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【境界戦機 フロストフラワー】 第11話「With or Without You」

2022.06.07

境界戦機 フロストフラワー 月刊ホビージャパン2022年7月号(5月25日発売)

境界戦機FFロゴ

その命は、北に咲く

 北の大地で活動するレジスタンス組織“際の極光”に属する青年、北条カイと特殊なMAILeS「ビャクチ」の活躍を描く公式外伝『境界戦機 フロストフラワー』。兵頭一歩氏によるテキストと本編メカニックデザイナーが手掛けるAMAIM の作例による特撮写真で『境界戦機』の世界観をさらに拡げていく。
 ユーラシア軍の城塞と化した五稜郭に単身乗り込む“際の極光”本間組。たったひとつの命を救うための最後の戦いが始まる!

STAFF

 企画 
SUNRISE BEYOND
 シナリオ 
兵頭一歩
 キャラクターデザイン 
大貫健一
 メカニックデザイン 
小柳祐也(KEN OKUYAMA DESIGN)
海老川兼武
寺岡賢司
形部一平
 メカニックデザインスーパーバイザー 
奥山清行(KEN OKUYAMA DESIGN)
 協力 
BANDAI SPIRITS
ホビージャパン

『境界戦機』
公式サイト https://www.kyoukai-senki.net/
公式Twitter @kyoukai_senki

プラモデルシリーズ公式サイト
https://bandai-hobby.net/site/kyoukai-senki/


第11話「With or Without You」

 函館市のほぼ中心地。かつてはショッピングビルだった廃墟の屋上から、その特異な形状をした城郭跡は一望することが出来た。稜堡と呼ばれる五つの角が突き出た星形の五角形 ── 五稜郭の名で知られた史跡である。
 境界戦後、市内が区画整理されるにあたり、その場所は一時的な資材置き場や作業員の仮宿建設のために使用された。整理事業を迅速に進めたかった大ユーラシア連邦が作業の大半を日本の民間企業に委ねたことから、やがて五稜郭には多くの日本人労働者が集まった。これにより、非常に地域色の濃いコミュニティが誕生、ついには「際の極光」と呼ばれるレジスタンスを生む土壌となった。
 整理事業が終わったあと、当然連邦はコミュニティを解散し五稜郭の土地を明け渡すよう迫ったが、時すでに遅く、その頃にはもう彼らを中心とした函館一帯の経済圏は確立されてしまっていた。それを排除しようとすれば都市機能の構築をイチからやり直さなければならなくなり、当局は渋々ながらコミュニティの存続を認め、ここに、大都市の中心部に公然とレジスタンスの本部が居座る歪な構図が出来上がった。

「外から眺めるだけなら、まるっきり呑気な観光名所だべ」
 反射を抑えた双眼鏡をのぞき込んだユキが、言葉と同じく呑気な声を出す。カイはその隣で座り込み、五稜郭敷地内に屹立するタワーを遠目に見て「まったくな」と答えた。
 今やお尋ね者となったカイたち本馬組が、AMAIMやキャリアなど、装備一式を抱えて市内に潜り込めたのは奇跡に近い。現在身を隠している廃墟の解体業者の助けが無ければ、とてもではないが、ここに潜むことなど出来なかった。
 だが、レジスタンスの本拠地であるはずの場所を目の前にして、カイたちはそれ以上身動きがとれずにいた。
 思いもよらぬ事実が立ちはだかったのだ。
 カイは、ほんの一時間ほど前に聞かされた本馬の話を思い出す。

×   ×   ×

 五稜郭は、すでにレジスタンスのものではなくなっていた。上層部がユーラシア軍と秘密裏に会合を持ち、話し合いのもとに引き渡されてしまったのだ。このいわゆる“無血開城”は数週間前に成立し、敷地内には今、ユーラシア軍の戦力が配備されつつある。
 その背景には、極めて明快な取引があったという。五稜郭明け渡しの交換条件として、極光本部が求めたのは宗谷駅襲撃の件で犯罪者となった極光のメンバーの無罪放免 ── つまり本部は、本拠地と引き換えに、カイたちの身柄を守ったのだ。
 そんな事実を伝えた本馬に、それでいいのかとカイは食らいついた。これで終わりなのか、オレたちの活動は一体何だったんだ、と。
「文句があるなら、好きにやれ ── 」
 つぶやくように本馬は言った。
「はぁ? なんだよそれ……!」
「本部の奴らは俺にそう言った。しかも極光の旗印はくれてやる、とさ」
 本馬が何を言いたいのか意図をはかりかね、カイは眉を寄せた。
「ならばそうさせてもらう ── 好き勝手にやるさ」
 口元を吊り上げ、本馬は鼻で笑った。その心は、カイに煽られるまでもなくすでに決まっていたのだ。
 ようやく本心を理解し、カイたちも笑った。
 リーダーの決心が固まっているのであれば、カイたちはそれに従うだけだった。

×   ×   ×

「組織としての極光が終わるにしても、ユーラシアの奴らに最後に一泡吹かせてやりたい……そういうことだろ? 結局」
 双眼鏡を仕舞い込み、ユキは肩をすくめた。やれやれとカイの隣に腰を下ろす。
 すでに敵地となった五稜郭に対し、本馬組は、恐らく現体制の際の極光としては最後になるであろう作戦にのぞもうとしていた。
 ルーが解析した情報によると、五稜郭中心部にあるタワー ── かつて敷地外にあったものを移設し、極光本部施設として使用していたもの ── は、引き渡し後、ユーラシア軍によって一大通信施設に改造されているとのことだった。それが本格的に運用されるようになれば、函館山の巨大アンテナと連携することによって、道南地域一帯の無人機に高密度なデータ送信が出来るようになるという。ユーラシア軍はこのタワーに次世代AIを置き、膨大な数の無人機のオペレーションを、その一か所から行おうとしているのだ。
 そしてそのために、あの脳内にAIを埋め込まれた少女 ── チャイカは今、軟禁状態にあるという。支配のための電波塔となるタワーの頂上で……。
 彼女は、システムの中枢を担う生体的なデバイスにされようとしているのだ。
 そんなの、二十世紀に終わった出来の悪いSFだべ……冗談めかしたユキに、しかしカイは極めて真剣に、自分の気持ちを返した。
「チャイカを救いたい ─── 」
 はからずも深く関わってしまうことになった、大ユーラシア連邦による次世代AIの開発計画。すべての発端は、ファルベルジェの卵と呼ばれる計画の中心を成す六つのAIのひとつ、ルーとの出会いにあり、それは最後にチャイカへとつながった。
 チャイカを救い出し、連邦による非人道的な計画を終わらせたいと思うのは、使命感からだと言えば格好がつくのかもしれない。しかしカイは、今しも頓挫しようとしている極光での活動を前に、納得の出来る区切りを欲しがっている自分自身に気づいていた。
 自分が自分であろうと ── 日本人であろうとして身を投じたレジスタンス活動。それに意味を持たせたい ── 本馬風に言えば「敵に一泡吹かせたい」のだ。チャイカを助け出し、連邦の計画を完全に潰しきることこそがここまでやって来たことの証になる ──
 カイはそう思っていた。
「カイ……オレもそれに乗る。さっき話したら、ホロやネコさん、ツネマルさんも同じ気持ちだってよ。みんな、一泡吹かせるにしても、目標が欲しいんだよ。全員でお姫様を助けに行こうぜ」
 ユキとは極光に参加してからの付き合いだが、誰よりもカイの考えを理解してくれる。それがカイ自身にとって面倒な時もあったが、今は素直に感謝していた。
「本馬さんとケンゴさんだって、きっと何も言わないべ。確認してないけどな」
 ひねくれた笑顔を見せるユキに、カイは苦笑で返す。
 通信施設として本格運用が始まる前だからと言って、今の五稜郭は攻めるに容易い場所では決してない。本馬組だけで仕掛けるのはあまりにも無謀。
 だが、それでもその無謀が何者かを助けるためであるのなら、命の無駄遣いとは言われまい……
 言い訳めいているが、それが今の本馬組に、最後の気力を与えていた。

 カイたちがいたショッピングビルは、かつては地下街も発展していたようで、そこから五稜郭方面へは、広い通路がつながっていた。極光本部が機能していた時、そこは表だった仕入れが出来ない物品の搬入路に使われていたという。本馬組は、地上の戦力を回避してここから敷地内に侵入し、タワーに辿り着くという作戦を立てた。
 もちろん地下道の存在はユーラシア軍にも知られていて、真っ先に閉鎖されているものと踏んでいた本馬は、隔壁破壊の準備を整えようとしていた。
 が、その必要は無かった。
 地下道は、以前と同じく解放されたままになっていた。
 変わらず搬入路として使用するためとも思われたが、あらゆる状況を分析したあとに、ルーは、そうじゃない、と告げた。
「誘われてるね。相手はこの戦いで、直接決着をつけたがっているんだよ」
 ならば上等だとばかりに、カイたちは誘いに乗ることを決めた。
「これまで散々ヤツらの思惑に付き合わされて来たんだ。── 望むところだ」
 そう言い放ち、カイはらしくもなく、皆に笑って見せた。

 地下通路につながる廃墟の地下で準備を進めている時、カイは、見慣れないコンテナが搬入されているのに気付いた。全長10メートルはあろうかというそれは細長く、何やらものものしく梱包されていた。
 カイが怪訝にコンテナを見上げていると、本馬が隣に歩み寄って来た。
 中はビャクチ用の白兵戦闘用の武器だ。
 本馬はそう言って、続けて長ったらしい正式名称をカイに告げた。一度では聞き取れずに聞き直したカイに、本馬は繰り返す。
「超熱振式戦闘湾曲刀だ」
「刀……」
 思わず表情をしかめたカイに、「そんな顔するな」と本馬は苦笑した。
「高熱と高振動で、AMAIMの装甲さえ容易く断つことの出来るシロモノだ。動きの鈍いヤツならお荷物になるだけだが、ビャクチとお前“たち”なら使えるだろ」
 らしくなく饒舌な本馬が言い訳がましく見えたカイだが、その思いを口にはしなかった。
「この戦いが決着をつけるためのものだと言うなら、敵が望むのはお前との一騎打ちだ。倒さねば、目的の人間を救い出すことは叶わないだろう。思い残すことがないよう、すべてを断ち切って来い」
 一方的に話を終え、本馬は立ち去ろうとする。だがその足はふいに止まり、
「コイツはバッテリーを喰う。使うのは最後まで我慢しろ」
「最後? 最後っていつだよ」
「お前がそう感じた時だ。自分を信じろ。強くなるってのはそういうことだ」
 本馬の声は微かにかすれて聞こえた。
「別れの言葉みたいだな」
「バカ言うな。二度と会わん奴に忠告などするか」
 フンと鼻を鳴らし、本馬は去って行く。
 カイはもう一度、刀が収められたコンテナを見上げた。

 五稜郭へと通じる地下の通路は、かろうじて大型のキャリアビークル一台が通れるだけの幅を持っていた。本馬組は、二台のキャリアにビャクチとセツロを載せ、縦に並んで進行する。

×   ×   ×

 ビャクチは本馬から託された熱振刀に加え、180mmグレネードランチャーを背部にマウント、左腕には200mm戦闘杭射出機、右手には銃口に突入用のスパイクを付加したアサルトライフルを装備し、宗谷駅の時と同じく追加装甲をも増加した完全武装。セツロはグレネードランチャーを追加したライフルを腰にマウントし、片方の手にはミサイルランチャーを所持。そしてもう片方のシールドにはクローが増設され、狭所における戦闘にもとりあえずは対応できるようになっていた。
「でもまぁ気休めだ。いざとなったら暴れるだけ暴れて降伏するから、お前らはさっさと先に行け」
 出発前、ユキは装備を確認して肩をすくめ、もとより捨て駒は覚悟の上だがな、と言った。
 皮肉か? と顔をしかめたカイに「その通りだ」と隠すことなく返す所はブレないが、それでも最後は「任せたぜ」とカイの胸を小突いて見せた。

×   ×   ×

境界戦機フロストフラワー 11-1 ビャクチ セツロ

「カッコつけたつもりなんだろうね、ユキとしては」
 ビャクチのコクピットの中、走行するビークルの振動に揺られるカイに、ルーは軽口を叩いた。
 カイはフッと、肩を揺らして笑った。
 進み行く地下道は複雑に入り組んでいた。かつてはショッピングモールを建造しようとしていたことの名残だ。そのため、道幅は一定ではなかった。ビークル一台がギリギリ通過できるだけの場所もあれば、突然開けた場所に出ることもある。
 つまり迎え撃つ側からすれば、待ち伏せには格好のロケーションというわけだ。
 五稜郭までの道のりの半分くらいまでは敵も沈黙していた。待ち伏せは、懐深くまで誘き込むのが定石だ。
 引き返すにしてもかなり骨が折れるであろう距離まで達したところで、ついにユーラシア軍からの攻撃は開始された。
 最初、ビャクチとセツロは特別に改造されたキャリアの荷台の上で半身を起こし、構造物の陰や、非常口から姿を現すソボーテジアマンを狙い撃った。
 しかしそんな状態も長くは続けられず、やがて先頭を行く一番車の車輪が破壊され、走行不能となった。一番車が立ち往生すれば後続の二番車もそれ以上は進めなくなる。
 もちろんそれは想定済みで、本馬組は一番車を盾としてそこで陣を張り、ビャクチとセツロを荷台から降ろした。
 武器を満載したキャリアからは、対AMAIM用のロケットランチャーなどを手にメンバーたちも降りて援護にまわる。しかしあくまで援護であって、ビャクチたちを行かせてしまえば、早々に降伏する手はずとなっていた。
 援護を受け、ビャクチとセツロは間もなく目の前の包囲網を突破することに成功する。カイは移動の速度を緩めることなく、そのまま通路の奥へとビャクチを走らせた。
 残して行く仲間たちの身を案じる気持ちが、一瞬、カイの中に湧き上がる。
 しかし頭を振ってそれを振り払い、カイはただ先に進むことだけに意識を集中させた。

境界戦機フロストフラワー 11-2 ビャクチ

 やがてカイたちの進攻は、五稜郭の敷地内まであと数百メートルという所にまで達した。
 だが、そこでまたしても足止めされた。
 地上へと向かう坂道の下、円形になった広場で十数機の無人機に囲まれたのだ。
 ただ、敵にしてもレジスタンスの殴り込みごときに本腰を入れるわけにもいかないのか、半数は武装もままならない土木作業に転用されていた機体だった。
「イケるよ……カイ。狙う必要は無い、適当にぶっ放せば当たる。近づいて来た命知らずはパイルバンカーで蹴散らせ!」
 ルーが、およそAIとは思えない乱暴な指示を飛ばして来た。パイル……ああ、杭打機のことかとカイは一呼吸置いてから理解した。
 展開する敵に向け、カイは言われた通りにランチャーとライフルの弾を放った。
 何機かは回避したようだった。しかし複数の機体は隣り合った僚機とぶつかり動きが止まったところで弾の餌食となった。
『マジかよ勘弁してくれ、こっちに当たったらどうすんだ!』
 批難するユキの声は、それでも笑っていた。
 セツロはビャクチの背後につき、背中合わせの状態になる。その後ランチャーを撃ち尽くすと、今度は武器をライフルに替え、なおも攻撃を継続した。
 広場とはいえ、AMAIM同士の戦闘を繰り広げるには狭い空間に、爆発による爆炎と衝撃波が充満した。
 視界は、一気に悪くなる。
 すると黒煙を切り裂き、敵の無人機が襲いかかって来た。
 ビャクチは左腕を突き出し、戦闘用に鍛えられた杭を射出した。杭はソボーテジアマンの平たい頭部を鋭く貫き、機体は程なく糸の切れた操り人形のごとく崩れ落ちた。
 その後も、敵は何度も近接で襲い掛かって来た。そのたびにカイは杭を射出して迎え撃ったが、一撃で急所を打ち抜けたのは最初だけ、すぐに射出用の炸薬は尽き、最後は射出機ごと相手を殴り倒していた。
 やがて煙は晴れ、気づけば敵の数は半数を下回る程度にまで減っていた。
「……これなら大丈夫。ビャクチなら、残弾で突破できる」
 ルーの声は頼もしかったが、ビャクチなら、と限定したところにカイは引っかかった。そして驚くべきことにこのAIは、そんな気持ちを察したように言葉を続けた。
「突破するには機動性が不可欠。セツロは付いて来れないよ」
「置いてけってのか、ふざけんな!」
 思わず叫んだカイに、通信を介してユキの声が届く。見るとセツロは、いつの間にかビャクチの背を離れ、残った敵を誘うかのように広場の端へと移動していた。
『オレは捨て駒だって言ったべ。だったらこれは作戦通りだろ』
 ユキは、「お前からもなんか言ってやれ」と相棒のAIであるモブにも発言を促した。
『充分とは言えませんが残弾はビャクチよりあります。近接戦闘用のクローの扱いは不慣れですが、うまくやります』
『ってことだ。気にせずとは言わねー、たっぷり感謝して先に行け』
「カッコつけんな! 増援が来たらどうする!?」
『そんときゃそん時だって。殺される前に逃げるか白旗上げるよ』
 唇を噛み、カイは黙るしかできなかった。
「カイ、時間が無い」
 ルーの声は簡潔で、平坦だった。しかし相手がルーであるからこそ、感情の無い声が逆に痛々しく聞こえた。
 カイは、前進するべくグリップを握り込む。囲い込むような敵は、今しも次なる砲火の準備中のように見えた。
「こんなところで死んだってカッコ良くねぇんだからな」
『わかってる、痛いのは嫌いだよ』
「モブ、ユキをお願い」
『行ってください、ルー』
 ビャクチのアサルトライフルが火を噴くのが合図だった。残弾を正面の敵に集中し、カイは正面突破を図る。
 セツロもライフルに増設されたランチャーから擲弾を放ち、ビャクチに追いすがろうとする敵の出鼻をくじく。
 カイは体当たりで一体を蹴散らし、さらに立ちはだかろうとするするもう一体をも殴り飛ばして、包囲網を抜けた。
 背中から砲火が浴びせられたが、それもすぐに止む。ルーが表示してくれた後方モニターを見ると、セツロがシールドのクローを、ビャクチを追撃しようとしていた一体に突き立てていた。
 だがそのセツロの姿も、沸き上がった爆炎の中に見えなくなる。
 セツロが放った弾が弾けたのか、それともセツロが攻撃を受けたのか ──
 引き返したくなる衝動を必死に抑え、カイは地上に通じる出口へと向かった。

境界戦機フロストフラワー 11-3 ビャクチ アクチャーブリュ

 最後の坂道を登り切り、行き止まりにあった隔壁を蹴破って、ビャクチは外に出た。
 そこは五稜郭の中心部にそそり立つタワーのふもと部分。一階のフロアは平面に広く建造され、アトリウムとなっていた。
 全面がガラス張りで、周囲はまぶしいほどに明るく、そして静かだった。先ほどまでの猛攻が、まるで嘘のようだった。
 だが静寂は一瞬にして破られた。
 銃撃を受け、カイは慌てて回避する。
 攻撃は上空から仕掛けれらたらしく、天井部分のガラスが割れ、雹のように降り注いだ。
 ビャクチは側面のガラスを割り、アトリウムから外へと出る。
 タワーの周囲は、緑地帯となっていた。
 ビャクチを追い、先ほどの銃撃の主も外へと躍り出てきた。
 現れたのは紺青色の機体。片手にガトリング砲を抱え持ち、もう一方には剣呑な空気を漂わせるチェーンソーが握られていた。
「ラスボスのお出ましか……」
 本馬が「最後までとっておけ」と言った熱振刀のことが、カイの脳裏に過ぎる。
 しかし悠長に思考している暇はなかった。
 紺青色のガトリング砲が轟音と共に火を噴く。
 回避する間もなく、ビャクチの増加装甲のいくつかが弾き飛ばされた。
 カイはライフルを放って応戦し、相手との距離を取る。しかしすぐに弾は尽き、カイはそれを投げ捨て、背中のマウントから熱振刀を引き抜いた。
 長い直刀はオートマチックで起動し、刀身が唸りをあげて赤色化する。
 すると、まさか武士道でもないだろうが、対する紺青色もまたガトリング砲を捨て、チェーンソーを起動させた。
 鮫の牙を思わせる無数の刃が、甲高い音を立てて回転し始める。
 すべてを断ち切って来い ──
 再び、本馬の声がよみがえる。
 カイは叫び、因縁の相手へと突進した。

(つづく)

【境界戦機 フロストフラワー】

第1話「absolute beginners」

第2話「material girl」

第3話「Under Pressure」

第4話「I say a little prayer」

第5話「Life in a Northen Town」

第6話「Set Them Free」

第7話「Everything But The Girl」

第8話「Want To Know What Love Is」

第9話「Fortress Around Your Heart」

第10話「Can’t Fight This Feeling」

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©2021 SUNRISE BEYOND INC.

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