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“プロ”モデラーって何がプロなの? ホビージャパンの作例記事はどうやって作られてる?気になる裏側の数々を解説!【模型質問箱】

2023.07.20

模型質問箱2023 環境編 月刊ホビージャパン2023年8月号(6月23日発売)

みんなの気になる“模型の質問”に答えます!

 読者の皆様からのアンケートはがきやHJ Web、SNS等にお寄せ頂いたご意見やご質問を参考に「気になる模型の質問」のプロモデラー・けんたろう、フミテシ、そしてホビージャパンモデラー陣やメーカー各社様がお答えていきます!


Q.プロモデラーとモデラーの違いは何ですか?

A.模型がうまいだけではありません。

 締め切りがある模型作りをしていることですかね……。模型が超うまい人なら、もうそれだけでありがとうという感じですが、もちろん本として世に出すからには、ある程度テーマというか、モデラー側からすると縛りが発生します。まず作るキットがひとつで、新しい製品を作りたい!と願っても、そうはいかないことがしばしばあります。また、記事によっては入手性のよいツールでやるという場合もあり、自分が慣れているツールは使えないということもあります。編集とよく相談しながら、記事の完成形を意識して、一緒に模型を作る。そんな感じで、人と模型を作るというのが作例などを担当するプロモデラーのプロという部分かもしれません。(けんたろう)

ホビージャパンの表紙を集めた画像
▲ 月刊ホビージャパン8月号で650号を数える月刊ホビージャパンもこれまで多くのプロモデラーに支えられてきました

Q.作例の運搬で気をつけることについて教えてください。

A.模型は頑丈に作ろう?!

 これ結構悩みますよね。自分はハンドキャリーで作例を運搬するので、家〜編集部で壊れなければそれでよしというレベルの梱包をします。戦車なら高さのあうガンプラの箱にビニールのごみ袋をぐしゃぐしゃにして入れればそれで充分(アンテナや車載機銃などの出っ張りには注意を払いますが)で、ガンプラは体がこすれないようにやや手足を開き気味にしつつもなるべくまとめてもっていきます。クルマや艦船はディスプレイケースに貼ってしまうのが一番ラクで、船底に家具転倒防止用のゴムにペタッとつけてケースに入れます。航空機がもっとも難しくて、毎回運搬用の台をあつらえて、頑丈なところに緩衝材の支えを入れてなるべく安定するように努めます。

さてこれは多少気を使って自らの手で運搬するケースでしかなく、宅急便など自分以外の人の手や、クルマの振動を考慮するとさらに気を使う必要があります。さきほどの航空機のような気を使った梱包をしたうえで、さらにもう一回り大きな段ボールに入れましょう。衝撃が伝わらないように中に“浮かせる”のがポイントで、ぎちぎちに詰めるとかえってダイレクトに衝撃が伝わってしまうのでNG。また梱包がコンパクトすぎると、雑に扱えてしまうので、実はある程度大きい段ボールにまでなっていたほうがよかったりします。そのうえでワレモノ注意を貼っておきましょう。昔段ボールじゅうに呪いのようにワレモノ注意と手書きしまくってこの荷物を粗末に扱ったら大変だぞ!アピールをして、発送をしたことがあるのですが、別にあんまり効果がなかったうえに、その段ボールを再利用してまた送ってこられて、恥ずかしいやら気まずいやらという思いをしたことがあります。

で、ここからが本質なんですが、本来繊細で大事な作例は、普通の宅急便で送るな、というのがまずひとつあります。普通の料金で、自分の大事な作例を特別扱いしてくれというのが虫のいい話なのです。ありがたいことに、編集部周りの運送会社さんは、これがどういうものか把握してくださっている方もいて、これ作例ですか? と聞いて、ワレモノ注意を多めに貼ってくれるありがたい担当者様もいらっしゃるのですが。いちおう運送会社によっては保険がかけられるので、それを頼みにすることもできます。ただ本当に破損した際の被害額の算定は模型は難しく、保証がどこまでできるかは分かりません。

またもうひとつの対策として、輸送をする前提の模型は、頑丈に作るべき、というのもあります。また作例を作るみなさんはそこが大変うまく、私が遭遇した事故のひとつで思い出すのが、作例が届いた時からガランゴロンと絶望の音がしていて、それは1/350の中型の艦船だったのですが、なんと開けても台座の首が折れて船が出航していても、少しエッチングパーツがとれただけでマストすら無事、というケースでした。また航空機でも届いたときに絶望の音がしていましたが、横に開いたキャノピーすらガッチリと留まっていて、何も壊れていないという奇跡を見たときに、なるほどうまい人の模型は頑丈なのだな、という思いに至ったわけ です。(うまい人の作例を”こっそり”修復したこともあるけんたろう)


Q.ホビージャパンの作例記事はどうやって作られるの?

A.モデラー、カメラマン、デザイナー、編集者等、いろんな人が関わって作っています!

 これはあえてモデラーのけんたろうがお答えします。編集者は基本的に新製品が発表されると、このアイテムの作例は誰がやったら良い完成品が上がるか、などを考え始めます。そのキットに沿った作例、そして何か企画などがあるかを考え、あるいはそのキットに対応するアイテムの作例なども考えます。これが集合体になると特集、というやつに成長しますね。

さてキットが上がったところで、実際に製作するモデラーと打ち合わせをします。この製品にふさわしい仕上がりはどうだとか、ここの部分を攻めるとより製品としてよくなるね、とか、このアイテムならこういうドラマがあったので、それをディオラマにしましょうとか……。そうやって方向性を決めたうえで、モデラーはガンガン作業に入ります。編集者は方向性がおかしくならないように、たまにモデラーとやりとりして、苦労しているところをなだめすかしたり、支援したりします。

こうして出来上がった模型を、編集者は受け取ったら撮影にかけます。スタジオでは模型の撮影に特化した凄腕のカメラマンたちがいますが、編集者はここでも仕事があります。それはいい写真の画づくりです。ロボットならそのキャラクター性を十全に表すポーズをつけるのも編集者のすることです。女の子プラモを可愛くポージングするのも、そう編集者なのです。あとはモデラーがどこを重視したのか、そういった改造ポイントなども撮影してあげて、モデラーの苦労に報いてあげるのもひとつですね。スケールモデルなどの固定モデルでも、アングルはとても大事で、シルエットの良いところを切り取るわけです。

そしてモデラーは製作文を書きます。まずなぜこれを作るに至ったか、そしてこのキットはどういうものなのか、どういうところが気に入ったとか、どこを重視すると良くなるか、そしてどういった作業をしたか、完成したときの気分、思い入れたっぷりに書いていきます。

そして編集者はページを構想します。キットの情報をより良く知らしめて、そしてモデラーが何をしたのかが分かるようにしたり、付帯する情報も入れたりして、ページを作るのです。あとはデザイナーさんが、編集者の描いたラフ(設計図みたいなもの)をもとに、キレイなページを作ります。こちらも模型をうまくページのビジュアルとして魅せる腕利きばかりなので、編集者がラフで考えたときよりもより伝わりやすい配置になって帰ってきます。あとは印刷所に渡して、本ができてくるわけです(ここざっくりしてますが、ここも大変な仕事です)。

けんたろうは編集者の苦しむ姿も、お互いにやり合ったことも、カメラマンさんが拙作を引き立ててくれたことも、デザイナーさんがバリッとページにまとめてくれたことも、そして私自身が模型製作でヘロヘロになりながら完成させたことも、そしてありがたいことに読んだ皆様からいい反響を頂戴したこともあります。だからこそ、この記事をもって完成とする模型がたまらなく好きで、雑誌というスタッフワークが愛おしいわけです!(けんたろう)

HOW TO BUILDホビージャパンの表紙画像
▲ ホビージャパンのことをもっと知りたい方にはこの本がオススメ!

HOW TO BUILD ホビージャパン

●発行/ホビージャパン●1980円 ●著者/柿沼秀樹


Q.プロモデラーの平均的な製作スケジュールが知りたい!

A.製作期間は平均3週間、最短は……。

 私、その日に帰るときに依頼されて、翌日作って持ってきたこと、ありますよ! さすがにそれは小粒で作りやすいものに限りますが……。

タイムアタック時の時計の画像
▲ こちらはかつてけんたろう氏が体験した恐怖のタイムアタックの模様です

10cmクラスなら5日ぐらい、30㎝クラスなら2週間とか、締め切り相手だとまあ短いですね。雑誌作例を長くやっている人は、そういうヤバめの武勇伝は結構持っていると思いますが、ただこれはあまりおおっぴらに言えることではないですね。週5日働いています、という人なら平日少しずつ進めて、土日などの休みにドカッと進める、というのはよく聞きます。艦船模型のすごいディテールアップ作例も、半月に1隻を就役させるなんて話も伺ったことがあるので、本当にみなさんバイタリティやガッツにあふれていると感じることが多々あります。

でも締切に追われるモデラーとして常に意識するのは、あと何の作業があるか、どれぐらいかかるか、というものがあります。残り作業はデカール貼り何時間、デカールなじませ、コートして乾燥1時間、メタリック塗り、クリアー塗り、か……。という感じで、終わりに向かって時間を区切る、という感じです。工数とスケジュールが出ると、やるべきラップタイムを決められて、そのなかで最善を尽くすというのができるので。このあたりはみなさまも時間に追われつつ、土日の何時に完成品とうまい酒(私はコーラ)、という感じで完成スケジュールに向かって集中する、みたいなフローを考えると製作の助けになるかもしれません。(けんたろう)

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