航空史上に残る超傑作戦闘機「スーパーマリン スピットファイア Mk.I」ってそんなにすごいの?【いまさら聞けないすごいヤツ】
2023.08.17 スーパーマリン
スピットファイア Mk.I
イラスト/大森記詩
「名前は知ってるけどどんなものなんだろう?」「いまさら聞くのもはずかしいなぁ……」なんて思ってしまう有名な飛行機や戦車、車などのモチーフをサクッと読める解説とイラスト、オススメのプラモとともにご紹介する本連載。
今回は、航空史上に残る超傑作戦闘機「イギリス空軍 スーパーマリン スピットファイアMk.I」の登場です。この飛行機も、飛行機を知らない人からすると「葉っぱみたいで地味……そんなにすごいの?」って疑いの目を持たれがち。そんな疑いはこの記事を読めば吹っ飛びます。そしてスピットファイアがカッコ良く見えてくること間違いなし。イギリス国民にとっては、自国をドイツ軍から救った象徴であり、まさに「ガンダム」とも言える存在感を持つ戦闘機です。さまざまなタイプがあるのですが、まずは初代であるMk.Iの誕生を見ていきましょう。
スーパーマリン
スピットファイア Mk.I
全幅/11.234m
全長/9.124m
全備重量/2.814Kg
エンジン/ロールスロイス・マーリンII又はIII
馬力/1030馬力
最高速度/586km/h
航続距離/636km
武装/7.7mm機銃×8
「美しい機械は、正しく完璧に作動する」
スーパーマリン スピットファイアMk.I
解説/宮永忠将
エアレースが育てた戦闘機メーカー
歴史にはときどき、国を滅亡の危機から救ってしまうすごい兵器が登場することがある。イギリスのスピットファイア戦闘機などは、その代表だ。もしイギリスにこの戦闘機がなかったら、第二次世界大戦は本当に危なかった。
軍用機が実用化した第一次世界大戦が終わると、軍需バブルに沸いた航空機メーカーは一転、需要減少に直面して生き残りに必死となった。その方策のひとつがレーサー機の開発だ。当時、ヨーロッパ各地で開催されたエアレース、特にシュナイダー杯は賞金が高額で人気があり、やがては主要国の航空機開発技術を競う場となった。エアレースを装う国家間戦争、まさに「ガンダムファイト」の発想だけど、優勝したメーカーは有名になれるし、軍も関心を得られるのはでかい。
後にスピットファイアを開発するスーパーマリンは、このシュナイダー杯で頭角を現したイギリスの航空機メーカーだ。第一次大戦ではほとんどベンチャー状態だったけど、当時入社したジョセフ・ミッチェルという若干21歳の設計技師がすごかった。彼が設計したレーサー機は1927年から3大会連続で優勝を果たし、スーパーマリン社は一躍有名となったのだ。そんな同社が、いよいよイギリス空軍の戦闘機開発コンペに応じたのである。
異次元レベルの高性能機
もっとも、スーパーマリン社が空軍の要求に従って開発したタイプ224試作戦闘機は、主に割り当てエンジンの問題で競争に敗れてしまう。しかし1934年に改めて挑戦した新型戦闘機開発では、ロールスロイス社が提案してきた新型エンジンを選んだことで一気に飛躍する。
タイプ300と呼ばれた試作機は、軽量強固な金属製の骨組みに貼り付けたジュラルミンの板で胴体や翼を作る応用外皮構造や、風防装備の密閉式コクピット、引き込み式降着装置などは、それまで保守的な設計に終始していたイギリスの戦闘機のレベルを異次元に引き上げるものであった。そしてこの機体は、1936年3月に初飛行を果たした瞬間から完成の域にあると評価された。なにより大きくて薄い楕円形の主翼が生み出す運動性に、すべてのテストパイロットが惚れ込んでしまったのだ。
こうしてスピットファイアMk.Ⅰ戦闘機が完成した。タイプ224時代の悪口だった「スピットファイア(かんしゃく持ち)」なるニックネームが、なぜかこの新型機にも引き継がれてしまったことに、ミッチェル技師は不満であったが、この戦闘機がイギリス本土上空決戦でドイツ空軍を退け、窮地の祖国を救い、その心臓――ロールスロイス「マーリン」エンジンとともに、戦史に永遠に刻まれる名戦闘機となったのである。
以降もイギリスはさまざまな戦闘機を開発しているが、第二次世界大戦はこのスピットファイアとその改良型だけで戦っていたと断言できる。いや、正確には、度重なる性能アップの要求をすべてこなせるほど、最初から機体設計が優れていた戦闘機であったのだ。「美しい機械は、正しく完璧に作動する」そんなエンジニアリングの黄金律を、その身をもって証明したのがスピットファイアなのである。
2000年に発売した究極の定番
飛行プラモ「タミヤ 1/72 スーパーマリン
スピットファイアMk.I」
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1/72 スーパーマリン・スピットファイアMk.I
●発売元/タミヤ●1100円、発売中●1/72、約12.8cm●プラキット