HG作例で月刊ホビージャパンプロモデラーの目線と工作を解明する
新作キットレビューをはじめ、毎月多数の作例を掲載している月刊ホビージャパンだが、実際に製作を手掛けているモデラーがどのような目でキットを見て、どのように製作をしているか、気になったことはないだろうか。次の作例はプロモデラーの考え方や工作について焦点を当て、月刊ホビージャパン作例製作の詳細をお見せする。担当は工作・塗装ともに幅広い知識とテクニックを持つnishi。HGガンダムエアリアル改修型を、キービジュアルイメージのカラーリングで製作してもらった。これを真似すれば、貴方の模型製作も大幅レベルアップ!…のはず。
▲作例はキット形状には手を加えず、基本に忠実に製作。色合いを『水星の魔女』Season1終了直後に公開された、Season2キービジュアルイメージで塗装している。ハンドパーツ交換やデカールワークでよりメカらしい印象を強めた
■nishi目線 工作チェックポイントI
・各パーツをひとつひとつヤスリで整形し、ゲート跡、ヒケなどを消す(番手は400番→600番)
①ブレードアンテナのシャープ化
▲ブレードアンテナのシャープ化。フラッグを切り落とし、ヤスリで削り出します。この作業の心得は「裏と下」。表と上を削ってしまうとバランス調整が難しく、歪みも発生するので触らずに、裏と下を攻めましょう
②肩アーマー可動軸を隠す
▲肩装甲のヒンジ部分を可動範囲に影響が出ない程度にプラ板で埋めています。俯瞰で見ると目立つ部分ですので効果的です
③ハンドパーツをハイディテールなものに交換
▲ハンドパーツは人型メカの魅せ場。より見映えよくするため、「STYLE-S」の「ロボマニ角指」を使用。プラ板を貼って削り、エアリアル改修型の爪と甲を再現しています。握り拳、平手、銃持ち、サーベル持ちと用意しました。結構繊細なのでキットの手も製作し、重いガンビットライフルを持たせるのに使っています
④肩関節下側のパイプ部分をディテールアップ
▲パイプが一体成型となっているので、削り出して再現しました。デザインナイフでパイプの当たりを付け、ピンバイスで側面と下に穴を開けていき、これを起点にデザインナイフでカット。パイプの形状に整形していきます。削る際はデザインナイフ形のダイヤモンドヤスリが非常に便利です
■nishi目線 工作チェックポイントII
・ふくらはぎなどの合わせ目を消す(ハメ殺しになるスネフレームはマスキングして塗装)
⑤モールド、段差のスジ彫り直し
▲スミ入れを行う箇所は必ずスジ彫りし直します。やらずともスミが入るだろうと思いがちですが、より美しい仕上がりにするために重要です。頭部のマスク周辺、肩のバーニア部分、腕部や脚部の各ユニットなどは、特にスジ彫りをキッチリ彫り込むことで別パーツ感を出しています
⑥腰アーマー、靴裏の肉抜きをプラ板で塞ぐ
▲腰アーマーや靴の裏の肉抜きは塞ぐのが定番ですね。チラ見えしたときの見映えが違います。自分の場合はプラ板で塞ぐことが多いです。マスキングテープを使って形状をトレースしてプラ板をカット。ディテールを入れて完成です。今回、靴裏は先端などの肉抜きを残してディテールとして活かしています。また左右対称な場合、片方を切り出したらそれをガイドにもう片方を切り出すと早く正確に作業できます
⑦関節部にある肉抜きを埋めて整形する
▲関節類の肉抜きを埋める際は硬く頑丈な「シアノンDW」を使うことが多いです。一気に埋めてしまうと硬化不良でいつまでも固まらないことがあるので、少し塗ったら硬化剤で硬めて、を繰り返して積層させていきます。硬化すると非常に硬いので120番のヤスリで削り出し、徐々に番手を上げて600番までヤスリがけします。細かく見ていくと埋める箇所は多いですが、完成度を追求するため根気よく作業していきます
■nishi目線 工作チェックポイントIII
⑧足首関節の可動範囲をアップ
▲足首の可動、主に前方向にもう少し曲がるようにしたいと思ったので、足首関節パーツを切断し、1mmプラ板を挟み込んで接着しました。アンクルガードの位置が上がることで足の甲との接触が緩和され、1mmの違いでここまで曲がるようになります
⑨バックパックのガンビットを磁石接続に
▲バックパックに接続するガンビットはプラ同士のテンションで固定されます。成型色なら問題ないのですが、塗装すると着脱で塗膜が剥げてしまいます。剥げないように削り込んで緩くし、磁石でくっついて固定されるようにしました
⑩ピンバイスでディテール追加
▲バックパックのスラスターにピンバイスでディテールを追加。キットのモールドの情報量は充分ですが、オリジナリティとして入れています
塗装について
▲塗装前の準備として、差し込み軸などにはマスキング処理をしておきます。塗料で軸が太くなり、取り付けがキツくなりすぎるのを防ぐためです。組み付けの際にもテンション調整するのですが、先の手間が時短に繋がります
▲自分の場合、塗料は原色から調色することが大半です。よく使うのが「藤倉応用化工」の「FOK」というブランド。もちろんGSIクレオスやガイアノーツも使用します。今は本当にたくさんのカラーが発売されているので、自分のお気に入りの色を見つけるのもいいと思います。ここは本当に「人による」点でしょうね
▲調色のため、フォトショップによるイラストのカラーチャートを製作。今回の作例のモチーフになるイラストを基に色を決めます。作例のテーマ的にこの部分は非常に大事ですね。明確に参考にするものがある場合はこのような手法が有効です
▲サーフェイサーはタミヤとクアトロポルテが最近のメイン。クアトロポルテのTipoGプライマーサーフェイサーは特に高性能。400番ヤスリの傷も消してくれるらしいですが、自分は普段から600番まで表面処理するので真偽は謎です…(笑)
▲自分の場合、青、赤、黄のパーツはすべてピンク色のサフで統一しています。基本色塗布後の発色が違います。下地をグレー1択にせず、最後の仕上がりまで見据えて選ぶことで、最終的な作品の完成度向上につながります
▲スラスター口などはエナメル塗料をエアブラシで塗って拭き取っています。マスキングで塗り分けるよりも、非常に高い精度で塗り分けることができますよ。拭き取りはフィニッシュマスターや筆を使います
デカール、シールについて
▲デカールは工作と合わせて情報量のコントロールに欠かせないファクターです。貼り方としては「全体に均一に貼らず、集中して貼る箇所を各部に配置する」「MG Ver.Kaなどを参考にする」「貼り過ぎないように注意する」「使用する種類を絞って統一感を出す」などでしょうか。最終的に好みとセンスの問題になるので、経験を積むのが一番ですね
▲マークセッターなどは別皿に移し、瓶のハケは使わず筆で塗っています。パーツにのりが残っているとコートしたときに浮き出てきますので注意が必要です
▲キット付属のシール、自分は躊躇なく使います。センサー等の質感はかなり良好ですし、パーツに合わせて切られているので精度も抜群です。マスキングにも使えたりします
■作例モデラーの作業風景
ども、nishiです。今回はちょっと趣向が違う感じで、ホビージャパンのモデラーってどんな感じで作業してるの? という企画ですね。具体的な作業内容は記事中で紹介しているので、それ以外について補足したいと思います。
■製作のコンセプト
毎回のレビュー作例製作の考え方としては、基本的に「キットの紹介」の役割がメインです。なのでバランスや形状変更などはあまり行わず、キットのよさを最大限に引き出すのが大切と思っています。
具体的にはパネルラインを強調させるためのスジ彫り直し、羽やアンテナのシャープ化、パーティングラインや合わせ目を消しておもちゃ感をなくす、などの改修を入れていく感じで仕上げています。今回の作例もそうなりますね。読者の皆さんが新作キットを組んで塗って仕上げるときの、指標になるようなものを目指しています。
また製作テーマとして、今回はカラーリングをSeason2キービジュアルのイラストに合わせる、というのもありました。
■作業工程
自分の場合、作業開始は肉抜きを埋めるところから始めます。今回はその際ついでに肩関節のパイプくりぬきもやっておきました。
いつも仮組みは行わず、どんどん表面処理しながら組んでいます。主に整面で使うのはウェーブのヤスリスティック(ハード#400)。アルゴファイルジャパンのデザインナイフ形ダイヤモンドヤスリもいろいろな場所に重宝しますし、神ヤス!の10mm厚もマストなツールですね。
接着はほとんど瞬間接着剤。硬化剤は臭いがしない919プライマーを愛用しています。プラモデル用は時短のためあまり使いません。ゴム系や水性のボンドも用途によっては重宝します。透明部品の接着にGPクリヤーは欠かせません。
スミ入れをきれいに入れるため、モールドの大半は彫り直ししています。タガネで彫ったあと、デザインナイフで表面近くをカンナ掛けし、バリ取りしています。こうしておくとスミ入れの線は細く、表面は滑らかに仕上がります。
■塗装工程
自分流では色は瓶そのままはほぼ使わず、毎回原色を用いて色味を調整しています(なのでこのメーカーのこの色がイイよという情報が出せないのが痛いところですが…笑)。唯一無二の色味になるのはこだわりのひとつでもあります。
薄め液は用途によって使い分けています。クアトロポルテのマルチシンナーは高級品ではありますが、他の追随を許さない仕上がりが得れられます。基本塗装と光沢仕上げには欠かせません。メタリック塗装はガイアノーツのメタリックマスター。ツヤ消し用のトップコート剤にはブラシマスター。ツールクリーナーにはアルコール系シンナー。それぞれ特徴があり、いろいろ試してようやく安定した使い分けができました。
以上がいつも行っている作例製作の流れです。経験則でやっているところもありますが、参考になりましたでしょうか。やはりたくさん作って、場数を踏むのが上手くなる早道だと思います。それではまた!
BANDAI SPIRITS 1/144スケール プラスチックキット “ハイグレード”ガンダムエアリアル改修型 使用
XVX-016RN ガンダム・エアリアル 改修型
製作・文/nishi
©︎創通・サンライズ・MBS