ズベズダ「1/35 アメリカ中戦車 M4A3 (76)W シャーマン」をサンダーボルトVI号としてモデリング!
2022.04.06バストーニュに轟いたアメリカ戦車の雷鳴(サンダーボルト)
M4シャーマンは第二次大戦後半におけるアメリカ陸軍戦車の代名詞といってもよい存在だが、1944年12月のバルジの戦いにおいて、包囲された友軍救出のためにバストーニュに急行したクレイトン・エイブラムス中佐と、彼の駆ったM4A3 (76)W「サンダーボルトVI」はあまりにも有名な存在だ。ズベズダの新しい1/35キットは、装甲貫徹力に優れた長砲身76mm砲を搭載、ティーガー、パンターといった強力なドイツ戦車に引けをとることなく撃破可能となった後期型シャーマンの魅力を余すところなく再現。初期/後期タイプを選択できる本キットを極初期型としてモデリング!
■「サンダーボルトVI号」を作る!
「サンダーボルト」といえばP-47かガンダムを思い浮かべるだろうが、戦車モデラーにとっては大戦中にクレイトン・エイブラムス中佐が搭乗したシャーマン戦車の愛称であろう。今回は彼の乗車である「Thunderbolt VI号」をズベズダのキットを基に再現してみる。
■組み立て
本キットは砲塔違いによる初期型と後期型の選択式となっているが、今回は中佐が搭乗した極初期型へと改修した。改修ポイントしては、極初期型76mm砲塔の特徴である上面のアンテナポストとアンカーポイントの増設や、後部のL字型銃身マウント未装備といった点が挙げられる。装填手ハッチは、キットのものが75mm砲塔用で一般的な76mm砲塔には適していないため、他社製のハッチに交換した。また、砲塔の鋳造表現だが、米軍車両の鋳造肌は整っている傾向があるため、一般的なパテによる方法ではなく、接着剤を塗布して表面を溶解・乾燥後にヤスリでならして表現した。
車体は、前面装甲板のリフティングアイが内側のタイプを選択し、上面後部パネルも1枚板のものを選べばよい。さらに、操縦手ハッチ付近の牽引ワイヤー固定具の位置をより後部へ移設すると極初期型車体になる。また重要な点として、トラベリングロック基部の位置が低いのでいったん切除し、おおよそ基部1個分上げた。デフカバーはおおむね寸法も正しく大変興味深い分割でおもしろいが、半ばにある接着線はきれいに消したほうがよい。前部フェンダーはデフカバーの接着線処理のため切除したので他社製で代用した。他に、サイドスカートブラケットの溶接線はプラ棒で再現し、中央並びに後部ブラケットの取り付け穴の数および長さも修正した。
T48履帯は他社製を使用し、Thunderbolt VI号で行われていた防滑具取付の備えである4枚目ごとにダックビルが歯抜けになっている状態を再現した(長さ調節上、一部は5枚目が歯抜けとした)。ちなみに本車は、1944年11月時点ではT48、1945年1月時点ではT54E1を履いている。
他に、ライトガードや工具類留めには他社製エッチングパーツや3Dプリンター製品を採用した。
■塗装
サフを塗布後、込み入った部分にブラックでシャドウ吹きを行うが、合わせて雨筋状のものも吹いておく。その上から、戦車模型では使わないような彩度の高いブルーを下地がうっすら見えるよう吹き付ける。次に、基本色となるグリーン系を今度は下地のブルーを残すようにムラに吹いていくが、これらを行うことで後のフィルタリング工程などの工数を省くことができ、深みと色気が初期段階でも得られる。
本車の特徴でもありよく目立つThunderbolt VI固有のマーキングには他社製デカールを使用した。足周りのウェザリングは、実車を見る限り雪が混じった軟弱地を走破していたようなので、現地の土壌色および初冬の季節性も考慮して、AKインタラクティブの泥系素材を各種施した。また、M4系列のVVSSは上部スキッドの下あたりに土砂が溜まりやすいので意識するとよい。
なお、戦車兵は特に中佐を表したものではないが、発色と伸びのよいAKインタラクティブアクリル 3G塗料を使用して塗装した。
ズベズダ 1/35スケール プラスチックキット
アメリカ中戦車 M4A3 (76)W シャーマン
製作・文/HELGA
アメリカ中戦車 M4A3 (76)W シャーマン
●発売元/ズベズダ、販売元/GSIクレオス●4180円、発売中●1/35、約21.6cm●プラキット
HELGA(ヘルガ)
M4のカッコよさを追究している米軍車輌モデラー。主にSNS上で活動。ハンドルネームは女性名だが中の人は男性。