【機甲界ガリアン】懐かしの1/100 スカーツを徹底的にボリュームアップ!貫禄ある仕上がりに!
2022.12.19サンライズ・メカニック列伝 第47回 機甲猟兵スカーツ【タカラ 1/100】 月刊ホビージャパン2023年1月号(11月25日発売)
サンライズ作品に登場する数多のメカを模型作例で再現し、改めてその魅力を探る連載企画「サンライズ・メカニック列伝」。今回は『機甲界ガリアン』から、「機甲猟兵 スカーツ」の1/100作例をお届けしよう!
マーダル軍に反旗を翻し、麾下の人馬兵部隊を率いて白い谷に加勢した豪族、ドン・スラーゼン。彼の専用機がスカーツである。複座式の機体で、背面に装備した飛行メカ・鉄鷲機(バックインバネス)を分離させての攻撃が可能。スラーゼンが鉄鷲機で出撃した際は部下のスミオンが単独で操縦する。初登場時には主人公ジョジョの絶体絶命の危機を救い、物語中盤以降では雲霞の如く押し寄せる機甲兵軍団を相手に力強く豪快な戦いぶりを見せた、作品屈指の人気メカである。
作例は田仲正樹が私物のタカラSAK(スケールアニメキット)を投入して製作。キットの部品形状を可能な限り活かしながら、恰幅のよい搭乗者のイメージで各部をボリュームアップ。関節機構は刷新し、もちろん鉄鷲機の分離・合体も可能な徹底改修作例として完成させている。
製作途中状態
キットは設定画や劇中の作画と多少印象が異なるものの、1984年の製品としては形状・フォルムともに充分まとまっており悪くはない。だが腹部や太モモ等がボリューム不足ゆえ、末端がボリューム過多に見えてバランスが今ひとつに感じられてしまう。作例はスラーゼンをイメージして各部を延長・幅増しし、全身をボリュームアップさせたもの。製作途中の画像からは、膨大な工作量に加えてキットのパーツ形状が最大限活かされていることも分かるだろう
頭部
接着面にプラ板を挟み前後にボリュームアップ。頬当てと一体化した顔は削り取りエポパテで自作。加えて奥まった位置に接着することでより立体感を増し、額が後退している印象を緩和させた。両耳の羽根飾りは先端部のフチを薄く整形。首はHGギラ・ズールのものをプラ板で加工しボールジョイント化している
胴体
胸部は接着面で1.5mm幅増し。若干後ろに傾けることでコックピットハッチ前面の膨らみを強調している。肩関節はHGクロスボーン・ガンダムのものに換装。腹部はプラ板を積層して大幅にボリュームアップし、キットの腰がくびれた印象を緩和させた。腰部はHGギラ・ズールのものを芯に、キットの装甲をプラ板でボリュームアップしながら取り付けている
腕部
肩ブロックにはHGドム・トローペンのものを内蔵させ、上腕の横ロール機構を追加。上腕は太い上部にプラ板を貼り足し、細い下部を削ることでボリュームアップ。ヒジ関節はHGザク(THE ORIGIN版)のものに交換し、設定画の曲げを再現できるようにした。前腕は1.5mm延長。手首関節はボールジョイント化し、拳は市販の丸指ハンドを加工したものに交換している
脚部
太モモは上部にHGクロスボーン・ガンダムのロール機構を入れ、下半分をHGザク(THE ORIGIN版)のものに交換してボリュームアップ。ヒザと足首の関節はHGギラ・ズールのものに換装。スネはプラ板で幅増しし、側面の装甲はふくらはぎに巻き付くような形状に変更。ボールジョイント接続にして可動化した。つま先とかかとはいったん切り離して整形後に再接着し、シャープ化した
鉄鷲機
キャノピー上面にエポパテを盛ってふくらみを持たせ、翼端はプラ板を接着してボリュームアップしつつシャープ化。ノズルはひと回り大きいものに交換した。スカーツ本体および展示用ベースとはネオジム磁石で接続。キットでは構造上分離時に胴体が多少動いてしまうが、作例では磁力でピタリと固定される。各可動軸はKPS製ランナーに交換した
槍
キットの槍はやや小さく、断面が楕円になっているため、作例ではゲージを兼ねた市販の円盤状パーツを接着して延長後、エポパテを盛り付けて円錐状に整形した。「適当な部品が入手できなかったので面倒かつ難しい作り方をしていますが、本来ならいい流用パーツを探すべきですね」とのこと。拳に固定した柄と槍は破損対策でネオジム磁石接続とした
■鉄鷲機の担当がスミオンだと思われがち
番組開始時には「敵か味方か、謎の機体」と正体が明かされず、「マーダル麾下の〈鉄の七将軍〉(初期設定のみで劇中未登場)のひとりが使う専用機かな?」と思わせておいて、第11話ラストでのあの登場。いざという時まで動かないけれど自ら戦闘に参加すれば超強く、そして搭乗者は豪快で頼りがいのあるおじさん。…サンライズメカファンのみなさんは全員、このスカーツというメカのことが大好きで、スミオンと同じゴーグルを常に着用し、ドン・スラーゼンと同じヒゲを描くことに余念がない日々を過ごされていることと思います。
そんなスカーツの1/100キット開発を担当されたのは、アニメプラモ史に残る名作「1/24スコープドッグ」も手がけた泉博道氏(「デュアルマガジン」読者には「タカラDM担当の泉くん」「ひとり鷹の博道」としておなじみですね)。全体のフォルムは38年前の製品であることを考えると悪くはないのですが、腹部や脚部のボリュームが足りない一方で拳とつま先が大きく、設定画や劇中における量感溢れるものとは印象が異なっています。
そこで作例では、貫禄あるスラーゼンの体格をイメージして各部の延長と幅増しを実施。つま先を小さくするのではなく、本体をもっと大きくしてやろうということで、胸部、腹部、腰部、肩装甲、上腕、前腕、太モモ、スネ、鉄鷲機の翼(静粒子発生板)、槍をボリュームアップしました。太モモだけは大幅に形を変えましたが、それ以外のパーツはいずれも形がしっかりと出ているのでわりといじりやすいと思います(それなりに手間暇はかかりますが)。胸部前面は副コックピットのハッチが前方にせり出して見えるように後方へ傾けて固定(月刊ホビージャパン2008年7月号掲載のR3ウォーカーギャリア作例の逆をやっています)。同時にHGガンプラ各種の可動部を各関節に移植して、可動範囲を拡大させました。
ちなみに胸部上面等、唐突にプラ板に置き換わっている箇所がありますが、これは長い時を経て劣化したプラが砕けてしまったのを修正した跡です。30年を超えると茶色や黄土色等、彩度の低い色のプラは特に加工しづらくなると感じます。何度も書いていますがプラモは早めに作って、完成させた物をいつまでも大事にしましょう。
■ツヤ消しがシブいのヨ
キットの塗装説明書とBlu-rayのHDリマスター映像を参考に塗装。本放送当時にブラウン管TVで観た際の印象を基に、月刊ホビージャパン2021年5月号付録「サンライズロボット大全集」の画稿よりも彩度と明度を若干下げました。キット発売当時、完成見本のツヤがない金が渋くて格好いいと感じた記憶があるので、作例でも金のツヤを抑えています。
本体茶=ブラウン+ウイノーブラックにオレンジ、インディーブルー、クールホワイトを各少量
上腕、腹部等=HRクールホワイト+タンにブラウン、オレンジ、純色イエロー、純色バイオレットを各少量
拳等=自作の青系グレー
金=エルドランゴールド+スターブライトゴールド
ランサーは自作の緑系ライトグレー、額の赤は金の下地にクリアーレッド、目の青はスカイブルー+インディーブルー。エナメル塗料でスミ入れ後に、ツヤ消しを混ぜた半光沢クリアーで塗膜をコート、するはずが本体の茶色を吹いてしまい(締め切り○○分前)、『ダイオージャ』OPのスケさんのような顔で塗り直して終了です。
次回は主人公とヒロインが搭乗したあのマシンを2機、作ります。
タカラ 1/100スケール プラスチックキット“スケールアニメキット”
スカーツ
製作・文/田仲正樹
©サンライズ
田仲正樹(タナカマサキ)
好きなヒゲのキャラはスラーゼン、ラルターフさん、『ボーンフリー』のゴンさん、『ふわふわカタログ』のハルオちゃん、∀ガンダム等。