MODEROID ユウブレン&ヒメブレンをプロポーションを活かしつつシャープにリバイバル!【ブレンパワード】
2022.12.24サンライズ・メカニック列伝 第48回 ブレンパワード【グッドスマイルカンパニー】 月刊ホビージャパン2023年2月号(12月23日発売)
サンライズ作品に登場する数多のメカを模型作例で再現し、改めてその魅力を探る連載企画「サンライズ・メカニック列伝」。今回は1998年の作品『ブレンパワード』から主役マシンが登場。「MODEROID」シリーズ最新キット、「ユウブレン」と「ヒメブレン」の作例を一挙にお届けしよう!
太平洋に沈む謎の巨大遺跡オルファンが生んだ、円盤状物質オーガニック・プレート。そこから再構築され誕生する未知の生体マシン「アンチボディ」のうち、オルファンの意志に従わない突然変異の異分子が「ブレンパワード」である。意志や感情を持ち、人間の言葉や動作に呼応。個体ごとに性格は異なるが、オルファンとその抗体である「グランチャー」を本能的に憎んでいる点は共通。自ら搭乗者を選び、その命令に従う。そしてパイロットの成長に伴い、ブレンも成長してゆくのだ。
キットレビューを担当するのは田仲正樹。良好なフォルムはそのままに、成型の都合で生じる各部の肉抜きや合わせ目を処理し、全身の曲面とエッジを細かく調整。よりシャープで繊細さが感じられるブレンにすることを目標に、2体をリバイバルさせている。
ユウブレン
主人公・伊佐未 勇のブレンパワード。リクレイマーに鹵獲されていた個体で、ユウがリクレイマーを脱走する際に搭乗、そのまま相棒となる。深く傷ついても闘志を失わない勇敢な性格
製作途中状態
多くのファンが抱くイメージに近しいフォルムと、精密感のあるディテールを持つMODEROID版ブレンパワード。作例はより「繊細な生体マシンらしさ」を表現すべく、キットのフォルムや機構はほぼそのままに、パーツのフチの厚み、甘くなっているエッジ、肉抜き穴、ダボやピンなどの「プラスチック成型品っぽさ」を極力なくして完成させたもの。月刊ホビージャパン読者諸氏がより高い完成度でブレンをリバイバルさせる際の参考書として、本記事を活用していただければ幸いである
頭部
A7、8部品は合わせ目を消して頭頂部にスジ彫りを入れた。A9部品はアゴ周辺のプラの厚みを削り、頬のダクト状モールドを彫り直している。なお額と耳の側面モールドの塗装は、下地をラッカー系で塗装した後、アクリル系かエナメル系の塗料を凹部に吹き付け、はみ出した色をスミ入れの要領で拭き取るのが現実的だろう
胴体
首の肉抜き穴は薄いプラ板で塞ぎ、肩付け根は塗装後に接着できるよう加工。胸部側面の合わせ目を消す場合、胸のV字と腹部の後ハメは非常に困難となるため、作例ではこれらをあらかじめ組み込んでおき塗装時にはマスキングをしている。腰部はA1部品の2段エッジやD2/3部品のフチの厚さがやや気になるため、それぞれ薄く削り込んでおきたいところだ。なおキットでは腰部コックピットハッチの開閉を差し替えで再現している
ヒメブレン
ヒロイン・宇都宮 比瑪のブレンパワード。劇中でリバイバルも経て最初に登場したブレンで、ユウブレンと並ぶ主役機。落ち着いた性格で強敵とも渡り合える実力を持ち、ノヴィス・ノアの中心的な戦力である
腕部
キットは肩関節ブロックに上腕を挟み込む構造だが、合わせ目が消しづらく軸も破損しやすい。作例は上腕を先に仕上げ、エポパテで補強して肩関節に固定(ここは動かなくても可動にほぼ支障はない)。肩装甲はフチの2段エッジを消してシャープ化。ヒジ関節は肉抜きをエポパテで埋めた。前腕の装甲はダボが目立つため、G15、G20部品を取り付ける穴をプラパイプで小さくして接着面積を稼ぎながらガッチリ固定した後、裏面をフラットに加工。ペーパーで仕上げるのが難しいので、短冊状の薄いプラ板を貼るなどしてデコレートするとよいだろう
脚部
太モモ側へヒザ関節ブロックを挟む構造だが、工作や塗装がしづらいためスネ側に固定。太モモは単独で合わせ目処理とエポパテでの補強を行い、塗装後にヒザ関節を接着した。太モモ上部の装甲とスネの下部は、フチを薄く削っている。足首関節はF12/17部品とF8/9部品が干渉する箇所を削って可動範囲を若干拡大。肉抜きをエポパテで埋め、つま先、くるぶしなどの2段エッジを削ってシャープ化した
武装類
ブレンバーとブレンブレードは肉抜き穴をプラ材とエポパテで埋めた。それぞれの刃の部分は製品版では白で塗装済みだが、作例は合わせ目処理時に削り落として再塗装している。緻密なディテールが嬉しいハンドパーツは、パーティングライン付近を彫り直してよりモールドを引き立てた。またキットには塗装済みのチャクラエフェクトが付属する。作例は未塗装のテストショットに青く塗装したものも別途用意してみた
■ブレンパワード、25歳になってしまった
宝探しをしている人からもらったバラの花を部屋中に敷きつめている(それは違う作品だろ)サンライズメカファンのみなさんは、「ブレンパワードのプラキット」と聞けばすぐに「ああ、本放送当時に発売されたあれね。箱の側面の文章も味わい深いキットだったよなあ」と答えてきたはず。ところがほぼ四半世紀を経た今になって、誰も予想していなかったニューキットが(しかも別のメーカーから)発売されたのですから、当然こちらも作るしかありませんね。
MODEROID版は関節部などに多少のアレンジは施されていますが、フォルムは本編の作画や設定画から受けるイメージどおりで、各部のモールドもこのスケールでは限界とも思えるような細かく精密なもの。多くのファンが深く納得する出来だと思います。ただよく観察すると成型の都合でシャープになっていないエッジや、ピンやダボが露出している部分など、生体マシンであるブレンとしては気になってしまう箇所も見つかります。
そこで作例は、フォルムと可動機構はそのままに、肩装甲や足首周辺などの2段になっているエッジの整形、スネ下部 など のプラの厚みが見えている部分の整形、各関節内の肉抜き埋めといった細かい工作を積み重ねていきました。前腕装甲の裏面は、前腕への取り付け軸をしっかりと接着した後で、ダボをナイフとヤスリで削り取っています。これらの作業は面倒かつ地味で、見た目が劇的に変わるわけでもないですが、最終的には明らかに素組みとは違う完成品を手にすることができるはずです。
■ごめん、おぼえていない(色のレシピを)
キットの箱絵と組立説明書、学習研究社刊「ブレンパワード スパイラルブック」、本編映像 など を参考に塗装。ユウブレンの本体色はナンガブレンやラッセブレン(そしてネリーブレン)のそれと色調を明確に変える必要があるため、色相は若干緑に振り、明度を上げ過ぎないように気を配って調合しました。
ユウブレン本体=スカイブルー+クールホワイトにインディーブルー、ミッドナイトブルー、パワーグリーン、オレンジ、ハーマンレッドを各少量(だったと思う)
ユウブレン関節=ブルーFS15044+ミッドナイトブルーに本体色とハーマンレッドを各少量(おそらく)
ヒメブレン本体=クールホワイト+タンにブラウン、オレンジ、純色バイオレットを各少量(たぶん)
ヒメブレン関節=ブラウンにオレンジ、インディーブルー、ウイノーブラック、クールホワイトを各少量
オレンジ=オレンジにブラウンと橙黄色を各少量
ブレンバーの刃=白に近い自作の紫系ライトグレー
ブレンバー本体=自作の茶系グレー
ラッカー系塗料で下地を塗装後に、マスキングが難しい凹部や装甲の裏側などを水性アクリル塗料で塗り、はみ出たところは綿棒に中性洗剤を含ませて拭き取っています。エナメル塗料で(ABS樹脂の部品はリアルタッチマーカーで)スミ入れ後に、ツヤ消しと半光沢を混ぜたクリアーで塗膜をコートして終了です。
次回は剣と槍を装備したあいつの作例が登場します。
グッドスマイルカンパニー ノンスケール プラスチックキット “MODEROID”
ユウブレン&ヒメブレン
製作・文/田仲正樹
MODEROID ユウブレン/ヒメブレン
●発売元/グッドスマイルカンパニー●各4500円、発売中●約13cm●原型製作:Arm-Q、製作協力:瑞穂町デザインチーム●プラキット
©サンライズ
田仲正樹(タナカマサキ)
一応、月刊ホビージャパンガンダム班に所属しているはずのモデラー。「宇宙船」誌の映像倶楽部にも所属している。