宇宙戦艦ヤマト2205 新たなる旅立ち 〈前章 –TAKE OFF–〉
最新情報&スペシャルインタビュー
2021.10.08
宇宙戦艦ヤマト2205 新たなる旅立ち 前章-TAKE OFF- 月刊ホビージャパン2021年11月号(9月25日発売)
〈前章 –TAKE OFF–〉 2021年10月8日(金)劇場上映開始!
1979年にテレビスペシャルとして放送された『宇宙戦艦ヤマト 新たなる旅立ち』をモチーフに、全二章で描く『宇宙戦艦ヤマト』シリーズ最新作『宇宙戦艦ヤマト2205 新たなる旅立ち』〈前章 –TAKE OFF–〉が、ついに2021年10月8日(金)にテイクオフ!! 今回は最新情報に加え、安田賢司監督、ストーリー構成・脚本の福井晴敏氏へのスペシャルインタビューもお届けしよう。
宇宙戦艦ヤマト2205 新たなる旅立ち 前章 –TAKE OFF–
2021年10月8日(金)劇場上映・Blu-ray特別限定版販売・デジタルセル版配信同時スタート
宇宙戦艦ヤマト2205 新たなる旅立ち 1 Blu-ray特別限定版(数量限定生産)
●発売・販売元/バンダイナムコアーツ●11000円●本編約100分+映像特典約5分●上映劇場、A-on STORE、ヤマトクルー(10月15日発売予定)のみの限定販売
これまでのヤマトを知りたいなら
『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』を中心に、新作映像を交えながら再構成した総集編がいよいよBlu-rayで登場! 地球の宇宙開拓時代から『2202』までの物語がドキュメンタリータッチで描かれる。
「宇宙戦艦ヤマト」という時代 西暦2202年の選択 Blu-ray
●発売・販売元/バンダイナムコアーツ●7480円、発売中●本編118分+映像特典7分
キャラクター紹介
二度の戦いをくぐり抜けた古代進や森雪、真田志郎は艦長服に身を包む。今回の物語のメインキャストとなるデスラー、スターシャ、そしてスターシャの妹ユリーシャの姿も。
■ 古代進
■ 森雪
■ 真田志郎
■ アベルト・デスラー
■ スターシャ
新たなるヤマトクルー、そして謎の敵の出現!
旧作『新たなる旅立ち』から登場した新クルーに加え、テレビ『宇宙戦艦ヤマトIII』のクルーまで。物語は我々の知らない結末を迎えるのか!?
■ 土門竜介
■ 京塚みやこ
■ 坂本茂
■ 板東平次
■ 徳川太助
■ デーダー
メカニック紹介
■ 宇宙戦艦ヤマト
■ ドレッドノート改級補給母艦ヒュウガ
■ ドレッドノート改級補給母艦アスカ
■ デウスーラIII世
■ グレート プレアデス
プラモデルも続々登場!!
アニメ展開スタートに合わせ、BANDAI SPIRITS ホビーディビジョンからはプラモデルが続々リリースされる。
●発売元/BANDAI SPIRITS ホビーディビジョン クリエイション部
※画像はイメージです。
1/1000 ドレッドノート改級補給母艦 アスカ
●6050円、10月予定●1/1000●プラキット
メカコレクション
デウスーラIII世は選択式で甲板の各形態を再現可能。バルメルス同様、甲板のマーキングなどは水転写式デカールで再現される。
※画像はイメージです。
メカコレクション
デウスーラⅢ世
●1430円、10月予定●約14cm●プラキット
メカコレクション
ガイペロン級多層式航宙母艦 バルメルス(外洋機動艦隊仕様)
●770円、11月予定●約10cm●プラキット
安田賢司(監督)×福井晴敏(シリーズ構成・脚本)
新たなるリメイク ヤマトの旅立ち。
大ヒット映画『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』を現代に甦らせた『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』に続いてシリーズ構成・脚本を手掛ける福井晴敏氏と、『マクロスΔ』などを手掛ける本作の監督・安田賢司氏に、上映直前となる『宇宙戦艦ヤマト2205 新たなる旅立ち』に込めた想い、見所を語っていただいた。(聞き手・構成/島田康治(タルカス))
「古代やデスラーを大きな柱としながらも、個人的には主人公は土門です」
安田賢司
PROFILE
1972年8月17日生まれ、栃木県出身。アニメーション演出家・監督。サテライトを活動拠点としており、主な監督作品に『しゅごキャラ!』『創聖のアクエリオンEVOL』『マクロスΔ』『博多豚骨ラーメンズ』『ソマリと森の神様』『異国迷路のクロワーゼ The Animation』などがある。リメイクヤマトシリーズへの参加は本作が初となる。
「ドレッドノート級を改造した空母型を出そうと、ヤマト艦隊にしました」
福井晴敏
PROFILE
1968年11月15日生まれ、東京都出身。小説家・脚本家。主な小説に『Twelve Y. O.』『亡国のイージス』など。小説版『∀ガンダム』執筆を契機に『機動戦士ガンダムUC』『機動戦士ガンダムNT』『機動戦士ムーンガンダム』(原作)などを手掛ける。『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』よりリメイクシリーズに参加。
新たなるリメイクヤマト。
––– そもそものところからお聞きしますが、この『宇宙戦艦ヤマト2205 新たなる旅立ち』はどういった位置づけの作品なのでしょう?
福井:我々としては前作『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』で、あそこまでやってしまったわけです。オリジナルである『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』であのラストを描いた旧ヤマトの作り手たちが、『さらば』とは異なる結末の『宇宙戦艦ヤマト2』という緩衝材を置くことで仕切り直して、旧『新たなる旅立ち』に続けていったわけですが、『2202』の続きを作るとなって、そのあたりの気持ちは我々も同じでした。正直『2202』であそこまでやってしまったら、もう仕切り直すしかないだろうなって感じ(笑)。
––– これまでのリメイクシリーズは、あくまで旧作が底本にあったわけですが?
福井:原作となる旧『新たなる旅立ち』というガイドがあったのですが、それを換骨奪胎……というほどまでに参照していないところはあります。『2202』があのような最後を迎えましたが、もちろんラストを変えるような続け方はできないわけです。あの結末を迎えたうえでキャラクターを配置すると、古代は全地球人類のある種の犠牲と引き換えに現世に帰ってくることができた。デスラーはキーマンとかいろんな人の想いを背負って、ガミラス民族が移民できる星を探さないといけない。大きくこのふたつのベクトルが存在しているので、ここに新たに第3のベクトルとして「新たなる旅立ち」というタイトルに相応しい新キャラを投入する。その化学変化をみていけば、これだけでひとつの話ができるだろうと考えました。
––– ポスターのビジュアルや予告、先行公開された冒頭などをみれば、『新たなる旅立ち』以外の要素が満載で、かなりの情報密度になっているように感じます。
福井:密度に関しては『2202』には大きく『さらば』の流れもあったので、あえて情報量を削いで、音楽や艦の動きなんかをじっくりと見せる作り方をしたんです。そこは羽原(信義)監督の個性でもあったと思います。実は今回の密度が上がったのは、まだ何も話していない打ち合わせの最初の段階で、安田監督から脚本のテキスト量を増やしてほしいという希望をもらったんですよ。こちらとしても、今回は前後編の短期決戦とも決まっていたので、もっと高密度にできたらと考えてた。ですが、こちらが話す前に監督から要望されたんです。
安田:全部で26本あると視聴者的にも現場的にも息継ぎといいますか、カロリーの低い話数もバランスで配置する必要があるんですが、今回は短期決戦ということがありましたからね。密度高くやれるんじゃないかと考えていました。自分が最近やってきた作品も、今時の視聴者に向けて余韻がありながらも、ポンポンとテンポよく連続して進むような作品が多かったんです。お話としても特に若いキャラクターがたくさん出てくるので、じっくりというよりは、テンポよく行ったほうがキャラクターのテンションとか心の動きを出せるのではないかなって思ったんです。とはいえ実際始まってみると、ここまで盛りだくさんなのかって……。
福井:前後編なら埋まるだろうなってくらいのつもりだったんですが、ところが取りかかってみたら、溢れかえらんばかりの情報量で……。
安田:そうですね。こぼれ落ちそうな感じの情報を、なるべくコンテで拾い上げてます(笑)。
主人公は土門竜介!?
––– 土門竜介たち『宇宙戦艦ヤマトIII』で登場するキャラクターの一部が先行投入されたのも大きな話題になっています。
福井:大河ドラマとして考えたとき、土門は現時点からいるべきだろうと考えたんです。旧ヤマトって、せっかくのシリーズなのに前に出したキャラとか平気で忘れたりするでしょ? 「『新たなる旅立ち』に出てきた坂本茂(※1)って、その後どうしたの?」って、すべてのファンが思ってる(笑)。そこをちゃんと繋げれば、シリーズを俯瞰して楽しめる大河ドラマになるんじゃないか。ちゃんと整理して、全員が必然として物語の中にいるって道筋を作っていこうと思ったんです。だから坂本も出すからには、リメイクシリーズが続いたとき、この先も出てくるでしょう。どこに行ったかわからないキャラにはしない。この想いは自分に限らず、一緒に脚本をやっている岡(秀樹)さんも同じだったようです。そこらへん整理整頓しようということは、何も言わなくてもアイコンタクトでできていました。その中で取捨選択していくとき、すべてのキャラクターを『2205』で出し切っちゃうと描ききれないし、まだ分かりませんが先々のことも考えたら取っておかないといけない要素もある。それでこういう配分になりました。
––– 『2199』『2202』で加わった登場人物や設定も続投ですから、本当にキャラクターが多いですよね。
安田:多いですね(笑)。
福井:「新たなる」ってことだから、ヤマトとは関わりがない、それ以前と関わりがなかった若者たちが乗ってくるっていうのは大前提でした。
安田:これは後章にまつわる部分ではありますが、古代が何を悩んでいるのか、旧来のヤマトクルーなら古代が出した答えを受け止めるところがスタートになるのに対して、若い新クルーが出てくることで「古代は何を考えているか分からない」っていう視点が関わる。それによって新しい物語が生まれるので、そういう意味でも若いキャラクターは必要でした。
––– 考えてみれば、元々『ヤマトIII』キャラである平田一(※2)などは『2199』から登場していましたね。
福井:おかげで平田はデザインがあったので、今回も大々的にフィーチャーして使っちゃおうっていうのがあります(笑)。
––– 新キャラが発表されたとき、キャロライン雷電(※3)も話題でした。
福井:特報が公開されたとき、ファンのなかには加藤四郎説もあったようです。まさかの雷電女体化って(笑)。
安田:最初はいろんなプロポーションの雷電がいましたね。
––– ちなみに加藤四郎(※4)は存在するのでしょうか?
福井:『2202』の流れを考えると、四郎はないでしょうね。カミさんと子供がいるので、扱いを間違えるとちょっと怖いことになる。ここに四郎をひょいって入れるわけにはいかないですよね。……というところは、ファンのみなさんも同じ想いだと信じてるんです。
––– 予告には『2199』でいろいろあってヤマトを降りた薮助治も出ていますよね?
福井:岡さんが出したいって言ってきたとき、一度は断ったんですよ。「これだけキャラが多いから無理」って。ガミラスでいろんな経験積んだ薮がヤマトの機関室に戻ってきて活躍するっていうだけでは、入れる余地はなかったんです。でもコロナ禍で予定したことが全部ダメになってしまったり、誰もが「運が悪いな」って想いを抱えている今の世の中に、そういう人がスッと感情移入できるキャラクターとしてうまく薮を落とし込めたら……これはもしかしたらこの作品のテーマを体現する人になれるかもって思ったんですよ。その結果、急激に薮にウエイトが(笑)。あんな見てくれなのに。
安田:薮のアップ多いですよね。
福井:薮みたいなキャラクターがいて、でも全体としては宇宙戦争のドラマって、他にはないですよ。ああいうキャラクターは機動戦士にもいない。アニメや映像はエッジな方向に向かっていて、いかにいままでないものを見せるかってところがあるけれど、誰もが見て共感できるって部分はあるべきだと思うんです。多様性という言葉が一般化したことで「誰もが」って部分を避ける傾向があるけど、多様性はありつつ、でも人間の感じるところってそうそうバリエーションないよって思うんです。運が悪いときには、肩寄せあって泣いてもいいんだよ。そういうような話がヤマトだったらやれるのかなって。なんとなく70年代のホームドラマみたいな。倉本聰が書いたドラマみたいなニュアンスがありますね。
––– 安田監督も今回から加わる新たなるクルーですよね。
安田:そうですね、これまでのシリーズを復習しながらやっています。古代はいろいろ抱えすぎちゃってるけど、なんでそんなに抱えてるんだろうって。新クルーに近い視点で見ているところがあります。古代やデスラーは出来上がっていますので、自分的には大きな柱として捉えながらも、個人的には主人公は土門であり、土門と仲間たちという視点でやれたのはよかったですね。やっぱり絵コンテを描いたり芝居づけするときも、悩み続けるキャラクターより、悩み続けながらも行動して感情出していくキャラクターの方が、描いていて楽しいし感情移入しやすいんですよ。
ヤマト艦隊誕生秘話。
––– 今回のヤマトは艦隊を組むんですね。
福井:基本は一人旅っていうのがヤマトなんだけど、商業的な事情もあって、たまには艦隊にしようと決めていました。普通に考えたら航空戦力だったり補給戦力だったりと一緒に行動するのはアリだよねって。というのは『宇宙戦艦ヤマト2』に登場した、主力戦艦を改造した地球側空母を出したかったんです。あれは当時から人気があってプラモも待望論があったんだけど、実現しなかった。『2202』にドレッドノート級として主力戦艦を出したとき、空母型も出せないかって話もあったんです。じゃあ今回は大々的にフィーチャーすべく、ヤマト艦隊のパッケージとして、ヤマトの横に色だけ違う同じ形の空母型を2隻並べようと思った。ところがメカニックデザイナーの玉盛(順一朗)さんにお願いしたら、2隻全然違うのが上がってきたんです。機能が異なるから同じにはできなかったんですね。アスカのほうはドレッドノートと共有できそうだけれど、ヒュウガは流用効かない感じに……。いずれヒュウガもプラモが出ると思いますが、みなさんがんばってヒュウガもスクラッチしてください(笑)。
––– 演出面では艦隊になった影響は?
安田:艦の個性があるので、その辺を劇中でどう出せるかってところですね。ヒュウガ・アスカは正面から見るとそこまで大差はないので、どうやって違いを見せられるかというところです。あとは甲板や格納庫などの内部構造的な部分も描けたらと思ってます。
––– 真田と雪が艦長としてヤマトを離れましたね。
福井:ヤマトを見てうちのカミさんが「みんな古代をすぐかばう。甘すぎる」って言うんですよ。そこで艦を任せるなら真田はともかく普通は島を選ぶところなんですが、あえて雪を引き離しました。古代の一番の理解者である雪と真田を離したら、土門という異分子とぶつかったときに古代はガチでぶつかることになる。そこにふたりがいると、ちょっとまた違うドラマになるなと考えたんです。カミさんからすると、平田がいるからまだまだ古代は甘やかされているようですが(笑)。
––– ヤマト自身も外観に変化があるようですが?
福井:玉盛さんには、のちのちのシリーズでの一番の改修点はあれとこれかなって、もう一度、旧ヤマトを検証してもらいました。リメイクシリーズでも踏襲できる形にしていきましょうということで、改良が加えられています。今回の前章ですべては明らかにならないんですけど、前章の最後のほうで、これがアレかっていうのも出てくる。そのあたり細かく見てもらえたらと思っています。
安田:新型の艦載機として登場するコスモパイソンにも注目してほしいですね。色味的もミリタリーっぽいグレーで、なにげに模型映えするのかなって思っています。パネルラインにスミ入れしたり汚し入れたりしたら格好良くなりそう。プラモが出たら買おうって思ってます。
––– ちなみに今回からCGのルックがリアル寄りになったのは、安田監督の指定だそうですね。
安田:いろいろとトライアンドエラーを重ねて、最終的に今の形に落ち着いたっていうのがあります。CGであるがゆえに、ライトの当て方で想定と違った見え方になるんですよね。実際やってみたら「あれ?」ってなることもあって、最初の頃は時間が掛かりましたね。
赤いデスラー戦闘空母!!
––– 「無限に広がる大宇宙~」から始まる冒頭シーンが先行公開されましたね。
福井:リメイクシリーズはナレーションを使わないっていう不文律があるんですが、代わりに「無限に広がる大宇宙~」って必ず誰かに言わせないといけない枷が『2202』からできてしまって、あの台詞を誰が言って違和感がないかなって。日常生活では言いませんから(笑)。
安田:旧ヤマトの御歴々の俳優さん声優さんすごい方ばかり。だから山寺さんもすごく言いたかったんだろうなって(笑)。
––– 『2202』ラストを見たとき、てっきりアレがデスラー戦闘空母(今回のデウスーラIII世)になるのかと思いました。
福井:あの艦が赤くないと全然『新たなる旅立ち』にならないんですよ。もし青かったら、絵的に跳ねるものにはならない。旧ヤマトでもあの当時、デスラー戦闘空母のプラモが売れたってこともありました。だからきちんとフィーチャーすることも含めて、ちゃんと赤いのを出しましょうってなったんです。実はあの青い艦にも文芸設定を起こしていて、ガミラス本星でないどこかの工廠惑星が輸送とかそういう目的に作った、単にゲルバデス級のデザインをそのまま使ったハリボテみたいな艦で、それが長期惑星探査には向くだろうってことでデスラーの方に回されたってことにしています。今回、同じ工廠惑星で作ったデウスーラIII世と入れ替えた形です。
安田:回転甲板の下のデスラー砲が、どのくらいのサイズならちゃんと物理的に干渉せずに出せるか検証しましたね。
福井:どこまでデスラー砲をデカくできるか。そのあたりはバンダイさんと二人三脚でやってましたね。
––– 戦闘での艦艇と航空機(航宙機)の速度や重みの付け方の違いが印象的でした。
安田:なかなか難しいんですよ、昔のヤマトを見ていた人のツボって。主砲が仰角を変えるときは砲身1本ずつランダムに動くとか教えてもらいました(笑)。岡さんはじめ、ずっとヤマト好きだった方の意見を聞いて、どこがキモなのか探りつつやっています。速度の表現については飛行機の戦闘が多いということで、『マクロス』とかをやった経験も生かせているのかなって思います。艦艇の動きは難しいところなんですよね。ゆっくりにするとそこに尺(時間)を使ってしまうという物理的な問題もあるんです。かといって軽くなってしまうと、拒否反応もあると思うんですよ。その兼ね合いは難しかったですね。そのなかで、特報にもあるランベアのドリフトしつつバックしつつみたいな機動もやっています。古さだけではなく新しいところも取り入れていますので、そこがみなさんに受け入れられたらいいなって思ってますね。
新たなるリメイクヤマトの旅立ち。
––– 改めて新作に掛ける想いをお聞かせください。
福井:『2202』は『さらば』っていう一歩間違えるとすごい危険物になってしまうあれを、現代にどうやってもう一度語り直すか、その理念的なところからのアプローチがあったんです。今回ももちろんそのアプローチは継続してますが、一方で当時自分がこの時期のヤマトを観ていたときの、なんとも言えない複雑な想いも詰まってるんです。「あのとき『新たなる旅立ち』がこうだったら、ああだったら……」っていう(笑)。当時から見ていたファンのなかにも、きっとそれぞれの理由があって、それぞれディテールは違うかもしれないけど、大きなところの想いはそれほどみんな違っていないんじゃないだろうか。現時点で公開されたアバンタイトルまでの映像の反響を聞くと、みんなが求めているヤマトって、ここから先は同じかもって、ちょっと思ってます。もちろん意外性っていうのもあるんだけど、だからたぶん、見やすい。少なくともファンに関しては、向いてる方向が一緒なんだと思ってます。
––– 総集編である『「宇宙戦艦ヤマト」という時代 西暦2202年の選択』が、『2205』を含む今後のリメイクシリーズに対する下地作りだったように感じます。
福井:あの作業に取り掛かったのは『2205』のコンテが上がってたかな。どうやって全体を繋いでいくかを考えたとき『2205』を作ったおかげで改めて『2202』に逆輸入できたところもありました。ヤマトを全然知らない人は、予習としてあの『ヤマトという時代』1本観てもらえれば、するっとヤマトに乗れます。ぜひご覧ください。
––– では最後に前章の見どころをお聞かせください。
安田:キャラクター的な物語的なところもおおいに見どころではあるんですが、体験・体感するものとして、可能なら劇場で楽しんでほしいなと思いますね。ここから新しく見る人にとっては、ヤマト音楽を大音響で聴くのは初めてのことかもしれないし、旧ヤマトから見続けているファンの人にとっては、新録もあるけど、あの懐かしの音楽が歌が、暗がりの映画館の中で流れる貴重な体験。いい刺激になると思うので、ある意味アトラクションとしても愉しんでもらえたら嬉しいですね。
福井:いまは大変生きづらい世の中ですし、かつてヤマトを見ていた頃に想い描いていた未来とはだいぶ異なる未来の自分っていうのを、改めて再発見してしまうタイミングでの作品との再会になるかもしれない。ですが、でもだからこそという部分もあって、この作品を作っています。なるべく現実から逃避しようって物語が流行ったり、安易に勝利を見せる方が分かりやすくはあるんだけれど、ファンのみなさんがこれだけ成熟してるヤマトだからこそ、そうしたものにはしない。今回の『新たなる旅立ち』も、登場人物たちにとってとてもつらいことが次々に起こります。現実はときに残酷で最悪に最悪を重ねてくるってことがままある。でもそういう中でも最悪が続いたあと、どん底のあとには素晴らしいことが順番待ちしてるんだって。そういうメッセージが後章の最後に明瞭に浮かび上がってくる。段階を踏まないと人間には救いは手に入らないし、自分から歩いていかないと手に入らない。そうしたきちんと現実と対照できるものを描いて、それを観た方が自分を見つめ直すことで、逆に少し気が楽になる。そういう作品にできればいいなって思っています。ぜひ後章に向けて、まずは前章をお楽しみください。
(2021年8月25日取材)
(※インタビュー取材にあたっては、充分な感染対策を行い臨んでいます)
※1:『新たなる旅立ち』にて初登場したコスモタイガー隊の新人・坂本茂は、特に説明のないまま続く『ヤマトよ永遠に』以降登場しなかった。
※2:平田一は『ヤマトIII』で土門の上司として初登場するキャラクターだが、イスカンダルの航海時からヤマトに乗っていたという設定があり、リメイクシリーズでは『2199』から登場している。
※3:キャロライン雷電は、『ヤマトIII』にて登場する相撲大会チャンピオンの雷電五郎(♂)がモチーフ。
※4:『ヤマトよ永遠に』以降登場する、加藤三郎と瓜二つの弟。現時点では今後リメイクシリーズが続いたとしても、彼が登場するかどうかは未定だという。
© 西﨑義展/宇宙戦艦ヤマト2205製作委員会 © 西﨑義展/宇宙戦艦ヤマト2202製作委員会