HOME記事スケールモデルブラックバーン・バッカニアの格納状態をディオラマでリアルに再現【エアフィックス 1/72】

ブラックバーン・バッカニアの格納状態をディオラマでリアルに再現【エアフィックス 1/72】

2023.06.14

ブラックバーン バッカニアS.2C【エアフィックス 1/72】 月刊ホビージャパン2023年7月号(5月25日発売)

ブラックバーン バッカニア S.2Cイメージカット

傑作キットでチャレンジする格納状態のバッカニア

 ジェット攻撃機を比較的小型の空母に搭載しなければならないという制約はバッカニアの機体構造に大きな影響を与えているが、それゆえに主翼や機首を折り畳んだ格納時の省スペース状態もまた本機の特徴をよく表わした姿といえる。エアフィックスのリニューアル版1/72バッカニアは、主翼の折り畳みをはじめとして、モデラーのイマジネーションに応じたさまざまな作り方、楽しみ方が可能なので、今回のようなディオラマ作品にはもってこい。3Dプリンターによる造形を駆使して機首の折り畳み状態を再現、さらにベースも自作し、艦内格納庫ディオラマにチャレンジ!

ブラックバーン バッカニア S.2C 背面画像
機首アップ画像
▲機首は折り畳み状態とするためキットパーツをカットし、隔壁部分は3Dプリンターで自作したパーツをセット。エアインテークにも赤いカバーを追加した
開状態のエアブレーキ
▲エアブレーキはキット通りに開状態で製作すればOK。前方のエアインテークと同様に、エンジンノズルにも赤いカバーを装着した状態としている
空母艦内の格納庫内部画像
▲空母艦内の格納庫はプラ材と自作3Dパーツを駆使して構成。棚に載せた箱、通風筒、脚立、ジャッキステーなどの小物類は3Dプリンターで地道に自作した
バッカニア正面画像
▲天井にはチップLEDを仕込み点灯が可能。格納庫の床には外板の継ぎ目や固定用アイなどのディテールも追加。塗装後に整備の油染みなどを付けると効果的だ
ディオラマ全体画像
▲格納庫ディオラマの全景。天井となる飛行甲板は断面にプラ材やパンチングシートを使い、強度を意識した構造としている
バッカニア側面画像

■空母ディオラマで製作!
 今回はエアフィックス 1/72 バッカニアS.2Cの作例を担当させていただきます。キットは2020年7月に新金型でリニューアルされたもので非常に洗練された構成となっており、ヒコーキの経験値に少ない方でもサクサク形になります。そんなバッカニア(海賊)を今回は空母に搭載したディオラマ仕立てで製作していきましょう。

■機体の製作
 まず機体の組み立てですが、自国の機体だけあって先述の通りストレートに組んでも非常に“カッコいい”バッカニアができます。旧版と異なり再現するところはキッチリ再現されているので、手を加える箇所はそこまで多くありません。今回の作例では追加工作として操縦席コンソールをエデュアルド製のカラーエッチングに変更し、空母搭載時の特徴ともいえるスペースを節約するためにレドームを折りたたんだ状態を再現するため機首をカットし隔壁を3Dパーツで自作しました。あとは基本的にはキットのまま進めています。

■塗装
 Mr.カラーのつや消しホワイト/ブラックである程度明暗をつくり、その上からC35明灰白色1とC514ジャーマングレー“グラウ”を換気扇のフィルター越しに吹き付け、明暗の階層化と塩害表現の下地を作ります。
 下地が完了したら、薄めに希釈したC333エクストラダークシーグレーを、先に作った下地を潰さないよう、仕上がりを確認しながら慎重に重ねていきます。この際、米海軍機よろしく明るいグレーで白飛びしないように、ある程度の暗さを維持するように心がけました。
 デカールを貼った後、仕上げとしてAKインタラクティブのパネルライナーで全体にピンウォッシュすれば、機体の製作は完了です。



■格納庫ディオラマの製作
 今回のもうひとつの主役である英空母格納庫のディオラマを製作していきます。今回のモデルとなるのは機体のマーキングに選んだ空母「イーグル」となります。ただ過密な英空母の格納庫内はさまざまなオブジェクトで遮られ、不鮮明な箇所も多く、同型艦の空母「アークロイヤル」の写真も参考に進めていくことにします。
 天井の梁は、タミヤの3mm角棒、3mm L棒などを、下書きした台紙をガイドに必要面積分組んでいきます。同様に天井隔壁もプラ材やパンチングシートを使い再現し、天井自体の重量を支えられる強度を意識した構造にしましょう。格納庫内の小物は市販されていませんので、やむを得ず3Dプリンターで地道に自作していきます。
 塗装後、格納庫の床などは整備の油染みなど再現しておくと効果的です。最後に天井にチップLEDを仕込み点灯できるように改修したら完了です。ほぼプラ材と自作3Dパーツですね……。

エアフィックス 1/72スケール プラスチックキット

ブラックバーン バッカニア S.2C

製作・文/ジュニア

ブラックバーン バッカニア S.2C
●発売元/エアフィックス、販売元/GSIクレオス●4510円、発売中●1/72、約26.8cm●プラキット


冷戦構造の落とし子

ブラックバーン・バッカニア

文/後藤仁
described by Hitoshi GOTO

イギリス海軍航空博物館に展示されているバッカニアS.1
▲イギリス海軍航空博物館に展示されているバッカニアS.1。S.2に比べてエアインテークが小型であることがわかる

■バッカニアの開発
 第二次大戦後の東西冷戦構造の下、ソ連は巡洋艦の大量建造など海軍力の拡大を計画、これに対抗するためイギリス海軍は、レーダーからの発見を逃れる低空を飛行し核爆弾で敵艦隊を攻撃するという、まさに核時代の申し子ともいうべき新型艦上攻撃機を計画。ブラックバーンが試作を受注し、1958年4月30日に初飛行、1959年に「バッカニア」の制式呼称が与えられた。最初の生産型S.1の部隊への引き渡しは1961年から始まり、1963年から空母「アークロイヤル」、1964年には空母「イーグル」にも搭載された。
 飛行性能の向上と航続距離の延伸を目的に、エンジンをロールスロイス社のスペイに換装したS.2型は、初号機は1963年5月27日に初飛行、最大速度は1038km/h(高度60m)と変わらないが、航続距離は2784kmから3700kmと大きく延伸した。エンジン換装に伴いエアインテークを拡大し排気ノズルをやや外側に傾斜させたため、S.1との識別は容易だ。また射出座席もマーチンベイカーMk.6 BSB-2に換装された。
 最終的に海軍向けのバッカニアは試作機を含め146機が完成したが、近代化改修としてマーテル対艦ミサイルの運用能力を付加した機体はS.2C、電子機材強化型はS.2Dの呼称が与えられている。また空母全廃計画に伴い1960年代末から海軍からS.2の空軍移管を開始、当初S.2Aの呼称が与えられていたが、後に空軍仕様S.2Bへの改修が実施されている。

■空軍型S.2B
 1968年、軍縮による経費節減によりイギリス空軍はバッカニアの空軍型を「S.2B」として採用を決め、1969年に最初の実戦飛行隊へ配備した。
 S.2Bは基本的に海軍型S.2に準じるが、外翼パイロンが外側に移動し、電子機材の強化、カタパルト射出フック廃止など一部を変更。また生産中に爆弾倉下面の外装式燃料タンクが導入されている。空軍向けのS.2B生産数は49機だが、海軍から移管された機体により最終的な装備数は100機を超えている。
 1994年でバッカニアは退役し、36年におよぶ運用にピリオドを打ったが、最大のハイライトが1991年の湾岸戦争への参戦だった。後継機トーネードはレーザー照射機材の未装備が問題となり、近代化改修型のバッカニアの派遣が急遽決定、12機のS.2Bがデザートピンクの砂漠迷彩を施してサウジアラビアに派遣され、226回の戦闘ソーティーをこなした。


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ジュニア(ジュニア)

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