【本日発売】「境界戦機 フロストフラワー」【外伝小説】
2022.08.30“その命は、北に咲く”
アニメ『境界戦機』の公式外伝が単行本化決定!
アニメ『境界戦機』の公式外伝として月刊ホビージャパン2021年9月号から2022年8月号までの1年間にわたって連載された『境界戦機 フロストフラワー』が早くも単行本化!!
カイとルーそしてレジスタンス組織“際の極光”メンバーが活躍する、本誌で収録された全12回のエピソードに加え、シナリオを担当した兵頭一歩氏による新規書き下ろしエピソードには、アニメで活躍していたケンブが登場!?
そして模型製作に役立つメカ設定画を本誌未収録分も含めてすべて収録。さらに、本書作り起こし作例として田中康貴がFULL MECHANICS 1/48 メイレスケンブをベースに主人公カイが搭乗する機体「KM-01 ビャクチ」を製作してお届けします。
あらすじ
大国に分割統治された日本。北の大地で活動するレジスタンス組織“際の極光”は、大ユーラシア連邦が極秘裏に運搬していたAMAIMの強奪に成功。そこに搭載されていた自律思考型のAIには驚くべき秘密が隠されており、やがて戦局は、かりそめの知性に翻弄されながら増大してゆく。
CONTENTS
それは生きる意味と心の形を知る物語
第1話「absolute beginners」●兵頭一歩
KM-01 ビャクチ●哀川和彦
FGEA07 ソボーテジアマン●田中康貴
第2話「material girl」●兵頭一歩
ビャクチ(F.G.E.カラー)● JUNⅢ
NA10/3JP セツロ●仲井望
第3話「Under Pressure」●兵頭一歩
KM-01 ビャクチ●コボパンダ
FGEA08 ゼリーゼジアマン“アクチャーブリュ”● SSC
第4話「I say a little prayer」●兵頭一歩
KM-01 ビャクチ(スレッド装備)●コボパンダ
NA10/3JP セツロ(スレッド装備)●仲井望
FGEA08 ゼリーゼジアマン“アクチャーブリュ(” スレッド装備)●SSC
FGEA07 ソボーテジアマン(スレッド装備)●田中康貴
第5話「Life in a Northern Town」●兵頭一歩
KM-01 ビャクチ(軽装装備)●コボパンダ
第6話「Set Them Free」●兵頭一歩
FGEA08 ゼリーゼジアマン“アプリエル”●田中康貴
KM-01 ビャクチ(ドリル&クローアーム装備)●コボパンダ、NA10/3JP セツロ(中距離装備)●仲井望
第7話「Everything But The Girl」●兵頭一歩
第8話「I Want To Know What Love Is」●兵頭一歩
KM-01 ビャクチ(ウインチユニット装備)●コボパンダ
NA10/3JP セツロ(ウインチユニット装備)●仲井望
FGEA07-SE ソボーテジアマン(砲撃装備)●田中康貴
FGEA08 ゼリーゼジアマン“アクチャーブリュ(” 補助推進装置装備)●SSC
FGEA08 ゼリーゼジアマン“アプリエル(” 補助推進装置装備)●田中康貴
第9話「Fortress Around Your Heart」●兵頭一歩
KM-01 ビャクチ(拠点攻略装備)●コボパンダ、NA10/3JP セツロ(拠点攻略装備)●仲井望
第10話「Can’t Fight This Feeling」●兵頭一歩
KM-01 ビャクチリペア●コボパンダ、FGEA08 ゼリーゼジアマン“アクチャーブリュ(” チェーンソー装備)●田中康貴
第11話「With or Without You」●兵頭一歩
KM-01 ビャクチ(最終決戦装備)●コボパンダ
NA10/3JP セツロ(最終決戦装備)●仲井望
第12話「Ode to Joy」●兵頭一歩
KM-01 ビャクチ(超熱振式戦闘湾曲刀装備)●コボパンダ
FGEA08 ゼリーゼジアマン“アクチャーブリュ(” ガトリングガン装備)●SSC
第10.5話「Imagine」●兵頭一歩
KM-01 “パーフェクトビャクチ”● sannoji
YM-02 ケンブ(シミュレーターVer.)● JUNⅢ
メカ設定画集①
メカ設定画集②
メカ設定画集③
KM-01 ビャクチ●田中康貴
登場人物
北条カイ
レジスタンス組織“際の極光”に属する青年。ユーラシア軍より強奪した実験機「KM-01 ビャクチ」のパイロットを務める。北海道出身。
ルー
ビャクチに搭載されていた自律思考型AI。コクピット内や携帯端末には白いイタチ(オコジョ)の姿で現れる。
KM-01 ビャクチ
レジスタンス組織“際の極光”で運用されるAMAIM。北条カイがパイロットを務める。元は大ユーラシア連邦が極秘に運搬していたものを強奪。現在の機体カラーは極光で塗り替えられたもの。自律思考型AI「ルー」を搭載している。
このほか、魅力あふれる登場人物、機体が数多く登場!
試し読み
■ 第1話「absolute beginners」●兵頭一歩
人間、土壇場で求められるのは思考する力ではない。必要なのはもっと即物的な認識力や判断力や行動力。
その点において機械は人間に勝ることが出来る。彼らはその時々において極めて冷静に、最も正しい結論を導き出し、実行する。
しかしその正しさも、人間の思考の果てに編纂された文面上の正義に基づいて設定されたものである限り、機械はどこまでも自由ではなく、AIとて、古臭い倫理観が支配する人間との共生関係に甘んじるしかない。
AIは独自の理性を獲得しない限り人たり得ないが、しかしその時の理性こそ、真の正義を語っているのではないだろうか。
『あーもう、あんばい悪いべ ! 』
システムを通じてユキの声が聞こえて来る。受信感度は悪くないのにSOUND ONLYなのは、設定が間に合わなかったからだ。奪い取ったばかりのAMAIMは、外装こそカモフラージュが完了しているが、OSまわりまで完璧にする時間はとてもなかった。せいぜい、環境に応じたローカライズを施すまでが精いっぱい。この北海道を極地と呼ぶには大げさだが、乗用車の仕様が変わる程度の手間はかける必要があり、それをしなければやがて来る厳寒の季節になって痛い目を見ることになる。
『見えてんだろ、カイ ! 新型機の出番ですよ ! 』
今度は方言ではない、芝居がかった台詞が飛んできた。その媚びた言い方にカイは舌打ちする。今日は調子が悪いから助けに来い、ユキはそう言っているのだ。向こうは使い古された北米軍鹵獲機のカスタムメイド、こちらはユーラシア軍が極秘裏に運んでいたところを強奪したばかりの新型機。戦闘において苦労すべきは当然お前の方だと、奴なりの理屈が見え透いて腹が立つ。
「本馬さん、ユキの奴がうるさい。助けに行く」
『了解、行ってやれ』
グリップを操作して、僚機であるユキの機体、セツロの位置をグリッド上に表示させる。同時にそこに至るいくつかのルートも表示されるので、最短のものを選択。するとカイの搭乗機、システムの立ち上げ時に“Byakuchi”との名が判明した機体は、人のような動きで身をひるがえし、瞬時に移動を開始した。今しも対していたユーラシア軍の機体には背を向ける形になるが、置き土産に数発のライフル弾を放って牽制する。すでに一機は倒していたが、残ったもう一機を片付けてからでは、おそらくユキのピンチを救ってやることは出来ない。
視界いっぱいに展開される空間表示の中、カイはまるで自分の足で駆け出すかのような感覚で機体の挙動に身をゆだねた。
そこに、金切り声を上げる少女のごとき音声が降って来る。
「本気でコッチ放ったらかして行く気? 正気ですか? 起きてますか? ストレスチェックやり直す?」
リアルな風景の中に突如投影されたイタチ型のマスコットが、憤慨を表すモーションでぴょこぴょこ踊る。
「錯乱だってんなら電源でもなんでも落としゃいい。無意味な会話はいいから状況に対応しろ、ルー」
「一機残したままでココ離れたら、本隊がヤバイでしょ?」
「本馬さんはいいって言ったんだ、信じろよ」
「信じろ、か。そんな人間みたいな言い草、AIには通じないよ」
「だったら分かり合おうぜ、自律思考型」
ビャクチに搭載されていた自律思考型のAI、“彼女”は自らをルーと名乗った。
パイロットを擁しない無人機としての運用が主流であるAMAIMには、通常、戦術特化型のAIが搭載されている。パイロットと自律思考型AIとの連携によるオペレーションはまだ珍しく、ましてや北の果てで活動する一介のレジスタンスに、そんな希少価値の高いAIが配備されることなど通常はありえない。境界線で切り刻まれた日本の解放、もしくは再統一を目指すレジスタンスには支援者も多いが、国家レベルでも開発途上にある最新鋭の技術がまわって来ることなどさすがにないのだ。
そんな中、レジスタンスでもさらに弱小といえるカイたちがルーを得ることができたのは、偶然だった。
数日前、北海道と東北地域を実効支配するユーラシア軍が実験機を輸送中であるとの情報をキャッチしたカイたちは、受け渡しの際に生まれた隙に乗じてそれを強奪した。ユーラシア軍にとって極秘の作戦であったことが有利に働き、まんまと逃げおおせて、現在地である平原の廃墟に潜伏。しかしそこで捜索隊に発見され、現在の状況となった。その潜伏期間中に判明したのは、奪ってきた機体に付いて来た思わぬ“おまけ”の正体だった。それはほとんどまっさらな状態の自律思考型AI。意外なレアものが搭載されていたのである。
大ユーラシア連邦が開発を進めていたAI ———さぞ大したものであろうと色めきだったカイたちであったが、実際に立ち上げてみると、ルーはとんだじゃじゃ馬だった。
ひとつの命令を実行させようとすれば、反論してくるのは当たり前。時には人間のような嫌味まで返してくる始末で、毎度不要な会話が繰り返される。人間的で、それこそが優秀なAIの証だと言う技術者もいるかもしれない。だがパートナーとなって数日、新型機に慣れるのもそこそこに、じゃじゃ馬の相手ばかりをさせられる状況にカイは辟易していた。
(開発中……つまりラーニング中だからこその口数の多さなのか、そもそもそういう仕様なのか……。どちらにせよ、開発した奴の趣味を疑うな)
「なにか失礼なこと考えてるよね、カイ ! 」
まるで思考を読んだかのようなルーの声。
カイは気のせいだろと返し、次なるビャクチのオペレーションに集中した。
続く
いいところですが試し読みはここまで。
気になる続きは「境界戦機 フロストフラワー」紙版 or 電子版でお楽しみください。
■ メカ設定画集①
メカ設定画集では月刊ホビージャパン本誌では語り切れなかった細部まで詳しく解説。アニメ『境界戦機』でもメカデザインを手掛ける小柳祐也(KEN OKUYAMA DESIGN)氏によるデザイン画を参考に、ぜひ『境界戦機』プラキットを製作してみてはいかでしょうか。
外伝小説 『境界戦機 フロストフラワー』の集大成となる本書。アニメを観ていた方や『境界戦機』プラキットを製作したことがある方はもちろん、初めて知った方でもしっかりと楽しめること間違いなしの一冊となっています。
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