(7月下旬、SUNRISE BEYONDにて収録)


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