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最強戦車「キングタイガー(ティーガーII)」が不遇な理由とは?【いまさら聞けないすごいヤツ】

2023.05.11

ドイツ重戦車キングタイガー(ヘンシェル砲塔)●宮永忠将、大森記詩 月刊ホビージャパン2023年6月号(4月25日発売)

最強戦車「キングタイガー(ティーガーII)」が不遇な理由とは?【いまさら聞けないすごいヤツ】

 ドイツ重戦車 キングタイガー 
 (ヘンシェル砲塔) 

イラスト/大森記詩

 「名前は知ってるけどどんなものなんだろう?」「今さら聞くのもはずかしいなぁ……」なんて思ってしまう有名な飛行機や戦車、車などのモチーフをサクッと読める解説とイラスト、オススメのプラモとともにご紹介する本連載。
 今月は、第二次世界大戦のドイツ軍を代表する戦車のひとつ「ドイツ重戦車 キングタイガー」です。
ティーガーIという最強戦車があるのに、さらにその上を行こうとしたドイツ軍。あの時代にとってオーバースペックとも言えるキングタイガーはどんな戦車だったのでしょうか?


ドイツ重戦車キングタイガー(ヘンシェル砲塔)

全長/10.28m
車体長/7.38m
全幅/3.75m
全高/3.09m
重量/69.8t
速度/38km/h(整地)、20 km/h(不整地)

行動距離/170km(整地)120 km(不整地)
主砲/8.8cmKwK43L/71(84発)
副武装/7.92mm機関銃MG34×3(内1挺対空用)
前面装甲/最大150mm
乗員/5 名


キングタイガーイラスト横
▲こちらの装甲表面に描かれた凹凸は「ツェメリットコーティング」。1944年8月〜1944年11月まで生産された車両はすべてツェメリットコーティングが工場出荷時に施されていました
キングタイガーイラスト正面
キングタイガーイラストバック

不遇の最強戦車!? キングタイガーとは??

解説/宮永忠将

キングタイガーイラスト横2
▲こちら3色迷彩のなかでも、迷彩の中に小さな点が描かれた「アンブッシュ迷彩」(またの名を光と影迷彩)。この小さな点が森の中の木漏れ日を模したものと言われています。効果も興味深いですが、何よりとてもかっこいい迷彩なので、ドイツ軍車両の中でも人気のカラーリングです

 キングタイガーなる謎の来歴 

 第二次世界大戦にて、文字通り最強最大の戦車として名を残す〈キングタイガー〉。しかしこの怪物、登場のいきさつがけっこうややこしい。まずこれ、以前紹介したティーガーI重戦車の後継戦車として開発されたので、ドイツ軍ではもっぱらティーガーIIと呼ばれている(なので本稿でもキングタイガー=ティーガーIIとします)。ところが型番になるとPzkw.VI Tiger Ausf.E、すなわち「6号戦車ティーガーB型」なのだけど、ティーガーIのほうは「E型」だったりする。四角四面なドイツ人の兵器なのに型番のアルファベット順がひっくり返っている理由が誰にも分からない。
 名前の混乱は続く。連合軍兵士がこのティーガーIIを〈キングタイガー〉と呼んで怖れていることを知ったドイツ軍将兵が、あだ名を逆輸入して「ケーニヒスティーガー」と呼ぶようになる。ところがこれはドイツ語におけるベンガル虎の固有名詞なのだけど、キングタイガーにそういう意味はないのでややこしい。さらにイギリス軍では〈ロイヤルタイガー〉と呼んでいた。ティーガーIIよ、お前は一体何者なんだ?
 以上のニックネームを巡るアレコレは有名な話なんだけど、実は誰が言い出したことなのかよく分からなくて、ティーガーIIを巡る大きな謎になっていたりする。

 活かせなかった最強能力 

 伝説の重戦車ティーガーIの継承者として、ティーガーIIにはさらなる重武装と重装甲が与えられている。戦車砲の8.8cmKwK43は、ティーガーIと口径こそ同じだけど、砲身の長さは71口径長、つまり1.3メートル以上も長くて威力がある。装甲もティーガーIの段階で充分なところを、車体正面に50パーセント増の厚みを持たせてさらに強化している。ティーガーIIの車体は全面的に傾斜装甲になっていて、これも防御力強化に貢献している。というのも組織上はティーガーIの後継戦車なのだけど、設計と技術はパンター戦車を継承しているからだ。実際、ソ連軍ではティーガーIIを「新型パンター戦車」と呼んでいたあたり、さすが戦車王国、理解が正確だ。
 こんな性能のティーガーIIと真正面から殴り合いできるのはソ連の一部重駆逐戦車くらいで、米英連合国だと貫通力番長のイギリス製17ポンド砲を積んだ戦車だけが、先制攻撃できてワンチャン…といった絶望的状況だ。
 そんなティーガーIIにも機動力という弱点がある。70トンもある車体を動かすマイバッハ製エンジンの出力は約700馬力。現在のドイツの主力戦車レオパルト2A6の重量が60トンで1500馬力と比較すると、非力にも程があるし、重すぎて足周りの故障も頻発する。結果としてスピードも出ないし、リッターあたりの走行距離はなんと200メートルしかない。実際、戦闘で破壊されるよりも燃料切れや故障で放棄される車両の数が圧倒的に多かった。
 登場時期が遅すぎて部隊単位での攻撃力が活かせず、後退戦の中では個々が発揮したであろう活躍の記録も残されなかった不遇のティーガーII重戦車。しかし大戦型戦車のひとつの到達点であった事実は、永遠に語り継がれるだろう。


タミヤミリタリーミニチュアの傑作キットで
王虎のかっこよさを堪能しよう

 1993年の発売以来、多くの人に愛されている傑作キット「タミヤ 1/35 ドイツ重戦車 キングタイガー(ヘンシェル砲塔)」。抜群の組み立てやすさ、かっこいいフィギュア、完成後の迫力と大満足できるプラモです。キングタイガーが作りたいとなったら、まずはこのキットをぜひとも作ってください!

タミヤキングタイガー細部
▲表情、制服やアクセサリーの彫刻が1993年のプラモとは思えないほどの高いクオリティ
タミヤキングタイガー砲塔
▲ 巨大な砲塔がランナーの枠を占拠! パーツの段階ですごい迫力!
タミヤキングタイガー履帯
▲ 履帯は、接着&塗装が可能なベルトタイプ。両端を接着して、車体に取り付けるだけで完成するのでお手軽
タミヤキングタイガーランナー
▲ 全体のパーツ数もそれほど多くないので週末2日あれば形になります
タミヤキングタイガーパッケージ

1/35 ドイツ重戦車 キングタイガー(ヘンシェル砲塔)

●発売元/タミヤ●4290円、発売中●1/35、約29.4cm●プラキット

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