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【境界戦機 フロストフラワー】 第10話「Can’t Fight This Feeling」

2022.05.07

境界戦機 フロストフラワー 月刊ホビージャパン2022年6月号(4月25日発売)

境界戦機FFロゴ

その命は、北に咲く

 北の大地で活動するレジスタンス組織“際の極光”に属する青年、北条カイと特殊なMAILeS「ビャクチ」の活躍を描く公式外伝『境界戦機 フロストフラワー』。兵頭一歩氏によるテキストと本編メカニックデザイナーが手掛けるAMAIM の作例による特撮写真で『境界戦機』の世界観をさらに拡げていく。
 総力を挙げた北海道縦断鉄道攻略作戦は失敗に終わり、還る場所のない“際の極光”は室蘭に潜伏していた。

STAFF

 企画 
SUNRISE BEYOND
 シナリオ 
兵頭一歩
 キャラクターデザイン 
大貫健一
 メカニックデザイン 
小柳祐也(KEN OKUYAMA DESIGN)
海老川兼武
寺岡賢司
形部一平
 メカニックデザインスーパーバイザー 
奥山清行(KEN OKUYAMA DESIGN)
 協力 
BANDAI SPIRITS
ホビージャパン

『境界戦機』
公式サイト https://www.kyoukai-senki.net/
公式Twitter @kyoukai_senki

プラモデルシリーズ公式サイト
https://bandai-hobby.net/site/kyoukai-senki/


第10話「Can’t Fight This Feeling」

 際の極光による宗谷駅への襲撃作戦は、事実上の敗北に終わった。
 死傷者など人的な損害こそ大きくなかったものの、目的としていたユーラシア軍の次世代AIの奪取はおろか、北海道とユーラシア大陸をつなぐ鉄道機能を停止させることさえかなわなかった。
 作戦後、極光の勢力は散り散りになって逃亡し、道内各地に潜伏した。
 作戦前に利尻島の施設は放棄されたため、レジスタンスに残された大規模拠点は函館にある旧五稜郭のみ。そこに極光が本部を構えることはユーラシア軍も知るところであるが、これまでは上層部同士の政治的な駆け引きのもと、辛うじてその存在を保っていた。
 しかし宗谷駅襲撃という開き直ったような行動が明るみになった今、もはや政治的な均衡も崩れてしまった。極光の上層部はそれでも交渉を進めていると言うが、そうしながら作戦の敗残兵を匿うような腹芸をする体力は残っていない。
 結果、襲撃作戦に参加したメンバーは還る場所もなく、己が潜伏場所でひたすら息を殺すしかなかった。

 ビャクチ中破という損害を被ったカイたち本馬組は、作戦後、道内を一気に南下、道央南部の都市、室蘭に潜伏した。
 かつて鉄鋼で栄えた街は、境界戦以前から住民の減少が止まることがなく、加えて工業的な素材革命のあおりを食って多くの工場も閉鎖、施設は廃墟化し、現在ではほぼ忘れ去られた場所となっていた。
 だからこそ潜伏に好都合であるのだが、ユーラシア軍による残党狩りの手は、ここにも迫っていた。

境界戦機フロストフラワー 10話 ビャクチ

「カイ、見つかった! 敵は平たいのが3、例の赤いのもいる!」
 らしくなく、ルーの声は焦っていた。
 早朝から働きづめだったせいで、正午を前にまどろみ始めていたカイは、弾かれたように覚醒した。
 巨大な鉄鋼所跡に身を潜めて数日。その間、協力者の手を借りてビャクチの修理は進められたが、物資はともかく、設備のための人手の確保もままならない状況では、満足な作業など出来なかった。ほぼ動かなかった左腕と右脚を何とか稼働する状態に持って行くのが精一杯、肩とひざ下のフレームはむき出しのままで、頭部に至っては、いまだ半分以上のセンサーが機能していない。
 まさに満身創痍、そこに因縁めいたあの深紅の機体の襲来とあれば、いくら楽観的なルーであろうとも、気が急くというものだ。
「セツロは本馬さんたちと一緒に行かせる、食い止めるぞ、ルー!」
 いざとなればまず優先するべきは本馬組本体の存続、追撃があればビャクチとセツロ、現れた敵に近い方が対応し、逃亡のための時間を稼ぐ ── その申し合わせは出来ていた。
 セツロを本隊の護衛に回し、現れた四機にはビャクチが単機で対応することになる。楽な状況ではないが、遮蔽物の多い廃墟内であれば、傷だらけの機体でも向こうを張れる自信がカイにはあった。
「武器はライフル一丁、これだけだよ」
「上等だ、どうせここじゃミサイルなんてあっても撃てっこないんだ」
 修理を手伝ってくれた協力者たちの退避はすでに完了していた。ビャクチは雨除けの幌を振り払い、降着体勢から立ち上がる。装甲が足りていない分、普段より身軽に感じるのは、多分、気のせいだろう。カイは心もとなく思えるグリップの感触に苦笑した。
「二機が出て来る、炙り出すつもりだ」
 潜伏中、カイたちとてただ廃墟の中でじっとしていただけではない。追撃を想定して、事前に構造物の位置などを調べ上げていた。
 ── 地の利はこちらにある。
「狙い撃つぞ。当てられるよな、ルー」
「誰に言ってんの? 楽勝だよ」
「頼りにしてるぞ、相棒」
 ターゲットがロックされると同時に、カイはトリガーを押し込んだ。
 目の前の視界は入り組んだ構造物で満たされていたが、事前データをもとにルーが網の目を掻い潜るような射線を計算、弾丸は、違わず目標に命中した。

 ルーが言うところの「平たいの」……すなわち無人機である三機のソボーテジアマンは、地の利を活かした戦術で程なく仕留めることが出来た。
 指令を与える側が集中していない ── だから不完全な状態のビャクチでもそれが出来た、というのがカイの感想だ。
「無人機に指示を出していたのは、多分、赤いのだろ? さすがに奴も、戦いながら司令塔をやるのは苦手だったってことか?」
 通常、無人機への指令は近隣に付けた指揮車両より行われる。だが以前対した紺青色のゼリーゼジアマンのように、時として有人のAMAIMに乗り込んだパイロット自身がそれに代わることもある。残党狩りは道内に広く展開しているはずなので、指揮車両と人員が確保できず、今回は深紅の機体に紺青色と同じオペレーションが求められたということだろうが……
「集中できてなかったのは、アイツの能力不足のせいじゃないよ、そんなタマじゃない」
 返って来たルーの言葉に、カイは「だろうな」と答えた。脳内に次世代のAIを住まわせている深紅色のパイロット。無人機を操るのは苦手どころか、むしろ得意分野であるはずだ。
(じゃあ戦闘中に、どうしてアイツは上の空なんだ?)
 そうやって、カイ自身もまた集中を解いてしまったその時 ──

境界戦機フロストフラワー 10話 アプリエル

 廃墟の瓦礫を切り崩して、深紅色の機体が突進してくるのが見えた。その手には、土木作業にでも使用するかのような、狂暴な武器が握られていた。
「チェーンソー!?」
「ホラー映画かっての!」
 毒づきながらも、ルーの回避指示は素早く下された。カイがそれを承諾すると、ビャクチはライフル弾を放ちながら後退した。
 しかしその弾丸を、相手はあろうことか高速回転する刃で弾き飛ばした。
「や……やるぅ!」
「感心してる場合か!」
 感嘆の声を上げたルーを怒鳴りつけ、カイはなおも弾丸を放ち続けた。
 さすがにすべてをチェーンソーで弾き返したりはしないが、それでも相手は踊るかのような挙動で、それらすべてをかわした。
(今日こそは……手に入れる……)
 そんな声を、カイは聞いた気がした。
 前回、宗谷駅での戦闘の時のように、また共用のチャンネルが開かれたのかと思った。
 しかし、そんな様子はない。
 なのに声は、深紅の機体の中から耳に届くかのようだった。
 執念とも言える激しいプレッシャーを前に、知覚がまぼろしを生んだのだとカイは自分を言い聞かせた。
 「知りたい」「寄越せ」そんな言葉を投げつけて来たパイロットの ── あの利尻で見た少女のごとき姿が脳裏に過ぎる。
「カイ、開けた場所に出るよ。距離を取って応戦! ここから先は事前の調査が間に合わなかったエリアだから、注意して」
「了解、近づけさせなきゃいいんだな!」
 後退を続けたビャクチは、無数の鉄骨群を抜け、構造物などが無い広場に出た。
 ルーの助言通り、カイはライフルの射程距離を保ちつつ攻撃を続ける。
 だが広場に出た途端、深紅の機体は解き放たれたようにスピードを増し、ビャクチに襲い掛かって来た。
 被弾するのも構わず、相手はチェーンソーを振り被って跳躍した。
 位置エネルギーごと、こちらの機体を破断するつもりか ──
 カイはさらに後退することでそれを回避した。
 しかし、そこで逃げ場を失ってしまった。
 後退を続けたビャクチは、いつの間にか広場を横断しきって、対岸にあった管理棟跡まで追い詰められていた。
 崩れ落ちた棟の壁を背に、カイは銃弾を放ち続けるしかない。恐らくこの連射で、弾倉はすべて空になるだろう。そうなれば一巻の終わり……軍配は相手に上がることになる。
 カイは攻めあぐねるばかりだった自分自身の戦いぶりに、舌打ちした。
 最後の連射は、深紅色の機体にことごとく命中した。だが、致命傷にはならない。
 敵が、目前にまで迫る。
 振り挙げられたチェーンソーの刃の鋭さまでが、今はハッキリと確認できる。
 カイは、最後の悪あがきでにグリップを操作した。
 呼応し、ビャクチは弾倉が空になったライフルの銃身を持ち替えた。両手で銃身を横一文字に掲げ、今しも振り下ろされる切っ先を阻もうとする。
 ズシン、と、重苦しい衝撃が伝わった。
 銃身はチェーンソーを受け止めたが、回転する凶悪な刃の前に、それはあまりにもか細かった。
 銃身はすぐさま両断され、切っ先がビャクチの肩にめり込む。刃はなおも回転し、激しい振動がカイがいるコクピットを揺らした。
 しかし次の瞬間。
 攻撃にさらされるだけの暴力的な反動とはまったく別種の、フッと力の抜けるような感覚がカイを襲った。例えるならそれは、夢の中で階段を踏み外した時のような、腰が抜けるような感覚。
「マズイ……落ちるよ、カイ!」
 うち捨てられたまま、長くが経過してしまったせいか、廃墟の地面は脆くなっていた。
 交錯するAMAIM二体の重量と衝撃に耐えきれず、それが崩落したのだ。
 カイたちは、その下に広がっていた空洞へと落下していった。

境界戦機フロストフラワー 10話 ビャクチ 落下

 地下に広がったその空間は、資材置き場の跡だろうか、かなりの広さがあった。残されたものもほとんどなく、今は雨水が流れ込んで出来たと思われる池のような水たまりがあるだけだった。
 その池に、ビャクチは半身を沈めていた。深さはなく、それ以上沈んで行くようなことはなかった。
 近くに深紅色の機体の姿は確認できなかった。落下の最中に機体は離れ、それぞれ別の場所に落着したらしい。
 コクピットの性能のおかげで無傷で済んだカイは、ルーと交信するための携帯端末を手に外に出て、ビャクチの傷を外から確認していた。
 戦闘と落下時に受けたダメージは小さくはないが、動くだけなら問題はなさそうだった。
「武器も無いし、戦闘はムリだな。赤いのが戻って来る前に退散しよう」
「オーケー、ルートを検索するよ。向こうだって無傷じゃないだろうけどね」
 横たわったビャクチの胸に手を伸ばし、カイはコクピットに戻ろうとした。
 だが背中にヒヤッと触れるような気配を感じ、動きを止める。
 警戒しながらゆっくりと振り返ると ──
 水たまりのほとり、構造物が崩れ落ちて陸地になった部分に、女性が、銃を構えて立っていた。
「赤いヤツのパイロットだ……」
 ルーに言われるまでもなく、カイは思い出していた。目の前の女は、礼文島の戦闘で見た、あの女と同じ姿をしていた。
 両手を挙げて無抵抗を示し、カイは慎重に言葉を選んで話し始める。
「オレは軍人ではない。抵抗するつもりはないし、それに……」
「……やっと、会えた」
 え? とカイは目を見張った。銃は構えたままであるが、相手の表情はなぜか和らいでいるように見えた。友人にでも会ったかのようなその視線は、カイが手にした携帯端末に向けられているようにも見える。
「あくまで生体的に分析した結果を伝えるとね……」
 端末から、ルーが囁く。
「相手に戦う意思は無いよ。彼女は ── 対話を求めている」
「対話? どうしてわかる?」
「AI同士が無意識に通じ合った印象……かな?」
 ルーの言葉を証明するかのように、相手は銃を降ろした。
「彼女はね、私と……それからカイ、キミと話がしたいってさ」

 池になった水たまりのほとりには、ビールケースほどの小さなコンテナや、ドラム缶らしきものが漂着していた。
 カイはそれを拾い上げて椅子にして、女性パイロットと向き合うように腰を下ろした。
 女性もまた別の場所で水の中に落ちたのか、その体は濡れていて、微かに震えていた。
 カイが自分のジャケットを投げて寄越すと、相手はそれを素直に羽織った。そしてそのあと、自分の拳銃から弾倉を抜いて地面に置いて見せた。
 言葉ではなく、何かしら感情的な歩み寄りが、それで確認された。
 そうする間も、女性はカイが傍らに置いた携帯端末から視線を外さなかった。
「オレはカイだ。……キミは? 話をするなら名前が聞きたい」
 女性の視線が、カイの顔に移動する。
「チャイカ。本当の名は言いたくない」
「チャイカ……カモメっていう意味だね。本当の名前が別にあるってことは、コードネームみたいなものかな?」
 ルーの言葉に、女性の ── チャイカの視線が、また端末に移る。
「チャイカの頭の中に、私と同じ種類のAIが埋まってることは知ってるよ。だからこそ、私たちに会いたがってたってことも」
「私は……心の完成を求めている」
 チャイカの言葉は、どこか空虚で、寝起きの幼児が見た夢のことを語るかのように要領を得なかった。
 しかし先ほどルーが代弁したように、チャイカがカイたちと話をしたがっていたというのは事実のようで、彼女は彼女なりに熱心に、自らのことを語り始めた。

×   ×   ×

 チャイカは、自分は兵士になるため人工的に生み出された人間だと言った。ルーが補足したところによると、大ユーラシア連邦では人口受精や医学的な処置によって、兵士やAMAIM乗りに適した人間を生み出す計画が公然と行われているらしい。チャイカも生まれた時から身体をデザインされており、感情さえも、他者からコントロールされて成長したのだろうと、ルーは付け加えた。
「私の心は、生まれながらに欠損している」
 コントロールされた自分の精神を、チャイカは自身でそう表現した。それを強く自覚したのは、自らを養成していた機関が、戦術AIの開発に深く関わるようになってからだったと言う。
 そしてその段階でチャイカは、脳内にAIを直接埋め込まれた。本人には精神医療の一環だと伝えられ、チャイカ自身も何ら抵抗する気持ちはなかったという。それどころか、彼女はそれが救いだったとさえ言い切った。
 それぞれ個別にラーニングが進められているというAIはファルベルジェの卵と呼ばれ、彼女の中にあるAIも、ルー自身もそのひとつだった。六つあるというそれらはやがてひとつに統合され、最強の次世代AIとして完成させるのがユーラシア軍の目的で、それを成す手伝いをするのがチャイカに与えられた任務でもあった。
 六つに分けられた頭脳 ── すなわちファルベルジェの卵たちもまた、単体では欠損していた。
 だからこそチャイカは共感し、脳にAIを埋め込まれてまで任務に当たることを「救い」だと感じたらしい。
「同じファルベルジェの卵だから……ルーに固執した?」
 チャイカの話を聞き終えて、カイは最後にそう質問した。
「ルー? ……あぁ、“喜び(ラーダスチ)”のことを、レジスタンスはそう呼んでいるのか」
 チャイカは少し微笑んだように見えた。
「キミは自分が救われるためにも、ファルベルジェの卵を取り戻すことにこだわった」
 カイの言葉に、チャイカは首を傾げる。
「ラーダスチにこだわるのは任務だからだ。私の感情は関係ない」
「そうかな?」
 疑問を投げかけたのはルーだった。
「戦闘中、初めて会話を交わした時……キミは私たちのことを知りたいと言った。それはどういう気持ちからだったんだい?」
 問われて、チャイカは少し考え込んだ。その姿は、極めて純真な少女のように、カイには見えた。
「“喜び(ラーダスチ)”の感情を、私は知らない。それを知りたかった」
「それは、AIを取り戻して任務を達成したいっていう思いとは、別の感情だよね?」
「別の……感情?」
「キミは自分の心を完成させて、人になりたいんだよ」
 何度かの瞬きをして、チャイカは呆然となった。カイも、ルーに問いかけるように携帯端末に目をやった。
「カイにジャケットをもらって、キミは暖かいと感じたはずだ。その感覚は、私にはないものだよ」
 言われて、チャイカは羽織ったジャケットの襟をキュッと握りしめた。
「 ── キミはAIじゃない、人なんだ。私とは違う」
 ルーの声は優しかった。しかし寂しい告白でもあるように、カイには聞こえた。
 AIとしての寂しさ。
 兵士として生み出されたチャイカの哀しさ。
 ふたつは共感を生み出したが、それがテクノロジーの明るい未来としてではなく、戦いの中の悲劇として現れたことに、カイはやりきれない思いになる。
 カイは、絞りだすように言葉を発した。
「人になりたいなら軍にいちゃダメだ。人として生きたいなら……」
 我ながら陳腐だと思った。しかしそれ以上の言葉が、カイには見つけられなかった。
「任務が無くなれば、私には生きる意味がなくなる。軍を離れることは出来ない」
「生きる意味とか……そんなの、死ぬまで見つからない奴だっている。キミはまず、自由になるべきだ」
「自由……」
「自分の心を、自分で形作る自由だ。それは、昔から人が求めて来たもの、俺がレジスタンスとして戦う理由でもある」
 チャイカはカイを見つめる。
 言葉に聴き入っているようだった。
 見つめ合ったまま、不意に時間が止まる。
 だが ── 突然その集中が途切れた。
 ハッと、何かが聞こえたかように、チャイカは上空を見上げた。
「回収部隊がくる……」
 チャイカが察知したのは、恐らく自軍からの通信データ。脳内のAIを介して、彼女は通信機器無しに、それを受け取ることが出来るのかも知れない。
「帰らなきゃ……」
 チャイカは立ち上がった。
「自由はどうする? 要らないのか?」
「わからない……。私の中に、それは無かった言葉だから」
 До свидания (ダスヴィダーニャ) ── 最後にその一言だけを残して、チャイカは去って行った。
 カイは、それを見送ることしかできない。
「 ── 行こう。早くここを離れた方がいい」
 そんなルーに、カイは、ああ、と答えるだけだった。

 チャイカはカイたちのことを報告しなかったのか、本馬組は問題なく室蘭から脱出することが出来た。
 内浦湾を回って、一行は函館の極光本部に向かうことにした。
 敗残の兵を受け入れる余裕はないかもしれないが、掛け合ってみるより他はないと本馬は言った。
 だが数日ぶりに本部との通信回線を開いた時、もたらされたのは、にわかには信じられない報告だった。
 極光本部はユーラシア軍に引き渡された ── 通信の相手は、そう告げた。

(つづく)

【境界戦機 フロストフラワー】

第1話「absolute beginners」

第2話「material girl」

第3話「Under Pressure」

第4話「I say a little prayer」

第5話「Life in a Northen Town」

第6話「Set Them Free」

第7話「Everything But The Girl」

第8話「Want To Know What Love Is」

第9話「Fortress Around Your Heart」

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©2021 SUNRISE BEYOND INC.

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